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フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

ひな祭り ー当日ー 外道の降臨の巻 PFCSss9

 「……そうだ。私は読書が好きなのだ。エアリスは本で得た知識より召喚した。私の力は魂の操作だ。人の魂を他人の体に移植できる能力。それを利用してさ迷える幼子の魂をひとつの体に召喚した」

 さっきまでとはうってちがい、今にも消え入りそうな、かすれた声がクロノクリスの口からもれる。当然だ。首を持ち上げているのだから。
 私の後ろではソラ、クライド、先生が増援を警戒しつつ、話を聞いている。

 「数えきれないほどの幼子の魂を融合させて?」
 「……そうだ」
 「それで?エアリスの力は?パラレルファクターは?」
 「それは今にわかる」

 礼拝堂の入り口からバトーとショコラが入ってきた。二人とも礼拝堂の光景(倒れている信者一人につき約80cc の血液が部屋に飛び散っている)に驚愕したが、すぐに私たちのもとに駆け寄ってきた。

 「大丈夫か!」
 「皆さん元気そうでよかった!……この光景のわりには」

 そして続いて、白いウェディングドレスを身にまとった少女が部屋に足を踏み入れる。

 「やはり裏切ったか。セレア!」
 「エアリスと呼べ!お前に名前を呼ばれる筋合いはない」
 「そうか。別にどうでもよいことだ。お前は私の所有物なのだから」

 クロノクリスはかれた声で呪文を唱え始めた。それを確認した私はすぐさま声帯をぶったぎった。私が自分に使ったときは声を大きくする魔法薬を喉に塗ったが、今回は容赦なく声帯を破壊した。
 
 ……はずだった。

 突如クロノクリスの体が重くなった。全身の筋肉の緊張がほどけ、四肢ががっくしと折れ曲がる。あり得ない方向に彼の間接が曲がっていき、地面に伏した。

 「バカな……死んでいる」

 あまりにもあっけない死に、この場にたっている六人は呆然と立ち尽くした。私はゆっくりと後ろを向いた。バトー、クライド、先生、ソラはあり得ないもの見たかのように驚愕の表情をしている。普段はおちゃらけているショコラですら目を見開いていた。
 それと同時に全員臨戦態勢に入る。

 そんななか、頭を抱え、苦悶の表情を浮かべる者がいた。

 「わらわの中に……なにかが入ってくる。止めろ!気持ち悪い!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」


 エアリスは白目を向き、地面に倒れ、背中をえびぞりにして痙攣し始めた。エアリスの体が痙攣によって跳ねる度に、銀色の飛沫が辺りに舞う!
 真っ先に声をかけたのは意外にもバトーだった。

 「エアリス!どうしたんだ!」

 「クロノクリスの奴がぁぁぁぁ!頭が痛い!痛いよぉ!心が引き裂ける!誰かわらわを……助けてぇ!」

 何が起きている?これはどういうことだ?

 「バトー、とりあえず離れろ!私が善処する!」

 危険だと判断した私はバトーを押し退けて、容赦なくエアリスにメスを突き立てようとした。
 しかし、メスが今まさにエアリスの胸を貫こうとした瞬間、彼女の痙攣が止まり、私の腕をつかんできた。私はもう片方の腕に握られていたメスでエアリスの腕をぶったぎると、礼拝堂の中央まで飛び退いた。着地したときに、固まった血液が地面から引き剥がされ、ペリペリという音が響いた。

 まるで幽霊か何かのようにゆらりとエアリスは立ち上がった。私が切ったはずの腕は、何事もなかったかのように身体と接着され、動いている。

 「フフフフ。やった……ついにやったぞ!我は!我は!我は!!!」

 見るからにエアリスの様子がおかしかった。顔や体を手でぺたぺたと触り、まるで新調した服の着心地を確かめるかのように、体を捻ったり、ジャンプしたりしている。

 「絶大な力!不死の肉体!魂を操る力!」

 エアリスは恍惚とした表情で、見えないはずの天を見上げて高笑いしていた。

 「セレア?」

 ショコラが不安げにエアリスの名前を呼びかけた。それに対しエアリスは嘲笑を交えて答えた。

 「我はセレアではない。セレアの肉体と精神を我―クロノクリスが乗っ取った。我が教団の人員にしていたことと逆だ。通常であれば妖怪の魂を信者に移植し新たな力を得させるのたが、我の場合は自らの魂をセレアに移植し、セレアの魂を乗っ取り融合した!」

 「勝手にあわれな子供の魂を呼び出して、用がなくなったら取り込んで……。お前はエアリス……いや、セレアの気持ちを考えたことはあるのか!」

 バトーの女々しいはずの顔が怒りにゆがみ、恐ろしい様相を呈していた。

 「ないな。もとより死者の意思なんぞに興味はない。そんなことよりこの体を見ろ!素晴らしいとは思わないか?ガキにはもったいない代物だぞぉ?」

 バサバサとウェディングドレスの裾を上下させた。明らかに挑発としか思えない……いや、挑発以下の下劣な何かだ。私が怒りでわなわなと握り拳を震わせていると、その怒りを体現したような大声がそばで発せられた。

 「この……クズ野郎が!」

 「止めろ!バトー!冷静さを失って勝てる相手じゃない。落ち着くんだ!」

 今にも氷の剣でエアリスに斬りかかろうとするバトーをクライドが制止した。

 が、それ以上の速度でエアリスに牙を向く者がいた。


 ……私だ。
 
 「ほう、貴様から来るか。かかってこい」

 「『アンダーグラ……』」

 メスを振りかぶった瞬間、目の前に見えたのはエアリスの拳だった。エアリスの小さな拳が真っ直ぐ腹部に吸い込まれていく。体を捻って受け流……あれっ……一瞬にしてエアリスが遠くに吹っ飛んだ……いや、私がぶっ飛ばされたのか?礼拝堂の入り口のドアをぶち抜き、本堂入り口付近まで滑った。

 「ごふぇッ!」

 息を吐ききってしまった。空気を求めて気管支がしどろもどろするが、肺が広がらないために息を吸うことができない。
 しかたないので、胸をぶっ叩いてなんとか呼吸を取り戻す。ついでに折れた肋骨もメスを差し込んで繋げておく。

 「えっと……よく飛びましたね。殴られて飛ばされた距離で世界記録とれそうですね」

 訳のわからないことをショコラが呟いた。

 「ンハッ………ゼェ……ゼェ。なっ何があったクライド!」

 「拳で殴られただけだ。本当にそれだけだった!これはいったいなんなんだ!」

 クライドの困惑した声が聞こえた。

 「私は先程までセレアの体だったから手加減しなければ……とか考えていました。本当は『エアリスの体を傷つけて本当にいいのか!』とか叫ぶつもりだったんですよ……。今のでやめましたが」

 遠くに見える先生もあきれているようだった。

 「はっはっは!どうだこの力は!我はお前たちを倒し、腐らないうちに肉体を補強し、魂を再び込め、エアリスと同じように使役する。世界でも有数の僕が一瞬にして出来上がるのだ。そうなればチュリグさえも制圧出きるだろう。我が支配する新世界の幕開けだ」

 こいつ!世界を敵にまわすつもりか!

 「ゴホッ……エアリスはクロノクリスの能力で無理矢理数多の魂を融合させ、肉体に縛り付けられているだけだ。倒せば肉体がどうであれ子供たちの魂は成仏するはず。容赦なくやれ!」

 私の呼び掛けに対してソラが前に出た。ゴーグルをつけ、赤いコートを羽織直し、ナイフを構える。

 「……俺がやります。バトーさん、サポートお願いします」

 「……ソラわかった。奴にどれだけ俺の剣が効くかわからないが……氷冷剣!」