ひな祭り ー当日ー 最後の砦 PFCSss14
戦いの音を背後にクォルとエスヒナ・解剖鬼を乗せたイナゴ豚はショコラの後を追って行った。
膨大な量の本がひしめき合う図書室に響く剣のぶつかり合う音、銃声。
『どうした?避けてみろ。ショコラ!貴様は剣で我を刺さなければ能力が発動しない。地面に刺して、地面そのものを凍らせ、その上に乗っている者を凍らせるということも出来るようだが、こうして浮いている限りは届かない。詰みだよ、詰み。神の力の前には何者も無力なのだ』
白いウェディングドレスに赤色の斑点が残る少女。しかし、その顔は少女に見会わぬ険しい表情だった。
それに対して、ショコラは剣を構えていた。青い貴族服に身を包み、ずり落ちそうになる王冠と眼鏡を整えて、あどけない顔に余裕の笑みを浮かべる。
過剰なステップの神業的足さばきでエアリスのガトリングガンを避ける。
『貴様……?何者だ?我の知っているショコラは容赦なく敵に刃を振るうような者ではない。身を危険にさらし敵に情をかける愚か者。それが我の知っているショコラだ』
「……僕は剣を重ねればわかります。あなたの中にセレアはいない。クロノクリスであったときのほんのわずかな感情も今では感じられない。あなたはただの量産機です。命も魂も感じられない、意志と力だけで動く人形です。そんな今のあなたに情などかける必要はない」
『シックスセンス(第六感)か。だが、それだけでは貴様の能力は説明できん。剣から動作を読み取ろうとしても、考えを読めるのはぶつかり合うその瞬間だけだ。次の攻撃を予測できても、全ての攻撃をかわすなどということは出来ないはず。なぜだ……なぜかわせる?』
エアリスは腕を槍に変形させ、ショコラを串刺しにしようとする。だが、無駄があり、最適化もされていないはずのショコラの動きを、なぜかとらえることが出来ない。
剣、ナイフ、ガトリングガン、ミサイル、かまいたち……何をしようがショコラはバレリーナのような奇怪なステップで避けてしまう。
『ちっ、あともう一機いれば何とかなったものを。かくなるうえ……』
「俺様登場ぉぉぉぉぉおおお!!」
突然の大声と共に、廊下の奥からイナゴ豚に乗った剣士が姿を現した!
ショコラに気をとられていたエアリスは反応することが出来なかった。イナゴ豚から飛び降りたクォルがエアリスの胴体をぶったぎる。
地面に落ちさえすればエアリスはショコラの射程内だ。ショコラが地面に剣を突き刺すと、剣から白い蛇が這い出るかのように地面が凍っていき、エアリスに触れた瞬間、彼女を凍結させた。
「クォルさん、ありがとうございます!」
「ショコラ、お前は俺様が乗ってきたイナゴ豚に乗って、エスヒナと解剖鬼と一緒に最深部を目指せ。俺様はここに残る」
「危険すぎます!相手はその道の達人三人でようやく渡り合える強さです」
クォルは自分を親指で指すと、大声で笑った。
「大丈夫だ。死なない程度に頑張るから。クライドちゃんやバトーちゃんの敵も打たなきゃいけないしな。……それに、ここで誰か囮にならなきゃ先進めないだろ」
クォルはそういうとエアリスを剣で切り裂いた。
「でも……」
クォルはニヤリと顔を歪め、ショコラを睨んだ。決死の覚悟をみたショコラは折れるしかなかった。
「わかりました。健闘を……祈ります」
ショコラがイナゴ豚に乗るとエスヒナと、それにしがみついている解剖鬼を乗せたイナゴ豚が後ろからやって来た。
「クォル!なんであんたも来ないの」
「女の子にかっこいいところを見せるためだッ!行け!」
ショコラはメスを解剖鬼に向かって投げた。メスは解剖鬼がキャッチするまでもなく、首もとに突き刺さると、そのままめり込んで行った。
その瞬間、死んだように動かなかった解剖鬼が、生き返ったかのように声を発した。あのメスは解剖鬼のために、ソラのエネルギーをちゃっかり拝借していたらしい。随分と主人思いのPFのようだ。
「行くぞ!ショコラ、エスヒナ」