フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

ひな祭り ー当日ー キーフード PFCSss12

 「これ、どうやって開けるんだろうな~」

 エスヒナは机にふして、ため息をついた。額のバンダナがずり落ちそうになって、慌てて直す。
 エアリスの去った後の部屋で、ずっと彼女のくれた箱と格闘していたのだった。

 「うーん。剣で切っても再生する。魔法を受けても傷つかない。俺様でもさすがにお手上げかなぁ」

 リーフリィ自警団の団長であるクォルも途方に暮れた顔で手のひらサイズの箱を見た。継ぎ目のないフォルム、目の装飾以外はなんの特徴もない、金属製の箱だった。
 かわいい女の子に良いところを見せたいクォルだったがお手上げだった。
 エスヒナは二度目のため息をつく。

 「重要な物が入っていると思うんだけどなぁ」

 エスヒナは正方形カドを床につけて、対角のカドを指で押さえ、くるくる回転させて遊び始めた。

 「それにしても、これどんな技術で作られてるんだ?剣で切ろうが液状になって再生する。一応目の装飾が再生の機能を持っているみたいだけど、肝心の装飾そのものも、再生しちゃうとなると……。エスヒナ、なんかエアリスがヒント言っていなかったか?」

 くるくる回転する箱。エスヒナはエアリスが何て言っていたかを思い出していた。




 『これ、どうやって開けるんだ?』

 『秘密じゃ。少なくともそなた以外には開けられん』




 私以外にはむり。なんだろう?暗号か何かか?うーん。目の装飾……



 「クォル。この部屋から出て、あたしがいいよって言うまで待ってくれない?試したいことがあるんだ」

 「おっ、何か気がついたか?」

 「うん。ただ、第三の目を開けるから……」

 「わかった。絶対に部屋には入らない」

 クォルはそそくさと部屋から出ていった。部屋に鍵をかけると、エスヒナは慎重に額につけていたバンダナを外した。そして、サムサールの特徴である第三の眼を開いた。
 エスヒナの種族であるサムスールは、額に第三の眼を持つ。その瞳を見たものは特定の感情に囚われてしまう。そして、額の持つ感情を、そのサムスール自身は持たない。エスヒナの瞳が持つ感情は……

 「クォル!やったぁ!開いたよ!あんたのアドバイスのお陰だ」

 額にバンダナをつけたエスヒナが、扉の外に待っているクォルに抱きついた。よほど箱を開けられたのが嬉しかったらしい。

 「うぉ!?やったなエスヒナ!」

 一方クォルは、棚からぼたもちを下さった天に感謝した。が、世話しなく働いているアンティノメルのヒーローらの冷たい視線を感じて、すぐにエスヒナから離れた。
 机の上に開きかけている箱がおいてある。

 「まさかこんな形であたしの力が役にたつとはなぁ。はじめてだよ、こんなの。今まで邪魔としか思ったことはなかった……」

 額のバンダナを撫でながらエスヒナが笑った。

 「あばたもえくぼだな。すごいと思うぜエスヒナ!それじゃあ早速中身を開けてみるか……ん?」

 《お主の手でショコラに渡すのじゃ♪♪》

 「メッセージが側面に出てきた?さっきまでこんなのなかったよね、クォル?」

 「俺様が護衛するから安心して?」

 「えっ!あたし行くの?!っていうかあんたがあたしの護衛!?」

 「えっ……まっ……まあ、この分だとエスヒナが渡さないと意味を成さないんだろうからなぁ。まあ、あっちにはバトーもクライドもいるし、その上俺が行くとしたら護衛にグレムがつく。心配すんな」
 
 クォルの心に浅い傷がついた。

 「まあ、後のことはともかく、とりあえず開けてみよっか」

 エスヒナはゆっくりと立方体の蓋を開けた。

 「えっ……」

 「これ、あれだよな。ドレスタニアの……」



 コンコンッ、と扉の叩く音がした。



 「どうぞ?」

 エスヒナはゆっくりと扉を開けた。

 まず最初に茶色いコートを身に纏った鬼が出てきた。

 「おはようございます。自警団団長クォルさん。私はアンティノメルの警察を統括するルーカスと申します」

 次に露出の多い民俗衣装に身を包んだ女性が入ってきた。見るからに活発そうである。

 「我は今回クレス王国、ダズラ王国連合部隊を率いるダズラ王国王女、スヴァ=ローグじゃ。出会えて高栄じゃ」

 クォルはあんまりの豪華メンバーにたじろいだ。

 「えっ……アンティノメルの警察のトップとダズラ王国の王女様!?」

 「ドレスタニアにて外交官を勤めさせて頂いておりますエリーゼです。ガーナ様の代理で参りました。以後お見知りおきを」
 
 「……レカー城親衛隊副隊長のオムビスと申す」

 エスヒナは自分の記憶を手繰り寄せるので精一杯だった。誰も彼もが学舎や新聞で見聞きしたような名前ばかりだったからだ。
 彼女の褐色の肌に冷や汗がだらだらと浮き上がる。

 「おっ……おう。俺はリーフリィ自警団団長のクォルだ。よろしくお願いするぜ!」

 ひきつりながら笑うクォルの横で、エスヒナは頭を下げまくっていた。

 スヴァ=ローグはニヤリと笑った。

 「ようやく人の目や法の網を潜り抜けてきた、ノア輪廻世界創造教を公的に潰せるチャンスが来たのじゃ。存分に叩き潰そうぞ!」


 なんでこんなところに来ちゃったんだろう……とエスヒナが後悔しはじめた時、ドレスタニアの外交官が机の上に置かれた箱に気がついた。

 「これ……ガーナチャンプルー、ですよね?」



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