竜の試練 ー 老人編 ━
俺にはハサマ王のような圧倒的な観察力はない。ガーナ王のようなカリスマ性もない。オムビスのような勇気も、クォルのような力もない。
精霊の加護も雀の涙程。そんな力が竜に通じる訳がねぇ。
これを知恵と努力と策で逆転するのが俺だッ!
━━以下、ガーナ王の試練より引用
「諦めるのは数十年早いですぜ、王の旦那」
突然、竜は口を閉じて激痛に苦悶の表情を浮かべた。ガーナの後ろに現れた老人は、指から光の筋でようやく視認できるほどの糸を踊らせ、線のようにビシリと竜の身体を縛り付ける。竜は驚きと痛みに耐える呻き声をあげた。
「貴様……!いつの間に!?」
老人は帽子をスッと正位置に正すと、竜にもガーナにも向き直ることなく、空を見上げて呟いた。
「卑怯ですいませんねぇ。だが、戦いにおいて油断なさるのは、いくら神とはいえ迂闊だ。勝機は逃さん。呪うならテメェを呪いな、神さん」
老人が手を広げ、交差させるように紐を引っ張ると竜の身体を纏う硬い鎧の甲殻がバキバキと割れていった。