フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

翼をください PFCSss12

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ルビネルの捜索願い PFCSss
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/28/091650

ルビネルの手術願い PFCSss2
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/31/172102

ルビネルの協力願い PFCSss3
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/01/083325

ルビネルへの成功願い PFCSss4
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/02/153244

ルビネルの豪遊願い PFCSss5

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/03/075127

ルビネルの修行願い PFCSss6
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/04/224102

ルビネルの施行願い PFCSss7

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/07/175035

ルビネルの決闘願い PFCSss8
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/14/220451

ルビネルとセレアの死闘願い PFCSss9
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/15/210343

ルビネルの願い PFCSss10
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/20/122547

あの素晴らしい愛をもう一度
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/07/11/234700


⬆こちらのssの続きになります。




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Self sacrifice after birthday 12



 豪雨が建物の外をに強烈に打ち付ける。ガシャガシャと窓がゆれ、暴風の強さを物語っている。外は昼間であるにも関わらず薄暗い。
 エウス村長は木製の長机に組んだ腕を乗せ、それを見つめるような形で椅子に座っていた。
 ガーナ王は背筋を正し、悠々と座っているが表情は固い。
 老人は部屋の壁に寄りかかり、鋭い視線を部屋中に向けている。
 セレアは優れた飛行能力を生かし、あえて椅子のない場所で空気椅子をして突っ込みを待っているが、誰も気づいてくれない。
 みな一様に表情が暗く、思い沈黙が部屋を包んでいた。
 そんな雰囲気の中、ガーナ王が口を開いた。


 「状況を整理しよう。現在、カルマポリス国、我が国ドレスタニア、そしてここキスビット国には巨大な台風が発生。さらに、キスビットを中心に大型の砂嵐が全世界に向けて吹いている」


 ガーナの目配せに老人がうなずいて話を引き継ぐ。


 「今吹いている砂嵐の砂は通常の砂と違って、水に触れると乳白色に発光しやす。先程、これは邪神ビットの呪詛による影響だと判明しました。台風による豪雨も乳白色に発光していることから、これらは全てビットの能力によるものと考えられますぜ」


 老人の言葉にエウス村長がピクリと反応した。老人は一旦話をきり、エウス村長を見つめる。
 村長の口より発せられた声にいつものような覇気はなかった。


 「これが全世界に降り積もれば、以前のキスビットと同じく、世界は負の感情にとらわれ、差別や戦争が横行する暗黒の時代へと向かうだろう。交流のあったチュリグやアンティノメルにも救援を要請しているが、自国を守るのに精一杯で支援を受けるのは難しそうだ」


 エウス村長が顔をあげて目をつむった。脳裏に浮かぶのは以前の戦い。迫り来る邪神ビット、正体不明の攻撃、次々と倒れる仲間たち……。
 だが、今と比べると一つおかしな点があった。あのときのビットはただ力を振り回すだけで、その行動に計画性などは皆無だった。


 「千年もの長い潜伏期間はこの術の発動のために使ったらしいな。以前のビットと比べるとあまりにも計画的すぎる。とりつく相手が変わったことでそうとう悪知恵が働くようになった」


 セレアはセレアでビットと出会った時のことを思い出していた。老人の救出に向かった時である。
 全ての斬撃は黒い腕によって無力化された。黒い腕に剣が触れると弾かれるどころか、もう片方の腕から自分に向かって飛び出して来るのだ。遠距離からのマシンガンも同じように全て反射された。
 その上で予測不能、回避不能な攻撃に一方的に曝され、なすすべもなく撤退したのだ。もしあの場にルビネルがいなかったら生き残っていたかすらわからない。


 「時に関する能力は弱まったがその他の能力に関してはほとんど据え置きか、もしくは変化しただけじゃ。むしろ使い方が賢くなった分、より厄介になったと言えるじゃろう。もはやルビネル以外奴に触れることすら叶わん」


 老人は帽子を深くかぶり直すと、唸るような声を発した。ビットの力はギャングの力を総動員しようとも、もはやどうにもならない規模だった。


 「俺の部下に調べさせた結果、奴はどうやら時空を歪めて作り出した異空間にいやすぜ。ルビネルが通ったような『入り口』を特定すること自体は可能ですが、時間がかかります。恐らく、見つける前にビットの土壌が世界を覆い尽くしてしまうでしょう。俺たちにはどうすることもできねぇ」


 そう言うと両手の手のひらを上に向け、肩を上げて『お手上げ』のポーズをした。


 「ビットは今まで各時代に能力(腕)を伸ばしていたんじゃが、今回はこの時代に絞って能力を発動している。つまり、能力を分散させていた以前とは比べ物にならないほど強大な力が今、この時代に作用しているのじゃ。恐らく世界が奴の手に落ちるまで……数週間と持たないじゃろうな」


 セレアが苦虫を噛み潰したかのような表情で呟く。沈うつな表情だが、それでも空気椅子は止めない。
 セレアの空気椅子を、空気を読んであえて突っ込まないガーナ王が総括した。

 「今は彼女にかけるしかあるまい。我々は出来ることを最短で効率よく確実に行おう」



━━━━




 荷物が撤去され、裸のコンクリートにわずかに散らばった配線と部屋のすみに放置されたロッカーが名残惜しく残された廃ビル。壁には乱雑にはがされたポスターの跡が残されている。
 薄暗い中、壮絶な打撃音が響く。バカンという音が聞こえ、コンクリートの破片が床に散らばった。


 「なるほど、訳のわからぬことを口ずさむ単なる道化ではなかったということか」

 「その言葉、あなたにそのまま返すわ」


 牽制の中段突き、本命の上段突き、追撃の上段まわし蹴りを放ったビット神が余裕の表情で呟いた。私は右手でビット神の腕を下に押さえ、続いて上に動かして次の攻撃を弾き、二の腕で蹴りをガードしつつ足払いをかける。
 攻防が瞬時に切り替わる死闘が繰り広げている。二人の踏み込みの強さに、床のあちらこちらにヒビが入っていく。
 その部屋の隅から物音が聞こえるが、ビットは気づいていないかのようだった。


 「温いぞ?見た目が少女だからと加減でもしているのか?神に対して情けはいらぬ」


 ついにビット神の拳が私の胸に直撃した。衝撃の強さに私は四肢を前に付きだしたまま、天井付近の壁まで飛んでいった。私は地面が離れていくというあり得ない光景に少し驚く。その直後、背中から内蔵を抉るような衝撃がはしり、壁にほんの少しめり込んだ。
 なんとか着地した私の懐に蹴りを食らわさんとビット神が迫る。だが、突如出現したワイヤーにビット神が捕らえられた。私が殴り合の時に密かに仕掛けたワイヤートラップを作動させたのだ。ペンを操る呪詛を用いた応用技術だった。


 「じゃあ容赦なくキタナイ手を使わせて頂くわ?」

 「千年もの時を経て、随分と技術が進歩したものだ。これさえなければ仕留められていたものを」


 ビット神は手刀でワイヤーを絶ち切ると、立ち上がろうとしたルビネルの懐に今度こそ蹴りを放つ。
 私は天井を突き破ってぶっとんだらしく目の前に穴が空いておりその下にビット神が見えた。ビット神は追撃の拳を叩き込む。
 私によって開けられた天井の穴のヘリを踏み台にジャンプして、さらに私の腹を打ち、ぶっ飛ばされたルビネルが開けた次の階の天井を、また踏み台に……という離れ技を見せた。数十枚も天井をぶち抜きつつ私は拳を受けて、しまいには屋上に飛び出した。
 腹に一生残るであろう鈍痛を感じる。苦痛で顔をしかめた私の目の前に、大きく手を振りかぶったビット神が現れた。
 強烈なナックルを受けた。脳みそが頭蓋骨の壁面に叩きつけられ、一瞬飛びそうになった意識をどうにか保つ。どんどん小さくなっていくビット神を見つめつつ、受け身の体勢に入る。
 私はビット神よりはるか遠くの道路に不時着、板チョコレートのようにバキバキと割れる道路に陥没した。
 かろうじて屋上の縁にたつビット神が確認できる。


 「飛べるはずのお前が地に伏し、飛べないはずの私が遥か高みで見下ろす。皮肉なものだな」

 「フフフ、原始的な罠にハマって内心恥ずかしいんでしょう?」

 「いいや? むしろ嬉しいな。他者を憎むことで、他人を苦しめ殺める技術を自ら学んで行使する。それこそが人のあるべき姿だ。理想とも言える」


 とっさに貼ったワイヤートラップでビット神の蹴りの勢いを殺さなければ今以上のダメージを受けていた。それに、トラップで時間を稼がなければ、鬼の能力である筋肉のパンプアップを発動する暇もなかった。
 まさしくギリギリだった。例の老人によって間接的にだが命を救われた。


 「赤子は無邪気であるがゆえ残酷だ。動物を殺し、植物を摘み、手にした小さな力を用いて破壊を振り撒く。成長するにつれて教養を学ぶが、それでも人は争い、憎み、妬み、蔑む」


 後光を浴び、遥か高みから見下ろすビット。それに対して無様に地面に這いつくばり、雨風にずぶ濡れになっているルビネル。はた目から一目見てわかる絶望的な実力差。
 それでもルビネルは諦めない。


 「そして、人は根本的に利得を好む。美しい女性や芸術品に目を奪われ礼儀や秩序を損ない、人を憎み傷つけることで信頼や誠意を損なう。どんなに教育されようが、千年の時が経とうがそれは変わらない。争いこそが人の本質であり、混沌こそが世界のあるべき姿だからだ。私の望みは規律と秩序により醜く歪んだ世界をあるべき姿に帰すこと、それだけだ」

 「私の住む世界は……!」

 「〈ここ〉がその答えだ。私が土壌を食いつくし全てを支配した世界。この荒廃したビル群は戦争によって滅びた未来のカルマポリスだ。あらかじめ〈お前から見た未来〉へ誘い込んだのだ。その後〈お前から見て現在〉でなんの邪魔もなく理想の世界を創ることができた。あとは完成されたビットの世界で……お前を殺すだけだ!『未来よ、定まれ』」


 またしてもルビネルの脳内に幻影が映し出される。今度は今のルビネルから見て、ビット神から見てもかなり遠くに『幻影のルビネル』は存在していた。恐らく数百メートル先のビル壁面に着地したところだ。
 ビットは先程の戦闘でひびの入ったビルの断片(とはいえ、大きさ数十メートルはある)を持ち上げると、ルビネルの幻影に向けてぶん投げた。
 ルビネルは肝を冷やしたが、幸いにも直撃する前に幻影は消え去った。そして、幻影が消え去ると同時にビット神の投げたコンクリートの塊も消滅した。


 「……お前は、『感じているのか』?」

 「何のこと?」

 「まあいい。とぼけていても次でわかる」


 口にたまった血ヘドを吐き出すとルビネルは立ち上がった。
 水のたまりはじめた窪地を蹴り、再びビット神の元へと向かう。ボールペンを縦に高速回転させ、カッターと化したものを何本も放っていく。
 ビットはなんと、ビルの壁面を垂直に走って来た。カッターと化したペンはビットの右腕で凪ぎ払われると共に消失し、その直後にビットの左手から放たれる。私はボールペンをヘリコプターのような形で高速回転させた物を展開しバリアー代わりにして防いだ。


 「やっぱり飛び道具は効かないのね……」


 ビットが私の頭上すぐ近くに来たとき、精霊魔法式の地雷が作動する。それにより、ビットの攻撃が半テンポ遅れ隙が出来た。私はオーバーヘッドかかと落とし(命名:ルビネル)でビットを空中に蹴り飛ばしたあと、空中で横ばいになりビットの腹を踏みつけるかのように連続で蹴りを放った。
 ボールペンで背後を攻撃しながら蹴りやすい位置にビットを調整、蹴りの嵐を食らわせた。
 ダダダダダッ! と痛々しい破裂音がこだまする。


 「友の肉体をこんなに傷つけて心が痛まんのか?」

 「その子、マゾヒストだから関係ないの。むしろ御褒美よ」


 と、強気の言葉と裏腹にルビネルは内心、蹴る度にアウレイスに謝った。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……。
 見切られることを見越して、最後にドロップキックで技をしめた。ビットだけではなく周囲の空間にも衝撃が伝わっていき、雨粒らが球状に押し広げられていく。ワンテンポ遅れて衝撃波に触れたビルの窓ガラスが一斉に割れた。
 忘れた頃に降ってきた雨とガラスの破片を浴びながら、私は次の攻撃に備えるために、重力を基準にして構え直す。
 一見私の優勢に見えたが、飛来した『それ』によって全てが逆転した。
 突如、視界の右端からビルの屋上が迫ってきたのだ。あり得ない光景だった。私の数メートル下は地面である。本来なら地面から延びているはずのビルが、視界の横から目に映るはずがないのだ。
 私はさっきビットが放り投げたビルの破片に打ち付けられた……。



 「まだだ、徹底して潰す」



 彼女が攻撃された地点から数百メートルの地点。
 ビットは頭から垂れる美しい赤色をした血液を拭うと、近くにあった5階建ての建築に黒い手を射し込む。みるみるうちにコンクリートと瓦礫と混ざり合い、形が人型に変形し、立派なゴーレムが出来上がった。
 ゴーレムはルビネルを押し潰したビルの破片に気がつくと、その両腕を振り上げ、足を曲げて大胆に跳躍。身長約15メートルのボディで破片を押し潰した。


 「信仰の違いで争い、憎み、拳を奮う。私より遥かに劣るちっぽけなゴミくずのような人の子よ、お前は理想的な私の世界の住民だった。そのことを誇りに思って千切れ潰れろ」


 何体ものゴーレムがルビネルを潰しにかかる。その様子を道路の真ん中でビットは眺めつつ、だめ押しと言わんばかりにおびただしい量の岩を上空に召喚する。
 召喚された馬鹿げた規模の岩なだれにより、ビットの視界に存在する建物という建物が岩に当たって砕け、崩れ去る。


 「やはり、私の思い違いだったか。ここまで派手な演技をする必要もなかったな」


 アスファルトをぶちやぶって『腕』がビットの足を掴んだ。そのまま鬼の手首の力を活用してジャイアントスウィングの流れにもっていかれた。


 「何?!」


 徐々に地面から泥だらけの状態で浮上するルビネル。雨水にさらされて徐々に元に戻っていくものの、その様子は驚きを通り越してシュールですらある。
 ビルの断片による未来攻撃を予知したルビネルは、鬼の怪力で道路をぶち破り、ボールペンで地面を掘って攻撃をかわしたのだった。


 「人対人は情報操作が基本よ? 勉強不足じゃなあい?」

 「やはり『未来を感じて』いたのか」


 ルビネルは怪力で空高くビットを投げ飛ばすと、攻撃体勢に移った。そのままチラリと背後を見る。

 
 「かかったな? それは、砂人形……」

 「わかってるわよッ! 微妙に軽いもん!」


 アウレイスと濃密な関係を持っていたルビネルはアウレイスの体重を感覚で把握していたのだった。
 またしても横から垂直に飛んできたビルに今度はしっかりと受け身をとる。空の方向へと屋上を転がり、壁面と垂直になるように飛行しつつ、奥にいるビットを捕捉する。右手を腰まで引き、左手を前につきだし正拳突きの構えに映る。
 対してビットも大きく腕を振りかぶった。迎え撃つつもりである。


 「それと、ひとつあなたは勘違いをしてる」

 「なんだ?」

 「私がその体を殴るのは憎んでいるとか争うためだとかじゃない! 愛し合うためなのよッ!!」