フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

ルビネルへの成功祈願 PFCSss4

ルビネルの捜索願い PFCSss

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/28/091650

ルビネルの手術願い PFCSss2

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/31/172102

ルビネルの協力願い PFCSss3

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/01/083325


⬆こちらのssの続きになります。

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Self sacrifice after birthday 4


 「久しぶりだな」

 図書館の地下五階。本来人が立ち入ることのない埃臭い空間の、更に奥の机にもたれ掛かる私に、図々しく話しかけるガーナ。
 ガーナ『王』が私のロングコートの服のシワをみてガーナは一言呟いた。

 「ほとんど丸腰か……取り上げられたな。私が利用したときよりも深刻に見えるが」

 「あまり話しかけないでもらえるか。鬼畜め」

 ばつが悪そうな小さく低い声で拒絶を示すと、ガーナは微笑しながら向かいに腰をおろした。
 裏社会の人間から見たらドレスタニアを支配しているのは彼だ。一般には元国王と言われているが、実際には裏から国を牛耳っている。

 「まぁそう言うな、単純な世間話だ。君にとっては余計な話かもしれんがね」

 無言で向き合う解剖鬼とガーナ。感情を隠し通すマスクに対し、感情を読み取らせない鋭く紅い目。お互いに察する、牽制の態度。先に沈黙を破ったのは、ガーナであった。

 「死ぬのか、あの子は」

 眉一つ動かすこともなく、悲しい顔も見せず、苦しい声もあげない冷徹非道な『王』の言葉。しかし、死地を巡った解剖鬼だからこそ察する、王の気遣い。
 早い話が、状況を把握し即座に現実をうけとめ、ルビネルの未来が悪い結果になることを既に『覚悟』している態度である。だからこそ、ガーナは解剖鬼に話しかけに来たのだ。

 「……決まった訳じゃない」

 即答は出来なかった。だが、できる限りの事をする、と意志を見せることはできた。癪に障る『王』に向けた抵抗の意志。
 可能性は決めつけるものでは無い。だからこそ、即答できない自分にほんの少しだけ苛立った。実際に経験則から判断すると、失敗する可能性の方が高い。

 「そうか」

 私のわずかに震える握りこんだ拳を見て、ガーナはにこりと微笑んだ。ふと、手元の資料に目を落とす。サバトの記録…歴史…考察…。自身が戦うわけでもない相手の弱点や欠陥を探ろうと、自然に読んでいたものがそれらであった。
 心のどこかで、ルビネルが負ける前提で調べていたことに気づく。

 「現実を受け止めるということは、希望を産み出す手段である。やるべき事をやるしかないぞ」

 ガーナは机に紙束を置いた。

 「これは……?」

 「私の父親が母に施してきた、遺伝子操作の実験記録だ。図書館の記録ではなく、私物だ。より分かりやすい言い方をすれば…我が弟の設計図だよ」

 一切感情を見せなかったガーナが、明らかに忌々しい物を見る顔つきで答えた。

 「燃やすつもりだったが、何かの役に立ちそうなら君に預ける」

 そう告げると、ガーナは出口へ戻っていった。

 「『設計図』か、これがガーナ王の解釈なのか?」

 私は資料を手に取りパラパラとめくる。わずかな枚数目を通しただけで、ガーナの表情の理由を察した。なるほど、これを研究した奴は、少なくとも私よりは外道らしい。
 私はあくまで人を成仏させたあと、解剖して医学データを得るのが仕事だ。このような狂気に満ちた人体実験は行っていない。

 「なるほど、興味深い」

 だから、手術の参考になるデータが手元ににほとんど存在しないのだ。理論上は手術可能とはいっても、前例のない手術は高確率で失敗する。例えば数十年前、とある病院で理論上可能とされ、実行に移された臓器移植。だが、拒絶反応に関して、当時は存在すら知られておらず、患者は数日でお亡くなりになった。
 ガーナ王が渡してくれたものは、それを補完する、貴重な研究データだ。特に薬剤による詳細な影響や、副作用に関しての細かい記述は非常にありがたい。

 ガーナ王にしては随分と気のきいたプレゼントだ。ペストマスクの位置を調整すると、ルビネルにきびすを返し、図書館を後にした。