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フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

Self sacrifice after birthday PFCSss

 ルビネルが約束の時間になってもこない。因みにデートではない。診療時刻だ。
 腕を組ながら寡黙に待つが、いっこうに来る気配がない。彼女は一度だって私との待ち合わせに遅れたことはなかった。
 ペストマスクが私の眠気に合わせてコクンッ、コクンッと揺れる。これ以上は待つだけ無駄か。
 私は不気味に思い、彼女の学校に行き、とある人物を待ち伏せした。

 私が待ち伏せしていた人物はあっさりと姿を表した。単なる教師と生徒という関係を越えて、ルビネルと恋愛関係にあると噂されている。

 ペストマスクをコツコツと叩き、私が会釈する。タニカワ教授は「あなたがルビネルのドクターですか?」と聞いてきた。ルビネルが時間に間に合わなかった時の連絡先として、本人から聞かされていたのだ。

 タニカワ教授にルビネルの所在を聞いてみる。
 知的な顔をした教授は眉間にシワを寄せた。彼が言うにはルビネルはライスランドの料理コンテストから戻って来た後に行方不明、とのことだった。国の捜索も入っているが発見されていない。
 一応、長期間出掛ける旨が書かれている手紙が彼女の家から発見されたらしいが、肝心の行き先がかかれていなかったそうだ。
 ……厄介なことになった。捜索に協力すると伝えると、そういえばとタニカワ教授は呟いた。

 「タミューサ村に社会科見学に行かせてからルビネルの様子がおかしかった。感情を見せなくなったんです。何かよほどショックなことがあったらしい」

 「ショックなことか……」

 私はコホンと咳払いをすると、タニカワ教授に聞いた。

 「あなたは?あなたには何かありませんでしたか」

 タニカワ教授は、「いや……何も」とだけ答えた。

 手紙と聞いて、ふと思い出した。ルビネルはインクの入ったペン━━確か一ミリリットル以上だったか━━をサイコキネシスが如く自在に操れる能力を持っていた。
 その手紙も能力を使って書かれたのだろうか。それとも直筆で丁寧に買いたものなのか。どうでもいい疑問が私の頭をよぎった。


 私はひとまず隠れ家に帰り、翌日に商売仲間に会いに行った。
 「老人」と呼ばれている、焦げ茶色のスーツに身を包んだ精霊は、闇社会の中でも相当の強者だと聞く。裏の世界を知り尽くしている彼は、ニヤリと笑うと意外なことにこう答えた。

 「金さえ払えば教えてあげますぜ?旦那」

 私はなけなしの金を老人に手渡した。
 彼女は私の体の秘密を呪詛に関する知識で推理していた。その情報が漏れると大変不味い。もっともそれ以上に私が彼女のことを気に入っている、というのもあるが。

 老人は焦げ茶色のスーツを整え、帽子を深く被ると「ついてきな」と、指図してきた。

 外に留まっていた、黒い高級車に案内される。やたらと座り心地のいいイスにデカイ体をどうにか押し込めると、隣の席で「かわいいですぜ、旦那」と老人が笑った。

 運転席の黒スーツの男がアクセルを踏むと、車は発進する。

 数十分後、車からおりると、極端に高級そうな建物が目の前にそびえ立っていた。ガラスの扉の中は金色とそれに近い色で装飾された、さながら王宮のようだった。外から見ただけでも、恐ろしく高そうな花瓶だとか、あからさまに綺麗すぎる絵とかが置かれている。
 明らかに私の黒いコートと茶色いペストマスクに不釣り合いだ。

 「さあ、行きましょう」

 竜人でも優々と通れるくらいばかでかいガラス張りの自動ドアを潜り抜け、ガードマンに加え、やたらと着飾ったお姉さんの間を通る。どうやら建物のエントランスらしい。

 受付らしきところを顔パスで通り、老人は突き当たりのエレベーターに入った。

 「この建物は……?」

 私が呟くと老人は渋い笑顔を私に向けた。

 「そう、高級キャバクラですぜ」
 「なぜこんな建物に案内した?」

 老人は答えずに最上階のボタンを押した。

 「…お代は?」
 「俺がオーナーですから」

 美しすぎる夜景と、キャバクラとは思えぬくらい高級感溢れるテーブル。明らかに年収数百ドレスタニアドルを越している男達が、美女をはべらせていた。
 老人はサービスと称して各テーブルに高級ワインをおごると、私をつれて一番奥の扉へと向かった。

 VIPルームが連なる廊下に出た。ただでさえ私の全財産をはたいても出られなそうにないこの店のなかの、さらに特等席である。人生でこんなところに入れる日が来るとは……
 それにしてもなぜこんなところに老人は案内したんだ?

 「さあ、つきましたぜ。指名はもうしてありやす」

 扉を恐る恐る開けると、白いガウンをまとった少女が窓の外を向いていた。顔はこちらからではよく見えない。ガウンに滴る黒髪は絹に負けぬほど美しく輝いていた。
 二人用とは思えない部屋に私は一本足を踏み入れる。絨毯の踏み心地が半端ではない快適さだ。

 「いらっしゃい?お客様」

 表情があどけない。ここに存在する意味がわからない。ガラスのテーブルにおかれたワインに対して、彼女は明らかに不釣り合いだった。

 「ルビネル!なぜこんなところにいる?!」

 疑問は恐ろしいほど浮かんできたが、何から質問すればいいのかわからない。妖艶に微笑む少女になんと声をかければいいのやら。

 「フッ……フッ……フッ!」

 椅子に座る少女、ガラスのテーブル、数メートル離れて私と老人。それがこの部屋の全てだった。
 さりげなく老人が退路を塞いでいるのが気になる。

 「お金が欲しかったのよ。短期間に、大量に、ね」

 「どうしてそんなに金を欲した?」

 「私には救わなければならない人がいるの。手遅れになる前に。そのためには武器が必要でね……」

 私は声を荒くして言った。

 「ばかな。そんなに友達が大変な状況であれば国や冒険者に頼めば……」

 「国の兵士じゃ役に立たない。無駄死によ。それに私の個人的な問題でもあるわ。どうしても私が決着をつけなくちゃならないの。だからドクター、貴方にも力を貸してほしい。私をあなたの能力を使って、強くしてほしいの」

 「断る」

 そういった瞬間、老人がライフル銃を取り出した。

 「旦那、それじゃあ困るんです。ね、患者さんの要望に出来るかぎり沿うのも医者の仕事でしょう?」

 こいつら!グルか!

 「私の肉体を強化手術してほしい。今のままじゃ、……勝てない」

 部屋のなかに黒い服の男がなだれ込んだ。

 将来私が老人に払う金のことを考慮すると、とてもじゃないかぎり老人は私を裏切らないはずだ。つまり、老人がルビネルを助けると、私の生涯払う金以上の損失を防げるか、または利益を被るのだ。

 「二十歳に成り立ての健全な少女の肉体を人体改造しろと?ふざけるな!私のメスはそんなことに使うものではない」

 「すいやせん、これも商売なんで」

 にかっとはにかむ老人の後ろで、数十人のガードマンが銃を向けてきた。

 ひとまず逃げないとまずい。
 フラッシュバンを起動させようとしたとき気づいた。黒い服の男は全員遮光グラスと高級耳栓をつけていることに。老人もいつの間にかそれをつけている。

 「逃げようとしても無駄ですぜ、旦那」

 仕方なく煙幕を起動させ、ワイヤーを天井に突き刺した。体を勢いよく引き上げると、その間下を大量のゴム弾が通り抜ける。さらに壁を突き破って隣の部屋からも銃弾が飛んできた。

 天井に逃げていなかったら即、気絶だった。ミノムシのように身を縮めてぶら下がったまま耐える。

 天井に手足が触れないように気を付けなければ。どうせ老人のことだ。地雷が仕掛けられている。
 私は下半身を振り子のように揺らして、どうにか跳ぶと、銃撃で穴の空いた壁を突き破り隣の部屋に突入した
 ……まさか、隣の部屋がワイヤートラップで埋め尽くされており、全身がんじがらめにされた揚げ句、切り裂かれるとは思ってなかったが。

 ワイヤーに絡まり宙ずりになった私に、老人の部下が大量の麻酔ゴム弾を打ち込んでいく。そのたびにだらしなく私の体が揺れた。

 どうやら私やルビネルがいた部屋の壁の裏側に、トラップが仕掛けられていたらしい。私がぶち破った壁とは反対側の壁に老人の手下がいることを察するに、最初から私の動きは全てお見通しだったようだ。化け物め。

 だんだんと意識が遠ざかり、体の力が抜けて行く。

 ルビネルはというと、窓から外に出たらしく、夜空に浮かんでいた。ボールペンを靴に取り付けることで、宙に浮けるらしい。攻撃の当たらない場所で高みの見物を決め込んでいる。

 状況すら理解出来ぬまま、私の意識は闇へ葬り去られて行く。

 最後の力を振り絞り、ルビネルの顔を見た。虚ろな目で私を見ている。とても学生の瞳とは思えない。

 彼女に何があったと言うのか。恐ろしいほどの荒廃が彼女を襲った、それだけは事実のような気がした。

 視界の端に二人が見えた。


 「さすがね。オールドマン」

 「俺をみくびっちゃ困りますぜ?」


 少女の服を整えながら、老人は笑った。


 「あとは手はず通りお願い出来るかしら」

 「ええ。お嬢が奴をどうにかしなけりゃ、俺たちのお先は真っ暗です。そして、それを出来るのは残念ながらお嬢しかいねぇ」

ずっと昔の話 PFCSss

 この世界には妖怪という種族がいる。特徴的な外見と引き換えに、呪詛と呼ばれるいわば超能力のような力を行使できる存在だ。
 そして、その妖怪たちが造り上げた国がカルマ帝国である。

 遥か昔、カルマ帝国は大陸を支配するほどの大国であった。
 それは古の魔法使いリムドメイジから享受されたによるものだった。妖怪の死者の魂を別の魂に移すことで、本来妖怪が持つ呪詛に加えて、移植された魂が持つ呪詛まで行使できる技術、ネクロファクター。膨大な力を得られる秘術によって、カルマ帝国は瞬く間に大陸を統一した。
 ネクロファクターによってもたらされる圧倒的な力によって繁栄したカルマ帝国。しかし、世界では数々の国が戦争を起こし、取り込まれ消え去っていた。その中でも、カルマ国王はハサマ王とプロレキスオルタといった強大な存在に恐怖していた。彼らは単独で村を瞬時に破壊し、国を滅ぼす。ハサマ王は迎撃に専念しているがいつ攻勢に出てくるかはわからない。
 後の世でプロレキスもハサマ王も、侵略行為はまず行わないと判明しているが、このときのカルマ国王はそれを知るよしもなかったのだ。
 
 カルマ国王はやられる前にやらなければならない、と考えを固めた。国を、友を、家族を守るためには、侵略行為もやむなしと考えるようになったのだ。カルマの民もそれに賛同した。

 しかしリムドメイジはそれに大いに反対した。ネクロファクターは人々を繁栄させる技術であって人殺しの道具ではない、このままでは大いなる災いがエルドラン国を襲う、と。

 だが、卑怯にもカルマ帝国王はリムドメイジの娘を人質に無理矢理協力させた。

 カルマ帝国王は、今滅びるよりも後の世に災いが訪れた方がまだいい、と答え武力強化進めた。何度リムドメイジに警告されようが、武力改革を止めなかった。
 その過程で、呪詛を込めて打ち出し敵を撃滅する呪詛砲や、拠点防衛には無類の強さを誇る量産型エアリスといった、恐るべき兵器が産み出されていった。
 中でも、ネクロファクターを改良し開発された、生きている妖怪の魂を直接武器や他の妖怪に移す技術、PF(パラレルファクター)はカルマ帝国に圧倒的な武力をもたらした。

 それを危険視した近隣の国は偵察のために小隊を派遣。しかし、それをカルマポリス王は侵略行為と疑った。完膚なきまでに偵察部隊を叩きのめし、無きものにした。

 この出来事がきっかけとなりカルマ国王は一国を一瞬で滅ぼせるような強大な力を欲した。世界侵略計画〈リムドメイン〉を発令。
 カルマ国王はリムドメイジをPF部隊とエアリスで奇襲し、追いつめ、拘束した。そして、考えうる限り最高の兵器を欲した。

 近付く生物を皆殺しにし、どんな魔法も無力と化し、どんな呪詛も跳ね返し、全てを無に帰す究極の兵器。

 それを数百人の捕虜を犠牲に、ついに完成させたのであった。


━━


 カルマポリスを覆う緑色の霧を引き裂くかのように、光の柱が何本か天から降り注いだ。分厚い雲に亀裂が入り、裂け目が出来る。
 四階建ての城の屋上でその様子を拝見していた。優秀な部下たちがカルマ帝国王を取り囲む。その横で黒いローブに身を包んだ質素な服装の魔法使いは、召喚の魔法を唱え始めた。


 「お前たち、何があっても絶対にしゃべるな。召喚に失敗したら大損害だ」

 「はっ!」


 摩天楼に強大な魔方陣が描かれる。白色に光かがやくそれは、数キロ先小さく見えているタワーをあっさりとその輪の中に抱え込んだ。


 「さあ、呼び出したぞ?お前は何を望むのだ?」

 「『カルマポリスに仇なす敵を全滅し、この町に平和をもたらす』。リムドメイジ、それが私の願いだ。」

 「本当にそれでいいのだな?カルマ帝国王。あやつは『はじめの一度』しか命令を受け入れぬ」

 「ああ」


 本来夜であるはずの天の裂け目から、金色の世界が見え隠れする。その狭間から、容易に建物を踏み潰せるような、は虫類型の足が現れた。さらに長大な長さをもつ尾。そして、鱗に覆われた胴体が、威厳を感じさせる蛇型の頭部が姿を表した。薄黒い鱗に金色の光が反射し、きらびやかに輝いている。
 ここから数百メートル離れた位置に召喚されたのにも関わらず、はっきりとその姿を識別できる。


 「……ドラゴン。建物と比較するとビルの三階分……。体長にして十メートルほどか。」


 「カルマ国王よ。お前の望み通りの生物兵器だ。左手に持つ宝玉から放たれる呪詛はありとあらゆる生体を溶かす。鱗は妖怪の呪詛を反射し、鬼の拳をでも砕けぬ。皮膚は精霊の魔法とアルファ能力を無力と化し、筋肉は妖怪の呪詛を吸収する」


 ドラゴンは飛んでいる敵国の竜騎兵(ここからでは黒い点にしか見えない)を睨んだ。すると、どこからか現れた無数の紅の玉が竜騎兵に収束、大爆発を起こした。敵の竜は鱗を剥がれ墜落し、騎乗者は消し炭となった。

 それに反応して、突如として鳥獣の群れが町の上空に召喚された。この国に潜り込んでいた召喚師が慌てて召喚したらしい。恐らく、ドラゴンの実力がどの程度か把握しようとしているのだろうが、そんな小細工は効かない。

 町のエネルギーのほとんどをあのドラゴンの召喚に費やしているのである。あのドラゴンと戦うということは、眼前に広がるこの都市、丸々一つを敵に回した、といっても過言ではないのだ。

 赤き放流がドラゴンの口内に溢れる。首をうねらせたかと思うと、ゆっくりと口を開きエネルギーの塊を放出した。
 彗星がごとく直進する光に、敵によって召喚された数十羽にも及ぶ鳥獣の群れが巻き込まれる。鳥獣の輪郭が一瞬にしてミイラのように細くなり、そのまま消え去った。少なくとも数キロは放れた敵を正確に打ち落としたのだった。
 やがて光の線が筋を残して消え去った。


 「おお!敵を一瞬で!」


 だが、敵を全て消し去ったのにもかかわらず、ドラゴンは攻撃を止めない。
 カルマ帝国の高層ビル群を見下ろすと、口のそばに光が瞬いた。開口した後、首をしたに曲げ、それをぐぅんと上に持ち上げる。
 ドラゴンから直線上に位置する地面から紫色のマグマとでも言うべき何がが噴出する。頑丈に舗装してあるはずの道路を割き、導線に存在する建築物が、内から外側むけて、まるで爆弾でも爆発したかのように吹き飛んだ。その中から紫色の柱がちらりと姿を見せ、地面に消えていく。


 「おい!これはどういうことだ?誤射か?!」


 さらにドラゴンの背中から光の束が放たれた。数十の光は一本一本意思があるかのように建物に誘導され、町の至るところで同時に爆発が起きる。
 人々の悲鳴と慟哭が一斉に沸き上がり、警報が町中に響き渡った。


 「まて、これは明らかに意図的だ。なぜ奴は町を攻撃する」


 金色の空に建築物が燃え上がる赤色が生え、美しいコントラストを描き出している。
 その一方でけたたましい騒音が町中から沸き上がっていた。交通機関はすでに軒並み麻痺してしまっているようで、車の列が延々と道路を埋め尽くしている。
 崩れ落ちる建築物が、頑丈に作られているはずの車を瞬時にスクラップにしていく。


 「簡単なことだ。平和を脅かす者、つまり侵略行為に賛同する者の欲望をへし折るためだ。恐怖、欺瞞、欲望に身を委ね私の忠告も聞かずカルマを重ねた結果がこれだ」

 「は?」


 対空呪詛砲も、迎撃を試みるが、鱗を貫くことかなわず、まるで豆鉄砲のようだった。いつもなら劇的な戦果をもたらす、三機編成の無人型エアリスも出撃しているはずだが……。


 「まだわからないのか?侵略に対する報復措置で手痛い反撃を受けるよりは、侵略をせずに専守防衛を貫く方が圧倒的に損壊は少ない。そこで、この町の人々の戦意を奪うため破壊活動に移った。国そのものが消えるよりは町数個消し飛ばす方がマシだと考えたのだろう」

 「ばかな、戦闘に参加していない一般市民まで……」


 ドラゴンの口から、この場所からでもわかるような太い光の線が放たれた。光は建物の中央に当たれば風穴があき、横になぎ払えば、高層ビルが崩れ去るまもなく両断された。建物の位置から判断すると、射程距離は最長で十キロほどだった。ありえない。
 崩れ去ろうとする自我を保つ私の隣で、魔法使いは淡々と説明を続ける。
 私はとある一つのことが猛烈に気になり始めた。


 「私の妻子は?無事なのか?」

 「守るべき者がいなければ、喜びを分かち合う仲間がいなければ侵略意識など生まれはしない」


 私の不安をよそに、光線が町を一線した。一秒にも満たない時間差のあと、五十階建ての新築ビルほどの高さの火柱が、光線の通った道なりに吹き上がった。


 「やつの最初の一撃は明確な目的があった。お前に戦意喪失してもらう。国王であるお前が考えを変えてくれれば、スムーズにことか運びやすいからな。余計に人を殺さなくて済む」

 「だから……」

 「言っているだろう?奴の町に対する最初の攻撃は、お前の妻子を狙って攻撃したのだ」


 私の麻痺してしまった心に、底知れぬ怒りが去来した。壮絶な光景にあらゆる感情を捨て去った私の心は、まるで白紙の紙に単色の絵の具をぶちまけるかのように、芯まで怒りに染まった。


 「この外道がっ!」


 魔法使いの首を絞めて持ち上げる。蒼白な頬が炎に照らされ、不気味に輝いた。魔法使いは相変わらず無表情で、話続ける。


 「お前は、そしてこの国の民は、他国に対してこのようなことを実際に行おうとしていたんだぞ?」


 目の前の高層建築が、ドラゴンの業炎の吐息に巻き込まれた。窓ガラスが全て割れ、熱によって建物全体にヒビが入る。その後、火炎に直接あぶられていた壁面が、赤く溶解していき、ドロリとただれた。
 数百メートル離れているはずなのに、それでも熱波と暴風で吹き飛ばされそうになる。


 「だからといって、それが私たちの国を破壊していいという通りにはならない」

 「何を勘違いしているのだ?私はお前の言葉一言一句違わずに、ドラゴンに命じただけだ。平和を守れとな。たとはその言葉の通りドラゴンが実践しているだけだ。もし、この国が侵略国家などではなければ、ぼやを引き起こす程度で終わっていただろう。たが、どうしようもなく歪み腐りきった人民にたいしては制裁処置をとらざるを得ないと判断したようだ」

 「そんな、バカな」


 悲鳴と怒号が聞こえてくる。町には炎が舞い躍る。文明は文化は炎のなかに崩れ去っていく。エルドラン国が何代にもわたって築き上げた美しき町が、ただの廃墟の山と変わっていった。
 地平線が見えるまで町が破壊されるころ、ドラゴンは活動を停止した。どうやらこの国にはもう、戦意を奮い立たせるような勇敢なものは残されていないようだ。
 保守的で穏和な市民だけが生き残り、他は全て消え去った。


 「被害は首都とその近辺だけだった。運がよかったな。もっとも国家の重鎮が軒並み消し飛んだはずだ。この国はもう終わりだ」
 

 だが、誰も戦意を見せないなか、私は再び戦う心を吹き返した。

 「皆のもの!今すぐ私から離れろ!」
 
 慌てて飛び退いた私の家臣たち。これが恐らく彼らに対する最後の命令だ。
 ドラゴンが私の強い戦意を感じ、こちらを向き、口を開いた。私は攻撃を避けようと動いた魔法使いを、タックルからの羽交い締めで押さえつけた。
 その直後、全身の激痛と共に目の前が白と黄色に染まった。あまりの痛みに、全身の筋肉が硬直し、魔法使いをさらに強靭に捕らえる。

 「ぬぉぉぉ!ばかな、自分に攻撃させて私を道連れにするなど!」

「お前はドラゴンを呼び出したことで相当疲弊している。今のお前ならこれには耐えられまい!これは国民を守る、どんなに汚い手を使おうが決して諦めない。地を這いつくばり、泥をすすろうともこの国だけは守りぬいてやる!!」

 皮膚がめくれ全身の穴という穴から炎が体内に流れ込む。気道を肺を、食道を胃を腸を炎があぶる。全身のタンパク質が変成し、脂肪が溶けだし、黒ずみ、カルマポリス王の意識は消え去っていた。

 「国王樣あぁつ!」

 家臣の悲鳴が火炎に混じる。沈黙を命じられた家臣もこの壮絶な光景には叫ばずにいられなかった。
 リムドメイジはドラゴンの攻撃からなんとか抜け出そうとするも、カルマ帝国王の家臣に呪詛を浴びせられ足止めされた。

 「天啓を仇で返すか!終らない憎しみの連鎖をまだ続けるつもりか!よかろう、今回は引き下がってやる。だが、覚えていろ!過ちを認めぬ限り決してこの国の呪い、カルマを解くことは叶わぬ」

 炎が閃光に変化していく。あまりの高温に炎がプラズマの線と化し、魔法使いの呪詛による防御を突き破った。
 ドラゴンの主である魔法使いの肉体は消え去り、彼の呪詛から生まれた竜は全身から緑色の霧を放ちながら収縮、結晶化していく。
 やがて高さ数メートルの水晶となると、町の地中深くまで沈んでいった。水晶はその間も、そのあとも、その数百年後も、延々と緑の霧を放出し続ける。

 ドラゴンの制裁によりカルマ帝国中央地区は完全に焦土と化した。かつての高層ビル群は跡形もなく消え去り、かわりに巨大なクレーターが出来上がっていた。

 カルマ帝国はこの日より崩れ去り、繰り返し領土の縮小が起き、大陸西部にある小国の一つとなってしまった。

 一方でカルマ帝国の首都跡地から、高さ三メートルほどの巨大な水晶が発見された。
 膨大な呪詛を滞りなく放出し続けるその水晶を、神と讃え、信仰する妖怪が現れた。妖怪たちはより身近に信仰するために水晶の回りに町を造りあげた。
 水晶はカルマ帝国首都の跡地にできた町、カルマポリスの象徴となり、ワースシンボルと呼ばれるようになった。

 そして、ワースシンボルは、カルマポリスの平和と繁栄、そして技術の糧となるのだが、それはまた別の話である。

登りつめた男 PFCSss

 最初の頃はボディーガードしていやした。その他に普通の正規のアルバイトで生計をたてる、それは極貧な生活でしたよ。しかも、期日までに手柄をたてなきゃすぐに消される。いゃぁー、あの頃は大変だった。
 因みにその頃のあだ名が「ジジイ」。若い奴らが立ち上げた組織のなかで、俺だけ年齢が50を越していやした。そこからついたあだ名です。

 ただ、敵側のギャングを罠で暗殺した辺りから流れが変わりましてね。エルドラン正規軍の手口を偽装したんです。そしたら、ギャングの奴ら見事にエルドラン軍を逆恨みしていましたよ。たしか、最初にボスから誉められた時です。
 着実に成績を伸ばしていった俺は、やがてカジノ経営を任されるようになりやした。その傍らで宝くじを運営して小銭稼ぎ。

 さらに稼いだお金で事業を拡大。売春業と賭博業のオーナーをさせて頂やした。傍らで警察、弁護士、政治家に、はした金をばらまきあらかじめ懐柔しやした。敵に回すと結構やっかいなんですぜ。
 この時点で、一流ホテルの一室にすみ酒池肉林の生活を送るような毎日を巣子していやした。年収にして3500万円。

 そんななか、当時のボスが暗殺されかけまして、怖じ気づいたのか引退しちまったんです。
 後継人に俺が選ばれやした。当時、エルドランでは『ミズ』と『ホノヲ』と呼ばれる二大組織がドンパチしていたもんで、結構ヤバイ状態だったんです。ボスは営業向きで、暗殺にもたける俺に座を譲られやした。
 この頃には『ジジイ』では忍びないっつんで、『ワイズマン』と呼ばれるようになりやした。

 俺はある程度知名度が上がると、若手のギャングやヤクザらと密かに同盟を結びました。さらに会合を開き、共益主義を主張。当時は血縁主義や暴力主義だったギャングに一石を投じやした。

 まあ、まさか廊下であのおかたに話しかけられるとは思いませんでしたが。

 「ノア輪廻世界創造教はあなたの意見に賛同します。無駄な抗争ほど無意味なものはありません。これからもビジネスパートナーとしてよろしくお願いします」
 「ありがとうございやす。教王さま」

 それまではギャングは力とか暴力で人を従えていたんです。無能だろうがなんだろうが血筋が親玉の後を引き継ぐ、そりゃ非合理の塊のような集団でした。
 日々ギャング同士の殺りあいで金も体力も疲弊していく。そんなのは無駄です。これからはギャング同士結託して、全体の利益を追求すべきでしょう?

 俺は抗争には基本的には手を出さず、あくまで中立を貫きやした。

 しかし、当時の二大組織『ミズ』『ホノヲ』が抗争しているなか、どうしても片側につかなきゃならねぇって状況になっちまったんです。
 『ミズ』は妖怪差別が酷くて時代遅れ。『ホノヲ』はボスが威張って暴力ふるって下の奴らを無理矢理支配している古風な組織。どっちにしろ組織がデカイだけで将来性は0でした。
 そこで、俺は悟られることなく両方の組織にちょっかいをかけやした。適当な雑魚を罠にはめていたぶる。それをもう片方の組織のせいだと密告する。そうしていくうちに『ミズ』と『ホノヲ』の抗争はヒートアップして、両組織はどんどん疲弊していきやす。
 とうとう俺は『ホノヲ』に『ミズ』のリーダーの暗殺を命じられやした。
 俺は『ミズ』に与した演技をして、キャバクラに『ミズ』のボスをつれてきやした。きゃわいい女の子と遊んで、『ホノヲ』のボスをどういたぶるか話したあと、俺は用を足しにトイレに行ってきたんです。扉を閉めた瞬間、どたどたと物音がしたかと思うと、女どもの悲鳴が聞こえたかと思うと、急に静かになりやした。

 トイレから出ると、そこには全身をワイヤーで引き裂かれ絶命した『ミズ』のリーダーが。

 うわぉ!

 そして、俺の目算通り調子に乗った『ホノヲ』のリーダー。そいつを他のギャングらに許可をもらいつつ、入念に準備した上で暗殺。

 「みんな、殺っていいよな?」
 『どーぞどーぞ。好きにしろ』

 因みに『ホノヲ』のボスを殺したあと、俺に歯向かう輩を、全滅させろと部下に命令していやしたが、特になにも起こりやせんでした。なんででしょうね?

 俺は二大組織をぶっ潰したことで、ギャング界でも随一の切れ者として名を馳せました。

 俺は『ミズ』『ホノヲ』の縄張りだった場所を、エルドランの各都市のギャングたちのボスを集め、縄張りを公平に取り決め、明確化し統治しやした。

 犯罪組織の対立は以前の二大組織のように自滅を招く、目立たないことが重要であるとボスどもに進言。犯罪シンジケートを構築、さらに運営する上での取り決めを作り、合理化。さらに制裁組織の設立。いやぁ、我ながらよく実行出来たな……。

 「マダム・マーチャル、おたくんでも商売させてくれませんかね?」
 「好きにしな。あんたは精霊らしくない。変化を恐れない。変化と革新が武器だ。あんたなら少しはこの国を面白してくれるんだろう?」
 「さすがは大商人。懐が深いようで」
 
 実質裏社会の頂点にたったというのに、俺は決してギャングやヤクザらのトップではなく、あくまで一組織ということを強調しやした。『ワイズマン(賢人)』なんていう大層な名前はやめて、『オールドマン(老人)』と改名。俺らとお前らは同じギャングスターだ、ってな。
 公の場で支援金を渡してくるやからもいやしたが、俺は受け取りを拒否。上下関係なんて下らんものにすがる縁はないんでね。
 さらに一組織がトップを目指すようなことがないように協定を設立(内容は共益共生主義から逸脱した組織をぶっつぶすというもの)。
 この行いが功を奏しまして、他の犯罪組織からの信用を集めやした。これまでは一番を狙う輩しかいませんでしたからね。
 なんでてっぺんを名乗らないのかって?そんなことよりも金だよ金。ギャングのトップになるよりも商売繁盛の方がよっぽど大切だ。客さんは神様、神様の上に立ってどうやって商売するんですかい?

 そのあとは俺自身は直接犯罪に手を貸さず、各都市のギャングたちをクッションにして間接的に指示を出しやした。ギャングたちは自分の町を好き放題出来るからそれには万々歳。自分達は認められている、という確信も得られるため快く受け入れてくれやした。

 そのお陰で俺は訴えられても、完璧なアリバイを主張できやした。ひねくれた弁護士によって投獄されるも優秀な弁護士を雇い5000万円であっさりと釈放。

 野心家の弁護団につかまって投獄されたときも悠々自適な投獄ライフを送りやした(特別食、ラジオ、新聞あり。労働はしない。平然と面会を利用して組織に指示を出す)。なんせ、看守さまに袖の下を振る舞っていやすからね?

 因みにちょっとした暴動とか起きるかと覚悟しましたが、そのときも特になにもおこりやせんでした。

 挙げ句のはてにはエルドラン軍を犯罪組織のコネを利用して支援。恩赦で釈放。実質エルドランの上層を牛耳っている、ノア教と協力関係にあったんで、取り引きはとてもうまくいきやした。

 釈放後は競馬場や高級レストランに毎晩のように通いつめ、優雅に暮らしてやす。その傍ら公的な不動産業でも功績をあげやした。表では大商人。裏では大密輸商。いい響きだ。
 さらに俺は世界的に有名な組織にも接触していきやした。

 「いろんな国の物品が流れてきますぜ?ダンテのアネキにとっても悪い話じゃないはずです」
 「なるほどねぇ。あたしの港使う代わりに関税をくれるってわけね?」

 俺がエルドランの賭博場に行くと、彼に賄賂をもらっていた兵士や政治家が群がって握手を求めてきやす。権力のありがたみを感じますねぇ。

 今ではアンティノメルのギャング精霊(ダンテのアネキ)と手を組み、エルドラン、キスビット、ドレスタニア、アンティノメル、ルウリィド間の密輸ルートを確立。
 特にエルドランドレスタニア間は、仲介都市であるジネを掌握したことで名実ともに最高峰の密輸商となりやした。絶大な利益です。組織的な年俸は数千億にまで達しやした。
 さらに賄賂で雇った弁護士を利用してロンダリングしつつ投資にも手を出していますぜ。

 そして、ドレスタニアでは、

 「わかりやした。夜の掃除受けおりますぜ」
 「よろしく頼む」

 ガーナ王に夜のドレスタニアの清掃と引き換えに、協力関係(と言うなの相互利用)を結びやした。

 そして、一年前に解剖鬼の旦那と出会い、今にいたりやす。
 自分で言うのも難ですが、俺は数千億の金を牛耳る大密輸商なんです。が、俺は慎重な性格でね。表社会には顔を出していないし、組織内でも『老人』という二つ名で通っていやす。本名は闇のなか。まあ、俺の本名を知ったところでそんなやつ、どこの戸籍にもいやしませんがね。

エスヒナ×アウリィ×ルビネル

注意:坂津さんとの交流ssです。
(id:sakatsu_kana)

 文章の量を半分以下に削っています。フルバージョンももちろん書きましたが、とても掲載できる内容ではないので割愛。






 アウレイスの部屋にて、私は黒髪の少女と銀髪の少女と向き合っていた。

 「この子が私の友達のエスヒナよ」

 銀色の髪を揺らしながらアウレイスそういうと、黒髪でいかにも活発そうな女の子が肩をぎゅっと掴んだ。ビクリとアウレイスが体を震わせた。褐色の肌が、アウリィの白い肌と触れ合う。

 「こんにちは。あたしがエスヒナ。よろしくね?」

 エスヒナは向日葵のように屈託のない笑顔で私に笑いかけてくる。さらに握手を求めて右手をつきだしてきた。
 私は左手と右手で包み込むように握手に応じた。

 「私はルビネル。『アウレイス』の友達よ?」

 私はアウレイスに軽く目配せしてから答えた。

 「ああ。あんたのことは聞いてるよ。『アウリィ』が初対面で心を許すなんて、そうとう優しいんだねぇ?」

 「あら、『アウレイス』から聞いていたのね。私のコト」

 信じられない、といった顔でエスヒナは私を見つめてくる。私は握ったままのアウレイスの甲を、軽く人差し指でなぞりながら微笑みを浮かべた。
 手を通して、エスヒナがゾワゾワしているのを感じた。これなら、行けそうね……。

 (やたら距離感の近い人だなぁ~(汗)でもアウリィが心を許してるんだからすごくイイ人なのは間違いないね。失礼のないようにしなくっちゃ!それにしても、すべすべしてて気持ちいい手だなぁ)

 「とりあえず、『アウレイス』からどんな人だって聞いているの?」

 ルビネルはそっとエスヒナの手を撫でながらにこりと微笑んだ。

 「そうだなぁ、色々言ってたけど、一番は『魅力的』かな?中毒性のある魅力とかなんとか?だったよね、アウリィ。あとは綺麗とか優しいとか?」

 (しかしこの手は・・・これが中毒性?)


 「そうなの。ルビネルはすごく魅力的なのよ。一度見たら一生忘れられないくらい……」

 「それは、いいすぎよ。別に私はただの学生。『アウレイス』みたいに清らかな心は持ってないしね?」

 怪しい視線をアウレイスに投げ掛ける。アウレイスは何かを思い出したかのように目線を逸らした。

 その間もゆっくりとエスヒナの手をなで続ける

 「ルビネル、って呼んで良いよね?」

 「呼び捨てで構わないわ。あだ名で読んでもいいのよ、エスヒナ?」

 「じゃあ!そうだ、ルビィってのはどう?」

 「ルビィ……いいあだ名ね」

 「あぁ、そーだ。あたしのことはヒナって呼んでくれる?アウリィはどーしてもヒナって呼んでくれないんだけどね(笑)」

 「ありがとう、お言葉に甘えるわ」

 一息ついて、エスヒナは言った。

 「ルビネルはさ、撫でるの上手だね!手を撫でられてるだけなのにこんなに気持ちいいなんて、初めてだよ。マッサージか何かかな?すごいね!」

 一方ルビネルは手応えを感じつつも、あくまで平生通りの表情で微笑む。

 「フフフッ、教えてもらったの。女の子を撫でるときは相手の気持ちを考えて丁寧に撫でなさい、と。女の子は誰もがお姫様である権利があるの……」

 「あたしがお姫様!?あっはっはっ!そんなガラじゃないよ。無いけど、でも、そう言われるのも悪くないね。」


 余韻を残しつつ、静かに手を引くルビネル。さりげなくアウレイスの顔を伺う。ルビネルはその表情に満足しつつ、エスヒナと話続ける。


 「それにしても、あなた……なるほど……」


 興味深げにエスヒナを見つめる


 「ん?あたしの顔に何か付いてる?そんなにじっと見詰められると照れちゃうよ~」

 「ヒナ……照れてる顔、見惚れちゃうわ」


 エスヒナの頬に手を伸ばす。

 アウレイスは何かを悟った様子で、ゴクリと唾を飲んだ。

 「あ、呼んでくれるんだ。アリガト!ルビィのマッサージは手だけじゃなくて顔にもできるの?それにしてもすごく綺麗な髪だね、ルビィ。あたしは見ての通りバサバサだから、羨ましいよ~。」


 そう言いながらエスヒナは目を閉じ、顔をルビネルに差し出した。

 (抵抗しない。興奮もしない。妙な気分だわ。アウリィが言っていたのはこのことね)


 「あなたが望むなら何度だって読んであげるわよ、ヒナ」


 左手で自らの髪をさっとかきあげる。ルビネルはエスヒナの頬を右手の人差し指と中指でつーっとなぞった。そして、顎のところで止めた。


 「髪の毛、誉めてくれてありがとう。とても嬉しいわ。ヒナの顔もとっても素敵よ。さわりごこちが滑らかで、よく手入れされているのがわかるわ……」

 「イヒヒッ。ルビィは優しいねぇ!あンっ、それくすぐったいよぉ。ねぇ、このマッサージってアウリィにもしてあげたの?」

 (さっきからアウリィが緊張してるみたいに見えるけど、どしたのかな?)


 「『アウリィ』?エスヒナにどこまでシテイイノ?」

 ルビネルはあえて呼び方をかえてアウレイスに聞いた。本音が聞きたいという暗黙の意思表示である。


 (ん?ルビィもアウリィって呼ぶんだ?・・・どこまでして良いって、本格的なマッサージかな?)

 「あのね、ルビネル、私もよく分からないの・・・今までエスヒナのことをそういう目で見たこと無かったし、でも私、もう我慢できない・・・」

 アウレイスは身をくねらせながらルビネルの袖をつまんだ。

 (幸せなとこ?マッサージで?)

 「フッ……フッ……早すぎよ。そんな子にはお仕置きしてあげるわ」

 お仕置き、という単語でアウレイスは頬をさらに紅潮させる。

 ルビネルはあえて上着を脱ぎ捨て、ワイシャツ姿でアウレイスに近づいた。

 そして、一気に引き寄せると、自分の唇でアウレイスの口を包み込んだ。
 荒ぶる舌をアウレイスの口内に挿入する。

 白い肌に指が食い込むほど強くアウレイスを抱き寄せる

 さらには、上体をアウレイス側に傾け、覆い被さるような姿勢でアウレイスの中を蹂躙する!


 「アウリィ!その躰!その表情!何もかもがいとおしい」


 息継ぎを挟み、さらに喉の奥まで舌を押し込む。
 口の回りが唾液でぐちょぐちょになり、顎から液が滴る。
 紅潮した頬はアルビダとは思えぬほどの鮮やかなものだった。
 ルビネルは眼前の快楽に瞬時に支配されてしまった。


 「ねぇ!ふたりとも!や、やめてよ・・・どうしたの?おかしいよこんなの・・・」


 狼狽するエスヒナ。劣情というものを理解できない以上、二人の豹変は自分の第三の瞳の影響としか考えられないが、しかしその瞳は額当てによって封じられている。

 ルビネルはエスヒナの言葉を耳にして、ようやくアウレイスの唇から自らの口を話した。


 「プハァ……ハァ……。あっ……、もったいない」


 二人の口を透明な糸が繋げていた。ルビネルはアウレイスの手ですくいとると、丹念に嘗めとった。


 「フゥー……フゥー……アウリィ……も……気持ちよかった?」


 ルビネルは残された理性で何とか正気を取り戻す。


 「もちろんよ、ルビネル・・・ねぇ、止めないで?もっと、もっとシテ欲しい・・・ほら」

 「止めてアウリィ!こんなの変だよ!」


 ルビネルはフフフッと微笑むと、エスヒナに語りかけた。


 「変じゃないわ。彼女は欲望に忠実に動いているだけだもの」

 自然な動きで、エスヒナからアウレイスを覆い隠すように、振る舞った。

 「このこはね、今とっても幸せなのよ?」

 ルビネルはアウレイスを胸に抱き、ゆっくりと撫でながら言い放った。

 「あなたにどう見られているのか、どう思われているのか。それすらどうでもよくなるくらい、とっねも……。ヒナ、心を許した人と触れあうのと、望まぬ人に触れられるのとは全く違うのよ!好きな人と交わす行為は、とても気持ちいものなの。心も体も満たされる幸せな一時、それが今のアウリィと私よ」

 「ねぇ、エスヒナも・・・来て?」

 恍惚の表情でアウレイスがエスヒナに呼び掛ける。

 「これが、幸せ?」

 エスヒナは恐る恐るアウレイスに近付く。ルビネルが体をずらし、エスヒナをアウレイスの、前に誘導した。




━━━




翌日

①エウス村長とルビネル

エウス村長「アウレイスについて聞いていいかい?」

ルビネル「何でもいいですよ。癖、性癖、過去、トラウマ、髪の毛の先から足先まで全部知ってますよ?」

エウス村長「……ん?まあ、いいか。じゃあ、近況について」

ルビネル「教授を誘惑した直後に私の命を救いました」

エウス村長「…へ?」



エウスぽかーん


━━

②エウス村長とエスヒナ


エウス村長「エスヒナ?」

エスヒナ「はい?」

村長「昨日一室を貸してあげたが、何をしていたんだ?女の子同志が集まるとどんなことをするのか、単純に興味が沸いてね」

エスヒナ「えっと……マッサージしたりとか?」

エウス村長「マッサージ?意外だな?」

エスヒナ「……一晩中」

エウス村長「!?」


エウス「(私が耐えた意味よ・・・)」


━━


エウス村長「アウレイス」

アウレイス「はい?」

エウス村長「昨日の晩何があったか正直に話して欲しい」

アウレイス「エスヒナの悩みを聞いてあげて、私とルビネルの二人で改善してあげました」

エウス村長「よかった……」

アウレイス「え?」

エウス村長「やっぱり私の勘違いだったか」

アウレイス「?」

エウス「(マッサージについて深く突っ込まないでよかった・・・)」




③エウス村長とダクタス

エウス村長「ダクタスさん」

ダクタス「ん?随分と疲れているようじゃの?」

エウス「最近の女の子ってどういう友達付き合いをしているんだ」

ダクタス「一緒喋ったり遊びに行ったり……」

エウス「マッサージを一晩中したり……とか?」

ダクタス「はぁ?!」

エウス「いや……何でもない」

ダクタス「(エウス村長は相当お疲れのようじゃのう)」


④女食系女子三人



エスヒナ「そういえば、エウス村長どうしたのかな」

アウレイス「なんか、すごく疲れてるみたいだったけど。普段だったら厄介ごとにも嬉々と踏み込んでいく人なのに……」

ルビネル「ダクタスさんとも話してたし、何か深刻な問題でもあったのかしら」

エスヒナ「手助け出来ないか聞いてみよう!」



⑤女食性女子とエウス村長

エウス村長「三人そろってどうしたのかな」

ルビネル「村長、何か手伝えることがあれば言ってください」

アウレイス「一人で抱え込まないで下さい」

エスヒナ「あたしたちじゃ力になれないかもしれません、でも悩んでいるのなら話だけでも…」

エウス村長「(悩みの種が悩みがあるか聞いてきた)」




※このあと普通に談笑しました。

PFCT(パラレルファクターカードタクティクス)

どうでもいい解剖鬼ss



 そういえば、一度だけレカドの店の前で妙なカードを拾ったことがある。腕がすごい本数あるバケモンの描いてあるカードだった。
 最近の子供はこういった娯楽にも手を出すのだろうか。どうやら対戦型のカードゲームらしいがよくわからない。
 どうやらカードに呪詛かなんかがかかっており、所持者の素質や気分によってカードの絵柄や説明書きがかわるらしい。とりあえずフリーマーケットで20枚買ってみた。はじめは白紙だったカードにみるみる絵柄やテキストが浮かび上がる。あっという間に女体化レウカドのデッキが出来上がった……何故


━━


PFCT(パラレルファクターカードタクティクス)


・魔物カード、スキルカード、イベントカードがある。

・20枚の山札で勝負する。

・初期手札は四枚

・自分のターンの開始時、カードを一枚引く。

・自分の番に一度マモノカードが出せる。(これを普通召喚と呼ぶ)

・普通召喚以外に、カードの効果で召喚することもできる。(これを効果召喚と呼ぶ)

・マモノは自ターンに1回攻撃できる。マモノがいればマモノに、マモノがいなければプレイヤーに攻撃できる。(ただし、初ターンのみ攻撃不可)

・ライフは5。すなわち相手の場にマモノカードがないときに5回攻撃すれば勝ち。

・スキルカードは自ターンにしか使えない。

・イベントカードはいつでも使える。

・やられたマモノや使ったスキルカードはアンダーグラウンド(UG)に置かれる。



━━

 とりあえず、老人と対戦してみた。



○一戦目

 私は初期手札にあったマモノカードを、人差し指と親指で上から摘まむと、テキストを読んでから、テーブルに置いた。

 「解剖鬼を召喚。効果で手札に『閃光弾』を加えてターン終了」

 「レウカドを召喚からの攻撃で」

 老人は解剖鬼のカードを指した。私は首をかしげて老人に問う。

 「私の方が恐らく強いが?」

 「スキルカード『煙菅幻影』。レウカド先生の攻撃宣言時、問答無用で敵をUG送りにしやす」

 老人は得意気にカードを出してきた。どうやらアルビダの幻術師がいるときにのみ出せるカードらしい。どうやら私のカードが負けるみたいなので、とりあえず、これを出しておく。

 「えっと……これでいいんだよな?……イベントカード『閃光弾』。相手の能力と攻撃を無効とする」

 簡単には負けん、と意気込んだが、老人は「いやぁ、すいやせん」と軽く頭を下げると、レウカドのカードの説明欄を指差した。

 「レウカド先生が場にいるとき『煙菅』カードは無効になりやせん」

 「……」

 解剖鬼のカードは意図もあっさりとアンダーグラウンドに送られた……。
 とりあえず、どうにかしてレウカド先生を処理しなければ!

 「私のターン……」

 「カードを引いたタイミングでイベント『煙菅の封殺』を発動しやす。このターン、旦那はマモノカードを普通に出すことができやせん」

 「……え。じゃあ、次の番レウカドと、次に出てくるもう一体で2ダメージ確定?」

 「そういうことになりやすな」

 「…………ターン終了」


 ぐっ……マモノカードを封殺してくるとはえげつない。カードの効果なら出せるとのことだが、生憎私の手札にそんな都合のいいカードはなかった。


老人「俺のターンで。まず『煙菅の報酬』でカードを二枚引く……」


 二枚目のカードをめくったとき、老人の顔がパァ!と明るくなった。これ以上何が起こるんだ……。


 「キタキタぁ!俺はレウトコリカを普通に召喚。レウ兄妹がいるとイベント『師弟の絆』で、デッキからガック・グラを追加で出せやす」

 「3ダメージ確定……」

老「ガック・グラの効果。召喚時UGの『煙菅』カードの一枚を手札に加えることができやす。俺は『煙菅の封殺』を加えやす」

 次のターンも私はマモノカードが出せない。つまり私はがら空きのまま老人にターンを渡すことになる。そうなれば、三人の攻撃で私のライフは0だ。

解「詰んだ……」






○二戦目

 とりあえず、次こそは勝つ!そう意気込んだものの……。老人が先行の時点で全てが決まっていた。

 「今度は俺の先行で。初手レウカドからのスキル『煙菅の封殺』で」

 「……何も出来ずターンエンド」

 「『煙菅変化』でレウカド手札に戻してガック・グラを効果召喚。さらにガック・グラの効果でUGの『封殺』を手札に。レウカド召喚。二人で攻撃。2ダメージ。旦那のターン開始時、『煙菅の封殺』発動」

 私は率直な意見を進言した。

 「……ひどい」



 次のターン、レウトコリカを呼ばれて私はあっさりまけた。



━━


老人「策士にタクティクス系のゲームを挑むのは無謀ですぜ?旦那」

解剖鬼「初心者に全力を出すのは、人として少し退くんだが」

老人「え……弱気のつもりでしたが……」

解剖鬼「言っている意味がわからない。あと、戦い方教えて」

老人「金次第、ですぜ」

解剖鬼「……課金するか」







今日のカード


・レウカド マモノカード 
 カテゴリ:ガック=グラ
 コスト0
 効果:このカードが場にあるとき、『煙菅』カードの発動と効果は無効にされない。

・レウトコリカ マモノカード 
 カテゴリ:ガック=グラ 
 コスト0

・ガック=グラ マモノカード
 カテゴリ:ガック=グラ
 コスト2
 効果:このカードは普通召喚出来ない。このカードが効果召喚された時、UGから『煙菅』カード一枚を手札に加える。

・煙菅変化 スキルカード
 自分の場にカテゴリ『ガック=グラ』カードが存在するときに出すことが出来る。自分の場のカテゴリ『ガック=グラ』カードを一枚手札に戻し、手札からガック=グラを効果で召喚する。

ひな祭り 最終回 お雛に幸あれ PFCSss15

『魂を操る力はわらわのものではない。クロノクリスのものじゃ』



○ドレスタニアより
・ショコラ
エリーゼ

nagatakatsukioekaki.hatenadiary.jp


・レウカド
hirtzia.hatenablog.com




『人工的に作られたPFも、クロノクリスの支配から解放され、消え去るであろう。もはや、エアリスの量産も不可能。この施設もあやつが死んだことで機能を停止した』




○アンティノメルより
・ソラ
・ルーカス
・シュン

poke-monn.hatenadiary.com





『もっとも、あやつの死ぬ間際に支配した、この体だけは維持出来たがの』





○リーフリィより
・クライド
・クォル
・バトー

yourin-chi.hatenablog.jp




『だが、わらわは政治に干渉する気はない。無闇に力を振り回せば世界に破滅と混沌をもたらす、というのが今回のでわかったからのぉ』




○ライスランドより
・先生
・オムビス

yaki295han.hatenadiary.jp




『これからは、怨念や定めに縛られず自由にすごそうと思う……』




○グランピレパより
・グレム
・殺す助
ritostyle.hatenablog.com




『お主らのような誇り高き者たちと出会えて本当によかった。そなたらと出会ったことはわらわの生涯の宝じゃ』




○クレスダズラより
・スヴァ=ローグ

cressdazzra.hatenadiary.jp



『ありがとう。わらわはそなたらに感謝しても感謝しきれぬ』



○キスビットより
・エスヒナ

www.kana-ri.com




『また出会う機会があれば、今度は仲間であることを切に願う』





○チュリグ(外伝)より
・ハサマ王

twitter.com




『では、さらばじゃ』




○エルドラン(自国)より
・解剖鬼
・セレア
・クロノクリス

thefool199485pf.hateblo.jp











……。









 視界がまだぼやけている。眼前に作業台があり、何者かが薬を煎じているところだった。彼の着る黒いコートが私に安らぎを与えてくれる。

 「起きたか。気分はどうだ?」
 「生き返るような気分だ。フッ……フッ……。アロマだけでもここまで効果があるとはな」

 視界がはっきりしてきた。作業台の綺麗な手見つつ、華奢な腕をたどっていくと、やがてドクターレウカドの得意気な顔が視界に入った。
 ここはドレスタニアの裏通りにあるカレイドスコープという医院。つまり、ドクターレウカドの診療所である。

 「……今思えば、全部夢のような気がする。ドクターレウカド、あれは全部夢だったのか?各国を回り、仲間を募り、邪宗を打ち倒し、世界の平和を守った。まるでファンタジーか何かだ」

 「夢じゃ困る」

 ドクターレウカドは薄暗い部屋のすみに置かれた、華やかな雛壇を親指で差した。そこだけ空間が切り取られたかのように華やいでいる。
 私は照れ隠しにペストマスクを掻いた。黒い手袋とマスクが擦れて皮同士の擦れる音が響く。
 フゥ、と煙を吐き出すとドクターレウカドはニヤリと笑った。

 「あんたから貰った報酬は有効活用させてもらう」

 「え?妹のレウトコリカに全部貢ぐって?」


 業務用のイスに座っているらしい、レウカドは一旦白い髪の毛をかきあげた。そして、顔をしかめて私のマスクの眼窩を覗く。メス顔に凛々しさが宿った。


 「どういう聞き間違えをしたらそうなるんだ!」

 「何も間違ったことは言ってないだろう?」


 私は全く臆せず穴だらけの防弾コートを整えながら答えた。
 ドクターレウカドはばつの悪い顔で舌打ちをした。さらに白く繊細な指で、煙菅を机の上にそっと置く。その丁寧な動作に少し見とれた。苛ついていても道具は大切に扱うようである。


 「昨晩といい、今日といいどれだけ俺に迷惑をかければ気が済むんだ……」

 「いいだろう?それ相応の対価は払っている。因みにその机の上の雛菓子もまともに買えば相当高価なものだぞ?」


 ドクターレウカドは作業台の上に手をつき、トントンと指で机を叩く。机に降り積もった灰が規則正しく宙に舞う。


 「このあと外せない予定があるんだ。早く帰ってくれ」

 「レウトコリカとのデート?」


 ドンッ!という音が治療室に響いた。慎ましく小さなイスに座っていた私は、転げ落ちそうになった。


 「あんたなぁ!」

 「キレた顔もかわいいぞ、ドクターレウカド。まずは手をおさめろ。そしてにこりと笑え」


 私が両手の手のひらをしたにして、待て待て、とドクターレウカドをなだめる。
 レウカドは手を引っ込めると、普段ではあり得ないくらい爽やかな笑顔を私に向けた。
 そして、ばっと顔を押さえて青ざめる。


 「お前……今何をした?」

 「『命令した』。それだけだ。もう一度命令する。『自然に笑え』」


 レウカドはしょうがない奴だな、と微笑を浮かべた。並のキャバ嬢を遥かに越える絶品の笑みである。


 「……ッ!なっなんだ!命令に逆らえないッ!」

 「『雛祭り』の呪いだ。今日一日女の命令に男は逆らえん。艶かしい貴方の顔、しかと拝見させてもらったぞ!クッ……クッ……クッ」


 レウカドははっとした目で私を見た。


 「シュン……クォル……バトー……クライド……先生……グレム……ショコラ……まっ、まさか!」

 「そうだ!全員男だ!もちろん全員に試したぞ?皆の百点満点の表情をくれた。因みに特におすすめなのがバトーの女の子ポーズ!」


 ダン!と黒い物体を私はコートの中から出した。またしても机の上にわずかに降り積もった灰が、舞い上がった。

 「カルマポリス製呪詛エネルギー式インスタントカメラ改良型!」

 「世界を救うことを口実にして、あんたなぁ!」

 「貴方が最後なんだ。これで私の今回のコレクションが完成する。頼む。とりを飾ってくれ」

 つっかかるドクターレウカドに、私は獲物を狙う蛇のように滑らかな動作で前のめりになった。レウカドの吐息がペストマスクの先端に当たって、音が内部に反響する。はぁ、はぁ、という音が堪らんッ!

 「観念しろ!そして、愛想よく私に撮らせろ!ポーズも指定するからな!逆らったらもっともぉっと酷いポーズをやらせてやる」

 「おかしいだろ!?蜂の巣にされて何でそのカメラだけ無事なんだ!?」


 「セレアとグレムに修復改良して貰った!」

 「グレムはわかるがセレアって誰だ?」

 「種族差別によって無念の死をとげた子供たちの魂の集合体。レギオンとも言う」

 「なんでそんな奴にカメラの改良を頼んだんだ!」

 すんごく慌てるドクターレウカドもいい!!

 「金属に精通してたからな」

 レウカドは私からカメラを取り上げると地面に叩きつけた。しかし、液状となり飛び散った挙げ句、数秒後には元通り復元した。

 「嘘……だろ……」

 「いいじゃないか。因みにエリーゼさんに言ったら、現像した写真と引き替えに、女性陣の撮影に協力してくれた。ほら、スヴァ様のサービスカットとエスヒナの決めポーズ。エリーゼさん本人の写真もあるぞ!」

 レウカドは体を仰け反り、あからさまに拒否の姿勢を見せた。動揺のあまりドタドタと足音をたてて後ずさるも、メス顔でそれをやられると嗜虐心しか沸かない。

 「ひっ……!この変態カメラマンがッ!!」

 「さぁ、おとなしくしろぉ……」

 「くっ、意思とは無関係に体が……服従のポーズを……うわぁぁぁぁぁ!」


 「……」


 「……」


 「……?」


 両手を顔にかざしてどうにかカメラの魔の手から逃れようとするポーズのまま、ドクターレウカドは止まっていた。今に襲いかかるシャッター音に怯えつつも、いつまでたっても聞こえてこない音に違和感を感じたらしい。指と指の隙間から私をチラ見している。
 私はペストマスクの先端を撫でながらフゥゥとため息をついた。


 「……無理矢理とっても虚しいだけだ。旅を通して数々のドクターレウカドの姿を見てきて、今、悟った。私が見たいのは雛祭りの呪いで無理矢理ポーズを取らされているドクターレウカドではない。日常のちょっとした仕草に宿るあの蠱惑的な魅力こそが好きなのだ。たまに見せる男らしさがいいのだ。今のレウカド先生の姿は私の求めているものと違う」

 「すまん、写真を撮らないのは嬉しいが、その言い分は、退く」

 全身を使って嫌悪感を露にしたドクターレウカドに私はイタズラっぽい笑みを浮かべる。もっとも、レウカド先生からは見えていないだろうが。

 「大丈夫。雛祭りの魔力で全部わすれるだろう」

 「余計に質が悪い……本当にもう、さっさと帰ってくれ……昨日の今日でもう俺は疲れた。得たいの知れない薬で体だけはなぜか元気だがな」

 「フフッ……もう満足だ。今度またお世話になるぞ」

 「二度とくるな」

 「はいはい」



 私は意気揚々と店を後にした。カレイドスコープと書かれた看板と、そこに吊り下げられている美しいサンキャッチャーを見上げつつ右手に曲がる。暗がりの路地を歩いていき、ボウフラの湧いた噴水を左に……しばらく歩いたところで、倒れた。自身の体から生暖かい液体が流れ出ていくのを感じた。

 「無理……しすぎたか……」

 能力でだましだまし維持していた体の容態が一気に悪化したのだ。全身の弾痕から血液が吹き出て、チアノーゼを引き起こした。視界がグルグルと回転しているような錯覚に陥る。脳みそに血液が行き届いていないために、麻痺しているのである。

 「ちっ……まずい、このままだと出血性ショックが……」

 みるみるうちに視界が赤く染め上げられていく。
 体質が特殊なために、どうせ一般の医療機関に診てもらおうが処置はできない。唯一私の体を治療できる私の能力は、残念なことに呪詛切れで使えない。オーバーロードしても、肉体を治療するような能力ではないので意味がない。

 「まずい、思考が……」

 だんだん頭も回らなくなってきた。辛い。めまい、吐き気、あと……なんだ?自分の様態すらわからなくなってきた。なんだ、すごく瞼が重い……。

 あれ……暗い……朝……なのに。

 真っ暗……


━・━



 「痩せ我慢にも、ほどがあるぞ?嘘つきやがって」

 意識を失った解剖鬼のとなりに人影が現れた。

 「……こんな所で死なれたら営業妨害だ。それに……あんたにはもっと貢いでもらわないとな」

 ゆっくりと解剖鬼のコートを、ベストを、上半身の下着を脱がせた。背骨の部分にある溝に手を突き刺し、両手で押し開くと扉が開くかのように肋骨と背骨が左右に動いた。肋骨のうちがわを黄色い脂肪と、青黒い血管、白い筋肉が埋め尽くしている。肋骨を避けたことで新たにからだの奥から現れた、白くて薄い胸膜らしきものを破る。その中に、子供の背中が見えた。

 「なんで、こんな奴がこいつの正体なんだろうな。……はぁ、お代は前払いしてるから今回はサービスだ。スーツも後で持ってくるから安心しろ」

 ドクターレウカドは不気味なペストマスクの怪人の体内から、年端もいかぬ少女を取り上げると、診療所に戻っていく。

 その背中を後押しするかのように、爽やかな風がドレスタニアの裏路地を吹き抜けていった。







ルビネル あんど アウレイス PFCSss 

 メインブログの方で公開した谷川教授ssです。
 


 今回はちょっとした裏話も含めて箇条書きに解説してみました。

 これは元々坂津さんの所のアウレイスが可愛すぎて、TwitterのDM(チャットみたいなの)で衝動書きした短文がきっかけで書きはじめました。なので、実は2部から書き始めています。

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 第一部。これは主にルビネルの紹介のための文章になっています。まだ女ったらしになる前の貴重なお姿です。それでも妖艶さは人一倍。

・ルビネルの種族は妖怪のアルビダ。

・舞台は都市国家カルマポリス内にある学校です。大学のような立ち位置の学校をイメージしています。

・ラストに出てくる外交官とはドレスタニアのエリーゼさんのことだったりします。

・タニカワ教授の研究は、妖怪の呪詛についてです。

・後半から気合い入れました。



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 第二部。ここからメインです。アウレイス登場です。天使なアウレイスのためにタニカワ教授が奔走します。

・カルマポリスでは外交が盛んでないために、国外からの留学生は大変珍しいです。

・アウレイスの出身国はキスビットのジネです。ジネでは鬼以外の種族は奴隷扱い。その中でも、もっとも悲惨な扱いを受けている妖怪のアルビダです。アウレイスはそのアルビダなのでタニカワ教授があせるのも当然と言えば当然。

・これを書くのと平行して二人でヴィランについて話し合っていました。癖が合致してしまい、こっちはこっちでカオスな様相を呈しています。



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 第三部。アウレイスの過去を聞いて一番最初に驚いたのは私自身だったりします。

・アウレイスの過去はこれが初公開だったりします。ss書いていたらあの場面でいきなり坂津さんがアウレイスの過去を書いてくれました。公式設定です。

・後半のアウレイス説得の場面ですが、冗談ぬきで説得の文章が思い付かず、坂津さんにぶん投げて誕生したものです。


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⬆これもルビネル




 あとがき

 第三部書いているとき、本当にいい感じに完結するかどうかいろんな意味で不安でしたが、なんとか書ききることが出来ました!
 最近バトルものばかり書いていたので、心理描写尽くしの小説を書いてみました。個人的にはもう少しドロドロさせてもよかった気がします。
 これよりもさらにドロドロとした文章がPFCS内で出てこないかな~と期待しています。三角関係とか大好きです。流行ってくれないかな~(笑)

 あと挿し絵もつけたいけれど絵を描く気力と技量がっ……。挿し絵、無期限募集中です(白目)