読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

ひな祭り 最終回 お雛に幸あれ PFCSss15

『魂を操る力はわらわのものではない。クロノクリスのものじゃ』



○ドレスタニアより
・ショコラ
エリーゼ

nagatakatsukioekaki.hatenadiary.jp


・レウカド
hirtzia.hatenablog.com




『人工的に作られたPFも、クロノクリスの支配から解放され、消え去るであろう。もはや、エアリスの量産も不可能。この施設もあやつが死んだことで機能を停止した』




○アンティノメルより
・ソラ
・ルーカス
・シュン

poke-monn.hatenadiary.com





『もっとも、あやつの死ぬ間際に支配した、この体だけは維持出来たがの』





○リーフリィより
・クライド
・クォル
・バトー

yourin-chi.hatenablog.jp




『だが、わらわは政治に干渉する気はない。無闇に力を振り回せば世界に破滅と混沌をもたらす、というのが今回のでわかったからのぉ』




○ライスランドより
・先生
・オムビス

yaki295han.hatenadiary.jp




『これからは、怨念や定めに縛られず自由にすごそうと思う……』




○グランピレパより
・グレム
・殺す助
ritostyle.hatenablog.com




『お主らのような誇り高き者たちと出会えて本当によかった。そなたらと出会ったことはわらわの生涯の宝じゃ』




○クレスダズラより
・スヴァ=ローグ

cressdazzra.hatenadiary.jp



『ありがとう。わらわはそなたらに感謝しても感謝しきれぬ』



○キスビットより
・エスヒナ

www.kana-ri.com




『また出会う機会があれば、今度は仲間であることを切に願う』





○チュリグ(外伝)より
・ハサマ王

twitter.com




『では、さらばじゃ』




○エルドラン(自国)より
・解剖鬼
・セレア
・クロノクリス

thefool199485pf.hateblo.jp











……。









 視界がまだぼやけている。眼前に作業台があり、何者かが薬を煎じているところだった。彼の着る黒いコートが私に安らぎを与えてくれる。

 「起きたか。気分はどうだ?」
 「生き返るような気分だ。フッ……フッ……。アロマだけでもここまで効果があるとはな」

 視界がはっきりしてきた。作業台の綺麗な手見つつ、華奢な腕をたどっていくと、やがてドクターレウカドの得意気な顔が視界に入った。
 ここはドレスタニアの裏通りにあるカレイドスコープという医院。つまり、ドクターレウカドの診療所である。

 「……今思えば、全部夢のような気がする。ドクターレウカド、あれは全部夢だったのか?各国を回り、仲間を募り、邪宗を打ち倒し、世界の平和を守った。まるでファンタジーか何かだ」

 「夢じゃ困る」

 ドクターレウカドは薄暗い部屋のすみに置かれた、華やかな雛壇を親指で差した。そこだけ空間が切り取られたかのように華やいでいる。
 私は照れ隠しにペストマスクを掻いた。黒い手袋とマスクが擦れて皮同士の擦れる音が響く。
 フゥ、と煙を吐き出すとドクターレウカドはニヤリと笑った。

 「あんたから貰った報酬は有効活用させてもらう」

 「え?妹のレウトコリカに全部貢ぐって?」


 業務用のイスに座っているらしい、レウカドは一旦白い髪の毛をかきあげた。そして、顔をしかめて私のマスクの眼窩を覗く。メス顔に凛々しさが宿った。


 「どういう聞き間違えをしたらそうなるんだ!」

 「何も間違ったことは言ってないだろう?」


 私は全く臆せず穴だらけの防弾コートを整えながら答えた。
 ドクターレウカドはばつの悪い顔で舌打ちをした。さらに白く繊細な指で、煙菅を机の上にそっと置く。その丁寧な動作に少し見とれた。苛ついていても道具は大切に扱うようである。


 「昨晩といい、今日といいどれだけ俺に迷惑をかければ気が済むんだ……」

 「いいだろう?それ相応の対価は払っている。因みにその机の上の雛菓子もまともに買えば相当高価なものだぞ?」


 ドクターレウカドは作業台の上に手をつき、トントンと指で机を叩く。机に降り積もった灰が規則正しく宙に舞う。


 「このあと外せない予定があるんだ。早く帰ってくれ」

 「レウトコリカとのデート?」


 ドンッ!という音が治療室に響いた。慎ましく小さなイスに座っていた私は、転げ落ちそうになった。


 「あんたなぁ!」

 「キレた顔もかわいいぞ、ドクターレウカド。まずは手をおさめろ。そしてにこりと笑え」


 私が両手の手のひらをしたにして、待て待て、とドクターレウカドをなだめる。
 レウカドは手を引っ込めると、普段ではあり得ないくらい爽やかな笑顔を私に向けた。
 そして、ばっと顔を押さえて青ざめる。


 「お前……今何をした?」

 「『命令した』。それだけだ。もう一度命令する。『自然に笑え』」


 レウカドはしょうがない奴だな、と微笑を浮かべた。並のキャバ嬢を遥かに越える絶品の笑みである。


 「……ッ!なっなんだ!命令に逆らえないッ!」

 「『雛祭り』の呪いだ。今日一日女の命令に男は逆らえん。艶かしい貴方の顔、しかと拝見させてもらったぞ!クッ……クッ……クッ」


 レウカドははっとした目で私を見た。


 「シュン……クォル……バトー……クライド……先生……グレム……ショコラ……まっ、まさか!」

 「そうだ!全員男だ!もちろん全員に試したぞ?皆の百点満点の表情をくれた。因みに特におすすめなのがバトーの女の子ポーズ!」


 ダン!と黒い物体を私はコートの中から出した。またしても机の上にわずかに降り積もった灰が、舞い上がった。

 「カルマポリス製呪詛エネルギー式インスタントカメラ改良型!」

 「世界を救うことを口実にして、あんたなぁ!」

 「貴方が最後なんだ。これで私の今回のコレクションが完成する。頼む。とりを飾ってくれ」

 つっかかるドクターレウカドに、私は獲物を狙う蛇のように滑らかな動作で前のめりになった。レウカドの吐息がペストマスクの先端に当たって、音が内部に反響する。はぁ、はぁ、という音が堪らんッ!

 「観念しろ!そして、愛想よく私に撮らせろ!ポーズも指定するからな!逆らったらもっともぉっと酷いポーズをやらせてやる」

 「おかしいだろ!?蜂の巣にされて何でそのカメラだけ無事なんだ!?」


 「セレアとグレムに修復改良して貰った!」

 「グレムはわかるがセレアって誰だ?」

 「種族差別によって無念の死をとげた子供たちの魂の集合体。レギオンとも言う」

 「なんでそんな奴にカメラの改良を頼んだんだ!」

 すんごく慌てるドクターレウカドもいい!!

 「金属に精通してたからな」

 レウカドは私からカメラを取り上げると地面に叩きつけた。しかし、液状となり飛び散った挙げ句、数秒後には元通り復元した。

 「嘘……だろ……」

 「いいじゃないか。因みにエリーゼさんに言ったら、現像した写真と引き替えに、女性陣の撮影に協力してくれた。ほら、スヴァ様のサービスカットとエスヒナの決めポーズ。エリーゼさん本人の写真もあるぞ!」

 レウカドは体を仰け反り、あからさまに拒否の姿勢を見せた。動揺のあまりドタドタと足音をたてて後ずさるも、メス顔でそれをやられると嗜虐心しか沸かない。

 「ひっ……!この変態カメラマンがッ!!」

 「さぁ、おとなしくしろぉ……」

 「くっ、意思とは無関係に体が……服従のポーズを……うわぁぁぁぁぁ!」


 「……」


 「……」


 「……?」


 両手を顔にかざしてどうにかカメラの魔の手から逃れようとするポーズのまま、ドクターレウカドは止まっていた。今に襲いかかるシャッター音に怯えつつも、いつまでたっても聞こえてこない音に違和感を感じたらしい。指と指の隙間から私をチラ見している。
 私はペストマスクの先端を撫でながらフゥゥとため息をついた。


 「……無理矢理とっても虚しいだけだ。旅を通して数々のドクターレウカドの姿を見てきて、今、悟った。私が見たいのは雛祭りの呪いで無理矢理ポーズを取らされているドクターレウカドではない。日常のちょっとした仕草に宿るあの蠱惑的な魅力こそが好きなのだ。たまに見せる男らしさがいいのだ。今のレウカド先生の姿は私の求めているものと違う」

 「すまん、写真を撮らないのは嬉しいが、その言い分は、退く」

 全身を使って嫌悪感を露にしたドクターレウカドに私はイタズラっぽい笑みを浮かべる。もっとも、レウカド先生からは見えていないだろうが。

 「大丈夫。雛祭りの魔力で全部わすれるだろう」

 「余計に質が悪い……本当にもう、さっさと帰ってくれ……昨日の今日でもう俺は疲れた。得たいの知れない薬で体だけはなぜか元気だがな」

 「フフッ……もう満足だ。今度またお世話になるぞ」

 「二度とくるな」

 「はいはい」



 私は意気揚々と店を後にした。カレイドスコープと書かれた看板と、そこに吊り下げられている美しいサンキャッチャーを見上げつつ右手に曲がる。暗がりの路地を歩いていき、ボウフラの湧いた噴水を左に……しばらく歩いたところで、倒れた。自身の体から生暖かい液体が流れ出ていくのを感じた。

 「無理……しすぎたか……」

 能力でだましだまし維持していた体の容態が一気に悪化したのだ。全身の弾痕から血液が吹き出て、チアノーゼを引き起こした。視界がグルグルと回転しているような錯覚に陥る。脳みそに血液が行き届いていないために、麻痺しているのである。

 「ちっ……まずい、このままだと出血性ショックが……」

 みるみるうちに視界が赤く染め上げられていく。
 体質が特殊なために、どうせ一般の医療機関に診てもらおうが処置はできない。唯一私の体を治療できる私の能力は、残念なことに呪詛切れで使えない。オーバーロードしても、肉体を治療するような能力ではないので意味がない。

 「まずい、思考が……」

 だんだん頭も回らなくなってきた。辛い。めまい、吐き気、あと……なんだ?自分の様態すらわからなくなってきた。なんだ、すごく瞼が重い……。

 あれ……暗い……朝……なのに。

 真っ暗……


━・━



 「痩せ我慢にも、ほどがあるぞ?嘘つきやがって」

 意識を失った解剖鬼のとなりに人影が現れた。

 「……こんな所で死なれたら営業妨害だ。それに……あんたにはもっと貢いでもらわないとな」

 ゆっくりと解剖鬼のコートを、ベストを、上半身の下着を脱がせた。背骨の部分にある溝に手を突き刺し、両手で押し開くと扉が開くかのように肋骨と背骨が左右に動いた。肋骨のうちがわを黄色い脂肪と、青黒い血管、白い筋肉が埋め尽くしている。肋骨を避けたことで新たにからだの奥から現れた、白くて薄い胸膜らしきものを破る。その中に、子供の背中が見えた。

 「なんで、こんな奴がこいつの正体なんだろうな。……はぁ、お代は前払いしてるから今回はサービスだ。スーツも後で持ってくるから安心しろ」

 ドクターレウカドは不気味なペストマスクの怪人の体内から、年端もいかぬ少女を取り上げると、診療所に戻っていく。

 その背中を後押しするかのように、爽やかな風がドレスタニアの裏路地を吹き抜けていった。