フールのサブブログ

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鬼の中の鬼 PFCSss

 元ノア教幹部、ギーガン=グランド。彼は鬼の種族の中でも恵まれた体格に産まれた。彼は母国、エルドランの格闘大会で連勝を重ね、それには飽きたらず非合法の格闘大会にも手を出した。
 彼はそこでも勝利を重ねたが、そこで殺人をおかしてしまった。連勝を止めるべくした陰謀であったがそれを知るよしもない

 ギーガンはあえなく国の警察に捕まり、投獄された。しかし、獄中でも修行を怠らなかった。彼の強さはノア教の教王であるクロノクリスの元に行き届き、多額の賄賂によって釈放、ノア教の用心棒として雇われた。
 ギャングまがいの邪教の特効隊長に就任した彼は、暴力を武器にノア教の邪魔物をねじ伏せた。

 更なる力を求める彼は、クロノクリスの手解きにより肉体教化の魔法と、腕を阿修羅が如く四本に増やす能力を手に入れた。
 エルドラン国にはもはや、誰も彼に腕力で勝てる者はいなかった。

 しかし、侵入者である侍と狭い通路で戦い、長所を潰されて破れた。

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 その後、ノア教は陥落。彼は再びエルドラン国の監獄へと捉えられる。そこでも彼は獄中のケンカで27戦無敗。看守にも押さえられるものではなかった。
 エルドラン国は彼の戦闘力を驚異としてとらえ、対策を講じる。より腕っぷしの強い奴で彼の自信を完膚なきまでに叩きのめすだけの単純な作戦だった。

 ギーガンは飢えていた。母国の戦士は弱すぎる。『より強い奴と戦いたい。あの侍の時のように血湧き肉踊る闘いをしたい』。そんな彼へ一人の鬼が送られた。

 エルドラン国王従者はドレスタニア国に助けを求めた。すると、ドレスタニアの外交官は一人の鬼を名指しした。

 「あの構成員が全て鬼と言う、紫電海賊団の中でももっとも強い戦士ですか?」

 「ええ、彼なら間違いなくギーガンに勝つでしょう」

 「ギーガンはエルドラン国最強の鬼ですよ?」

 外交官は澄ました顔で言った。

 「彼は負けません」

 従者は困惑した表情を浮かべた。この外交官はギーガンの驚異を理解していない、と思ったのだ。

 「肉体強化の魔法に加えて四本の腕ですよ?一介の海賊団の船員に勝てるはずがありません。戦闘のプロとかもっと強い人を……」

 「力なら彼が最強です」




 牢獄に繋がれたギーガンはその日、突然体育館へ呼ばれた。たった一人だ。彼は困惑していた。運動の時刻でもないのに何事か。なぜ一人だけ?まさか処刑か?いいや、こんなところで処刑などするはずがない。それに、そんなことできるはずがない。させない、ぶっ殺す。
 全身の血流を活性化し真っ赤に染まった体を唸らせながら、彼は体育館へ踏み込んだ。
 体育館には一人の鬼がいた。慎重は二メートル越え。褐色の肌にアフロヘアー。前登頂部に角が一本。左肩から左胸にかけて刻まれた刺青。隆々という言葉すら生ぬるい筋肉。
 深い堀の内側に隠れた眼光が鋭くギーガンを射ぬく。

 「紫電海賊団の忌刃か。噂にはよく聞くが、まあそんなの宛になんねぇ」

 忌刃は手招きするかのように挑発した。かかってこいよ、どうした。そんな言葉が似合う動作。それを見てギーガンは頬が引き裂けるほど口を歪めた。
 ギーガンの脇から二本の腕が生えた。魔法によって、もともと鉄のような筋肉がさらに膨れ上がり、巨人とも言うべき姿に変貌する。背を比べたらギーガンの首筋の辺りに忌刃の頭がくるであろう巨体だった。

 ギーガンは無防備に間合いを詰めると、忌刃の腹に強烈な一撃を見舞った。忌刃はその場から動かず耐えた。

「どうしたぁ? 反撃しねぇのか?」

 ギーガンはさらに二本の右正拳を忌刃の顔と胸部に叩き込む。
 忌刃の体が大きく揺れた。筋肉にめり込まれた拳がその打撃の威力を物語る。忌刃の踏ん張りに体育館の床が負け、べきりと折れて忌刃が本の少し沈んだ。鼻から血が静かに垂れる。それでも忌刃は動かない。

 「俺は無抵抗なやつをいたぶる趣味はねぇが、お望みならやってやる」

 ギーガンの猛ラッシュが始まった。四本の腕が絶え間なく忌刃を打つ。頭部を胸を手を足を、はち切れんばかりの拳が連打する。一発ごとに体育館がゆれ、天井からほこりがパラパラと落ちる。忌刃の口から血が飛び、皮膚が切れ、体育館を彩った。

 「これで終いだッ!」

 ギーガンは四本の腕で、両手突きを放った。全力の一撃は全て忌刃にクリーンヒットした。忌刃は宙に浮き吹き飛んだ。空中を数度回転し、背中から地面に激突。ドォォォンという地鳴りを起こし、倒れた。

 その日囚人たちは地震が起きたと勘違いをした。

 ギーガンは腕を振り上げ、ゲラゲラと笑った。

 「ヒャハハッ!何がかかってこいだ。ふざけんなよ。こんな茶番、面白くて仕方ねぇ」

 ギーガンの言葉にたいして、ノックダウンしたはずの忌刃から野太く、地面の底から湧き出るような声が響いた。

 「喧嘩ってのは……徹底的に叩きのめすもんだ」

 忌刃はゆっくりと立ち上がった。そして歩き出す。全身に鬼ですら致命傷になる拳を受けたはずなのに、血まみれで傷だらけのはずなのに、忌刃は何事もなかったかのように悠然とギーガンへと歩んでいく。
 ギーガンはさらに忌刃へと拳を叩き込む。血潮が飛び忌刃の傷は増えていく。しかし、倒れない

 忌刃はギーガンのラッシュを食らいながら、腕を思いっきり振り上げた。

 「よく見ろ。これが喧嘩だ」

 ギーガンの胸に忌刃の拳がめり込む。ギーガンの分厚い胸筋は押しつぶれ、肋骨を圧迫し破壊した。忌刃が拳を引き抜いても、はっきりとわかるように拳の形がありありと刻まれている。
 その一撃はギーガンが意識を失うまでの数秒に、彼の自信は木っ端微塵に吹き飛き飛ばした。彼に残ったのはありったけの力を叩き込み、それでも悠然と立ちはだかった忌刃への尊敬とトラウマ。
 それすら、忌刃の次の一撃でぶっとんだ。ギーガン=グランド初の力比べでの完全敗北だった。

 ギーガンを体育館へつれてきた看守は後にこう語った。

 「全てを受けきり、一撃で粉砕する鬼の中の鬼。それが私の見た忌刃の姿でした。私はその神々しい姿に息をするのも忘れて、ただただ見とれていました」

 その日よりエルドラン国には『鬼の中の鬼』という伝説が語り継がれている。