ルビネルの手術願い PFCSss2
ルビネルの捜索願い PFCSss
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/28/091650
⬆こちらのssの続きになります。
⬆こちらのssを最後までお読み頂くと、より楽しめます。
━━━━
Self sacrifice after birthday 2
私は心地よいベッドの上で目覚めた。下着を含め、全ての物が剥ぎ取られていた。種も仕掛けもないパンツとガウン、それが今の私の持ち物の全てだ。ただ、二メートルの身長を持つ自分の体は無事だった。
「旦那の体、不気味で仕方がなかったですぜ?」
「観賞用ではないからな」
私は自分の体を見て自重げに笑う
「さて、強化手術に必要な物を教えてくださいませんかね?右腎臓の変わりに入っていた閃光爆音菅も丁寧に抜かせて頂やしたぜ?」
私は右腰のあたりをさすってから、舌打ちをする。
「わかったもう抵抗はしない。ただ、手術に必要な物品は私の研究室にある。取りに行きたい」
「じゃあ、ここにある最低限の衣類だけ着てくだせぇ」
私は布製の服だけ身に付けて、数十人の見張り役と共にエルドラン国のとある墓地へと向かった。私の地下研究所のうち一つは納骨堂に直結しており、墓から入る。
私は老人の監視している中、墓を暴き、薬品保管庫へと続く、隠し階段を降りた。薬品棚から必要最低限の薬品を入手する。
私がその後つれられたのは老人が管轄するエリアにある病院だった。一般市民にまぎれ、当然のように受け付けを通り抜けると、霊安室に連れられた。
そこに幽霊が如くルビネルがたたずんでいた。白いワンピースはこの場所にお似合いだが……。
「用意はできたの?ドクター」
「ああ」
こうなっては、老人に逆らっても無駄なので正直に説明をする。
「鬼に存在する強化遺伝子を直接移植する。ただ、適正が合うかどうかは移植してみなければわからない。成功率は六割といったところだろう」
ルビネルは一切の表情を捨て去ったような無表情でぼそりと言った
「それで、成功すれば私は強くなれるの?」
「ああ。鬼遺伝子はどれだけの量の遺伝情報を持つかによって、その発現の度合いが変わってくる。もっともたる例が紫電海賊団の忌刃だ。恐ろしい怪力と力の持ち主だろう?あれは鬼遺伝子が強く発現したために、肉体が鬼から見ても異質とも言うべきほど強化された結果だ」
私は霊安室に横たわるご遺体をちらりと見ると、大きくため息をついた。
「ただし、肉体強化してから一週間のピークの後、肉体が力に耐えられず自己融解する。つまりお前の言う『敵』と戦い初めてから、一週間以内に私の下へ戻り、再手術をしなければ死ぬ」
老人は私の肩に手を置くと冷徹にいい放った。
「じゃあ、旦那の気持ちが変わらないうちに、こちらにサインを」
私は思わず首を左右に振った。
「お前に情けはないのか、老人!」
「そりゃ、……嫌ですよ。胸が痛む。止めたい気持ちもある。将来有望な奴を死ににいかせるなんざ、正気の沙汰じゃねぇ。でも、無理なんですよ。俺たちはお嬢にかけるしかないんです」
老人は茶色い帽子を深くかぶり直した
「私の戦う相手は少なくとも生物兵器と同等かそれ以上の存在なの」
ルビネルは無表情の中に一点の陰りを見せた。どうやら『相手』に対して個人的な因縁があるらしい。
「ルビネルは奴に呼び掛けて唯一反応を見せた存在なんです。そのとき、ルビネルのペンがほんのちょっぴりだが、奴に怪我をおわせた」
私は今日何度目かのため息をついた。
「それだけで、それだけで……ルビネルにかけるのか?」
「遭遇したとされる俺の部下は全滅していやす。強さに関係なくですぜ?不意打ちされた訳でもない。真っ正面から好条件でうちの精鋭がそいつに挑み、完膚なきまでにやられた」
苦虫を噛んだような表情をした。よほど悲惨なやられ方をしたらしい。
「うちらにはもはやどうすることもできやせん。ここまで来ると天災と同レベル、出会ったら最後です。そんな理不尽を許してはおけねぇ」
ルビネルはせがむように私にすり寄ってきた。
「お願い。私は止めなければならないの。あれ以上酷いことをさせたくない」
私はルビネルの両肩を持つと怒鳴った。
「なぜ、命を投げ捨てようとする!成功率は六割だと言ったはずだ。成功しても死ぬ可能性の方が高いということは充分わかっただろう。何より、完璧に手術が成功したとしても、老人の手におえないような奴に勝てるとは思えん!」
「無謀だと言うことはわかってる。でも、私はいかなくちゃいけない。これからあの人によって、もっと沢山の人が殺されてしまう」
「なぜだ!なぜそんなに『あの人』に拘る!」
「それは……」
ルビネルは大きく息を吸い込むと、目一杯の声量で私に思いをぶちまけた。
この場所で、この状況で、ルビネルが愛する人への切実な思いを告白してきた時の衝撃は想像を絶するものだった。
私は脳天を殴られたかのような強いショックを受けた。石化の魔術を受けたかのように全身が硬直してしまった。
その言葉に対する返答を私は持っていなかった。
死んだ恋人の体を手術し、身に纏うという狂気とも言える手術を行った私には、彼女に口出しする権利はもうなかったのだ。
愛しの人をこの世に再び再現するために、百ではおさまらない人数を殺し、成仏させてきたのは紛れもない私自身だ。
愛する人のためなら何でも出来る、ということを自分で証明してしまっている。今の彼女を誰にも止めることはできない。
私はそれでも、数時間にわたって粘ったが、折れることになった。ただ、手術自体を行うのは少し後にするということに決まった。その間、私は老人に命を握られたまま過ごすこととなった。