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フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

ひな祭り ー当日ー 絆の力! PFCSss11

 「わかったのか!ショコラ」

 ショコラは自信ありげに頷いた。


 「彼女には致命的な欠点があります。それは……」

 「我に弱点などない!」


 エアリスは手をヒモ状に変えてショコラにつかみかかろうとした。しかし、ショコラのやたら軽快なステップで交わされてしまう。


 「ほらほら、どうしましたか?弱点がわかられて不安ですか?」


 一瞬ショコラが私たちに顔を向けた。いつものショコラからは想像できないくらい、鋭い目付きだった。


 「あいつ……まさか……自ら囮に?」
 

 私はバトーに顔を向けた。バトーも作戦を悟ったらしい。


 「くっ……奴は話し合う隙すらくれない。こうでもしないと作戦を練れん。なにも言わずに……真っ先に一番危険な役目を買っていきやがった……」

 バトーが悔しさに顔を歪めると、その肩を先生が叩いた。

 「危険を承知で請け負った、ショコラの心意気を無駄にはできん!さて、早速だが、あやつは熱や冷気を浴びたとき再生の速度が落ちていた。温度変化に弱いのではないか?」

 先生の言葉に対し、私がすかさず口を開く。その後ろでショコラがエアリスのガトリングガンをかわしている。見事に敵の注意を引き付けていた。

 「医学校でまなんだことなんだが、物質には活動状態というものがある。俗に言われる個体、液体、気体というやつだ。本来は温度で変化するものだが、エアリスの場合は恐らく、液体金属を液体↔個体を意図的に操り肉体を構成しているのだろう」

 クライドが頷く。

 「それなら、凍結されたときに再生に時間がかかったのも理にかなっているね。恐らく無理矢理体温を引き上げて、自分の体を個体から液体にしようとしたから時間がかかったんだ。あと、さっきから顔を全く変形させていないから、人で言う脳の辺りに再生を司る機関があるのかも」

 続いてソラが結論にたどり着いた。

 「つまり、極端な温度変化に弱いということですか?ならショコラさんかバトーさんがエアリスを凍らせてクライドさんが炎の魔法をエアリスの頭部に当てれば……」

 私がソラの言葉を引き継ぐ。

 「エアリスは自分の体を制御しきれずに自壊するはずだ。例えるなら、外が冷えているからと暖炉を炊いたら、突然真夏のような気温になり、暖炉の熱と合間って熱中症になったバーサン……、みたいな感じか」

 ソラが訝しげな表情をこちらに向けた。

 「解剖鬼さん、意味はわかりましたが、なぜその例えにしたのかが全く理解出来ません」
 
 「私なりのくだらんジョークだ」

 私はエアリスの方を向く。

 「なんという持久力。だが、いくら凍らせたところで我は倒せぬぞ?やはり、はったりだったか。ハッハッハ!」
 
 私たちはショコラとエアリスの間に割って入った。部屋の中央でエアリスと向き合う。エアリスの後ろの絵画は、マシンガンによって穴が無数に空いている。教王にとって、もはや神を信仰するのはどうでもいいことらしい。

 「ショコラ、お前のお陰で助かったぞ!」

 エアリスはチッと舌打ちをすると、ショコラを指差した。

 「まあ……よい。ショコラ。貴様は一番最後に殺してやる」

 エアリスの背中の飛行ユニットからミサイルが合計6発放たれた。さらにマシンガンで追撃してくる。
 私は先生の影に隠れて銃弾から守ってもらいつつ、メスを投げた。メスが突き刺さった四つのミサイルは着弾することなく空中で爆発した。残る二つはバトーの作り出した氷柱によって迎撃された。
 敵の注意はミサイルを迎撃したこちらに向いている。

 「いまだ!」

 ソラがショコラの目の前でかがんだ。ショコラはソラを踏み台にして華麗にジャンプする。さらに風の魔法で浮き上がったクライドがショコラをトスし、さらなるジャンプを可能とした。横からエアリスを強襲する!

 だが、エアリスが気づくのが早かった。エアリスはの全関節を90度曲げることで、一瞬でショコラと向き合った。さらに腕がナイフに変形しかかっている!

 「ショコラ!避けろ!」

 出来るはずがない、とわかっていても反射的に叫んでいた。あまりのショックにスローモーションになった。交通事故直前に車がゆっくりと見えるアレである。
 回りの仲間が全員揃って苦悶の表情を浮かべている。空中でエアリスの腕がゆっくりと伸びていく。ショコラは避けられないと察し、相討ち覚悟で剣を振るう。だが、どうみてもショコラの剣よりもエアリスのナイフが体を突き刺すのが先だった。
 私は目をつむりたくなるのを我慢し、ショコラの最後を凝視する。私がこの旅にショコラを誘ってしまったからこうなってしまった。本来なら一人で旅立つべきを仲間を道連れにしたのだ。すべての責任は私にある。だが、今私に出来ることは彼の死を見守るしか出来ない。
私の責任だ。私の責任なのだ。この先ショコラを失ったドレスタニアが、この世界がどうなるかわからない。しかし、どうなろうとも私がしたことであり、私の罪だ。

 ちくしょう……。

 畜生ぉおおおおおおおお!!!




 私が涙を垂れ流しながらみた光景は、ショコラの死ではなかった。何者かによって放たれた矢によって、エアリスはこめかみを貫かれ、体勢を崩していた。

 「行くんだ!ショコラ!!」

 グレムの怒号が遠くから聞こえてきた!彼とコロ助の放った一撃がこの世界の運命を変えたのだ。
 この瞬間、この光景を見ていたショコラとエアリス以外の誰もが叫んだ。

 「行けぇぇぇぇぇぇ!」

 ショコラの一撃がエアリスを捕らえた!エアリスの胸が、ドレスが手足が顔が、一瞬にして凍りつく!
 さらにクライドが剣に炎を宿らせ、墜落するエアリスに突撃した!あらんかぎりの力でエアリスを切り裂きまくる!さらに一旦距離をおき、前方に手をかざして炎の魔法を魔力が尽きるまで連射した!
 
 「ばかな!なぜ再生しない!我は不死身だぞ?!不死身なのになぜ体が崩れるのだ!」

 「あなたは不死身ではありません。神でもありません。独りよがりの……ただの狂人です!」

 ソラは崩壊寸前のエアリスの顔に打撃を食らわせた。エアリスの顔が液体になりながら砕ける。

 「うぬに利用された子供たちの思いがわかるか!『斬滅――米櫃(コメヒツ)』ウシャア゙ア゙ア゙ァ!」

 先生がエアリスの胴体をズタズタに引き裂く!その横でバトーが二刀の剣を振りかぶる!

 「お前は純粋な幼子の魂を己の欲に利用した、悪魔だ!」

 最後にバトーがエアリスの頭部を凍結させた。


 長い静寂がこの場を包んだ。


 ……終わった。


 エアリスの残された体が液状に溶けていき、そのあと蒸発する。これまで、蒸発して攻撃を避けるような素振りを見せなかったことから、気体となった肉体を彼女は制御することが出来ないはずだ。


 「……勝った。全員の力を全て用いてようやく……」


 一気に力が抜けたような気がした。同時に全身の傷の痛みが私を襲った。あまりの痛さに座り込む。


 「でも、セレアが……」


 ショコラの声は悲壮に満ちていた。


 「彼女は悪意はなかった。方法は強引だったが、俺たちに差別を止めさせようとしただけだった。なのになぜ……」


 バトーが天上を仰ぎ見た。


 「人を利用して命をもてあそぶクロノクリス……。全て奴のせいです」


 ソラが悔しさで拳を握りしめる。


 「彼女を救いだしてあげたかった……」


 先生の声にははりがまるでなかった。



 全員が沈むなかで、何か妙な異音が聞こえた。オオオオォォォォと、高速で何かが飛んでくるような音だ。

 私は何かと辺りを見回した。どうやらその音は、不気味な神、ノアの肖像から聞こえてきているようだった。頭から地を垂れ流し、この世の全てをもてあそぶかのような嘲笑を浮かべる、クロノクリスの崇めた神。

 「なんだ!これは!」

 私が叫んだ時だった。ノアの肖像の口が盛り上がった。まるで何かを吐き出すかのようだ。そして、紙が耐えきれず破れ、その中から出てきたものは……。

 「そんな……」

 見覚えのある顔だった。華奢な足、ウェディングドレスに、ガトリングガンと化した両腕。背中の戦闘機のような飛行ユニット。少女には似合わぬ力に溺れた邪悪な笑み。



 『エアリス2 交戦する』
 『エアリス3 交戦する』
 『エアリス4 交戦する』



 一同唖然として、一瞬無防備になった。

 容赦なく3機6丁のガトリングガンが私たちに向かって掃射された。私は自分の身を守るので精一杯……だった。……なんだ、頭がぼんやりする。おかしい……。血が暖かいぞ?信者たちの……垂れ流した血液は……既に冷えているはずだ。

 いや……そもそもなぜ……私は地面に伏せて……。仲間は……どうなった……クッ……。

 いっ……意識が遠く……


 「こやつ、助か………とわかって身代……に!」

 「しっか……てください!」

 「下がっ……私とバトーが傷…凍…せ……」

 

 ……。