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フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

幻煙の雛祭り ━前日━ ドレスタニア編 PFCSss 8

 「メリッサー!どこですかー!メリッサー!」

 クライドはあきれて物も言えないようだった。
 余談だが彼は身分を隠しているが王族であり、その天賦の才能を余すことなく引き伸ばしてくれたのが、皇族ならではの剣や魔法の稽古であった。……という冗談のような噂を耳にしたことがある。

 「メリッサー!あ、旅のお方!メリッサを見かけませんでした?私と同じくらいの身長で、メイド服を着てて。大切な方々と待ち合わせをしておりまして、その場所をメリッサに話していたのですが……」
 「多分、その『大切な方々』って俺たちのような気がするんだけど」

 ドレスタニアで今目の前にいる、皇族服の頼り無さすぎる青年(眼鏡がズレ落ちそうになっている上、見るからにワタワタしている)と待ち合わせしていた。王宮の大広間で、だ。
 そして彼は時間ピッタリに『偶然』現れた。王宮内で恐らく迷子になっているのだろう。
 ……全力疾走していたのに汗ひとつかいてない。

 「アレッ?私が待ち合わせしていたのは鳥頭の方なのですが、もしや!あなたが正体なんですか?」
 「いや、俺はクライド。全くの別人だよ。多分君の言っている人は俺のとなりにいるよ……」

 ようやくこちらに気づいた。

 「おお!外国の方お久しぶりです!ショコラ・プラリネ・ドレスタニアですよ!覚えていますか」

 ショコラは私の手をいきなり握ってきて、ピョンピョン跳び跳ねた。
 まるで数年ぶりに親友とあったかのなような大袈裟な喜び方だ。因みに会うのはこれで二度目である。

 「皆さん有名人ばかりですねっ!」

 ショコラはこの場にいる一人ずつ、ショコラの両手で掴むと過剰なまでに腕を上下に振り回し、握手していく。

 ━━ドクターレウカドは作り笑顔をしようと顔をひきつらせながら、
 ━━ソラはいつもの無表情で、
 ━━クォルは負けず劣らずショコラの手を振り回し、
 ━━クライドは割と快く
 ━━バトーは無視されなかったことにほっとした様子で
 ━━ライスランドの先生は華麗に力を受け流しながら
 
 握手に応じた。

 「あれ?噂によるとライスランドのオムビスさんもゆで玉子を持参すると聞いたのですが?」

 なぜ、ゆで玉子を強調するのか全くわからなかったが

 「オムビスは作戦当日に合流する」

 と最小限に答えた。ショコラは少しにガッカリした様子だった。「温泉卵……」とぼそりと呟いた気もするがきっと気のせいだろう。

 「今回初めていらっしゃった方も多いようですね!我が国へようこそ!私が国の案内を……」

 私は慌ててショコラの言葉を遮る。

 「まっ…また今度にする。今日は予定がッ」

 ショコラは全くそれを気にせず、満面の笑みで言い切った。

 「案内をしますねッ!!」

 ショコラは並みのダンサーよりも軽快なステップで、見事に王宮の出口とは反対側に案内してきた。

 「すいません。出口はこちら側ですよ」

 ソラ、ナイスフォロー!

 「あれ、そうですか?おかしいですね。この城で地殻変動でもおきたのてしょうか?」

 バトーが不安な顔つきで私に聞いてきた。

 「ショコラさんに案内を頼むとそんなに大変なのか?まあ、今でも十分その片鱗は感じ取れるが……」
 「とりあえず、ショコラに国を案内させると、いつのまにどこかに消えて終わりだ。運が良ければ日付が変わる前に発見できる」
 「何でそんなことを知ってるんだ?」
 「一度それをやられて……その後王宮の資料を調べまくった」


 「あれ?ショコラさん、どこに消えたのでしょうか」
 青い胴着を身にまとった先生が首をかしげていた。
 私は静かに舌打ちをした。

 「遅かったか……」

 どこか遠くからショコラさんの絶望的な歌声が聴こえてきた。

 「♪明るい国だよドレスタニア~♪僕は王さまのショコラプラリネ~♪でも一番はガーナお兄様~♪強くてかっこいいガーナお兄様~♪」

 はっ吐き気がっ!
 私が少し揺らめいたのをドクターレウカドは見逃さなかった。

 「おいおい、大丈夫か?あんたは今日一日休みなしで、各国で戦いつつ、俺と一緒に検診までやっていたんだ。いつ疲れが出てもおかしくない。俺でよければ肩をかすぞ?」
 「ちっちがうんだドクターレウカド。あの歌声が単に苦手なだけだ」
 「苦手?」
 
 私はなんとか同業者の肩を借りて、体勢を保った。

 「みんな、手分けしてショコラさんを探すぞ。ここに王宮の見取り図がある。一人につき一枚ずつだ。一人一人探索するエリアを決めて、しらみ潰しで捜索する。メイドがいたらそいつにも手伝わせろ」
 
 私は自分の喉を片方の手で隠す。もう片方の手にもったメスを喉奥に突き刺し、グリグリした。その様子にこの場にいる全員の顔がひきつる。
 
 『これで私は通常の数倍の声量で話せるようになった!私はここで指示を出す!』

 「便利ですね、その能力」
 
 ソラがポツリと言った。

 『私の能力はメスで傷をつけずに体を開いて、手術して、閉じることが出来る。ただし、直接メスで触れなければいけないから、こういうグロテスクなことになる。とりあえず、全員捜索に移ろう!』

 今回は声帯に直接リーフリィ産の魔法薬を塗った。以前にショコラに使った小技だが……思い出したらまた吐き気がッ!

 このあと30分ほどかけて捜索が行われ、町中にて、手土産を沢山持ったショコラさんが発見された。その時の解剖鬼の指示は異様に的確な上、声に必死さがあらわれていたため、他のメンバーは以前に何があったかを察し、恐怖した。


━━

29.3.10 以下の部分を修正しました。

王宮内で恐らく迷子になっているのだろう、走り回った代償として大粒の汗が額から滴り落ちている。


補足:ショコラのスタミナは化け物クラスです。数百メートル走っても全く息切れしません。