読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

幻煙の雛祭り ━前日━ ライスランド編 PFCSss7

 私たちは次にリーフリィの西へ飛んだ。


 目的地はライスランド国、レカー城塞内部の剣撃道場だ。



━━



 「腰をもっとまげろ。そうだ、その姿勢を保つんだ。おいそこボクちゃん!わきが開いているぜ!」

 クォルが鬼の子供の背中を軽く押し、胸をそらせ姿勢をよくさせつつ、妖怪の子供を同時にアドバイスしていた。さすがに兵士を束ねる男、口は達者でも教え方は一流だ。

 私たちはライスランドきっての剣士として名高い『先生』と呼ばれる人物をスカウトしに来ていた。
 年齢32才の男と判明している以外、経歴や本名の類いが全てがなぞに包まれている男で、何となく親近感がわいた。

 「こんにちは。私がこの剣術道場を開いている『先生』です。よろしく。あ……、あとこの道場は禁煙になっているので、煙草はどうか道場から出て吸ってください」
 「ドクターレウカド、ここは私に任せてくれ」
 
 煙菅を取り出したドクターレウカドは、すんごく申し訳無さそうな顔をしながら、道場の門から出ていった。あの顔……写真に撮りたいな。

 「ところで、今回のお誘いなんですが、私はお断りしたい」
 「なぜ?」
 「私は第一線を退いた身。迷惑を被るのがオチかと」

 先生は渋すぎる顔を左右に振った。シュッとした輪郭に太い眉毛、セミロングの黒髪、どうみても昔本で読んだブシとかサムライにしか見えない。
 私はそんな男を説得出来るのかと、不安に思いながら、口を開いた。

 「待て、欲しくないのか?月二回お菓子無料券!子供たちもきっと喜ぶぞ?ステファニーモルガンのお菓子なんてそうそう手にはいる物じゃない」
 「ですが……」
 「そうか、なら……」
 「ん?」
 「『自警団』の団長のクォル様に臨時でこの道場の子供たちに稽古してもらう、というのはどうだろう?絶対に貴重で有意義な体験になるぞ!ほら、今の生徒達の顔を見ろ。スゴく生き生きとしている」

 ……ソラを除いて、だが。
 さりげなく生徒たちに混じっているソラは、殺意に満ちているというか、動きが他の子と比べ物にならない。

 「そんなことが出来るんですか?」

 目を見開いて先生が食いついてきた。よぉし!

 「もちろん。見積もりの七割と諸々の諸経費を私が負担しよう。なぁクォル!」

 「よしよし上手いぞ!次の構えだ!……ん?え?ああ、うん。そうだなっ!ペストマスクの旦那!」
 
 あいつ今、聞いてなかったよな……。まあいいか。

 「それなら私も……」
 
 とうとう先生の方から交渉に乗ってきた。私は心のなかでガッツポーズをとると、だめ押しに言い放った。

 「今ならアンティノメルの方に格闘術の指導もつけてもらえる。たった一回!邪教徒から人質を助けるだけでだ!」
 「行きましょう。今すぐぶった切りましょう!すいません!クォルさん」



 え、ノリ軽くない?半分今の冗談だぞ?



 「少し撃ち合いませんか?」
 「ん?いいぜ!自警団一の俺様の実力とくと見やがれぃ!」
 水色の髪をゆらし、爽やかな笑顔でクォルが答えた。

 先生が静かに立ち上がり、クォルの間合いに入るギリギリの位置で腰の刀に手を置いた。眉間に深い皺をよせ、ただでさえ鋭い眼光をさらにギラギラとみなぎらせた。
 あんまりの変容にクォルも少し驚いているように見える。
 先生の周囲の塵が沸き上がり、何らかのエネルギーの流れを醸し出す。
 
 「さぁ!我が刀の錆となるがいい!!」
 
 まばたきした瞬間、既にクォルの間合いに先生が飛び込んでいた。目を開く時には刀を鞘に仕舞っている。すさまじい速度の居合いだ。
 クォルが防御したと見るや否や、すぐに構えを切り換え、斬撃の嵐を浴びせる。

 「どうした!うぬの力はその程度かっ!」
 「さすがにやるなぁ、オッサン!」

 剣と刀がぶつかり合い、激しい金属音が道場に響き渡る。っていうか撃ち合いに真剣を使うか?普通?

 「すいません、となりいいですか?」
 「ソラ、どうした?」
 「あの先生、明らかに殺気を放っていると思いませんか」
 「あの優しい先生だぞ。気のせいだ」
 「刀が赤く光ってません?」
 「光の屈折でそう見えているだけだろう」

 二人とも頑張れー、先生負けるなー、と子供達の無邪気な応援が聞こえる。そのなかで

 「ふんぬッ!ぬりゃぁ!塵と消え去れい!!我が刀は豪雷のごとし。触れたものは四散する!」

 と、殺伐とした言葉を先生が叫んでいる。クォルはクォルで、先生の太刀筋に平然とついてこれる辺り、色々とおかしい気もする。
 ソラは全く感情のこもっていない口調で続ける。

 「……口調も変わってません?」
 「気合いをいれたから地方の訛りが出たんじゃないか?」
 「撃ち合いにしては激しすぎません?」
 「バトーが言っていたが、クォルの撃ち合いは殺し合いにしか見えないらしいぞ?」
 「ですが……」

 私は何か言いたげなソラを制止した。
 
 「ライスランドでは『考えるな、感じろ』だ。目の前で起きている事象を素直に受け止めるんだ」
 「そうしないと、どうなるんですか?」
 「向こうで煙草を吸うのも忘れて、目の前の状況を理解しようとしているドクターレウカドと、あそこで口を半開きにして悶々と悩んでいるクライドみたいになる」
 
 それでもソラは納得がいかなそうだった。

 「よし、いいものを見せてあげよう。ここにアルコール綿がある。一応ソラもさわってみろ」
 「……確かにただのアルコール綿です」
 
 私はこれを丸めて、近くにあった瓦割り用の瓦に向かって投げた。すると、アルコール綿は瓦を貫通した後、何事もなかったかのように地面に転がった。

 「わかりました。考えるのをやめます」
 「そうだ。それでいい」