フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

ルビネルの決闘願い PFCSss8

ルビネルの捜索願い PFCSss

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/28/091650

ルビネルの手術願い PFCSss2

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/31/172102

ルビネルの協力願い PFCSss3

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/01/083325

ルビネルへの成功願い PFCSss4

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/02/153244

ルビネルの豪遊願い PFCSss5

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/03/075127

ルビネルの修行願い PFCSss6
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/04/224102

ルビネルの施行願い PFCSss7

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/07/175035

こちらのssの続きになります。

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Self sacrifice after birthday 8


 私のコートは鬼の怪力を前提に作られているため、重い変わりに収納スペースがやたらと多い。けむりだまをはじめとする数十種類の武器やサバイバル道具、一週間は持つ携帯食料を持ち歩くことが出来る。

 「黒いコート?」

 「これしかいい服が用意出来なかった」

 移動式のベッドから降り、服を着終えた彼女にコートを手渡す。数キロは軽くあるコートをいとも簡単に羽織ってしまった。

 「軽く作られているのね」

 「いいや。ルビネルの腕力が上がっただけだ」

 明らかに学生とは思えない風貌だ。黒いコートに黒いブーツ、そして手袋。肉体は藍色と黒を中途半端に混ぜ合わせて、その上から二つの色をスパッタリングしたような不気味な様相を呈している。
 もはやルビネルの種族であるアルビダではなく、呪詛の暴走を起こしたサターニアに近い。だが、鬼特有のしなやかな筋肉もあわせ持っている。

 治療用の煙がまだ残っている部屋を、私たちは後にした。

 「……お披露目といこうか」

 私はマスクの中で半ば癖になってきた、ため息をつく。

 私は今まで自分の意思で自分のやりたいように人を黄泉へと導いてきた。自殺を望み、生きることに苦しみを感じる人々の救済をしてきた。だが、今していることは単なる処刑だ。患者のあらゆる苦痛を取り除くのが私の仕事であって単なる殺人が仕事ではない。

 私は胸から発せられる悲鳴を押し殺して、ルビネルを先導した。病院から出て、老人に借りた黒いワイバーンに乗り、騎手に指示するとあっという間にドレスタニア城前に降り立った。
 門番が私たちを見るなり強ばった。黒コート二人というのは中々威圧感があるらしい。通行許可証を見せ、中へと進んでいく。
 場内に入る直前で焦げ茶のスーツに身を包んだ老人が姿を現した。

 「どうやら、成功したようですねぇ、旦那」

 「ああ」

 老人はルビネルの顔をまじまじと見つめる。老人の眼光だと恐ろしいことこの上ないが。

 「予想以上に上手に仕上げられたようで」

 「彼が頑張ってくれたお陰よ?」

 ルビネルはにこりと笑い老人に答えた。なぜだ……なぜあんなにルビネルは落ち着いているんだ?たとえ戦いに勝って戻ってきたとしても、もはや普通の生活は送れないんだぞ?

 老人は帽子を深々とかぶり直した。肩が時おり震えているように見えるのは気のせいだろうか。
 老人にガーナ王の部屋の前まで案内された。私はおもむろにドアノブを捻る。

 部屋には車イスに座っているにも関わらず、すさまじい威厳を放つ男がいた。鋭すぎる眼をルビネルに向ける。

 「手術は……成功したのか?」

 「はい」

 ルビネルは深々と頭を下げる。ガーナ王はその一言を聞くと、威圧感を緩めた。

 「そうか、まずはひと安心だな」

 「お前のお陰だよ」

 チッと大人げなく舌打ちをしたのを見て、ガーナ王は僅かに口をつり上げた。仕方のない奴め、とでも言いたげな顔だ。

 「決戦まであと三日を切りやした。早いところ準備を進めましょう」

 心なしか老人の声が上ずっているのも気のせいだろうか。
 ガーナ王が私をぎろりと睨んだ。あまりの眼力に少し後ずさりしてしまった。

 「念のため期限を確認しておくが、ルビネルの命はあと何日だ?」

 「今日の午前手術が終了したから、あと六日ちょっとだ」

 期限を聞かれると、もともと憂鬱な気分だったのがさらに落ち込む。微かな達成感もこの一言で容赦なく消え去る。私がしているのは真性の殺人行為だと改めて認識させられるのだ。
 老人がうんうん、と頷いて前に出てきた。

 「予定通りですねぇ。体ならしに丁度いい場所がありやす。ついてきてくだせぇ」

 私たちは老人につれられ、外に止めてあった黒いワイバーンの群れに案内された。いつの間にか数が増えており、私たちの人数分に加えて、さらにボディーガードらしき人が乗った護衛用のものまで用意されていた。
 私たちは騎手に気を使いつつワイバーンに乗り、海を越えてベリエラ半島へ向かうべく出発した。



 ドレスタニア国を出るか否かの地点で、海を背景に銀色に光る何かが私たちに近づいてきた。

 「うおぉぉぉい!わらわを忘れておるぞぉぉぉ!」

 ドレス姿の少女が文字通り飛んできた。背中についている三角形の飛行ユニットが火を吹いている。

 「お前はショコラと遊んでいるんじゃなかったのか?」

 あんまりにも楽しそうに遊んでいるから、こっちなりに気を使ったつもりだったんだがな。いらん気遣いだったようだ。
 ワイバーンに平然と追い付いたセレアはニカリと笑うと大声で答えた。

 「ショコラは今エリーゼが探しておる。それまでの間の暇潰しじゃよ。さて、ルビネル。お主の実力はどの程度じゃ?わらわがサンドバックになってやろうぞ」

 ルビネルがワイバーンから身を乗り出した。騎手が警告するが、それを無視して内ポケットからアトマイザーを取り出すと、中身を射出した。

 「いいわ。今ここで相手をしてあげる」

 海が島を飲み込むかのように、ドレスタニアが地平線に消えていく。それに対してベリエラ半島が前に見えてくる。海上で戦うつもりか?

 ルビネルは一気にワイバーンから飛び上がった。そのまま空中を歩くかのように、エアリスに前進していく。

 今までなら精々空を飛べるとしても、滑空が限界だったはずだ。ボールペンの方が体重に負けて折れてしまうからだ。
 ルビネルの能力も強化されている。恐らく、ボールペンを単に動かすだけでなく強度をあげる能力も手に入れたのだ。
 数メートル離れて向かい合う二人。

 私たち一行はワイバーンを制止し、この派手なゲームを見守ることを選んだ。