バトーvsアルベルト・グズラッド PFCS ss
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/03/19/220046
⬆このssの元ネタ。今の持ちうる技術で戦闘をアレンジしてみました。
『バトーは仲間たちと共に、ギャングまがいの違法取引や密輸を繰り返すノア輪廻世界創造教の本堂に侵入した。彼を待ち受けていたのはパラレルファクターと呼ばれる特殊な力を持つ異能力者たち。そのなかでも有数の実力を持つアルベルト・グズラッドが彼の前に立ちふさがった』
東塔の渡り廊下。バトーはいきなり敵幹部と対峙した。
「シャーヒャヒャハェ!お前らカルマポリス軍じゃねぇな。どこの国の軍隊だ?ノア新世界創造教になにしに来た?どっちにしろ侵入者はぶっ殺してやるけどよぉ。神様信仰してりゃこの俺、アルベルト様は何だってしていいのよ!シャーヒャヒャハェ!」
修道服に身を包んだ、いかにもヤバそうな男。その修道服にもパサパサした茶色い斑点が所々付着しており、こいつが何をしているかを暗示している。
金髪を揺らし、碧眼を光らせながらバトーは仲間たちの一歩前に立つ。
「俺がやろう。この狭さだと一人で戦うのが限界だ。二人は階段まで下がってくれ」
バトーは敵の大剣に対して細身の剣だ。
敵は広角が引きちぎれそうなくらいの満面の笑みを披露している。修道服を着崩しており、中に真っ赤な服にすさまじい量の銀色の首飾りをつけている。
左右の目に二つずつある瞳孔がバトーたちを睨み付ける。
「俺はなぁ、お前らみてぇな侵入者を何人もぶっ殺してンだ。最近は雑魚ばっかりでよぉ!ノミのほうがまだいい勝負を仕掛けてくんだよ。お前らもノミ以下かぁ!」
バトーは全く恐れる様子もなく言い返す。
「俺はお前に値踏みされるほど、安くはないし、井の中の蛙に負けるほど落ちぶれてもいない」
「そうかい!そうかい!面白くなってきたぁ!シャヒャヒャヒャ!」
敵は剣を取り出した。赤い呪詛が垂れ流しになっており、不気味に光っている。
バトーに切りかかった。バトーは剣を使って攻撃を受けようとしたが、一瞬にして剣がどろっと溶けてしまった。
「何っ!」
「俺の呪詛は剣を介して触れた金属を溶かす。一見地味だがお前みたいな剣使いにはサイコーに相性がいいんだぜぇ!」
横になぎはらわれた剣がバトーの服を切った。アルベルトはそのまま、何回も剣でバトーを突いていく。バトーの腕が、足が、胴が切り裂かれていく。
狭い廊下の床と壁に赤い斑点が出来ていく。
「ぅぐっ!あが………ヌア゙ァ゙ッ」
「てめぇは女装してキャバクラにでも働いてた方がいいんじゃないか?なんっつって、シャハハッ」
バトーはかわす一方で反撃に出られていない。それでも、行き絶え絶えで氷の魔法をアルベルトに放った。本来なら敵を凍らせるはずの冷気を受けているはずなのに、アルベルトはケラケラと笑うだけだった。それどころか股間狙いの蹴りまで繰り出され、冷や汗をかく。
「んー涼しいねぇ。魔法無効のパラレルファクターだぜぇ!ほらほら、このままだと死んじまうぞ?シャーッハッハッハ」
「……このサイコ野郎が」
一方的な死合いが展開された。決して小さくない血溜まりが出来ていき、それを金色の髪の毛が彩る。
バトーは追い詰められながらも必死に頭を回転させる。知恵と勇気でこの場を乗りきらなければ、この先の戦いを生き残ることは出来ない。
仲間は狭い廊下のせいで、バトーの加勢に入れない。
バトーはなすすべもなく壁際に追い詰められてしまった。
「俺に魔法は聞かない。剣も効かない。死ねぇ!!」
剣を弾く音とドスッという鈍い音が響き渡った。
『水よ……我が手に集いて刃と成せ!』
「こっ氷の剣ッ!?クソッ!無抵抗なヤツをいたぶるっつうのが楽しいのによぉ」
バトーの手には水筒で作られた剣が握られていた。その先はアルベルトの肩に突き刺さっている。
氷なら鉄でないから敵の剣に触れても溶けない。魔法で作ったのではなく、水を制御し凍らせて作った物だ。素材自体は純粋な水であり、魔法由来ではない。アルベルトの魔法無効のパラレルファクターは効かない。
「それで勝ったつもりか?女顔!」
肩から伸びた氷の剣をアルベルトは手から血をにじませて引き抜ぬいた。あまりにも強引な手段にバトーも一瞬唖然とする。アルベルトはすかさず反撃に出た。
一見力任せに見えるが、確かな技術を用いた剛剣。それをバトーは剣で受け流すようにさばいていく。バトーの氷の剣はか細く頼りないのにも関わらず、折れず、刃こぼれもしない。
バトーは身震いしていた。今まで魔物や自分を女と間違えていざこざを起こすような輩や、はたまた国レベルで問題を起こすような敵とも戦ったことがある。
しかし、アルベルトに至ってはそのどれとも違った。勝つためにはありとあらゆる手段をこうじ、弱者をいたぶることを楽しみとする人間のクズ。その上技術は世界有数という異形すぎる存在だった。
怖くないと言えば嘘になる。体の痛みが精神を萎縮させる。だが、今バトーが倒れれば仲間を危険にさらしてしまう。逃げるわけにもいかないし、野放しに出来るような奴でもない。
それに、こいつよりもヤバイ戦闘狂を相手にしていつも修行しているのだ。勝てないはずがない。バトーはそう、自分に言い聞かせた。闘技場で拍手喝采を受ける戦友の姿を思い浮かべると、自然と心の乱れが収まった。
落ち着きを取り戻したために、バトーの剣術がキレを増す。バトーがだんだんとアルベルトを押し始めた。
「くっ……あいつとの練習がこんなところで役に立つとは……」
「お前、割といい腕してんだな。まあ、俺様には足元にも及ばねぇがなぁ!」
バトーの視界が突然真っ暗になった。なにかで目潰しをされたのだ。生暖かいぬめっとした感触から、直感的にそれが血液であることを悟る。
「上品に戦っているようじゃあ!俺にはあの世で修行しようが勝てねぇぜ!シャハハハハッ!」
アルベルトが止めを刺そうとした瞬間だった。犯罪者とはいえ剣術の達人である彼があろうことか転んだのだ。ありえない光景に仲間も唖然とする。
「床がッ! 氷ってやがる! ふん、だが無駄な抵抗だったなぁ!」
アルベルトは滑らかな動きで立ち上がると同時に、顔もとを狙った。
そのとき、バトーは丁度目をぬぐっていた所だった。反射的に右腕で顔をガードする。大剣がバトーの右腕を切り裂いた!
「ア゙ァァッ!!痛つっッッ!!」
「これでもうお前の利き腕は使えねぇ。そして、俺の剣は利き腕じゃない方の手で捌けるほど軟弱じゃねぇ!死にな」
容赦なく振り下ろされる剣。だが、バトーは左手に現れたもう一刀の氷の剣で受け流した。驚愕するアルベルト。
バトーは地面に滴る血液中の水分を利用したのである。
『出よ、我が聖なる刃!〈氷斬剣〉!!』
アルベルトの胸を大きく切り裂き止めを刺した。死んではいないものの、戦闘続行は不可能な傷だ。
「悪いな、俺は双剣使いだ」
右腕を押さえながらアルベルトに背を向ける。仲間に傷薬と呪詛で治療を受け、患部を包帯で保護した後、その場を後にした。幸いバトーの受け方が上手だったため、切り傷が綺麗で治療は楽だった。今後の戦闘にも支障は無さそうだ。
「まさかこんな、クズみたいな剣士がいるとはな……。だが腕は一流か。惜しいな」