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セレアのテロリスト鎮圧 上

1.カルマポリス西地区中央

 カルマポリス西地区中央。復興が進んだ今なお建築物に生々しい傷跡の残っている。焼けた壁や酸によって溶かされた標識が、この地でどんなに壮絶なことがあったかを暗に示している。
 カルマポリス民であればご存知かと思うが、ここはかのカルマポリス西地区召喚師無差別テロ事件の現場だ。
 今でこそ平和に人々は暮らしているが、そこに至るまでに、人知れず戦った兵士たちの並々ならぬ苦労があった。

2.カルマポリス西地区中央テロリスト事件とは

 その日、カルマポリス西地区は未曾有の危機を迎えた。精霊フロレ率いるテロリスト集団に奇襲を受けたのだ。テロリストグループは全員仮面を被った13名の召喚師で構成されており、人数こそ少ないものの全員がエキスパートだった。彼らは治安が悪く、比較的警備の手薄だったカルマポリス西地区中央に散開。午前7時に一斉ドラゴンを召喚した。
 カルマポリス政府はこれに対し、200人の陸軍兵からなる陸軍第一中隊を派遣。しかし、そこで不足の事態が起こった。召喚師達によって呼び出されたのはドラゴンであったのだ。ドラゴンは通常、練達した召喚師にしか呼び出せず十数人しか存在が確認されていない。召喚には高度技術が必要だがドラゴンは屈強で非常に力が強い。高い知能に加えて特殊な技能を習得していることも多い。空が飛べる種類ともなれば陸軍では対処困難。さらに、召喚師がいるという性質上倒しても倒してもドラゴンを呼び出されきりがないのである。

 「あのときは驚いたよ。まさか、一介のテロリスト達があんな高等技術を持っているとは。カルマポリス軍にもドラゴンを呼べる召喚師は数人しかいないんだ。陸軍兵の標準装備である呪詛銃も効果が薄く、ワーム一体に対して数人がかりでようやく互角といった所。それが、ポンポン召喚されて来る。悪夢としか言いようがなかった。空軍の増援もあったがそれでどうにかなるレベルを越えていた」 (カルマポリス陸軍所属 ゲンダイ)

 政府は事態を重くとり、空軍を増援に向かわせて戦線を持ち直した。だが戦いは泥沼化し被害は広がる一方だった。戦闘員の約60パーセントを損失。
 そんな窮地にカルマポリス政府が声をかけたのが、アルファであるセレア・エアリスであった。

3.セレア・エアリスの履歴

 エアリスとは液体金属式妖怪型多目的防衛兵器である。液体金属の体を利用し、頭部・左右碗部・左右脚部・背部のうち同時に三ヶ所まで簡易的な変形が可能。腕はガトリングガンや剣、背中は飛行機ユニットに変形できる。カマイタチの呪詛を放つことができ、さらに飛行ユニットを展開すれば小型ミサイルも発射することができる。さらに自己修復装置が搭載されており、物理的な破壊はほぼ不可能。
 兵器としての弱点は二つあり、ひとつは一機起動するだけでカルマポリスの消費エネルギーの約十分の一に相当するエネルギーを消費し続けること。もうひとつは物質の状態変化を利用して肉体を制御しているため、過冷却や過熱に弱いことだ。
 セレア・エアリスは宗教団体によって非合法に産み出された。起動するための莫大なエネルギーを補うために千以上の子供の魂を融合・搭載している。魂を搭載しているが故、アンドロイドのも関わらず強烈な自我が存在する。外見・精神年齢は14才。薄空色の髪の毛が目立ついたいけな少女であり、外見だけ見れば兵器にはとても見えない。
 彼女は自らを産み出した宗教団体の方針に疑問を持ち脱退。その後、カルマポリス政府によって秘密裏に回収、アンドロイドであることを隠して生活を開始した。

 「彼女は強大な力を持つ上に思春期で情緒不安定だった。彼女に身分を隠させたのは、暴走をしないように監視して兵器として安全に運用するのが目的だった。当然防衛省内部でも大きな問題になったよ。アンドロイドとはいえ彼女には魂あり、意思がある。しかも精神年齢は14才。人権を与えず、軟禁して兵器として利用するのはあまりにも非道なやり方だ。でも、反対したが上はまるで聞く耳を持たなかったよ」 (カルマポリス防衛省所属 ナカタニ)

 経歴を隠していたことや、宗教団体により育てられたことが災いし、価値観や感性の差から学校で嫌がらせを受けた。政府によって宛がわれた孤児院でも兵器ゆえの圧倒的な力を恐れ、誰も近寄らなかったという。それでもセレアには反撃をすることができなかった。相手の怪我に繋がるようなことをすれば政府に隔離されてしまうのが明らかだったからだ。さらにことあるごとに住民権を人質に国の兵器として利用された。常人には耐えがたい苦痛であった。
 そんなとき彼女を支えたのは彼女の監視担当であり、オペレーターでもあったタニカワ教授であった。彼は国に与えられた役割を越えてセレアに声をかけ、支え、苦労を分かち合った。唯一セレアの真実を知る最大の理解者として彼女を見守った。
 数ヵ月後、呪詛学の権威スペクター博士と協力してワースシンボルのエネルギー低下問題の原因の解決を補助した。この際に偶然ワースシンボルの原理を知ってしまい、事実隠蔽をはかる旧政府から命を狙われてしまう。しかし、他国からの支援もありこれを阻止。真実をカルマポリス民へ伝えようとするスペクター博士を影から支援した。

 「ワタシは大きく彼女に助けられたよ。旧政府から命を狙われた時も彼女のお陰で生き延びることができた。お陰で今ワタシは種族差別を乗り越えて研究を認められた。今では彼女への恩返しとして整備を担当している。液体金属を扱えるのはワタシ位しかいないのでね」 (呪詛学博士 ライン・N・スペクター)

 この一件により政権交代が起こり旧政府から新体制へと変わった。
 新政府は彼女を兵器としてではなく人として扱うことに決めた。
 セレアは自身がアンドロイドであることを公表し、種族差別の撲滅を呼び掛けるスピーチを各地で行った。それにより、種族や経歴を偽っていたが故の、周囲とのわだかまりも解けた。タニカワ教授の献身的な支えもあり学校でのいじめ問題を解決。孤児院からタニカワ教授の家へと引き取られ、平穏に暮らしていた。

 そんなとき、カルマポリス西地区が黒煙に包まれた。彼女は再び戦地へと舞い戻った。