フールのサブブログ

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夢見る機械 聖堂?教会 ss6

 地面スレスレを飛び、建物の内部に侵入する。
 玄関と思わしき部屋をすっ飛ばすと、やけに長い部屋に出た。部屋には車が二三台通れそうなほどの広い幅の部屋に赤いカーペットが敷かれており、その左右を高さ十メートルはあるステンドグラスが彩っている。ステンドグラスからは呪詛由来である暁色の光が漏れだしていた。


 「きれいじゃのぉ。こんな速度で飛んでいるからまるで万華鏡のようじゃ」

 「聖堂をモチーフにしているのか。それにしても長いな。この部屋、数キロはあるぞ」


 ある程度進んだところでセレアは一旦止まった。人が乗れそうなくらい巨大な蝶が何びきも飛んでいたからだ。七色に光っており不気味である。
 蝶の前で無数の火花が散る。弾が見えないバリアによって防がれたのだ。
 本来蜜を吸うための口がセレアに向いた。一瞬、何か線のようなものがセレアの頭と蝶の口を結ぶ。
 ワンテンポ遅れて、セレアの頭が赤く光り湯気が立ち上った。
 さらに赤いカーペットの上に続々と黒い影が集結する。セレアは蝶の光線を交わしつつ、黒い影をチラ見する。黒く見えたのは防護服であった。手には剣や槍をはじめとする様々な武器が握られている。
 遠くから機械的で無機質な女性の声が聞こえてきた。


 『ワースシンボル防衛システム......レベル1......レベル3......移行......侵入者......排除」


 セレアは蝶の口と導線を合わせないように左右に動いて敵を撹乱。不規則な動きで重装備の兵士たちに突撃した。
 しゃがんで兵士の又をくぐり抜け、銃撃を隣の兵士を盾にして防ぎ、反復横飛びの要領で槍をかわす。彼女の後ろで切断されたアンドロイドの四肢が弧を描く。
 舞うように戦うセレアをステンドグラスが七色に染める。破壊されたアンドロイドの欠片が空中でキラキラと輝き、彼女をさらに彩った。
 そして、数分後ようやく敵の猛攻をくぐり抜けた。


 「わかっていてもアルファ殺しは気が引けるのぉ。人を殺している気分になる」

 「その気持ちを忘れるなよ。忘れなければ、悪夢が覚めれば普通の女の子に戻れる。君は兵器なんかじゃない」

 「ありがとう。タニカワ」

 「ハハハッ。先生を呼び捨てにするんじゃない。......もうすぐ最深部だ。この厄介な課題をさっさと終わらせよう」


 程なくして部屋の突き当たりにたどり着いた。赤いカーペットが途切れその奥が半円形の行き止まりになっていた。床は大理石と思わしきタイルで出来ており、非常に見映えがいい。
 そして、前方180度をステンドグラスに囲まれた空間の中央に巨大な正八面体の結晶が浮かんでいる。ステンドグラスの光を反射して七色に輝くそれは、凄まじい量の呪詛が放出されているらしく、周囲の光が歪み、陽炎ができていた。
 カルマポリスを支える最大のエネルギー原であるワースシンボル。それが今、セレアの目の前で浮いているのだ。
 セレアは後ろを振り返る。敵はもう追ってきてはいなかった。
 なんとも言えない達成感を噛み締めながら、セレアは解呪用の札を取り出す。これをワースシンボルにかざせば全てが終わる。


 「こんな所でなければ」

 「ん?」

 「『セレア、綺麗だぞ』と、誉めるんだけどな……」


 セレアは施設に入って以来初めて表情を緩めた。


 「……やっぱり、君は笑顔の方が似合うな」


 その言葉を聞いたセレアの視界が突如ブラックアウト。その後、セレアにとっては嫌と言うほど聞きなれた声が聞こえてきた。


 『着弾確認。エアリス1 交戦する』
 『エアリス2 追撃に向かう』
 『エアリス3 援護する』


 セレアと同じ声、同じ見た目をした兵器の姿がセレアの目に浮かんだ。最悪の予感が当たってしまったのだ。
 タニカワ教授の息を飲む音が雑音に混じる。


 『敵……戦闘能力……分析完了……推測……旧式エアリス……危険度……最高レベル……ワースシンボル防衛システム……レベル3……レベル5……移行』