ルビネルの豪遊願い PFCSss5
ルビネルの捜索願い PFCSss
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/28/091650
ルビネルの手術願い PFCSss2
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/31/172102
ルビネルの協力願い PFCSss3
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/01/083325
ルビネルへの成功願い PFCSss4
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/02/153244
⬆のssの続きです
私はドレスタニアの噴水で、煙管に火を灯す。煙が沸き立つ筒に口を着ける。気管支が煙によってあぶられゴホゴホと蒸せた。知り合いが旨そうに吸っているのを見て真似してみたが、やはり私には合わないらしい。
こんな奇妙なことをするのも過度のストレスから一瞬でも逃げたいからだった。
「ゴホッゴホッ……」
私は建物の影で蒸せつつ、ドレスタニアの広場にある噴水を覗いていた。いつも見ている裏通りの噴水とは違い、コケもボウフラも沸いていない澄んだ噴水だった。
そこに黒いワンピースに身を包んだ少女と、貴族服に身を包んだ女性が仲睦まじく腰かけている。手に持っているのはリンゴ飴だろうか。
「ゼェ……ヒュー……おっ収まった……」
彼女たちの脇に紙袋が置かれている。中からのぞいているのは洋服か?それともかわいいぬいぐるみか?
二人ともにこにこしながら話続けている。時々ほっぺに触れたり、足をさわりあったりと、何やら危なげな雰囲気を醸し出しているのは私の気のせいだろうか。
「煙草なんか吸うもんじゃないか……」
煙管をポケットにしまう。
彼女らがどこかに移動する。あの通りの先ということはカフェか……。
いっこうに会話の止まる気配がない。何であそこまで高速に絶え間なく話続けることが出来るのかわからない。憧れはするが。
「うんうん」と、激しく外交官の言葉にうなずく少女。得意気になって話しているのが、あのエリーゼさんだとは思えない。
エリーゼ外交官の言葉にはしゃいで、リンゴ飴を落とすルビネルはとても可愛らしい。
エリーゼ外交官が自然かつ優美な動作でルビネルの手をとった。カフェまで先導していく。エリーゼ外交官の顔がきらきら輝いて見える。これが外交官のシックスセンスか?そして、なぜそこで顔を赤らめるルビネル!
カフェに入ると、私から二人は見えなくなってしまった。
キャピキャピ話をし続ける二人を見守るのはとてもつらかった。本来であれば、あれがルビネルの姿なのだ。
霊安室で遺体と変わらぬ無表情で、淡々と自分の死に場所について語るのがルビネルだとは決して思わない。
私は白昼のドレスタニアでため息をついた。
「何でこんなことになった」
以前、ルビネルは奴と戦ったことがあったらしい。そして、十数人の仲間と共に瀕死まで追い込んだ、とも。私はその話を軽く流していたが、図書館で読んだ資料のなかに、それについての記述があった。
強大な力をもつ者を倒したとき、その『力』が放出され、近くにいた人にこびりつくことがあるらしい。その人は『力』に暴露され続けることになる。『力』に常にさらされた体はそのうち『力』に対して耐性を持つ。
ワクチン接種の原理に似ている。体は病気にかかるとその病原体に対しての抵抗力を作る。それを利用し、弱毒化した病原体を注射することで、実際に病気にかからなくても体の中でその病原体に対する免疫ができるのだ。
『奴の力』がこびりつき、あらかじめ暴露され続けた結果、ルビネルは奴の能力に対する耐性を獲得したのだ。だから、老人の部下たちと共に、奴と戦ったときも、彼女だけは生き残ることが出来た。
奴の能力は老人でもかなわなかったことから、非常に強力であることが予想される。それに耐性があるというのは、すさまじい武器だ。
力がこびりついても、耐性ができるにはその量や質、そして個人差が大きく関与する。ルビネルが奴への耐性を得たのは不幸中の不幸なのだ。
奴を打ち倒すにはルビネル以外、適任がいない。
「何度考えても同じか」
カフェからルビネルとエリーゼ外交官が出てきた。相変わらず仲睦まじく話している。
なぜあんな子がこんな使命を背負わなければいけないのだろうか。変われるのなら変わってやりたいが、それが出来ないのは私が一番よくわかっている。
私は本日何度目かのため息をついた。自分の無力さを呪う。まあいい、いつもと同じことだ。
私に出来ることをしよう。