チュリグと解剖鬼 PFCSss
○登場人物
解剖鬼:
黒いコートにペストマスクがトレードマーク。自殺志願者を楽にしてあげるのがお仕事。
グリム:
ハサマ王の側近。転送の能力を持つ。
クロマ:
同じく側近。百の魔物を操る。
ナツメ:
側近にして過激派。チュリグの法とハサマ王に逆らうものを殲滅する。
○チュリグ
犯罪の無い国。その真相とは……
○あらすじ:
旦那の犯罪がバレてチュリグにて追われる。
『あのペストマスク何処行ったんだ?』(文字通りの血眼)(老若男女)
「地上を行けば確実に住民に見つかる。屋根を伝おうが、ドラゴンで視察をする側近には無力。見つかったら空間の裂け目➡従者召喚の黄金コース。クソッ!とりあえず激臭玉で匂いを関知するクロマのペットはまいたが……それで何になる……」
ナツメ様「見つけた」(突然の火球)
閃光発音管➡不意打ちの流れでナツメを眠らせる。数分後には目覚めて追ってくるのをわかっている。
逃げ場はないが、煙玉を使って住民らの中に入り込み、側近の目をくらます。
_上空_
クロマ「それやられても格好でわかるんだよねー」
(煙幕はあと残りいくつある?ひぃ、ふぅ、みぃ、……ダメだ、心もとない。周囲を真っ黒にして目をくらましながら行けば、海に出られると思ったが……。仕方ない、裏路地に回るか。一般人による不意打ちが怖いが……)
片手に閃光弾を握りしめる。
過激派の一部が先回りしていた。
「やはり!」
閃光に辺りが包まれる。視界が回復しない間に過激派らの延髄にメスを突き刺しては昏倒させる。
が、今ので単なる閃光弾は使いきってしまった。閃光発音管は、王の従者への対策にとっておかなければならないから、よっぽどでなければ使えない。
……何てことだ。
過激派の一人が眠りに落ちる間際に火柱を天高くあげた。
「グワッ!」
防弾防火コートの前面が焦げる。コートの内部に仕込んであるプロテクターが露になる。
「化け物か、この島の住民は。確かにこれなら並の犯罪者は消されるか」
とりあえず、居場所がばれたので全力でこの場を離れる!
「……っ!?なんだこの化け物!」
マドスイムとエンカウント。(不定形なので物理攻撃無効)
「刺しても効かない。となれば……」
聴覚があれば爆竹が聞くはず。視覚があるなら煙玉でどうにかなるはず。それとも、弱点は匂いか……?
「爆臭弾(臭いの強さは在来線を止めるほど)」
それに対し、マドスイム何か吐瀉物っぽいものを噴射した。
(足の動きが鈍くなった!悪臭はマスクで問題ないし、回りの住民はまともに息できず、ほぼ無力と化しているが……動きが鈍くなるのはまずい!一般人ならともかく、側近クラスに悪臭が効くとは思えない。どうにかならないかっ!)
そこへ眠りから目覚めたナツメがやってきた。
「うッ……うごけぇ!やつの炎の威力からすれば直撃は……」
ハッ!
(自分の脚に解剖用のホルマリンをぶっかける!表面さえ何とかすれば足は動くはず!あとでPFで治療すれば)
「がああぁぁぁッ!」
ホルマリンによって解剖鬼の足の淡白が変性し、固まっていく。
足は動くようになったが、それよりも早く火球が私を襲った。
「ぁぁぁぁっ!背中が焼ける!」
コートの背中側が消し炭になる。中の防弾ベストにも焦げあとが生々しく残る。
「にっ、逃げなければ!」
煙玉を投げてその場しのぎをする。しかし、今の火炎で手持ちの煙玉、及び煙幕弾の大半も焼けてしまった。
「あっ、ああ!」
そんな私を嘲笑うかのように、血眼の国民達が前からやってきた。
「お前たちはいったいどうやって先回りしているんだ!」
煙玉もあと……一つ。アルファに効くチャフグレネードはチュリグでは役に立たない。不味い、装備が……底をつく!
住民は答えることはなく能力を一斉に使おうと構えた。
他に打つ手がない!これは使いたくなかったが、死ぬよりはマシだ!
最後の閃光発音管(スタングレネード)を起爆させる。目がくらまなかった相手をメスで眠らせて無力化、あとは爆臭弾でまともに動けなくする。
「くっ、これだけの相手を振り切ったのに全く安心できん」
海岸近くまでたどり着いた所で、ナツメの炎に包まれる。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」
頼みの綱の防弾コートは完全に焼けてしまった。防弾ベストの耐久性ももはや限界だ。
全身が燃えているのを感じながら上空を見上げる。
「あっ!あれは……」
こちらを見下ろしてる巨大な黒竜に乗ったクロマが遠目に見える。
(クロマに発見されればグリムが来る。グリムが来れば数十人の従者も一度に呼び出せる、そうなったら、確実に死ぬ)
かといって海にはこの世のものとは思えない、不気味な鮫が泳いでいる。
後ろからは火炎を放とうとするナツメ……。
煙玉、これが最後の一つ!
解剖鬼は海のなかに入り込み、自分を囮として鮫をおびき寄せる。そのうち一体に飛び乗り、脳ミソまでメスを貫通させ直接神経に命令を下す
『泳ぎ続けろ』
しかし、道中でチュリグ原産の巨大なオクトパスにサメごと捕まれる。煙玉を投げるもタコには全く効かず、そのまま丸のみにされてしまった。
タコは海流に乗って直ぐ様消えてしまった。
その数日後、アンティノメルで巨大なタコの死骸が海岸にうち上がる。そのタコを解剖した結果、なぜか胃腺(胃酸の出る場所)が全て塞がっていた。
鮫の死骸をはじめとした、様々なものが胃から出てきたがもっとも奇怪だったのは…
そのタコの胃と頭の中から大量の解剖用メスが発見されたことであった。
ペストマスク逃亡後、チュリグにて……
「行ったかー」
「行きましたね」
「燃やせなかった」
「今回はそれでいいんだよナツメちゃん」
「なんで?」
「死なない程度に後悔させる予定でしたので」
「ちょっとやりすぎちゃったけどね」
「そっか」