幻煙の雛祭り ━前日━ リーフリィ編 PFCSss6
様々な雑貨が売られている店にソラとレウカドは入っていた。回りを見渡すだけで、杖やマント、指輪などなど、実に様々な物が売られている。
そんな中、レウカドはバトーという男と軽い自己紹介をした後に物色していた。
「なるほど、このマントだと雨が防げるのか。便利だな」
「こっちはデザインがいい。ブランド品で女性にも人気だ」
レウカドはどちらかと言えば婦人が着そうな高級感溢れるブラウンのマントを受け取った。
「これのは魔法はかかっていないのか?」
「ああ。どちらかと言えば生地の方に力をいれているメーカーだからな。軽くて使いやすい上に長持ちする。値段は張るが……」
「そうか。因みにこれは?」
レウカドは細く繊細な指でショーケースの中にあるルビーの装飾の施されたネックレスを指し示した。
「これは『魔法具』のネックレスだ。『要』はこの宝石だろう」
「『魔法具』か。実際に見るのは初めてだ。俺みたいな魔法が使えないやつでも使えるのか?」
「いや、魔法使いが身に付けると魔力が高まるってものだからな。魔法が使えないひとにはそんなに恩恵はないんだ。因みにシンボルを介しての魔法と微妙に扱いが違うから気をつけたほうがいいぞ」
「そうか、となるとデザイン重視でいった方が良さそうだな。どれがあいつに似合うか……」
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ソラはショーケースの中のものには目もくれず、クライドに話しかけていた。
「……なるほど。で、俺たちに声をかけたと」
「はい。ノア輪廻世界創造教はエルドラン国を支配するほどの強大な組織です。それを強襲するとなるとあなた方『自警団』の力が必要です」
クライドは赤い瞳をキラリと光らせた。
「アンティノメルと自警団の連合部隊か。手紙で読んでいたとはいえ、実際に聞くと驚きだね」
「ええ。さらにドレスタニア、ライスランドにも救援要請を出しています」
さすがにこれには驚きを隠せないようだった。
「なっ……、本当にそこまでの兵力が必要なのかい?本来であればアンティノメルだけでも制圧自体は簡単にできるはずだよ」
ソラは静かに首を上下に動かした。
「敵はパラレルファクターという能力者らしいのです。そのなかで人質を安全に救出するためには、敵に私たちが侵入したことがばれる前に、人質を見つけ出し、脱出しなければなりません。それには少数精鋭の部隊が必要です」
「単騎でも優秀な自警団を味方につけたいと」
クライドはしばらく顎に人差し指を当てて思案した。
「俺たち二人であれば喜んで協力するよ。クォルもまあ、来てくれると思う。ただ、自警団そのものから大量の兵を出すのは難しいかもしれない。協力したいのはやまやま何だけど、国内の治安維持とかで手一杯なんだ」
「ご協力、感謝します。協力してもらう上で、至らぬ点もあるかとは思いますがご了承を」
うやうやしくソラは頭を下げた。それにたいしてクライドは最初から持っていた疑問をぶつけた。
「ところで、君は何歳のかな?」
「17才です」
「君ほど良くできた子はそうそういない。……クォルなんて26才であれだからな」
無表情の顔に一瞬陰りが見えたのをクライドは見逃さなかった。
突然店に何者かの大声が響いた。
「クライドちゃん、バトーちゃんいるかい?戻ったぜ?」
「ソラ、ドクターレウカド、出掛ける準備だ!」