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フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

ひな祭り ー当日ー 世界を救った勇者 PFCSss8

 ノア教にさらわれていた人質が、アンティノメルのヒーローに保護されていくのを眺めながら、エスヒナとエアリスはノア教付近にあった倉庫に向かった。
 倉庫のなかは各国の軍人がせわしなく動いていた。ノア教制圧のために用意した作戦本部、それがこの倉庫である。
 そのなかでも訊問用の一室で、エアリスとエスヒナは向き合った。

 エアリスがノア教の情報提供と引き換えに要求したのはエスヒナとの面会だった。
 気まずい雰囲気のなか、全く悪びれずエアリスは口を開いた。エアリスはノア教の正装を脱ぎ捨てており、白いドレスを着用している。
 こうしてみると、エアリスは年端も行かない子供にしか見えない。公園で走り回っていてもなんの違和感もないだろう、とあたしは思った。





 「エスヒナ、お主チュリグの出身じゃよな?」

 「ん?いや、キスビットだけど?」

 「人違いか」


 あたしは世間話かな、と考えた。エアリスは捕らえられていた人にもごくごく普通に接していたし、できる限り恐怖心を植え付けないように努力もしていた。


 「わらわはこの教団の力を利用して、世界の種族差別をなくそうと活動していたんじゃ」

 「え、あんた何やろうとしてたの!?」


 そして、驚愕する。


 「具体的にはこの教団を操り、エルドラン国を占領して、『お主らの国もこうなりたくなかったら種族差別を早急に止めさせろ』と声明を出そうとしていたんじゃ」


 まるで明日の朝御飯を語るかのような表情で、何を言っているんだ!あたしは慌てて反論した。


 「でもあんた、例えそれで種族差別が一時的に消えたとするよ?でも、種族の根底には種族のあり方や考え方の違いが原因になっているんだ。お互いがそれを理解しようと歩み寄らない限り、何度だって差別は起こる」

「情が差別をなくすのか?情けで差別を消せるのか?ふざけるな!!そんなことで差別が消えるのならば、わらわはもとより存在せぬわ!恐怖で押さえつければよかろう」


 ドンッとエアリスが机を叩いた。エアリスの白い手から、銀色の液体が飛び散る。しばらくして、ひとりでに飛び散った液体がエアリスの手に向かって集まり、同化した。


 「恐怖なんて所詮一時的なものだよ。慣れてしまえばどうってことない。それに順応して乗り越える力を人は持っているんだ」

 「グッ……」


 緊迫した雰囲気が部屋を支配していた。あたしは直感的にこのやり取りが世界の命運を握っている、ということを感じ取った。
 まずは相手……エアリスを知らなければ。エアリスがなぜそんな極端な思想になってしまったのか。そして何を望んでいるのかわからないと、話しようもない。


 「そもそも、あんた、どこの出身で何者なんだ?」
 「……クロノクリスは従順で強い力を持つ手下を欲していた。そこで目をつけたのが人種差別によって死んでいった子供たちじゃ。子供は純粋で何色にも染まる。その上差別が憎い、という点で強い思念でこの世にとどまり続けておる。そこで、クロノクリスは数えきれぬほどの子供の魂を、反人種差別という思想によって束ね、それをあらかじめ用意した肉体に召喚した。そうして目覚めたのがわらわじゃ」


 唖然としてしまった。あんまりにもあんまりな生い立ちじゃないか。
 エアリスの表情も相まって、とても心苦しい気分になる。


 「じゃあ、単純に考えてもバカみたいな量の魂を小さな体に宿しているわけか」

 「そう。そして、魂の量が多ければそれだけ妖怪の呪詛の力や精霊の信仰の力も強くなる。わらわは普通の人からすれば考えられないほどの力を得たのじゃ」

 「その力を使って世界から差別をなくそうとしていた、と」


 エアリスはピンクの唇を噛みしめて、押し黙った。銀の髪の毛は細かく震えていた。
 そして、宿敵を語るときのように鬼のような形相で矢継ぎ早に語った。


 「……エルドラン国では種族統合の時、妖怪の乗る乗り物は反対派の者たちに強襲された。こどもの親は妖怪なぞ学舎にふさわしくないとデモを起こした。そして学舎では妖怪の子を模した人形を吊し上げにして、数十人で暴行した。外食しようにも、妖怪とそれ以外では区別された。差別反対を掲げるものはたとえ、同胞であろうとぼこぼこに殴られた。お主にも心当たりがあるじょろう。これが差別の現実じゃよ。わらわは、わらわは差別をする奴等が憎い!叩き潰したいのじゃ!」


 当然エアリスの魂にはエルドランで差別された子供の魂も、チュリグで差別された子供の魂も入り交じっていはず。だから、エアリスは各国の種族差別をさも自分が受けたかのように語るんだろう。
 そんなエアリスにたいして、あたしは無念の思いがこもった声を口から発した。


 「あたしの親友にね、キスビットのジネという都市の生まれの子が居てさ」


 一息ついてエスヒナは続ける。


 「ジネでは鬼以外の種族は生まれたときから卑下される。子供は最初から夢や希望なんかない。生きていくために必要な知識や教養、技術、社会性、そういったことも知らないまま育つんだ。当然そんな状態じゃ仕事につけない。そもそも、奇跡的に技術や教養を持っていても『鬼じゃない』、たったそれだけで社会から廃絶される。生き残るために残された道は麻薬か恐喝か闇市か……犯罪が収入源なんだ。こんな状態で、差別を止めろと脅しても、逆効果だ」


 脳裏に焼き付いたいまいましい記憶が、鮮明に思い起こされた。心が張り裂けそうになる。
 そんなあたしの話をエアリスは親身になって聞いてくれた。


 「そなたは、ジネを……キスビットという国ををそんな国にしてしまった奴等が憎くないのか?」

 「憎い。けど……、いつまでもいがみあっていたら、お互いなんにもわからないだろ?まずは一歩、歩み寄ることが差別解決には必要なんだと思う。エウス村長のように……」

 「そうか……」


 エアリスはもう、反論する気がないようだった。肩を落として、自分の手を見つめている。


 「あたしの夢はキスビットがかつて種族を差別していた鬼と、差別される側だった三つの種族の子供が、一つ屋根の下で暮らしてさ、一緒に笑いあっているような国になってほしい。種族ではなく人格で人を評価するような、そんな国になってほしい。そのためには、力で押さえつけてもダメなんだ。じっくりと辛抱強く話し合っていかなくちゃいけない」


 下を向いたままエアリスはポツリと呟いた。


 「……どうやらわらわが間違っていたらしい。すまんな。エスヒナ」

 「なんであんたが謝るんだ?」

 「間違っているとわかっていて意地をはってしもうたからのぉ。今回人質を救出しにきた者たちを見て思ったんじゃ。あやつらには種族なぞ関係ない、とな」


 彼女が顔をあげた。優しく微笑む彼女の頬に、涙が伝っていった。


 「あたしらだってはじめは差別する奴等を憎んでいたさ。でも、エウス村長の『お互いを知る』って言葉を聞いたとき、救われたんだ。今のだって殆んどエウス村長からの受けおりだよ。それを勝手に自分で解釈して、あんたに話しただけ」


 あたしはエアリスに、ニッと笑いかけると、彼女の肩を撫でた。


 「十分じゃよ。お主、見かけによらず大人じゃのぉ」

 「『見かけによらず』、は余計だ!」

 「ハハハハハ」
 「アハハハハ」

 二人でひとしきり笑いあった後、エアリスが言った。


 「ありがとうな、エスヒナ。わらわはこれから後始末をしにいく。自分で始めたことじゃ、自分で終わらせなければのぉ」
 「そうか。あたしはここに残るよ。行ってもきっと足手まといだろうからね」
 「そうか、なら……これを持っておけ。何かの役にたつかもしれん」


 エアリスの手から金属製の箱がみるみるうちに浮き上がってきた。世にも奇妙な光景に目が釘付けになる。


 「あんたの能力、すごいな」
 

 あたしは手渡された箱をまじまじと見た。銀色で掌サイズの正方形だった。箱の上に瞳の模様が描いてある以外、蓋も何も見当たらない。継ぎ目ひとつ無い完全な正方形だった。


 「これ、どうやって開けるんだ?」
 「秘密じゃ。少なくともそなた以外には開けられん」


 そう言ってエアリスは席をたった。あたしもポケットに箱をしまってから、ワンテンポ遅れて立つ。
 

 「バトー。終わったよ。エアリスは信頼出切る。あたしが保証するよ」

チュリグと解剖鬼 PFCSss

○登場人物
解剖鬼:
黒いコートにペストマスクがトレードマーク。自殺志願者を楽にしてあげるのがお仕事。

グリム:
ハサマ王の側近。転送の能力を持つ。

クロマ:
同じく側近。百の魔物を操る。

ナツメ:
側近にして過激派。チュリグの法とハサマ王に逆らうものを殲滅する。


○チュリグ
 犯罪の無い国。その真相とは……






○あらすじ:
旦那の犯罪がバレてチュリグにて追われる。





『あのペストマスク何処行ったんだ?』(文字通りの血眼)(老若男女)


 「地上を行けば確実に住民に見つかる。屋根を伝おうが、ドラゴンで視察をする側近には無力。見つかったら空間の裂け目➡従者召喚の黄金コース。クソッ!とりあえず激臭玉で匂いを関知するクロマのペットはまいたが……それで何になる……」

ナツメ様「見つけた」(突然の火球)

 閃光発音管➡不意打ちの流れでナツメを眠らせる。数分後には目覚めて追ってくるのをわかっている。

 逃げ場はないが、煙玉を使って住民らの中に入り込み、側近の目をくらます。



_上空_

クロマ「それやられても格好でわかるんだよねー」



(煙幕はあと残りいくつある?ひぃ、ふぅ、みぃ、……ダメだ、心もとない。周囲を真っ黒にして目をくらましながら行けば、海に出られると思ったが……。仕方ない、裏路地に回るか。一般人による不意打ちが怖いが……)

 片手に閃光弾を握りしめる。


 過激派の一部が先回りしていた。

 「やはり!」

 閃光に辺りが包まれる。視界が回復しない間に過激派らの延髄にメスを突き刺しては昏倒させる。
 が、今ので単なる閃光弾は使いきってしまった。閃光発音管は、王の従者への対策にとっておかなければならないから、よっぽどでなければ使えない。
 ……何てことだ。

 過激派の一人が眠りに落ちる間際に火柱を天高くあげた。

 「グワッ!」

 防弾防火コートの前面が焦げる。コートの内部に仕込んであるプロテクターが露になる。
 「化け物か、この島の住民は。確かにこれなら並の犯罪者は消されるか」
 とりあえず、居場所がばれたので全力でこの場を離れる!


 「……っ!?なんだこの化け物!」


 マドスイムとエンカウント。(不定形なので物理攻撃無効)


 「刺しても効かない。となれば……」


 聴覚があれば爆竹が聞くはず。視覚があるなら煙玉でどうにかなるはず。それとも、弱点は匂いか……?


 「爆臭弾(臭いの強さは在来線を止めるほど)」


 それに対し、マドスイム何か吐瀉物っぽいものを噴射した。

 (足の動きが鈍くなった!悪臭はマスクで問題ないし、回りの住民はまともに息できず、ほぼ無力と化しているが……動きが鈍くなるのはまずい!一般人ならともかく、側近クラスに悪臭が効くとは思えない。どうにかならないかっ!)

 そこへ眠りから目覚めたナツメがやってきた。


 「うッ……うごけぇ!やつの炎の威力からすれば直撃は……」


 ハッ!

 (自分の脚に解剖用のホルマリンをぶっかける!表面さえ何とかすれば足は動くはず!あとでPFで治療すれば)


 「がああぁぁぁッ!」


 ホルマリンによって解剖鬼の足の淡白が変性し、固まっていく。
 足は動くようになったが、それよりも早く火球が私を襲った。



 「ぁぁぁぁっ!背中が焼ける!」


 コートの背中側が消し炭になる。中の防弾ベストにも焦げあとが生々しく残る。


 「にっ、逃げなければ!」


 煙玉を投げてその場しのぎをする。しかし、今の火炎で手持ちの煙玉、及び煙幕弾の大半も焼けてしまった。


 「あっ、ああ!」


 そんな私を嘲笑うかのように、血眼の国民達が前からやってきた。


 「お前たちはいったいどうやって先回りしているんだ!」


 煙玉もあと……一つ。アルファに効くチャフグレネードはチュリグでは役に立たない。不味い、装備が……底をつく!
 住民は答えることはなく能力を一斉に使おうと構えた。
 他に打つ手がない!これは使いたくなかったが、死ぬよりはマシだ!
 最後の閃光発音管(スタングレネード)を起爆させる。目がくらまなかった相手をメスで眠らせて無力化、あとは爆臭弾でまともに動けなくする。


 「くっ、これだけの相手を振り切ったのに全く安心できん」


 海岸近くまでたどり着いた所で、ナツメの炎に包まれる。


 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」


 頼みの綱の防弾コートは完全に焼けてしまった。防弾ベストの耐久性ももはや限界だ。


 全身が燃えているのを感じながら上空を見上げる。

 「あっ!あれは……」


 こちらを見下ろしてる巨大な黒竜に乗ったクロマが遠目に見える。


(クロマに発見されればグリムが来る。グリムが来れば数十人の従者も一度に呼び出せる、そうなったら、確実に死ぬ)

 かといって海にはこの世のものとは思えない、不気味な鮫が泳いでいる。

 後ろからは火炎を放とうとするナツメ……。

 煙玉、これが最後の一つ!

 解剖鬼は海のなかに入り込み、自分を囮として鮫をおびき寄せる。そのうち一体に飛び乗り、脳ミソまでメスを貫通させ直接神経に命令を下す

 『泳ぎ続けろ』


 しかし、道中でチュリグ原産の巨大なオクトパスにサメごと捕まれる。煙玉を投げるもタコには全く効かず、そのまま丸のみにされてしまった。



 タコは海流に乗って直ぐ様消えてしまった。

その数日後、アンティノメルで巨大なタコの死骸が海岸にうち上がる。そのタコを解剖した結果、なぜか胃腺(胃酸の出る場所)が全て塞がっていた。

 鮫の死骸をはじめとした、様々なものが胃から出てきたがもっとも奇怪だったのは…


 そのタコの胃と頭の中から大量の解剖用メスが発見されたことであった。





ペストマスク逃亡後、チュリグにて……


「行ったかー」
「行きましたね」
「燃やせなかった」
「今回はそれでいいんだよナツメちゃん」
「なんで?」
「死なない程度に後悔させる予定でしたので」
「ちょっとやりすぎちゃったけどね」
「そっか」


 

ひな祭り ー当日ー 絶望と惨劇 PFCSss7

 ノア新世界創造教の礼拝堂は剣と魔法と怒号に包まれていた。

 「このままでは、不味い!」

 クライドが眼前の敵に峰打ちを当てた。疲労の色が濃く、さっきに比べて動きが鈍っている。それでも次々と攻撃をかわしつつ反撃している。

 「ヌウゥゥウウウウウウゥゥリャ!ちっ、これではきりがない!」

 先生が三人の信者をぶっ飛ばしながら叫ぶ。その声も枯れてきてきている。

 「やはり俺には無理なのか……」

 ソラは火球をナイフで両断すると、周囲の敵に足払いをかける。ただでさえ、幼少期トラウマを引き出され疲弊している上に、体も思うように動かなくなってきた。
 無理矢理シュンとルーカスの顔を思い出すことで、心と体を維持してきたもの、もはや限界に近い。
 
 クロノクリスの、この戦いによる騒音に負けないほどの大声が部屋を包み込んだ。

 「見ろ!世界最高峰の戦士三人を、我々は圧倒している!負傷者も殆んどいない!これが我々、ノア新世界創造教の力だ!」

 ダメだ。気力の限界だ。諦めた方が楽になれる、トラウマも何もかも放り投げて、今この場で眠りたい……。

 「ぜぇ……ぜぇ……」

 半分閉じかけた瞳で仲間を見つめる。
 クライドと先生は敵の攻撃をかわすのに必死で、完全に攻める機会を失っていた。

 「まだ、続けるのですか?この不毛な戦いを。降参して楽になればいいものを!あなたたちは過去から何も変われていない。運命に従いなさい!」
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 俺は何もあれから変わっていないのか?誘拐され、閉じ込められ感情を捨てたときから……なにも。

 「俺は確かに祖国を助けられなかった!でも、それでも今の俺にはまだ、守るべきものが残っているんだ!こんなところで負けるわけにはいかない!」

 クライドの声がした。

 「私には帰りを待ってくれる子供たちがいる。例え罪の滅ぼせずとも、彼らのために私は戦い続ける!」

 先生が自らを鼓舞する。

 そうだ、俺にも……

 「俺にも愛すべき人がいる。こんなところで立ち止まるわけにはいきません」

 クロノクリスは信者たちに攻撃を止めさせた。

 「全員一斉にPFを発動さろ!一瞬で敵を葬りされ!」

 その声とほぼ同時だった。ソラの頭の奥底から繊細な男性の声が響いた。

 《今すぐ目を塞ぎ壁側を向け!》

 レウカド先生!ソラはほぼ反射的に壁がわを向いた。



 その瞬間、部屋中のPFが解き放たれようとした瞬間、部屋は閃光と爆音に包まれた。
 あまりの音に聴覚が麻痺し、何も聞こえなくなった。幸い壁がわを向いていたお陰で、部屋の中央で炸裂した閃光が、直接目にはいることはなかった、

 閃光と爆音の両方に曝された哀れな敵達は、突然聴覚と視覚を奪われ、何が起きているのか全く理解ができず、頭を抱えて呆然としていた。
 
 そんな部屋の中を黒い影が高速で動いていた。黒い影に触れた信者達は鮮血をほとばしりながらバタバタと倒れていった。
 偶然壁がわを向いていた敵も、影によって味方の血を浴びせられ、目を塞がれた。大半の信者が何もできずに、目の前の恐怖に顔を歪ませながら倒れていく。耳が聞こえるのであれば、部屋中に絶望の叫び声がこだましていたことだろう。
 倒れた信者の、真っ白だった修道服はワンテンポ置いて、きれいな赤色のまだら模様を作っていく。
 目の前の信者が左右を見渡し、その様子に驚愕し、地面に座り込む。さらには「助けてくれ!」と口を動かしながら、四肢をじたばたさせて恐怖の化身から逃げようとする。しかし、努力むなしく、首から鮮血を吹き出し動かなくなる。
 倒れた信者の首筋を一瞬、確認する傷はない。体がピクリと動いたことから死んでもいない。
 全てを理解した三人は体勢を立て直し、一気に攻勢に出た。無防備な敵にたいして打撃をくわえ、昏倒させていく。精神的な動揺でPFを出せなくなった信者達は、ソラたちにとって格好のサンドバッグだった。
  一瞬にして戦況はひっくり返る。
 視界の端でクロノクリスが何やら叫んでいたが、その声が信者に届くことはない。
 
 先生が隣で、いつもの鬼のような形相で刀の腹をぶち当てていく。クライドは先生が倒し損ねた信者を吹っ飛ばしていく。
 ソラは視界の生きている信者を体術で確実に無力化していく。

 ようやく耳が通るようになる頃には、数人の信者を除いて、敵は殆んど全滅していた。

 「クッ……クッ……クッ……。貴様が隙を見せてくれることをずっと待っていたんだぞ?クロノクリス」

 クロノクリスの目の前に現れた影は、自らのペストマスクをコツコツ、と叩いた。元々黒かったコートが血液によって惨劇の様相を呈している。

 「バカな!なぜ貴様がこんなところに!」

 それが、この作戦を立案した解剖医の姿だった。

料理コンテスト失敗まであと?日

www.kana-ri.com
⬆の小説の続き(?)です。なんと、今回の小説は合作!

登場人物
ルビネル:
 黒ロンの学生。妖怪のアルビダ。白く繊細な指を持つ。研究熱心な学生で、ハサマ王やガーナ王といった王族の方々からも、一目おかれている。
 胸はタオナンに負けるがプロポーションはすんごくいいらしい。


タオナン:
 料理人であるが今まで女性というだけで真っ当な評価を受けられなかった。そして今回のコンテストも出場枠が男性限定であった。だからその会場に男として出場し、料理界の男性主義を覆したいという至極真面目な子。

 栗色の髪でショートカット。胸にサラシ綿布を巻いているが、大きすぎる胸を隠せていない。


※注意
1.本編と全く関係ありません
2.今回の文は難解です。理解できる人とそうでないひとがいます。どちらかというと理解できない方が普通な気がします。
3.今回の料理はチョコレート一粒です。




料理コンテストの前か後かその夜か……



ルビネル「タオナン、椅子に座って力を抜きなさい。そう、いい子ね」

 白く細い指でチョコレートを一粒摘まむと、椅子の後ろからタオナンの上唇にひたり、と当てる。

タオナン「はぇっ?」
ルビネル「ほら、チョコレートよ。舌を前に出して、……綺麗なピンク色ね」

 わずかに出たタオナンの舌にチョコレートを溶かしていく……


タオナン「あ、あの・・・」
ルビネル「しっ、黙って。ほら、舌がお留守よ」
タオナン「んぅ・・・」
ルビネル「そう、良い子ね」
タオナン「あぅ・・・」
ルビネル「その可愛らしい舌でゆっくりと丁寧になめるのよ」


 タオナンの舌の動きにあわせてゆっくりと上下に動かす。

タオナン「はぁ・・・はぁ・・・」
ルビネル「じっくりと、愛でるように・・・」

 ルビネルはタオナンの耳元に顔を寄せた。互いの吐息が溶け合う。

ルビネル「今のあなた、とっても……可愛いわよ」

 ルビネルはもう片方の手でタオナンの唇を愛撫する。

タオナン「ルビネルさん、アタシ・・・もう・・・」
ルビネル「もう、何?」

 すでに溶けて無くなったチョコレートの代わりに、タオナンが舌先で追っていたのはルビネルの指であった。

ルビネル「はしたないわね・・・ふふふ」

 ルビネルの微笑に耳腔をくすぐられ、タオナンは意図せず椅子から腰を浮かせてしまう。

タオナン「ぅあッ!」
ルビネル「誰が、立って良いと言ったの?いけない子・・・」

 ルビネルは指でゆっくりと熱くほとばしるタオナンの口内をなぞっていく。唇と指の間に出来た隙間からクチュリ、クチュリと小さなが響く。

ルビネル「そんなに私の指を気に入ってくれたの?嬉しい・・・」
タオナン「ひっひがっ・・・」
ルビネル「体は正直よ」

 そして、人差し指と中指でゆっくりとタオナンの口を開いた。薄ピンクに染まった美しいタオナンの口内が顕になる。

タオナン「く・・・ぱぁ」
 
 タオナンの上唇から唾液がゆっくりと滴っていく。それを満足げに見届けてからルビネルが囁いた。

 「はい・・・よく、食べられました」

ひな祭り ー当日ー 敵は全部PF PFCSss6

 バトー、ソラ、クライドの三人は確かに敵の幹部らしき人を倒した。だが、渡り廊下の前後を敵に囲まれるという最悪の状況にたたされた。
 鬼を倒したあと、目の前からの敵の増援が来た。さらに後方からクライドの仕掛けた氷の床を突破した敵が追い付いたのである。

 「彼の役目はあくまで音を出すこと。仲間に敵がどこにいるのかを知らせるためのものです」
 
 ソラの目の前にいる修道服の人だかりが縦に真っ二つに別れた。現れたのはハゲのオッサ……恐らく、教王クロノクリスである。
 白い修道服の中で一人だけ赤いローブをはおり、手には先程の鬼とは比べ物にならないほど高級感溢れる杖が握られている。
 ソラたちは無言で、いつ敵に襲いかかられてもいいように構える。

 「ギーガン、下がって風呂に入りなさい。貴方は十分役目を果たしました」
 「……はい。クロノクリス様」

 先程の先生の『米』を浴びてしまった鬼はしずしすと退散した。
 
 「侵入者、というのは珍しくないですが、まさかあなた方のような強者が三人も同時に現れるとはね。アンティノメルの最高峰であるソラ、リーフリィの自警団の長と同等かそれ以上と言われているクライド、そしてライスランド屈指の剣豪である先生!」

 クロノクリスはすごいですね、と拍手した。軽蔑と侮蔑の合わさった嫌な音が渡り廊下に響き渡る。
 ソラはこの状況をどうにか打開出来ないかと周囲を観察している。

 「ジョン、ギーガン、ジェームズ、アルベルト。ノア新世界創造教の中でも戦闘力を武器にのしあがった四人が全滅するとは。あと残る幹部の中で戦闘が出来るのは私と巫女くらいですかね……もっとも、私が一番強いと自負しておりますが」

 ハッハッハとクロノクリスは大声で笑った。もう勝ったつもりでいるらしい。

 「その力をてにいれるために一体いくらの妖怪を犠牲にしたんだ!」
 「おや、聞いていたのですか。妖怪から魂を抽出して、呪詛の力を移植する技術について。妖怪の死によって完成される力のことを」

 教王を名乗る男はギラリとクライドを睨む。

 「数百の妖怪の犠牲で世界を変える力が手にはいるんです。世界をより良き方向に満ち引くためには必要な犠牲です。……少なくとも、あなたが救えなかった人々よりはずっと少ないですよ?」
 「なっ……」
 「仲間の尻拭いもまともに出来ないガキに言われたくはありませんねぇ。ハッハッハ!」

 剣を握ったクライドの腕が細かく震えていた。
 次にクロノクリスは先生を指差して、欠伸をする。

 「あなたの残虐さに比べたら私なんかかわいい方ですよ?どんなにチャンバラ道場を開いて子供たちを教えようがねぇ?変わらないんです。人斬りと呼ばれたあなたの過去はねぇ。そうでしょう?貴方が殺した人はもう二度と帰ってこない。全くもって無意味な話だ。」
 「言わせておけば!」

 先生がクロノクリスに斬りかかろうとするのをソラは制止した。

 「落ち着いてください。勝てる相手にも勝てなくなります」
 「ソラくん。いい加減トラウマと向き合い、その無表情をやめませんか?暗い部屋に閉じ込められて、ただひたすら命令される、あのときのトラウマとね!」

 ソラの脳裏に『あのときの記憶』がフラッシュバックする。最悪の記憶を無理矢理引きずり出された。

 「うああああぁ!!」

 ソラは悲鳴にも似た叫び声をあげた。

 「無様な格好ですね。そのままではいつか恋人に振られますよ?もっとも向き合ったところでつぶれるのが落ちですけどね。……ハハハッ。その顔、いいですねぇ!もっと私に見せてください。そそられます!」

 目の前に敵がいて、一緒に戦う戦友がいて、そんななか五体満足なのにも関わらず、叫び出す自分。こんな姿をシュンに見られたら、考えるだけで体が震え、立てなくなる。

 「うあ……あぁぁ!」

 「ソラさん!落ち着いてください!あなたの恋人はそんな薄っぺらな人じゃないでしょう!」
 「ソラ大丈夫か!落ち着いて深呼吸するんだ。君の好きな人の顔を思い出して」


 トラウマの闇の中に一筋の光が差し込んだ。そうだ、シュンはトラウマに負けそうになったときも、いつでもそばにいてくれた。そうだ、思い出すんだ、シュンの顔を。

 ソラは何とか正気を取り戻すことが出来た。
 それでも戦力差は絶望的だった。前後から十数人の能力持ちを相手に自分達三人で勝てるか、と聞かれてたら流石に首を縦には振れない。その上ソラは精神がズタボロだ。

 「クロノクリス!!」

 クライドと先生の怒りの声で、なんとか雑念を振り切り、ソラは立ち上がった。
 
 「皆さん、殺意がみなぎってますね。ではお望み通りとっておきの舞台、礼拝堂に案内しましょう。そこで、決着をつけましょうか」






 数百人は入れる礼拝堂。その祭壇の背後には、高さ十数メートルにもなる巨大な壁画が描かれている。
 壁画に描かれた人物の胸像は、酷く異様なものだった。その人物はげっそりとした顔つきで眼球がなく、眼窩から血が滴っている。髪の毛に見えるものはよくみると血液であり、見るものを不快にする。
 これこそがノア新世界創造教で数千人が信仰する、創造神『ノア』である。
 ソラ立ちは抵抗することも許されず、後方から信者にじりじりと追いたてられ、ここに閉じ込められたのだった。
 クロノクリスは祭壇の前で演説を続ける。

 「これより、愚かにも教内に侵入してきた愚か者を排除します。さあ、我らが主の前でその力を存分にお見せなさい!」

 うぉぉぉ!という信者の声が礼拝堂を支配する。クロノクリスは世界最高峰がどの程度の力なのか、自分達の戦力はどの程度なのかを把握するため、拘束せず力でねじ伏せるらしい。
 まだ、ソラの心の傷は癒えていないが、戦うしかなかった。

 「先生!クライドさん!来ます!」

 一斉に信者たちは攻撃してきた。
 ソラの周囲が円状に光輝いた。攻撃を察知してステップバックすると、ほんの1秒前までいた場所に光の柱が立ちのぼった。

 「『PFヘブンズ・レイ!』」

 着地後、態勢を整える前に、目の前の信者の手から雷撃が放たれる。

 「『PFヘルズ・ボルト!』雷撃波を食らえ!」

 雷そのものはナイフで弾いたものの、衝撃によって後ろにぶっ飛ぶ。
 受け身をとりつつ偶然そこにいた、クライドと背中合わせで構えをとる。
 
 「敵は本当に全員がパラレルファクターみたいです」
 「動きは洗練されていないけど、強力な力を持つ敵をこれだけの人数を同時に相手にするのは、俺たち三人でも……」

 クライドは炎の魔法を目の前の信者に放った。しかし、白い修道服に届く前に透明な壁によって阻まれる。

 「そんな生半可な攻撃、『PF ディフェンシブ・ウォール』には効かん!」
 「反撃だ。『PF クイック・ランス』!」
 「俺っちも行こう。『PF ソード・オブ・グリード』」

 クライドは剣使いと槍使いに二人に襲われた。そのクライドを横から殴りかかる信者がいたので、後頭部に回し蹴りを決める。

 「ソラ、ナイスフォロー!」
 
 一方先生は先生で、敵の攻撃をかわしつつ的確に反撃していた。それでも、この人数は厳しいようで、体の至るところに傷がついている。

 「ぬりゃ、りゃりゃりゃりゃりゃ!デイヤ!」

 先生が一人信者を倒したかに見えたが、ソラは違和感を感じて『ヘブンズ・レイ』を避けつつ援護に向かった。

 「いくら切っても無駄だ。私の『PF アクア・ラプソディー』は私の体を水と化し、攻撃をかわす!」

 と、敵がいった瞬間に雷の魔法がそいつを貫く!

 「あ゙あ゙あ゙あ゙バチバチバチバチ……」

 「クライド、見直したぞ!うぬには天性の才があるようだ。とはいえ、このままでは持たぬぞ!」

 一見強力な敵にも弱点がある。だが、それを加味しても数が多すぎる。

 「多勢に無勢ですね……」
 
 ポツリとソラは呟くとナイフを強く握りしめ、悠然と敵にたち向かっていった。

女医レウカドとはた迷惑な二人 PFCSss

ペストマスクの旦那「失礼する」

老人「おお、ここが旦那一押しの病院ですかい?」


ペストマスクを被った怪しい男と焦げ茶色のスーツに身を包んだ老人が入ってきた。


レウカド 「うっ…あんたか…紹介制だとは言ったがさっそく連れてくるとは…」


ペストマスクから慌てて目を離す。


老人「旦那ぁ、こんないい女いるって聞いてなかんたんですが?」


老人はレウカド……の胸を凝視する


ペストマスクの旦那「ドクターレウカド、そういう趣味があるんだったら早く言ってくれ。同業者のよしみで無料にしてやるぞ?あ、手術よりホルモン注射のほうがいいか?」

レウカド「クソッ!ふたりとももう帰れ!」


 一度開けた扉を閉めようとする。


旦那「ひ☆な☆祭☆り☆パワー!!」

老人「だんな!さすがッ!常識に縛られない意味不明な力で扉をこじ開けた!」

旦那「そのまま、腕をつかんでーー!」

老人は「ひっぺがす!」


一応二人ともドレスタニアから指名手配されてます。


レウカド「ぎゃあああ!!!やめろマジで洒落にならん!!!!」


旦那「ちっ、謎の力で服を脱がせられない」

老人「そりゃあないぜぇ、ペストマスクの旦那ぁ!」

旦那「仕方ない。あきらめるか……」

老人「じゃあ、商売の方はじめますか……ハァ」

レウカド「二度は無いと思え、そんときゃあんたらを殺す」


 レウカドは商売、と聞いて老人に目を向ける。


旦那「ッ!その顔!もっと私を見下……」


 いけない言葉を遮り老人が言った。


老人「ここに世界各国から集めた幻覚効果のある薬草がある。密輸で手に入れたから珍しいものも揃ってますぜ」

旦那「…これを使って幻覚作用のある煙玉をつくってほしい」

レウカド「ほほう、いいなこれ」


 細い指で薬草の一つを摘む。


レウカド「報酬はいくらになる、金次第だ」

老人「俺らの生命線だからな。足りなくなったら定期的に買いにくる」

ペストマスク「とりあえず初回費で私の今月の給料の10パーセント。以降はまた、その時に話し合おう」


妙にリアルで生活感のある金額がレウカド手渡された。
……さらに、ライスランド招待券。


レウカド 「ああ…あんた給料制だったのか…最後のは…要らん」

老人「旦那の給料は本来報酬制だが、俺が割り出してやりました。冗談抜きでそれ、なけなしの金ですぜ」

旦那「……そんなことより受けとれよ。招待券。他のやつから勧誘されていることは知っている。私はなぁ!お前の手料理が食いたいッ!」

老人「あー、旦那がスイッチ入っちゃった」

レウカド 「なけなしの…そんなので俺をよく訪ねたものだ」


 レウカドは前回の報酬(幻煙のひな祭り参照)で味を占めていた。女体と化した自分を指差して叫んだ。


レウカド「今俺こんなんだろ!」


 その言葉を聞いて老人がニヤリと口を歪めた。


老人「大丈夫です。俺が残りは払っておきます。ねぇ、旦那!」

旦那「なんだその目は」

老人「新しい仕事がたんまりとありますぜ?」

旦那「えっ、これから?今日はもう」

老人「夜勤手当てつきますよ?」

旦那「いやいやいや」

老人「あとで請求しやす」

旦那「グフッ」


レウカド「いい取引ができるといいな」


 老人ににこりと笑いかけ、それから真顔に戻る。


レウカド「漫才はいいからさっさと行ってくれ…身が持たん」

老人「んじゃ、またな」

旦那「……明日、疲労回復目的で立ち寄るから」


 二人はなぜか千鳥足でドレスタニアの町に消えていった。


レウカド「目的以外で立ち寄らないでほしい…」とポツリと呟き、消えていくふたりを見ていた。



翌日の新聞

『またもや密輸発覚!主犯は精霊の老人!』
先日検挙された密輸船にて、大量の薬草が発見されました。犯人は国際指名手配中である老人(年齢:90才以上。精霊。以下の写真)であるとの見込みが強く……



「ふわあ(欠伸)犯罪者の治療するのも俺の仕事だけどな、密猟者の手助けは初めてだな」

ひな祭り ー当日ー 救出成功!? PFCSss5

 「お前、クォルと戦ったとき、手加減していたか?」

 呆れながらバトーは言った。

 「人のサンドイッチなんて初めて見ました。美味しそうではないですね」

 ショコラは目の前に積み重なった人で出来た山を見て言った。少なくとも十人以上がその山に使われており、全員いい夢見ながら眠っている。
 先程倒した人相の悪いやつを廊下に放置、近寄った兵を背後から奇襲、人数が多ければ閃光弾を……と、戦っていき、警備を全員無力化したのである。

 「背後から襲い、血管に直接睡眠薬とは……。しかも動きに無駄がない。えげつないな」
 「切ったそばから縫合出来る能力だ。メスに睡眠薬を仕込んでおけば外傷なしで敵を眠らせられる。私は直接殴り合うのが得意じゃないんでね」
 「じゃあ、このノリで人質も救出しちゃいましょうか!」
 
 敵地のど真ん中でノリノリのショコラに私たち二人は深いため息をついた。何でこんな奴を連れてきてしまったんだろうか。
 彼の能力は確かに優秀だった。手に持つ剣で敵を突き刺せば一瞬にして相手は凍る。その上、異様なほどタフで多少の攻撃は軽やかなステップで全てかわしてしまう。
 その長所を一網打尽にする性格の恐ろしさである。私たちは今、人質のいるはずの部屋と全くの反対方向に走っている。ショコラが明後日の方向にスキップしていくからである。
 その上敵に気づかれる可能性があるので私たちは声を出せない。

 「ほら、つきましたよ」

 全く別の部屋でショコラは止まった。本堂南側、つまり出入り口付近である。少なくとも私ならこんなに人質を救出しやすい位置に隠さない。

 「はぁ、一応見ておくか」

 ガチャリと、扉を開けると案の定、部屋の中には誰も居なかった。ただ、礼拝用の銅像が立てられているだけである。壁画が何枚かある他には何もない。

 「あれ、違いましたかね?」

 そう言って、ショコラが銅像に手をかけた瞬間だった。ガチリと何かスイッチが起動する音が鳴り、床がスライドしたのである。バトーが足をとられ、ぶっ倒れそうになるのを、私が支える。

 「隠し……階段……」
 
 呆然とする私たちをよそに、ショコラは軽快なステップで階段を下って行った。




 そして、明らかに人質の声がする扉の前まで来てしまった。鉄製の扉は明らかに脱走対策だった。

 「まさか、ここを見つけるとはな。お主らやるのぉ」

 扉の前の踊り場で立ち塞がったのは、一人の少女である。修道服も着ているが、服装さえ違えば公園で走り回っていても、遜色のないほど幼かった。白すぎる肌はアルビノを彷彿とさせる。
 銀色の髪の毛を揺らして、酷く無機質な声で少女は言った。

 「まあ、わらわはお主らと戦う気はない。もはやこの宗教は終わりじゃ。幹部はお主らにほとんどやられたし、残る人員は我らが教王様が、お主らとは別に行動している奴を追い詰めるのに使ってしまっておるのじゃ」

 ショコラがなんの脈絡もなく叫んだ。

 「あっ、どこかであったと思ったら、この前の旅の方ですよね!ボール遊びしたりとか、チャンプルーを食べたりとか……」
 「おお!ショコラか!」
 
 私とバトーが茫然自失としているなか、ショコラと少女の会話はさらに弾む。少女の声も外見年齢相応の小鳥のような声に変わっていた。

 「あのときは楽しかったのぉ!」
 「お名前最後に聞けなかったんですよね……」
 「あ、すまんのぉ!すっかり忘れておったわ。わらわの名前はセレア・エアリスじゃ」
 「ところで、何でこんなところに?」
 「センニューコーサクと言うやつじゃ。この宗教に潜り込んで裏でまあ、色々やっているんじゃよ。だからこの宗教そのものに何のしがらみもない。むしろお主らみたいに人質を助けに来る輩を待っておったぞ。わらわの力だけでは脱走を助けるのは無理があったからの」
 
 まるで公園で久しぶりに出会った友達と盛り上がるようなノリで今回の作戦が成功しつつあった。
 
 「ほら、通れ。罠を警戒しておるのはわかっている。そこの女とペストマスクが出入り口を確保しつつ、ショコラが人を先導すればよい」
 「俺は男なんだが」

 バトーの言葉に笑いつつ、壁に埋め込まれた10個のボタンをエアリスが押すと、鉄製の扉はあっさりと開いた。




 予想以上にあっさりと、目的のステファニー・モルガンの社長を確保できてしまった。様々な国から人質を仕入れていたらしく、この社長だけでなく、カルマポリス、ユメミッズなど、様々な国籍の十数人の人質がいた。その全てが妖怪であることから、よう済みになった彼らがその後にどうなるかが生々しく想像できた。

 「ふむ、囚われていたという割には思いの外、疲弊していないな」
 「あそこのお嬢ちゃんが待遇をよくしてくれたんだ。定期的に本とかも持ち込んできてくれたし、エアリス様々だよ」

 人質のうち、サムスールの少女が答えた。額にある第三の目は眼帯によって固くとじられている。
 サムサールの第三の瞳と目を合わせると、ある種の感情が流れ込んできて自分では制御できなくなる危険な代物だ。解剖しようとした際に誤って瞳を覗いてしまい、悲惨な目にあったことがある。

 「暇な時間にあたしらの悩みを聞いてくれたりとかね」
 「なるほど。君の名前は?」
 「エスヒナ。よろしく」

 私はエスヒナの様子を見て、人質のなかでももっとも元気だと判断した。社長の方もエスヒナを頼りにしているようで、彼女の人望が伺える。ならば……

 「そうか。エスヒナ、こちらはバトーとショコラ。二人とも氷の扱いに関しては一流だ。この二人と一緒に出口まで人質たちを先導してほしい。外には今頃アンティノメルのヒーローが待機している」

 ショコラが口を挟む。

 「えっ、あなたはどうするのですか?」
 「ソラ、クライド、先生の救援に向かう。エアリスの言葉が正しければ、敵の本隊と戦っている可能性がある!」



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 バトー、ソラ、クライドの三人は、確かに敵の幹部らしき鬼を倒した。だが、渡り廊下の前後を敵に囲まれるという最悪の状況にたたされた。
 鬼を倒したあと、目の前からの敵の増援が来たのだ。さらに後方からクライドの仕掛けた氷の床を突破した敵が追い付いたのである。

 「彼の役目はあくまで音を出すこと。仲間に敵がどこにいるのかを知らせるためのものです」




続く