バトーvsアルベルト・グズラッド PFCS ss
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/03/19/220046
⬆このssの元ネタ。今の持ちうる技術で戦闘をアレンジしてみました。
『バトーは仲間たちと共に、ギャングまがいの違法取引や密輸を繰り返すノア輪廻世界創造教の本堂に侵入した。彼を待ち受けていたのはパラレルファクターと呼ばれる特殊な力を持つ異能力者たち。そのなかでも有数の実力を持つアルベルト・グズラッドが彼の前に立ちふさがった』
東塔の渡り廊下。バトーはいきなり敵幹部と対峙した。
「シャーヒャヒャハェ!お前らカルマポリス軍じゃねぇな。どこの国の軍隊だ?ノア新世界創造教になにしに来た?どっちにしろ侵入者はぶっ殺してやるけどよぉ。神様信仰してりゃこの俺、アルベルト様は何だってしていいのよ!シャーヒャヒャハェ!」
修道服に身を包んだ、いかにもヤバそうな男。その修道服にもパサパサした茶色い斑点が所々付着しており、こいつが何をしているかを暗示している。
金髪を揺らし、碧眼を光らせながらバトーは仲間たちの一歩前に立つ。
「俺がやろう。この狭さだと一人で戦うのが限界だ。二人は階段まで下がってくれ」
バトーは敵の大剣に対して細身の剣だ。
敵は広角が引きちぎれそうなくらいの満面の笑みを披露している。修道服を着崩しており、中に真っ赤な服にすさまじい量の銀色の首飾りをつけている。
左右の目に二つずつある瞳孔がバトーたちを睨み付ける。
「俺はなぁ、お前らみてぇな侵入者を何人もぶっ殺してンだ。最近は雑魚ばっかりでよぉ!ノミのほうがまだいい勝負を仕掛けてくんだよ。お前らもノミ以下かぁ!」
バトーは全く恐れる様子もなく言い返す。
「俺はお前に値踏みされるほど、安くはないし、井の中の蛙に負けるほど落ちぶれてもいない」
「そうかい!そうかい!面白くなってきたぁ!シャヒャヒャヒャ!」
敵は剣を取り出した。赤い呪詛が垂れ流しになっており、不気味に光っている。
バトーに切りかかった。バトーは剣を使って攻撃を受けようとしたが、一瞬にして剣がどろっと溶けてしまった。
「何っ!」
「俺の呪詛は剣を介して触れた金属を溶かす。一見地味だがお前みたいな剣使いにはサイコーに相性がいいんだぜぇ!」
横になぎはらわれた剣がバトーの服を切った。アルベルトはそのまま、何回も剣でバトーを突いていく。バトーの腕が、足が、胴が切り裂かれていく。
狭い廊下の床と壁に赤い斑点が出来ていく。
「ぅぐっ!あが………ヌア゙ァ゙ッ」
「てめぇは女装してキャバクラにでも働いてた方がいいんじゃないか?なんっつって、シャハハッ」
バトーはかわす一方で反撃に出られていない。それでも、行き絶え絶えで氷の魔法をアルベルトに放った。本来なら敵を凍らせるはずの冷気を受けているはずなのに、アルベルトはケラケラと笑うだけだった。それどころか股間狙いの蹴りまで繰り出され、冷や汗をかく。
「んー涼しいねぇ。魔法無効のパラレルファクターだぜぇ!ほらほら、このままだと死んじまうぞ?シャーッハッハッハ」
「……このサイコ野郎が」
一方的な死合いが展開された。決して小さくない血溜まりが出来ていき、それを金色の髪の毛が彩る。
バトーは追い詰められながらも必死に頭を回転させる。知恵と勇気でこの場を乗りきらなければ、この先の戦いを生き残ることは出来ない。
仲間は狭い廊下のせいで、バトーの加勢に入れない。
バトーはなすすべもなく壁際に追い詰められてしまった。
「俺に魔法は聞かない。剣も効かない。死ねぇ!!」
剣を弾く音とドスッという鈍い音が響き渡った。
『水よ……我が手に集いて刃と成せ!』
「こっ氷の剣ッ!?クソッ!無抵抗なヤツをいたぶるっつうのが楽しいのによぉ」
バトーの手には水筒で作られた剣が握られていた。その先はアルベルトの肩に突き刺さっている。
氷なら鉄でないから敵の剣に触れても溶けない。魔法で作ったのではなく、水を制御し凍らせて作った物だ。素材自体は純粋な水であり、魔法由来ではない。アルベルトの魔法無効のパラレルファクターは効かない。
「それで勝ったつもりか?女顔!」
肩から伸びた氷の剣をアルベルトは手から血をにじませて引き抜ぬいた。あまりにも強引な手段にバトーも一瞬唖然とする。アルベルトはすかさず反撃に出た。
一見力任せに見えるが、確かな技術を用いた剛剣。それをバトーは剣で受け流すようにさばいていく。バトーの氷の剣はか細く頼りないのにも関わらず、折れず、刃こぼれもしない。
バトーは身震いしていた。今まで魔物や自分を女と間違えていざこざを起こすような輩や、はたまた国レベルで問題を起こすような敵とも戦ったことがある。
しかし、アルベルトに至ってはそのどれとも違った。勝つためにはありとあらゆる手段をこうじ、弱者をいたぶることを楽しみとする人間のクズ。その上技術は世界有数という異形すぎる存在だった。
怖くないと言えば嘘になる。体の痛みが精神を萎縮させる。だが、今バトーが倒れれば仲間を危険にさらしてしまう。逃げるわけにもいかないし、野放しに出来るような奴でもない。
それに、こいつよりもヤバイ戦闘狂を相手にしていつも修行しているのだ。勝てないはずがない。バトーはそう、自分に言い聞かせた。闘技場で拍手喝采を受ける戦友の姿を思い浮かべると、自然と心の乱れが収まった。
落ち着きを取り戻したために、バトーの剣術がキレを増す。バトーがだんだんとアルベルトを押し始めた。
「くっ……あいつとの練習がこんなところで役に立つとは……」
「お前、割といい腕してんだな。まあ、俺様には足元にも及ばねぇがなぁ!」
バトーの視界が突然真っ暗になった。なにかで目潰しをされたのだ。生暖かいぬめっとした感触から、直感的にそれが血液であることを悟る。
「上品に戦っているようじゃあ!俺にはあの世で修行しようが勝てねぇぜ!シャハハハハッ!」
アルベルトが止めを刺そうとした瞬間だった。犯罪者とはいえ剣術の達人である彼があろうことか転んだのだ。ありえない光景に仲間も唖然とする。
「床がッ! 氷ってやがる! ふん、だが無駄な抵抗だったなぁ!」
アルベルトは滑らかな動きで立ち上がると同時に、顔もとを狙った。
そのとき、バトーは丁度目をぬぐっていた所だった。反射的に右腕で顔をガードする。大剣がバトーの右腕を切り裂いた!
「ア゙ァァッ!!痛つっッッ!!」
「これでもうお前の利き腕は使えねぇ。そして、俺の剣は利き腕じゃない方の手で捌けるほど軟弱じゃねぇ!死にな」
容赦なく振り下ろされる剣。だが、バトーは左手に現れたもう一刀の氷の剣で受け流した。驚愕するアルベルト。
バトーは地面に滴る血液中の水分を利用したのである。
『出よ、我が聖なる刃!〈氷斬剣〉!!』
アルベルトの胸を大きく切り裂き止めを刺した。死んではいないものの、戦闘続行は不可能な傷だ。
「悪いな、俺は双剣使いだ」
右腕を押さえながらアルベルトに背を向ける。仲間に傷薬と呪詛で治療を受け、患部を包帯で保護した後、その場を後にした。幸いバトーの受け方が上手だったため、切り傷が綺麗で治療は楽だった。今後の戦闘にも支障は無さそうだ。
「まさかこんな、クズみたいな剣士がいるとはな……。だが腕は一流か。惜しいな」
戦闘曲を考えてみる
私は小説を書くとき何も見たり聞いたりはせず、電車の座席か家で思い付いたときに書いています。
ただ、小説やキャラクターを考えるとき音楽や映像作品を参考にすることはわりとあります。今日はそのなかでも戦闘の時に流れそうなものに限って、独断と偏見をガンガンにいれて紹介しようと思います。あくまでお遊びなので、笑い飛ばす位の気持ちでご覧くださいませ。
(最初の1分試聴していただくだけで充分雰囲気はわかります)
『ひな祭りss』でのエアリスの戦闘シーンにて参考にした曲。戦闘意欲すら奪う圧倒的なコーラス。倒しても甦る。消滅させても次がくる。怒濤の戦闘にぴったりのイメージだと思う。
原作のスターウォーズの曲のなかでも有名っぽい曲。この曲をバックにライトセイバーぶんまわすダースモールがマジでかっこいい。
解剖鬼の戦闘シーンにて参考。ドスの効いた低音と不気味さが解剖鬼のイメージにあってる気がする。メスを片手に血を浴びたコートを揺らしつつ、ゆっくりと歩いていくイメージ。
あのブォーーン!っていう低温が好きです。
メタルギアVの曲でゾンビ擬きと鉱物人間を相手にするときに流れるBGM。半分ホラー。
チュリグのハサマ王が戦闘するときに流れていそうなBGMだと思った。コーラスが絶望感を煽る。短いけど、ハサマ王ならこの曲が鳴り終わるまでに敵を瞬殺してくれるはず。
人型ロボットが殺りあうアーマードコアというゲームより抜粋。そういう意味ではエアリスの方がイメージ的には合うかな?
クレスダズラのアルマ・ユマさんの戦闘を書くとしたらこの曲をイメージする。必中必殺の攻撃って実際どんな感じなのだろうか。
何?画像がマリオ出典だから明るい曲じゃないかって?聞いてみて。なんかこう……違うから。
グランピレパの魔王スヴァルドの戦いを書くならこの曲。フツーに強そうな曲を選んでみた。この曲をバッグにルビネルから同人誌を買ってほしい。
ドレスタニアのガーナ王が無双するならこんな曲でどうでしょう。テンポよく、重々しく、相手にしたときの勝てなそう感がよく出てる。
悪魔城ドラキュラのラスボスドラキュラの曲。
リリィちゃんが戦う時に流れそうなBGM。不安定さを出すためにあえて独創的な曲を選んだ。後半の転調がすごい。うん、イメージとあっているかどうかは別として強そう。
毛糸のカービィの曲だけど、普段のカービィのイメージである明るさは0。
アンティノメルのダンテが戦いそうなBGM。ピアノメインの静かな曲。記憶を失って、哀しみを背負いつつ戦うようなイメージがぴったり。安直な選曲だけど許してくれ。
キングダムハーツより。
ルウリィドのサラトナグさんが戦うようなBGM。今までとすんごい差だけど気にすんな。爽やかなコーラスがサラさんの植物を利用した生命力溢れる戦いかたにマッチしてる気がする。
志方さんの曲を探したら偶然見つかった曲。二分からのさびに注目。
今思い付くだけて大体これくらいですかね。我ながらひどく歪んだ選曲ですね(汗)
ルビネルの願い PFCSss10
ルビネルの捜索願い PFCSss
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/28/091650
ルビネルの手術願い PFCSss2
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/31/172102
ルビネルの協力願い PFCSss3
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/01/083325
ルビネルへの成功願い PFCSss4
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/02/153244
ルビネルの豪遊願い PFCSss5
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/03/075127
ルビネルの修行願い PFCSss6
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/04/224102
ルビネルの施行願い PFCSss7
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/07/175035
ルビネルの決闘願い PFCSss8
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/14/220451
ルビネルとセレアの死闘願い PFCSss9
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/15/210343
⬆こちらのssの続きになります。
━━
Self sacrifice after birthday 10
「ここが、その場所か。ずいぶんとまた美しい場所だ。キスビット国にこんな場所があるとは」
ガーナの言葉に偽りはない。辺り一面空色の花に覆われている。所々白い花の円があり、同じく白色の蝶が舞っている。
「どちらが空だか見分けがつかんな」
私はペストマスクを上に動かし、快晴の空を見上げた。
「門出としちゃ粋な計らいですぜ。もっとも、見送りがセレアを除いてゴツい輩ばかりですが」
老人が焦げ茶の帽子に手をかけてニヤリと口をつり上げる。
「もし不快だったらわらわが『かっ飛ばす』からな」
笑顔で物騒なことを言う、あの修業のあと数分で完全復活したセレア。年寄り三人組は、ハハハと言いつつそれぞれ獲物に手をかける。私含め、ばりばりの警戒心を微塵も表情に見せない辺り、化け物揃いの面子である。
私と同じく、黒い髪とコートをはためかせながら本日の主役が微笑む。
「フフフッ!ありがとう。肩の力が抜けたわ」
清々しいほどの笑顔だった。おめかしして大好きな女友達と出かける的な雰囲気だ。やけに落ち着いているのは修業の賜物だろう。
たった一ヶ月とはいえ、闇の世界でトップクラスの実力者であるガーナ王と老人の元で修業し、よく動くサンドバックこと私を毎日ボコボコにしていたのだ。冷静沈着を地で行く二人に教え込まれたお陰で、身体能力だけではなく冷静さに加え推理力や観察力、判断力も洗礼されている。
私は知っている。図書館に引きこもって必死に知識を蓄えるルビネルを。老人とガーナ王の教えを素直に受け入れ、それを実践しようと一日に数千回技をかけ、研きあげていたルビネルを。血ヘドをはきながらも何度でも立ち上がり私に立ち向かっていくルビネルを。そして、最後には私を打ち倒して、満足げな顔で私を見下ろしたルビネルを。
ルビネルの中にはどんなことがあろうとも対応出来るだけの基盤はもうすでに築かれている。だからこそ、ルビネルは死地へ向かうという異状であり得ない状況でも普段通りなのだ。
たとえ、寿命四日でも……。
「そろそろ予言の時間ですぜ」
白い花の円のうちひとつが発光し始めた。光はやがて、扉のような形に姿を変えた。周囲の気流が変化し、まるで換気扇に煙が引き込まれるかのように、光に向けて空気が流れていく。恐らく別空間に通じる穴のようなものだろう、と私たちは推測した。
「どうやら、あれが占い師の言う『腕』らしいな」
敵の能力に唯一対向することの出来るルビネルが先陣をきり、その後老人・ガーナと続き後方をセレアにカバーしてもらう。陣形を組み、『腕』に飛び込むチェックを済ます。
よくよく考えると頼りになることこの上のないメンバーだ。生粋の策士であり、どんなことがあろうとも決して油断なく隙なく勝利を狙っていく老人。冷徹非情でとても頭が切れる上、一度放つと千日は燃え続ける業火━━レヴァテインという秘技を持つガーナ王。戦闘能力はもとより、再生能力を持ち何度粉砕されようと甦るセレア。そして、鬼の怪力と再生能力、妖怪の呪詛という本来なら不可能な組み合わせの力を持つルビネル。
「ここで足踏みしていても仕方ない。行くぞ!」
ガーナ王が私たちを鼓舞するために叫んだ。
「さようなら、解剖鬼さん」
ルビネルはゆっくりと光の扉に入って行く。光に包まれた後ろ姿は神々しく、彼女がまるで女神か何かのように錯覚する。消え去る直前で振り向き、笑顔で私たちのことを見つめつつ向かっていった。
最後の最後に名前を呼ぶとは……泣かせてくれる。
私は……ここで帰りを待つ役だ。出口を確保しておくために最低一人は信頼できる誰かを残しておく必要がある。私は居残りを買って出た。もうすでに戦いの次元は私の実力を遥かに越えており足手まといになるからだ。小説や漫画ではよく『かませキャラ』というものがいるがまさにそれだろうな、と自嘲する。
私が居残り役に手を挙げたとき、唯一哀しげな顔をしてくれたな。
「帰りを待っているぞ、ルビネル」
彼女の背中に私は手を振る。
私は今までルビネルの主治医をしてきた。風邪があれば薬を処方したし、健康の相談があればのってあげた。ただ、それは決して彼女を戦地へ送り出すためのものではない。ルビネルの拳で誰かを傷つけさせるために行ったのでもない。彼女の健やかな成長と、希望に満ちた人生のために私が出来る最大限の手伝いだった。
ここまで来て、まだ私の心は揺れていた。後悔、その二文字が私の頭を支配して離れない。
……と、悲嘆にくれている私を三人の声がたちきった。
「なっ!そりゃあないですぜ!」
「これは、どうなっている?」
「扉がきえたじゃとぉ!」
開いた口がふさがらなかった。ルビネルがくぐった際に扉が消滅していたのだ。
「まずいな。ルビネルにつけた呪詛式発信器も沈黙している。転送の術を使える者は?」
ガーナ王が老人に言った。
「ダメです。さっきから試しているんですが、術の痕跡を探しても何もねぇ」
「ちょっ……ちょっと待てぇ!じゃあルビネルは単独で『奴』と戦うのか!?っていうかどうやって戻るんじゃあ?!」
ガーナが苦虫を噛み潰したような表情をしている。そんな様子を見かねて私は口を開いた。
「待とう。当初の予定通り、私がここでルビネルを待つ。ガーナと老人は出来ることをしてくれ。短期間とはいえ、私たちで育て上げ自信をもって送り出せると太鼓判を押したような奴だ。必ず帰ってくる。それに、私たちが信じなければ誰が彼女の力を信じてあげれるんだ」
「そうですぜ。悲観する前に出来ることをしておきましょう。俺はとりあえず部下たちに指示を出してきやす」
老人が顔をあげて部下の元へと歩いていく。
「そうだな。人の力というのは侮れん。それに、他者と協力していたとはいえ、私でも不死者に一太刀浴びせることができたのだ。彼女に出来ないはずがない。それにこのゲートは一方通行ではあるが、ルビネル側にこの場所に戻るための扉がある。その証拠に、門のあった場所からわずかばかりに気流が流れ出ている」
含み笑いを浮かべつつガーナも老人と共にこの場を立ち去る。
ドレスタニア図書館にこの現象についての記述があったのだ。そして何より、ガーナはルビネルのことを信じている。
「わらわは……どうすればいい?子供だからこういうとき何をすればいいのかわからん」
「好きにすればいい。気をまぎらわしてもいいし、ガーナ王や老人に協力してもいい」
「そなたは?」
「待ち続ける」
「そうか。お主が待つなら、わらわは迎えにいくととしよう」
セレアが空の彼方へ消えていった。ダメ元で世界中を探索するらしい。
一応、一週間程度の備蓄は用意してある。信じて待つしかない。
信じていれば奇跡はきっと起こるはずだ。
ほぼ丸腰でノア教本堂から逃げ出すときも、犯罪者は生きては出られぬとされるチュリグで逃亡していたときも、蛾の化け物に丸のみされたあげく意味不明な奴にとりつかれた時も、遥かに格上であるエアリスが群れをなして襲いかかってきた時も、私は常に自分を、そして仲間を信じてきた。そして、何度死にかけようともありとあらゆる手段を用いて生き残ってきた。
私はいかなる状況でも『必ず生き残る』と信じ続け、常に最大限の努力をしてきたからだ。生を諦めるなどという言葉は私には存在しない。
その執念を叩き込んだ彼女もまた、地を這いずり回ってでも生きて帰ってくるはずだ。
私は花畑を見渡した。空色と白色の花。
そうだ、帰ってきたら花飾りでもプレゼントしよう。私のアンダーグラウンドなら、植物を傷つけることなく花を摘むことが出来るはずだ。
私が花で作られたリングを手に持つ姿をみたら、ルビネルはどんな反応をするのだろうか。あまりのギャップに、あの笑顔をもう一度見せてくれるに違いない。
「頼んだぞ、ルビネル」
私は花畑で座り込み、ただひたすら祈っていた。
日が沈み、日が登り、そしてまた日が沈んだ。蝶がとまったり、イモリがコートの上を這いずり回ったりしたが、全てほっといた。手に花の冠を持ったまま、私は一切動かなかった。一日に数十分ほど風呂に入る時間を除き、私はずっとルビネルを待ち続けた。
老人になんと言われようと、目の前でセレアが泣きじゃくろうと、ガーナ王が悲壮めいた目で私を見つめようとも、動かなかった。
私は花の冠のかわりに握られた、紅色の手帳をボーッと見つめながら、何日も何日も待ち続けた。
そして、一ヶ月が過ぎたころ……私は全てを理解し、立ち上がった。
私は何度となく見直したページをもう一度開く。
『私は晴れ晴れとした気持ちです。まるで、一点の曇りもない晴天がどこ待ても続くよう。
私が帰らないことをどうか、赦してください。
ことをなし得なければ、愛する人の手によって、さらに多くの人がこの世を去ってしまいます。だから私は行くのです。
遺品は全て売ってお金にして父と母に渡して下さい。この先十年も二十年も親を悲しませるのは辛いですから。
書くことはまだまだありますが、思い付くことは感謝の言葉だけ。父、母、従姉、私を支えてくれた友達や先生、最後までついてくれた仲間。
私がみんなからもらったものに対して、月並みの感謝の言葉では到底言い表せないけれど━━ただ、ただ『ありがとう』。一言に尽きます。
ありがとう
ありがとう』
ルビネルの動脈血と脊髄液に心筋細胞が混じりあった液体。それが大量に付着し、固まった手帳を閉じた。
いつものことじゃないか。人は唐突に死ぬ。事故で病で自殺で。そして私は幾度となく自殺志願者を安楽死させてきた。
だが、何故だろうか。何でここまで胸が痛むのだろう。胸が引き裂け正気を失いそうだった。
気がついた時にはすでに、全身を震わせながら泣き叫んでいた。声帯が破壊され、喉から血を吹き出した。濁り拳からは血が滲み、手袋のなかに血だまりが出来る。
私は愚か者だった。逆らおうと思えばいくらでも逆らえたはずだ。彼女の思いを踏みにじり、全員から恨みや憎しみを買おうとも彼女を止めるべきだった。
私が彼女を冥界へと手引きしてしまったのだ。
後悔先に立たずというが……頭で理解しようが納得できん。とりあえず、動くんだ。
彼女の遺してくれたこのメモ帳には、奴の特徴や弱点が詳細に記述されている。ルビネルが私たちに進むべき道を示してくれたのだ。ルビネルの、誕生日後の自己犠牲を無駄にしてはいけない。
空色の花畑が目に焼き付いている。目を閉じてもあの花畑の幻影が浮かぶ。
紅色に花畑の空色が混ざりあい、混沌とした色調を呈するメモ帳を懐にしまい、私は一歩踏み出した。
ルビネルとセレアの死闘願い PFCSss9
ルビネルの捜索願い PFCSss
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ルビネルの手術願い PFCSss2
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ルビネルの協力願い PFCSss3
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ルビネルへの成功願い PFCSss4
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ルビネルの豪遊願い PFCSss5
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ルビネルの修行願い PFCSss6
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ルビネルの施行願い PFCSss7
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ルビネルの決闘願い PFCSss8
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Self sacrifice after birthday 9
私と老人そしてガーナはそれぞれワイバーンにまたがり、固唾を飲んで向かい合う二人を見守っている。
全員の視線の先には二人の少女。片や黒髪に黒コート。片や銀髪に白いワンピースに、ランドセル型の飛行ユニットが目をひく。
老人はカルマポリス呪詛式通信機を取り出した。私たちもそれに倣う。老人のつれてきた部下たちによって、二人の様子が脳内に直接送られてきた。視界内の物体を正確に追える妖怪と、その妖怪の視界を周囲の人間に共有する精霊の加護だ。
「二人とも、出来れば俺たちの視界の範囲で戦って下せぇ」
二人は頷くとそれぞれ臨戦態勢に入る。セレアの右腕が銀色の液体と化し、全く別の形に変形していく。最終的にセレアの右腕はガトリングガンに変形した。銃口から無数の弾丸が射出される。
実は、セレアの体は液体金属で出来ている。全身のうち三ヶ所を自在に変形出来るのだ。今のところ判明している変形出来る部位は、肩から先と太ももから先、そして背中だ。
ばらまかれる銃弾に対して、ルビネルは縦横無尽に空中を動き回り避け続ける。追撃に撃たれた二発のミサイルもペンで易々と迎撃した。
「手術前に比べて動きが明らかに良くなっている。動体視力や判断力もかなり上がっているようだ。しかも肉体が鬼と化しているお陰で呪詛も無理がきくらしいな」
冷静に分析するガーナの声が無線機から聞こえた。
ルビネルはさらにエアリスに接近すると、ボールペンを乱射する。セレアは避けようとするも、ボールペンの追尾能力が高くなかなかふりきれない。
「ほぉ、少しはやるようじゃの?」
セレアの背中の飛行ユニットが瞬時に巨大化した。セレアを優々と隠す程の大きさだ。三角形の飛行ユニットは、足元にバーナーを装着した黒い凧のように見える。
「あれは何ですかい?」
「セレアが高速飛行するときの形態だ。速度は速いが減速しにくいのと、曲がりにくいのが欠点だ。また、高速飛行中にダメージを受けると停止せざるを得ないという弱点もある。液体ではあるが金属だ。過冷却されると凍ってしまう」
ふむ、というガーナ王の声が割り込んできた。
「随分と詳しいのだな」
「半殺しにされたから研究した。本人と一緒にな」
セレアは体をのびーっとして、日向で横になっている猫のような姿勢になった。万歳をして顔を上に向けている。飛行ユニットが猛烈な業火を吹き出したかと思うと、セレアは私の視界から消えた。いつのまにか、飛行するルビネルの後ろをとり、ガトリングガンを連射している。
ルビネルはジェットコースターが如くシャトルループを決めてセレアの背後を取りに行く。負けじとセレアもルビネルの背後を狙い続け、両者きりもみしながら空中を高速移動する。だんだんとセレアとルビネルの距離が縮まり、ルビネルが追い詰められていく。
「まるで鳥獣の戦いですぜ。人型の妖怪がする戦い方じゃねぇ」
「ペンだけでよくぞここまで出来るものだ」
「片手だけしか使ってないな……。セレアは背中の飛行ユニット含め、全身のうち三部位を変形出来るはずだ」
とうとうセレアとルビネル、追うものと追われるものの関係が逆転した。急旋回でセレアの背後をとったルビネルは、無防備なセレアの背中にボールペンを投げ込んだ。
セレアは飛行形態を解くと、ガトリングガンを剣に変え、ボールペンを叩き落とす。
呪詛により、強度が増したボールペンは簡単には壊れない。弾かれたボールペンは完全に破壊されるまで、まるで磁石に引きつく金属のようにセレアに食らいついていく。
「右腕だけでペンの嵐を防ぐとは」
ガーナ王の言葉に私は頷く。実際にはガーナは他のワイバーンに乗っているので、彼から私は見えていないが。
「当然だ。セレアは片腕だけでソラやライスランドの先生、クライド、バトーの二刀流……他にも様々な達人たちとわたり合っている」
ボールペンだけでは埒があかないと考えたのか、とうとうルビネル本体がセレアに突撃した。セレアの頭上から回転しながら強烈な裏拳を叩き込む。
さすがのセレアも左手を使わざるを得なかった。肘を曲げて、ルビネルの裏拳を受け流した。ルビネルは攻撃の手を緩めず、受け流された反動を利用して、後ろ蹴り、回し蹴り、横蹴り、と流れるようにラッシュをかける。
必殺の一撃はコンクリートすら砕くとされる鬼の筋力。そして、それをマッスルスーツのように補助する全身に隠されたペン。
蹴る瞬間には足に仕込んだペンを操作し、蹴る向きに動かすことで攻撃の速度を加速させている。運動量は速さの二乗に比例するから、加速による影響は手数だけでなく、打撃の威力にも貢献している。クォルの大剣を受け止めるセレアの剣でも防ぐのは容易ではないはずだ。
「鬼の再生能力で呪詛の肉体への負担を無視出来るし、逆にペンを操る呪詛で打撃を強化できる。予定通りですぜ」
異なる二種族の力を同時に、それも高出力で、扱えるものなどこの世には殆ど存在しない。単純な戦闘力だけで言えば、かなり上位の存在になったはずだ。もっとも、その代償が大きすぎて釣り合っていないが。
「セレアの方もルビネルの動きを読み、力を受け流し最低限の労力で攻撃を防いでいるな。お前の戦況報告によれば、セレアは回復力にものを言わせて防御などせずに相手を叩きのめすとのことだったが……」
「数々の強敵と戦ったことで学習している。前と動きが同じなわけがない」
じりじりとセレアが押されていく。両手をフル活用してボールペンと拳を受けつつ、剣撃をくりだしているようだが、このラッシュはセレアにも厳しいらしい。前半とは売ってかわってルビネルのペースだ。
「ふむ。打撃の強さは鬼の中でもトップクラス。じゃが付け焼き刃の格闘技術に加えて、近接戦闘そのものの経験が浅いから生身で言えば、ソラや紫電といったプロには一歩及ばない。呪詛は汎用性が高い上にそれなりに強力じゃが、EATERやハサマといった規格外の強さではない。二種族の力を合わせて、ようやく強者に勝てるか程度の実力じゃ」
不穏な通信が入った後、セレアは両腕を採掘機についているドリルのような形に変形させ、ダメージ覚悟で突進した。なんとか避けたものの、突然の出来事にルビネルは一瞬無防備になった。その隙をつき、セレアは腕をさらにヒモのように変形させルビネルの体に巻き付ける。
そのまま、高速飛行しつつ前方から後方に向けて暴風の呪詛を発動。向かい風にルビネルを叩きつける。かまいたちがルビネルの背中を切り裂いていく。
そして止めと言わんばかりに、スクリュードライバーの流れに持ち込んだ。海面にルビネルが打ち付けられる。あの早さでは地面に叩きつけられるのと同じだ。普通の妖怪ならまず生きてはいないだろうが……
「……お主はよく頑張った。武芸者でもない、一般人であるお主が短期間で人としての限界を越えた。素晴らしいと思う。じゃがな、もうわかったじゃろう?お主がこの期間でいくら努力しようと一線を越えることは出来んのじゃ。あと二年、恵まれた師に従事すればよかったものを……」
「本当にそうかしら?」
海から水柱が建った。その頂上から人影が一直線にセレアヘ向かっていく。
ルビネルは拳を腰まで引いている。ためをつくり、必殺の一撃をセレアヘ食らわせるつもりだ。
突如として浮上したルビネルにセレアは少し驚いている様子だ。両腕を交差して防御の構えに移る。
ルビネルの拳はセレアのガードに阻まれてしまった。
「おしかったのぉ、ルビネル」
「いいえ?」
ルビネルの拳がセレアのガードをぶち抜き胸部を打った。その瞬間、無数のペンがセレアに突き刺さる。
腕を失いガードの出来ないセレアに対して、拳とペンの連打が襲いかかる。セレアの肉体がボロ雑巾のようにほつれて、原形を失っていく。
「及第点……じゃな」
ルビネルがラッシュを止めたときには、セレアは宙に浮かぶ銀色の水滴と化していた。
「ほう、あれをくらってまだ戦えるんですかい?」
老人の疑問にガーナ王の丁寧な解説が付け加えられた。
「鬼に伝わる技術であるパンプアップだ。全身の筋肉に血流を送り込むことで、一時的に筋肉を膨大させる技術。それによって衝撃への耐性が増加する。さらに背中に仕込んだペンを操作することで、海面に直撃する寸前で速度を弱めた上、受け身をとった。咄嗟にしてはなかなかの判断力だ」
ガーナ王の言葉に少しだけ安心した気がした。これなら、ルビネルは敵を倒して帰って来るかもしれない。
「相変わらずえげつない汎用性ですね。ボールペンの呪詛。まあ、セレアがどっからどう見ても本気を出していなかったのが気になりやすが、まあいいでしょう。俺は自信をもって彼女を推しますぜ」
老人も満足げに笑った。彼らの様子を見て、私はようやく覚悟を決めた。
「ルビネル、今の気分はどうだ?」
「……落ち着いてる。全ての感覚が研ぎ清まされて、全身が闘いに対して、適応しているような気がする。初めての感覚だわ。もう、体の動かしかたや特性も理解した。次はこんな無様な闘い方はしない」
「そうか……。お前たちがそう言うのなら……私も腹をくくってルビネルを送り出すことにしよう」
ルビネルの決闘願い PFCSss8
ルビネルの捜索願い PFCSss
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/28/091650
ルビネルの手術願い PFCSss2
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/31/172102
ルビネルの協力願い PFCSss3
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/01/083325
ルビネルへの成功願い PFCSss4
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/02/153244
ルビネルの豪遊願い PFCSss5
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/03/075127
ルビネルの修行願い PFCSss6
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/04/224102
ルビネルの施行願い PFCSss7
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/07/175035
⬆こちらのssの続きになります。
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Self sacrifice after birthday 8
私のコートは鬼の怪力を前提に作られているため、重い変わりに収納スペースがやたらと多い。けむりだまをはじめとする数十種類の武器やサバイバル道具、一週間は持つ携帯食料を持ち歩くことが出来る。
「黒いコート?」
「これしかいい服が用意出来なかった」
移動式のベッドから降り、服を着終えた彼女にコートを手渡す。数キロは軽くあるコートをいとも簡単に羽織ってしまった。
「軽く作られているのね」
「いいや。ルビネルの腕力が上がっただけだ」
明らかに学生とは思えない風貌だ。黒いコートに黒いブーツ、そして手袋。肉体は藍色と黒を中途半端に混ぜ合わせて、その上から二つの色をスパッタリングしたような不気味な様相を呈している。
もはやルビネルの種族であるアルビダではなく、呪詛の暴走を起こしたサターニアに近い。だが、鬼特有のしなやかな筋肉もあわせ持っている。
治療用の煙がまだ残っている部屋を、私たちは後にした。
「……お披露目といこうか」
私はマスクの中で半ば癖になってきた、ため息をつく。
私は今まで自分の意思で自分のやりたいように人を黄泉へと導いてきた。自殺を望み、生きることに苦しみを感じる人々の救済をしてきた。だが、今していることは単なる処刑だ。患者のあらゆる苦痛を取り除くのが私の仕事であって単なる殺人が仕事ではない。
私は胸から発せられる悲鳴を押し殺して、ルビネルを先導した。病院から出て、老人に借りた黒いワイバーンに乗り、騎手に指示するとあっという間にドレスタニア城前に降り立った。
門番が私たちを見るなり強ばった。黒コート二人というのは中々威圧感があるらしい。通行許可証を見せ、中へと進んでいく。
場内に入る直前で焦げ茶のスーツに身を包んだ老人が姿を現した。
「どうやら、成功したようですねぇ、旦那」
「ああ」
老人はルビネルの顔をまじまじと見つめる。老人の眼光だと恐ろしいことこの上ないが。
「予想以上に上手に仕上げられたようで」
「彼が頑張ってくれたお陰よ?」
ルビネルはにこりと笑い老人に答えた。なぜだ……なぜあんなにルビネルは落ち着いているんだ?たとえ戦いに勝って戻ってきたとしても、もはや普通の生活は送れないんだぞ?
老人は帽子を深々とかぶり直した。肩が時おり震えているように見えるのは気のせいだろうか。
老人にガーナ王の部屋の前まで案内された。私はおもむろにドアノブを捻る。
部屋には車イスに座っているにも関わらず、すさまじい威厳を放つ男がいた。鋭すぎる眼をルビネルに向ける。
「手術は……成功したのか?」
「はい」
ルビネルは深々と頭を下げる。ガーナ王はその一言を聞くと、威圧感を緩めた。
「そうか、まずはひと安心だな」
「お前のお陰だよ」
チッと大人げなく舌打ちをしたのを見て、ガーナ王は僅かに口をつり上げた。仕方のない奴め、とでも言いたげな顔だ。
「決戦まであと三日を切りやした。早いところ準備を進めましょう」
心なしか老人の声が上ずっているのも気のせいだろうか。
ガーナ王が私をぎろりと睨んだ。あまりの眼力に少し後ずさりしてしまった。
「念のため期限を確認しておくが、ルビネルの命はあと何日だ?」
「今日の午前手術が終了したから、あと六日ちょっとだ」
期限を聞かれると、もともと憂鬱な気分だったのがさらに落ち込む。微かな達成感もこの一言で容赦なく消え去る。私がしているのは真性の殺人行為だと改めて認識させられるのだ。
老人がうんうん、と頷いて前に出てきた。
「予定通りですねぇ。体ならしに丁度いい場所がありやす。ついてきてくだせぇ」
私たちは老人につれられ、外に止めてあった黒いワイバーンの群れに案内された。いつの間にか数が増えており、私たちの人数分に加えて、さらにボディーガードらしき人が乗った護衛用のものまで用意されていた。
私たちは騎手に気を使いつつワイバーンに乗り、海を越えてベリエラ半島へ向かうべく出発した。
ドレスタニア国を出るか否かの地点で、海を背景に銀色に光る何かが私たちに近づいてきた。
「うおぉぉぉい!わらわを忘れておるぞぉぉぉ!」
ドレス姿の少女が文字通り飛んできた。背中についている三角形の飛行ユニットが火を吹いている。
「お前はショコラと遊んでいるんじゃなかったのか?」
あんまりにも楽しそうに遊んでいるから、こっちなりに気を使ったつもりだったんだがな。いらん気遣いだったようだ。
ワイバーンに平然と追い付いたセレアはニカリと笑うと大声で答えた。
「ショコラは今エリーゼが探しておる。それまでの間の暇潰しじゃよ。さて、ルビネル。お主の実力はどの程度じゃ?わらわがサンドバックになってやろうぞ」
。
ルビネルがワイバーンから身を乗り出した。騎手が警告するが、それを無視して内ポケットからアトマイザーを取り出すと、中身を射出した。
「いいわ。今ここで相手をしてあげる」
海が島を飲み込むかのように、ドレスタニアが地平線に消えていく。それに対してベリエラ半島が前に見えてくる。海上で戦うつもりか?
ルビネルは一気にワイバーンから飛び上がった。そのまま空中を歩くかのように、エアリスに前進していく。
今までなら精々空を飛べるとしても、滑空が限界だったはずだ。ボールペンの方が体重に負けて折れてしまうからだ。
ルビネルの能力も強化されている。恐らく、ボールペンを単に動かすだけでなく強度をあげる能力も手に入れたのだ。
数メートル離れて向かい合う二人。
私たち一行はワイバーンを制止し、この派手なゲームを見守ることを選んだ。
黒ロンとクリーム(百合注意) PFCS交流ss
頭には大きな角。背中から生えている骨の翼。足まで伸びる長髪。そして花のように可愛らしい顔。しかし、顔は少々お疲れ気味で、翼も今に止まりそう。彼女の名前はリリィちゃん。
最近あまり養分補給をしていなかったため、空腹による目眩で地面に向かってフラフラと落ちていった。
一方、カルマポリスの公園でベンチに座って本を読む女学生。腰まで届く黒髪を風になびかせ優雅に読書中。
「あぁ、なるほど……こんなプレイもあるのね……」
と、突然の自分の座っている場所が暗くなり、反射的に空を見上げた。
「えっ……!?白?」
「どいて〜〜なの〜〜〜」
ベンチに座っているルビネルめがけて落下していくリリィちゃん。
「あああ?!」
椅子に座るルビネルの上に、リリィちゃんが収まった。
「うぐっ……やわらかい……。何で私の足に女の子が座っているの?」
動揺して放り投げた本が、お土産の入った箱の上に落ちた。
「あいたた、なの……」
もそもそとリリィちゃんが体を動かす。
「ん?柔らかなの??(さわさわ)」
リリィちゃんはルビネルの太ももをさわさわしている!
「あっ……やめっ!そこはっ……」
ルビネルが敏感な場所を優しく触れられ身悶えする。
仕方ないので受け入れることにした彼女は、リリィちゃんの頭を軽く撫ではじめた。
「……イッ……!!?……フゥ……ハァ……あなた、どうしたの?迷子?」
「あわわ!ごめんなさいなの!!落っこちちゃったの!!」
頭を撫でられて人の上に落ちたことに気がついたリリィちゃん、慌ててルビネルの上から退こうとする。
「リリィ、飛んでたの。お腹減って落っこちちゃったの」
「あっ、あらそうなの?ふふっ、気にしなくて大丈夫よ」
ルビネルはリリィの顔を一目見て好みだと感じた。ドレスが似合っていてまるで人形のよう。離れようとするリリィそのまま抱き寄せる。
「私はルビネルよ。丁度おやつを買ってきたところなの。一緒に食べる?」
お土産の入った箱を手で引き寄せる。
「お、重たくないの??退くの」
リリィちゃんは抱き寄せられてびっくりした様で少し申し訳なさそうにもぞもぞしている。
「お菓子なの?何だかいい匂いなの……」
甘いものには目がない様で目がキラキラしている。
「ふふっ、冗談よ」
ルビネルはいたずらっぽく笑うと、リリィちゃんを丁寧に下ろしてあげた。
「おかしをあげるっていうのは本当だけどね」
そして、箱の蓋を繊細な手つきで開くと、中から黄色い生地で作られたボールのようなものを取り出した。クリームの甘い香りが漂う。
「わぁ〜!かわいいの!!!」
リリィちゃんのキラキラ度が増した。
「カルマポリスで食べられてるお菓子よ。シュークリームって言うの。ほら、食べさせてあげるから、口を空けて?」
一口大に生地をちぎって、リリィちゃんの口にゆっくりと近づける。
「あーん」
リリィちゃんは言われた通りにおとなしく口を開けて待っている。まず上顎から舌にかけてよだれが糸を引いて、そのあとプツリと切れる。
「いい子ね……。はい、どうぞ?」
そっと舌の上に生地をのせ、リリィちゃんの顎の下に軽く触れる。
「どう?美味しい?」
「はむっ、むぐむぐ……甘〜いの!!美味しいの!!」
リリィちゃんはへにょんとろんと緩みきった顔で幸せそうに味わっている。
「美味しそうに食べるのね。見ている私も幸せだわ」
ルビネルは残りのシュークリームを口の前に差し出した。
「ふふふっ、もっと食べていいのよ?」
「ほんとなの?くれるの!?」
リリィちゃんはまたあーんと口を開けて待っている。
「中のクリームだけ味わうのも美味しいのよ?」
先程ちぎって穴が開いた部分をリリィちゃんの舌にひたりとつける。
「中身を嘗めてごらんなさい?こぼしてもいいから……」
「ん……(ぺろっ)……甘いの〜♪」
幸せそうなリリィちゃん。
ほっぺにクリームがついてしまったことには気がついていないようだ。
「あらあら…」
ルビネルはリリィちゃんのほっぺたについたクリームを人差し指で掬いとると、そのまま自分の口へと運んだ。
レロッと粘液質なクリームを堪能すると、満足げに顔を歪ませる。
「その調子で奥まで舐めとってから残ったクリームを吸いとるのよ。一滴のこさず、丁寧にね。食べきったら次のをあげるわ」
「ペロペロ、ちゅっ、もぐもぐ……」
夢中で食べるリリィちゃん。溢れるクリームを舐めとったり吸い取ったりするも、小さい口では受けとめきれずに手や頬がクリームでベタベタに汚れてしまっている。
「フッ…フッ…フッ!しっかりとお掃除しましょうね」
シュークリームを持つ手とは反対の方の手で、リリィちゃんの手首を軽く握ると、指についたクリームを丹念に舌で掃除しはじめた。
レロッ……
クチュッ……
ズルゥ………
ハァ……ハァ………
「んむっ!?」
突然指を舐められてびっくりするリリィちゃん。
「く、くすぐったいの……ひゃぁっ!?」
「ヌプッ……ヌチッ……ヌチャッ……ンッ……ンッ……」
リリィちゃんが不快に思わないよう気づかいつつ、舌と唇を使い、丹念に指をしごいていく。ルビネルとリリィの指の狭間から唾液による粘着質な音が漏れる。
「ヌポォ……どうしたの、食べないの?」
「な、なんか、変なの……」
リリィちゃんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
前髪の間からチラチラとルビネルの様子を伺う目がのぞいている。
「へぇ、結構素直なのね」
ルビネルはくぱぁっと大きく口を開くと、一旦口を指から離した。そして、ピンク色の舌でリリィちゃんの指の根本から先端にかけて、何度も撫でていく。
「感度も上々……」
「うう〜、もう綺麗なの。大丈夫なの……」
リリィちゃんはちょっと涙目だ。
腕を掴まれているので引っ込めるに引っ込められずにもぞもぞと居心地悪そうにしている。
ルビネルは少し申し訳無さそうに微笑むと、最後に口づけをしてから、リリィちゃんの手を解放した。
「ごめんなさい、やり過ぎちゃったわね」
そっとシュークリームをリリィちゃんに渡す。
「ううん、ありがと、なの」
シュークリームを受け取って俯いてしまったが、リリィちゃんの髪の毛の隙間から見える耳は赤く染まっている。
「フッ……フッ……フッ!今のアナタ、すごくかわいいわ……」
満面の笑みで身を震わすルビネル。シュークリームを一つ取ると皮をかじりとり、白いクリームを舌の上に流し込む。そのあと、皮を味わいつつ食した。
「……どうする?まだ続ける……?」
「むぐ……お腹いっぱいなの……」
リリィちゃんは二つ目のシュークリームを半分ほどしかたべられていない。
「もったいないの、……食べかけだけど、お姉さん食べるの?」
手に持っている食べかけシュークリームを差し出した。
「じゃあ、もらっちゃおうかな?」
ルビネルはシュークリームをつまみ上げると、恍惚とした表情でしゃぶりつく。皮を、クリームを、妖しい舌使いで蹂躙する。荒い息づかいでまるで何かにとりつかれたかのように。
シューの最後の一口を食べ終えると、今度は口の回りについた白いクリームを指でぬぐってはなめていく。
「濃くて……おいしい……」
ルビネルがシュークリームを食べる様子をリリィちゃんはちょっと頬を染めながら眺めている。
(何だかいけないものを見てるような気分なの……)
ルビネルは一かけも残さずシュークリームを完食した。
「このお菓子、とっても美味しかったの!ルビネルお姉さん、ありがとうなの!!」
リリィちゃんはニコッと可愛らしく笑った。
ルビネルはリリィちゃんに見せつけるかのように、指を口の中からヌポッと引き抜いた。
「フフフッ!こちらこそ、楽しい一時をありがとう」
無邪気な笑みを浮かべてリリィちゃんを見つめる。さっきまでの雰囲気が嘘のような変わりようだ。
「えへへ〜、ルビネルお姉さんはいい人なの。また会えるといいの!」
リリィちゃんはベンチから立ち上がる。
「食べ物くれてありがとなの、お礼、なの」
そういうとリリィちゃんはベンチに座っているルビネルの頬に軽く触れるだけのキスをしてフワリと飛び上がった。
「ひぇっ!あ……うん……こちらこそアリガト……。まっ……またアエルトいいわねぇ~」
ルビネルは震えること声で返事をした。顔を真っ赤にしてリリィに手を振る。なんだか動きがぎこちない。
「バイバイなの!!」
そういうとリリィちゃんは再び飛び去っていった。
ルビネルは謎の羞恥心に押し潰され、今にも泣きそうな顔でリリィちゃんを見守った。
PFCS企画ガチャ
昨日ようやく完成しました。名前を入力するとガチャの結果が出てきます!
ツイッターでも盛況でただただ感謝の一言です!沢山回していただきありがとうございます!
作り方。
①試しにリブロさんのキャラを入力してテストプレイ。
②自国のキャラを追加してテストプレイ。
③長田さんにもらった学園PFCSの資料から名前を引っ張りだし、足りない部分を各ブログのキャラまとめから探す。
④さらに足りないキャラをss保管庫から探しだし、ひな祭りこどもの日ネタをそれぞれのブログで検索。
こうしてバリエーション含め300キャラを揃えた力作ガチャとなっています。お陰で小説と絵が全く進んでおりません(汗)
かなりのマイナーキャラも網羅されていると思います。例えばネコミミソラとか……。
因みにレア度の設定は基本適当です。特に深い意味はありません。Rはキャラの別バージョンをざっくり割り当てており、そのなかでも私好みのをSRに。URはマイナーキャラかSRよりもレアッぽいキャラを勝手に選んで割り振っています。
それにしてもまさかここまで沢山キャラがいるとは思っていませんでした。これでキャラを堀当てて、少しでも企画交流の助けとなれば幸いです。
追加してほしいキャラ、レア度の変更、誤字脱字などがあれば気軽にご一報ください。出来る限り対応します♪