フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

ひな祭り ー当日ー 救出成功!? PFCSss5

 「お前、クォルと戦ったとき、手加減していたか?」

 呆れながらバトーは言った。

 「人のサンドイッチなんて初めて見ました。美味しそうではないですね」

 ショコラは目の前に積み重なった人で出来た山を見て言った。少なくとも十人以上がその山に使われており、全員いい夢見ながら眠っている。
 先程倒した人相の悪いやつを廊下に放置、近寄った兵を背後から奇襲、人数が多ければ閃光弾を……と、戦っていき、警備を全員無力化したのである。

 「背後から襲い、血管に直接睡眠薬とは……。しかも動きに無駄がない。えげつないな」
 「切ったそばから縫合出来る能力だ。メスに睡眠薬を仕込んでおけば外傷なしで敵を眠らせられる。私は直接殴り合うのが得意じゃないんでね」
 「じゃあ、このノリで人質も救出しちゃいましょうか!」
 
 敵地のど真ん中でノリノリのショコラに私たち二人は深いため息をついた。何でこんな奴を連れてきてしまったんだろうか。
 彼の能力は確かに優秀だった。手に持つ剣で敵を突き刺せば一瞬にして相手は凍る。その上、異様なほどタフで多少の攻撃は軽やかなステップで全てかわしてしまう。
 その長所を一網打尽にする性格の恐ろしさである。私たちは今、人質のいるはずの部屋と全くの反対方向に走っている。ショコラが明後日の方向にスキップしていくからである。
 その上敵に気づかれる可能性があるので私たちは声を出せない。

 「ほら、つきましたよ」

 全く別の部屋でショコラは止まった。本堂南側、つまり出入り口付近である。少なくとも私ならこんなに人質を救出しやすい位置に隠さない。

 「はぁ、一応見ておくか」

 ガチャリと、扉を開けると案の定、部屋の中には誰も居なかった。ただ、礼拝用の銅像が立てられているだけである。壁画が何枚かある他には何もない。

 「あれ、違いましたかね?」

 そう言って、ショコラが銅像に手をかけた瞬間だった。ガチリと何かスイッチが起動する音が鳴り、床がスライドしたのである。バトーが足をとられ、ぶっ倒れそうになるのを、私が支える。

 「隠し……階段……」
 
 呆然とする私たちをよそに、ショコラは軽快なステップで階段を下って行った。




 そして、明らかに人質の声がする扉の前まで来てしまった。鉄製の扉は明らかに脱走対策だった。

 「まさか、ここを見つけるとはな。お主らやるのぉ」

 扉の前の踊り場で立ち塞がったのは、一人の少女である。修道服も着ているが、服装さえ違えば公園で走り回っていても、遜色のないほど幼かった。白すぎる肌はアルビノを彷彿とさせる。
 銀色の髪の毛を揺らして、酷く無機質な声で少女は言った。

 「まあ、わらわはお主らと戦う気はない。もはやこの宗教は終わりじゃ。幹部はお主らにほとんどやられたし、残る人員は我らが教王様が、お主らとは別に行動している奴を追い詰めるのに使ってしまっておるのじゃ」

 ショコラがなんの脈絡もなく叫んだ。

 「あっ、どこかであったと思ったら、この前の旅の方ですよね!ボール遊びしたりとか、チャンプルーを食べたりとか……」
 「おお!ショコラか!」
 
 私とバトーが茫然自失としているなか、ショコラと少女の会話はさらに弾む。少女の声も外見年齢相応の小鳥のような声に変わっていた。

 「あのときは楽しかったのぉ!」

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/04/07/155037

 「お名前最後に聞けなかったんですよね……」
 「あ、すまんのぉ!すっかり忘れておったわ。わらわの名前はセレア・エアリスじゃ」
 「ところで、何でこんなところに?」
 「センニューコーサクと言うやつじゃ。この宗教に潜り込んで裏でまあ、色々やっているんじゃよ。だからこの宗教そのものに何のしがらみもない。むしろお主らみたいに人質を助けに来る輩を待っておったぞ。わらわの力だけでは脱走を助けるのは無理があったからの」
 
 まるで公園で久しぶりに出会った友達と盛り上がるようなノリで今回の作戦が成功しつつあった。
 
 「ほら、通れ。罠を警戒しておるのはわかっている。そこの女とペストマスクが出入り口を確保しつつ、ショコラが人を先導すればよい」
 「俺は男なんだが」

 バトーの言葉に笑いつつ、壁に埋め込まれた10個のボタンをエアリスが押すと、鉄製の扉はあっさりと開いた。




 予想以上にあっさりと、目的のステファニー・モルガンの社長を確保できてしまった。様々な国から人質を仕入れていたらしく、この社長だけでなく、カルマポリス、ユメミッズなど、様々な国籍の十数人の人質がいた。その全てが妖怪であることから、よう済みになった彼らがその後にどうなるかが生々しく想像できた。

 「ふむ、囚われていたという割には思いの外、疲弊していないな」
 「あそこのお嬢ちゃんが待遇をよくしてくれたんだ。定期的に本とかも持ち込んできてくれたし、エアリス様々だよ」

 人質のうち、サムスールの少女が答えた。額にある第三の目は眼帯によって固くとじられている。
 サムサールの第三の瞳と目を合わせると、ある種の感情が流れ込んできて自分では制御できなくなる危険な代物だ。解剖しようとした際に誤って瞳を覗いてしまい、悲惨な目にあったことがある。

 「暇な時間にあたしらの悩みを聞いてくれたりとかね」
 「なるほど。君の名前は?」
 「エスヒナ。よろしく」

 私はエスヒナの様子を見て、人質のなかでももっとも元気だと判断した。社長の方もエスヒナを頼りにしているようで、彼女の人望が伺える。ならば……

 「そうか。エスヒナ、こちらはバトーとショコラ。二人とも氷の扱いに関しては一流だ。この二人と一緒に出口まで人質たちを先導してほしい。外には今頃アンティノメルのヒーローが待機している」

 ショコラが口を挟む。

 「えっ、あなたはどうするのですか?」
 「ソラ、クライド、先生の救援に向かう。エアリスの言葉が正しければ、敵の本隊と戦っている可能性がある!」



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 バトー、ソラ、クライドの三人は、確かに敵の幹部らしき鬼を倒した。だが、渡り廊下の前後を敵に囲まれるという最悪の状況にたたされた。
 鬼を倒したあと、目の前からの敵の増援が来たのだ。さらに後方からクライドの仕掛けた氷の床を突破した敵が追い付いたのである。

 「彼の役目はあくまで音を出すこと。仲間に敵がどこにいるのかを知らせるためのものです」




続く