フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

カルマポリスについて PFCS

pfcs.hatenadiary.jp

信仰都市国家:カルマポリス
f:id:TheFool199485:20170212210952j:plain


●カルマポリス

 妖怪が作り上げた都市国家。ワースシンボルから得られるエネルギー(既存のエネルギーに例えるなら電線を繋げなくてもいい電気)により、工業や貿易が発展している。
 町の風景は驚くべきほど近代的で100年進んでいると言われている。

 そのかわりにワースシンボルの影響下は緑黄色の霧が絶え間なく漂っており、非常に不気味とされる。遠くから見ると緑黄色のドームの中に都市が封じ込まれているように見える。
 ドームの外には田園地帯が広がっている。
(因みにカルマポリスの機械はワースシンボルのエネルギーに依存しているため、郊外にでるとほとんどの家電製品は使用できなくなる)


●種族
 主に住んでいるのは妖怪とアルファ。小数だが鬼も住んでいる。人間、精霊は住んでいない。

・妖怪
 この街の人工のうち9割を占める。ワースシンボルに依存して生活している。
 ちなみにここの出身の妖怪は、呪詛の力が強い代わり、緑の霧(ワースシンボルの影響下)でしか呪詛を発動できない。
 郊外で使用するにはアトマイザー等の容器にエネルギーをつめて携帯する。かなり高額。

・アルファ
 アルファは光る装飾をつけられて町の名物になっている。主に街の清掃を担当している縁の下の力持ち。


●町の建物
・時計塔
f:id:TheFool199485:20170213230441j:plain
 カルマポリスの叡知を集めた時計塔。地下にワースシンボルが安直されている。


・ワースシンボル
 地元の神社に祭られている神様のようなもの。エネルギーを町に供給している。

・高層建築物
 ワースシンボルのエネルギーが届く範囲に出来る限り建物を作ろうとした結果、高層建築が立ち並ぶ無機質な街並みになった。
 マンションの他にファッション店や百貨店等、様々な商業の建物がある。


f:id:TheFool199485:20170212093147j:plain
f:id:TheFool199485:20170322215954j:plain

ルビネル
種族:妖怪(アルビダ)
年齢:ギリギリ成人
職業:学生

口調:
状況によって口調を使い分ける。人初対面や立場が上の人にはですます調で話すが、親しくなると、くだけた口調になる。

体格:
胸はあまりない。体つきは非常によく、同姓から嫉妬されるほど。

その他:
舌や指がとても器用。


 妖艶な雰囲気とそれに似合わない社交的な性格を持つ。天然気質で変なことをやらかす度に友達を増やしていく猛者。
 呪詛とシンボルの研究をしていて、公共の場で発表したこともある。研究について語るときは普段からは想像できないほど凛々しくなる。
 『妖術』の呪詛を持つ。『約1ミリリットル以上のインクを有したことのあるペン』を自在に操る。
 
 趣味は社会科見学・研究目的などと称して旅行に行き、旅先でかわいい女の子と遊ぶこと。



・タニカワ教授
種族:妖怪
年令:見た目より10歳は老けている。
職業:学校の教授
 年令相応の落ち着いた性格、年令不相応の整った顔、そして甘い配点から生徒からの人気が熱い教授(タニカワ教授のファンより)。
 守りの呪詛を使え、対象の物体、もしくは範囲に同心円状のバリアを作る。一度に二つまで。銃弾をも防げるが、一度強い衝撃を受けるとすぐ壊れてしまう。交通事故に合ったときも咄嗟に発動したが、あっさりと車に突き破られた。
 壊された後は数呼吸した後、作り直しが可能。




==

ルビネルの能力の詳細



1ミリリットル以上インクの入ったペンを操る呪詛。アトマイザーを吹き掛けてから約7+-2分効果が持続する。

1.効果範囲
 半径約?メートル。同時に合計14本位まで。

2.精度
 目に見える範囲であれば?メートル離れた人の首を撃ち抜ける位。
 手足を動かす感覚でペンも動かせる感じ。つまり、視界に入っていないと、体に密着させていない限り精度はめちゃくちゃ落ちる。
 ボールペンを浮かせてスケートをすることもできる。しかし、ペンしか操作できないため、実際に行うには板か何かにペンを固定しなければならない。
(感覚がわからない人は左右一本ずつ、計二本のペンに乗ってみよう。怪我しても知らないけど)

3.速さ
 達人であれば剣で叩き落とせる位のスピード。軌道を曲げると少し減速する。

4.耐久力
ボールペンの耐久力に依存するため、ペンが重さに耐えられないほどのものだと折れる。
 
5.弱点
 的を視認しないと当てることが出来ない。実際に、弱点が水中に隠れている大蛸━レイオクトには全くの無力だった。

老人と調味料!? PFCSss

「さて、お前は確かライスランドの料理コンテストに出ると言ったな?」

「ああ。言いやしたけど、それが?」

「すんごく個人的に私はお前のことを応援している。お前に料理コンテストに勝って欲しいんだ。だから、私はエルドスドのセンセーづてに栄養士を紹介してもらって、グレムと共同して味について研究してみた!」

 「ちょっ!マジですかい!」


 意味不明だ、とでも言いたげに老人は目を見開いた。私は気にせず話を進める。


 「食べ物を美味しく感じる理屈として、まず視覚だ。色鮮やかな新鮮な食べ物を想像してみるといい。それだけで美味しそうに見えるだろう?」
 

 老人が少し嫌そうな顔をして口を動かした。


 「確かにそうですなぁ。前に旦那が出してくれた、青いカレーの破壊力は抜群でしたもんねぇ……。食欲が削がれる削がれる……」

 「グレムが新開発した青色の合成着色料を、興味本意で入れてみたらああなった。」


 私もあのカレーを食いきることは出来なかった。青くて辛い液状の何かである。


 「そして匂いだ。匂いを封じ込めるシートに食い物の匂いを染み込ませ、目隠しをした人に嗅がせると、正確に食べ物の見た目や味を思い出すことが出来たそうだ。よだれをだらだら出しながらな」

 「食べ物の匂いを嗅ぐだけで、お腹が空いてくるアレですかい?」


 パァッ!と老人の顔が明るくなった。よほど青いカレーの破壊力がすさまじかったらしい。


 「そうだ。最後に味だ。人間の味覚は,食物に含まれる分子やイオンが味細胞膜上にある味覚受容体(特定の物質が触れると味を電気信号として脳に信号を送る器官)に作用することによって生じる感覚だ。そこに作用するのは主に塩類や酸類、そしてアミノ酸だ。それらの量とバランスが人間の甘みや苦味、旨味を決めている。つまり、うまいと感じる比率でアミノ酸と塩類と酸類を合成し、それを食べ物にぶっかければ大抵のものは美味しく感じる」


 「ということは……?」

 「さて、これらを総合して、まず合成着色料と合成香料、合成甘味料を作ってみた。このトマトを見てくれ」


 首を傾げる老人の前に、トマトを置いた。赤くてつやつやしていていかにも美味しそうなトマトだ。


 「へぇ、……なんか不気味なくらい綺麗な赤色ですなぁ」


 訝しげに老人はトマトを鑑定している。


 「赤125号と黄色984号という着色料を合成したものにつけた。さらに保存剤である四酸化プロテシレ・ナトリウムをぶっかけてあるからこの状態で賞味期限は一ヶ月以上だっ!さあ、食ってみろ」


 私はトマトを指差して老人の瞳をガン見する。老人の瞳孔が瞬く間に縮まり、明らかな拒否の姿勢を見せた。


 「えっ……俺が食うんですかい?」

 「大丈夫だ。法に引っ掛かるようなものは使ってない」


 ゆっくりと老人はトマトに手を伸ばした。私はじれったくなり老人にトマトを握らせて、鼻の近くに持っていった。


 「……うん、香りもいいな。微妙に強すぎる気がするけども」


 痛いところをつかれたな……。


 「保存材の匂いを誤魔化しているためだ。技術の進歩でどうにでもなる」

 「正直、食べるのに勇気がいるんですが……」


 異形の何かを見ているような表情をしている。そんなに嫌か?ウーン、やはり見た目が派手すぎたかな?赤125号ではなく赤43号を使うべきだったか。まあ、なんにせよとりあえずフォローの言葉をかけておく。


 「大丈夫。食わせて倒れたやつはいない」

 「倒れる倒れないっていう基準がそもそもおかし……」

 「さっさと食え!さぁさぁさぁ!食えばお金やるから!ほらほらほらぁ!化学調味料てんこもりっもりの美味しいトマトだぞぉ!」


 私はトマトを強引に老人の顔に突きつけた。


 「わかった。クッ……頂きます」


 アムッ。シャキ……シャキ……。ゴクッ。


 「クゥゥゥゥ!!……旨いな。味は。なかなかいけますぜ……」


 歯形のついたトマトを鋭い目付きで見つめている。素直じゃない奴だ。まあ、前々からだが……フフフ!


「そうだろう?うまいだろう?」

「なんか騙されている気がするんですが……」

「まあ、確かに。五感を化学調味料で騙している、といって差し支えないだろう」


 別にそんなつもりはないんだがなぁ。単純に美味しいものを作ればいいと思ったんだが。人は所詮道徳だとか健康だとか、もろもろの概念よりも先に、うまいものを食べたいという、原始的で圧倒的な欲望を持っている。


 「あぶねぇ旨さですね。食べ続けると危なそうと認識していながらも、目の前にあると病的に食べたくなる」

 「いや、危なくないから。大丈夫だから。国から認可されている物質ばかりだし、依存性とかそんなものあるわけないだろう?単なる添加物だ。薬物じゃあるまいしさぁ」

 「いや、人工的に化学物質を合成してる時点で……」

 「気のせいだ!」


 私は無理矢理話をたちきった。なんだか無性に研究成果を老人に話したい気分だ。なんていうか、口が止まらない。


 「これを使えば賞味期限ギリギリの危ない食べ物でも、新鮮な見た目、匂い、味に戻すことができる。さらに賞味期限も一月は延びる。安価で旨い食べ物を安定して提供できる。これは食文化の改革だ!」


 これを量産できれば、作り手や場所に関わらず同じ味が再現できるようになる。安いバイトでもそれなりの料理を提供できる。安価で品質が保証されており、なおかつ保存がきく。そしたら一ヶ所の工場で食品を大量生産し、賞味期限の長さを武器に世界の各店舗に向けて輸出、仕上げを各店舗のバイトに任せれば……!

 って、何を考えているんだ?私は。

 とりあえず深呼吸をして老人に向き合った。


 「……あと、その研究の過程で産まれた副産物だ。ほい」


 クールダウンした私は小瓶に入った粉末を老人に手渡した。


「なんですか?この粉は?」

アミノ酸のなかでもうさぽん類の美味しさの秘訣である旨味成分のうち一つ、ウサタミン酸を塩と合成し取り出した粉末だ(現代で言うと旨味調味料である)。ウサタミン酸ナトリウムを産みだす『うさぽん』にライスランド産の白米と昆布を食わせて採血、その血液をろ過すると抽出できる。因みにこれは保存料や加工料を一切使用していない純粋な調味料だ。俗に言う『うさの味』だ」


 ふーん、とちょっとだけ期待している様子で、老人は一つまみ口に入れた。


 「……!?」


 すると、目を見開き、口をぽっかりあけて、口を押さえた。


 「これはッ!旦那これッ!これだよ俺が欲しかったのはっ!……貰えるだけもらっていいですかい?」


 私は少し首をかしげてから答えた。


 「ああ。製造法が製造法なだけに、かなり高価なものだがいいのか?合成調味料のほうがずっと安いが?」


 私は様々な色のついた液体をコートの中から取り出す。緑・赤・橙・青・黄・紫・黒……


 「ウゲッ……いっ……いや、これだけでいいですぜ!」

 「……?そうか。遠慮しなくていいのに……」




 数日後


f:id:TheFool199485:20170408213808j:plain

 「これで行きやすぜ!!カルマポリス風海鮮鍋!」

材料:
カルマポリスオオメガニ(蟹。カルマポリス原産)、
デイオクト(蛸。カルマポリス原産)。
バーミリアンセロイド(セロリみたいな植物。エレジア婆より)
ウミウシ(ベリエラ産)
うさの味(隠し味)


他多数。



━━



 「私もできた!ギガハッピーミート丼!(保存料添加物二倍盛り)」

 「……それは食べ物ですかい?」

少し昔話をしよう PFCSss

 わたしの故郷、エルドランは大陸で起きた妖精大戦に巻き込まれていたの。だから、とても妖精と妖怪を恐れていた。
 でも、わたしの恋人は妖怪だった。彼はその事を隠してわたしと付き合っていた。
 彼は目立たないけど優しい妖怪だった。生物学が大好きで、普段はあまりゃべる人じゃないのに、生物の話になると途端に話続けるの。わたしがやんわり話を止めると、彼は顔を赤くして恥ずかしがるのがお決まりだった。
 彼の話からは、興味のない人でも楽しく聞けるように、考えて工夫しているのが伝わってきた。
 わたしはそんな彼と一緒にいるのが大好きだった。あえて、生き物の話題をふってずっと話を聞いてるの。そのうち、一日に何時間も話をするようになって、気がついたら付き合っていた。
 先に告白したのはどっちだったっけ。彼は「まだ成人してないじゃないか」と、照れつつわたしに指輪をはめたの。
 それから、わたしは彼の旦那を名乗るようになっていった。友達からは身長の差でお父さんとお子さんって呼ばれてたけど。
 そんなある日、家で彼と夕食を食べていると……突然怖い人たちがやって来て、何もかもが終わった。押さえつけられ、目隠しと手錠をつけられると車の中に連れ込まれた。手錠をつけられるときに指輪が落ちてしまった。泣き叫びながら逃れようとしたけれど無理だった。せめて、指輪を拾いたかった……。
 わたしと彼は離ればなれにされたあと、怖い人に船でつれていかれた。行き先はノア新世界創造教の本堂だった。

 本堂での生活は最悪だった。暴力拷問実験恥辱、思い出すだけでも涙が溢れてくる。でも、どんなに辛いことでも、愛する人の顔を思い浮かべれば乗り越えられた。
 入獄から数週間した頃だった。寒い寒い牢屋の中で一人で泣いていると、ペストマスクの男が部屋に入ってきた。そして、大きな何かを投げつけられた。
 わたしに投げつけられたのは魂を抜かれ永遠の眠りについた彼だった。指にはわたしが落としてしまった婚約指輪が輝いていた。
 こうなってしまったのは、彼に告白したわたしのせいだった。その上、彼の肉体を研究に利用する非道な自分が許せなかった。そして何より、数々の悲劇を作り出しているエルドラン、さらにはそれを放置するこの世界そのものが憎かった。
 わたしはどこまでも辛く暗いこの世界に対しての復讐を誓った。

 絶対に彼と一緒に幸せになってやる、と。

 あのときの姿のまま!
 あのときの心のまま!
 あのときの記憶のまま!

 わたしたちはもう一度出会い、一点の曇りもない幸せを手にいれてやるっ!
 わたしは彼の指から指輪をとり、もう一度自分の指にはめた。もう二度と奪われたくないと願った。
 その時、ペストマスクの男のポケットから薄紅色に輝くなにかがわたしの胸に突き刺さった。何がわたしの心臓を貫いたのか理解したとき、わたしは『能力』に目覚めた。
 魂の力を使って、外科的な肉体の治療をする力だった。わたしの心臓は薄紅色のメスに貫かれているにも関わらず、能力によりメスと接触している部分がすさまじい速度で修復され続け、動きを止めることはなかった。
 わたしは胸に突き刺さったメスを抜くと、ペストマスクの男に投げつけた。

 そして、皮肉を込めてそいつのマスクを奪った。

 それを境に能力は急激に開花していき、しまいには頭を撫でるフリをして後頭部に指を指すだけで、神経を弄れるようになっていた。
 わたしは整形と色仕掛けで看守達をおびき寄せ、エンドルフィン(脳内麻薬)依存症にして支配した。
 次に恋人の遺骸を手術して筋力を増強した。さらにもともと小柄だったわたしの体を若返らせ、さらに小さくすることで、遺骸を身にまとった。
 不意打ちで信者を気絶させつつ、ノア教の本堂を脱出。
 そして私の体と遺骸の間に空気を入れ浮くことで、泳いでエルドラン国を脱出した。これしか、彼と一緒に脱出する方法がなかった。


 脱出した後、私は能力を研究した。
 わたしは適当な野性動物で、どのくらいの精度でどのようなことができ、何が出来ないかを把握した。
 研究の結果、恋人の魂の宿ったメス以外の普通のメスでも能力が発動することがわかった。また、メスで触れないとなにも出来ないが、逆にメスを握り脳に突き刺すと、簡易的な神経の書き換えや記憶の操作まで出来ることがわかった。
 さらには時間をかければノア教で行ったように、恋人の体を神経や臓器の位置その他もろもろを調整することで、私の肉体の一部として生まれ変わらせるような、高度な技能も会得していた。
 (私自身に施した幼体化は常に能力影響下である私自身にしか出来ないが……)
 とはいえ、すさまじい精度に自分でも驚いてしまった。

 わたしはメスを使い、見た目から性別や国籍をも偽り、エルドラン国の医療機関に入った。露骨な妖怪差別に腹が立ち、数年でやめてしまったが。
 しかし、そこで病人と接っしたときに、死するときに魂の力が得られること、さらには魂の治療にも私の『力』が使えることがわかった。最後に……彼の魂を完全に甦らせるには数百人成仏させなければならないことも。
 そして、私が医療機関で発揮した優秀な解剖技術に目をつけたのが、あの元ドレスタニア国の王であるガーナだった。
 ドレスタニアで発生する自殺志願者の処理、解剖、そして死亡理由の擬装を依頼してきた。
 お互いに知り得たことは他言しないこと、遺体を利用して医療の貢献になるような研究データを集めること、その他複数の条件を設けて、私は承諾した。(そのうち一つに表向きは国際指名手配者扱いとなり、もしもドレスタニア兵に捕らえられた場合、犯罪者扱いで相応の裁きを受ける、というものもあった。そのため、私はガーナに雇われているのにも関わらず、ドレスタニア兵に追われるという複雑な立場になった)

 私は恋人を甦らせるためにひたすら人を解剖し続けた。

 でも、死に行く人たちにふれあうことで、考えが変わった。貴族階級の人間にも関わらず、自らの安楽死を依頼する人もいれば、凄惨な人生を送ってきたのに『私は幸せだ』と言い切る妖怪の奴隷もいた。それを見て、変えるのは環境ではなく自分であることを思い知らされたのだった。幸せの形もひとそれぞれなんだということも知った。
 それからは、ドレスタニアに限らず、ひたすら死と向き合い、神父紛いのことをして、人を成仏させてきた。
 私はある種の使命感を感じていた。
 死を望む人にとって生きるだけでも大変な苦痛だ。その苦しみを傷みなく、安らかに、人の役に立つ形で取り除くことが出来るのは私だけだ。
 私がやらなければ誰がやる?

 死は平等だった。子供がいようが後世に語り継がれようが、やがて皆から忘れ去られる。死んだら大抵の人は何も残らない。だからこそ、生きる過程――生きざまが大切であることも知った。

 私は自分の生き方に疑問を持ち始めた。今まで私は『彼と幸せになる』という『結果』に依存するしかなかった。彼こそがたったひとつの心の支えだったから。幸せの形や、幸せになる方法、……そもそも幸せにならなくてもよかったはずなのに。


 私は新たにいきる理由を探し求め、解剖業を営みつつ、世界を旅した。そして、ひとつの明確な目標を見いだした。
 私のような化け物をこれ以上産まないよう、ノア新世界創造教を打ち倒し、祖国エルドランを救うと言う目標を……。




解剖鬼「……というわけで、今日は幼女の姿のままでーとだぞぉ!レウカドぉ!遊園地に行ってメリーゴーランド乗って、コーヒーカップルで… うふふふふふふふふ!!」
 」

レウカド「あっ悪夢だ……。そもそもあんた、恋人がいるのにいいのか」

解剖鬼「恋人なら魂が体の一部になってるから心配するな。心臓に突き刺さってる」

レウカド「それに、恋人を甦らせるために解剖してたんじゃないのか?こんな……遊び呆けていいのか?」

解剖鬼「前はな。だが、ただ普通に生きるだけでも辛い世の中に、わざわざ死んで安らかになった奴を引き戻すのは酷だろう?」

レウカド「……ああ。少なくともお前と同じ空間で生きているのが辛いぞ」

解剖鬼「因みに今逃げ出したら全裸でドレスタニア軍の人に抱きついて『レウカドに犯される』って大声で叫ぶから」

レウカド「……幼女の皮を被った悪魔」

解剖鬼「違うな。恋人の遺骸を被った幼女を被った悪魔だ」

ショコラと女の子 PFCSss

セレア「ドレスタニア……、人間の独裁体制であるとはいえ、差別はあまりない。ふむぅ、少し観光でもしてみるか」

 白いワンピースの女の子はドレスタニア王宮のそばで散歩している。

ショコラ「遅刻遅刻~!!」

 角からパンをくわえて飛び出してくる人影


 ドンッ!


セレア「ひゃあ!?」

 エアリスの頭が飛び散る。鼻から上がない状態で倒れた青年に駆け寄った。

セレア「お主!大丈夫か!?」

ショコラ「いてて…はっ!?!?すいません!!」
(変わった顔の方だなぁ)

ショコラ「お怪我はありませんか?本当にごめんなさい…」


 数秒でセレアの顔は元通りに。


セレア「大丈夫。生まれつき結構打たれ強くての。いやぁ、再生中の顔に驚かないとはお主、結構やるのぉ!ホラーとかそういうのに強いタイプなのじゃ?」

 にこりと笑いながら手を差し出す。


セレア「あ、この腕はつかんでも大丈夫じゃぞ?」


 がっしりと腕をつかんでちぎれんばかりの速度でヴォンヴォン振る。

 一方セレアはショコラの手の降りに合わせて体ごと宙に浮いたり降りたりを繰り返した。


ショコラ「おおおー!!!七変化ですか!?顔の他にもできるんですか!?」

セレア「もちろんじゃ!ほれほれ」


 上下に振られた状態のまま、自分の体の一部をピンポン玉大の大きさのボールにして、器用にヘディングする。


ショコラ「す、す、すごおおおぉい!!!!!何者なのですかっ!?僕にもできますか!?」


 ショコラは興奮した子供のように跳ね回る。目がキラキラしている。


セレア「おっ!主もやるか!」


 テニスボールほどの大きさの玉を作り出して、ショコラの繋いでいる方とは反対側の手に投げた。金属光沢を放つ見た目とは裏腹にとても軽い。


セレア「因みにわらわは旅人じゃ。全国各地を回ったことがあるぞ!」


 セレアは向日葵のような笑顔をショコラに向ける。


ショコラ「わぁいありがとうございます!!」


 ショコラは天才的な動きでボールを何度も跳ねながら訪ねる。


セレア「あり得ない動きをしてもわらわが制御するから大丈夫じゃぞ!といっても、お主には必要ないかもな。アハハッ!」


 そう言いながら、さらにボールの数を増やしてジャグリングを始める。


ショコラ「旅人さんですか!!ドレスタニアは良い国ですよ!!案内しましょうか!?」


 ショコラはにっこにっこしている。


セレア「案内か。是非頼むぞ!この町のいいところを見せてくれんかのっ!」


ショコラ「おーまかせください!!一番いいお店を紹介しますよ!!」


 いくつか渡されたボールをジャグリングしながらショコラが案内したところは、王宮の広い大食堂であった。


セレア「おお!ずいぶん広いお店じゃのぅ!」


 目を輝かせながら歩みを進める。働いている人から、「何がおこっているんだ」という目で見られたが、全く意に介してない。
 大食堂全体の外観から、壁にかけてある絵、食器の形まで興味津々のようだ。


ショコラ「おぉ✨いい匂いがしますね!!」


 道を間違えていることへの疑問が厨房の匂いで消滅する。


ショコラ「コックさん!今日の日替わりメニューはな
んですか!?」

コック「ガーナ・チャンプルーとイナゴ豚の青椒炒めさ!チャンプルーはショコラ王にはまだ早いね!ハハ!!」


 セレアはもとより疑っていないが、匂いを嗅いだことで、完全にここを食堂だと勘違いした。


セレア「わらわはチャンプルーもいけるぞ!苦くても大丈夫なのじゃ!」


 『子供じゃないよ』アピールをする哀れなアルファ(14)。さりげなくショコラの手を握る。


コック「お嬢ちゃん、こいつぁ結構くるぜ?ガーナ様のオススメってんで作ってみてはいるが、文句言わないのはその角で食ってるご老人位だ」(ガーナ王とのチェス後)

ショコラ「に、苦いんですかっ!!」


 ショコラの手は既にプルプルしている。チャンプルーだけに。


セレア「お主大丈夫か?食ってみるとわりと行けるんじゃぞ?ププッ」


 いたずらに笑いつつ、角でチャンプルを食べている老人を横目で見る。黙々と、だが情熱的にチャンプルを口に運んでは噛み締めている……。

(……うまそうじゃのぉ)


コック「おっしわかった!そんな目で料理を見られては、出さない訳にはいかねぇな!」


ドン!!


コック「食ってみなお二人さん!!」

ショコラ「おおおお、お、美味しそうですネ!(ガタガタガタ)」


 ショコラは料理を残したことは一度もない。故に辛い。
 一方セレアは指先からフォークを生成し、

セレア「頂いちゃうのじゃ!!」

 ガツガツと食べ始める。


セレア「ほらお主にもやるぞ。早く食わんと冷めるぞ?」


 さりげなくショコラの鼻に金属片を飛ばし、塞いであげる。


ショコラ「うぅ!!??お兄様の好きな味です!!つらいです!!苦いです!!」


 味は防げたが、むしろ苦味だけの食べ物と化し、半ベソをかいているショコラ


ショコラ「貴女も好きな味ですか!!??」


 少女は様子を察してやっちゃった☆という悪魔のような笑顔をショコラに向ける。


セレア「ああ、好きじゃぞ?こっちのスプーンを使ってみるんじゃ。……そろそろ時間じゃしのぉ」


 因みにこスプーン、口につけると一部が舌に張りついて味覚を変える。


ショコラ「あれ?さっきまで苦かったのに、凄く美味しくなりましたよ!!」

コック「なにい?王さまもついにこの味がわかるようになったか!ははは!!ガーナ様に報告しないとな!!嬢ちゃんはどうだいうまいかい?イナゴ豚青椒ももって帰りな!」


  タッパに包んで渡す

 ビニール袋の形をした金属製の何かをポケットからとりだし、タッパーを入れる。


セレア「やった!コックのおじさんありがとうなのじゃ~」


 喜びで思わずショコラの舌の上に張り付いた金属を自分に戻してしまう。ちょうどショコラが口にチャンプルを含んだ時のことだった。


ショコラ「うっ!!??!!??コックさんやっぱりダメです!!僕はまだお兄様になれませんー!!」


 かわいそうな顔をしてぴーぴーなく。突然、裏から地鳴りのような規模の音が聞こえてきた。


メリッサ「ショコラさまあああああぁぁぁあぁ」


セレア「えっ、待つんじゃ!のわぁっ?!」


 バッシャーン。セレアの左半身が吹っ飛んだ。唖然とするコックに礼を言ってそそくさと去っていった。


セレア「ショコラ!またのっ!」


 セレアが去っていったあと、左腕が蒸発していたが、誰も気づかなかった。


ショコラ「あ!!名前を聞くのを忘れてしまいました…。七変化さんまた会えますかね?」


 ショコラは完全に忘れていた。ペストマスクとの待ち合わせのことを。。。



 その後……







 「メリッサー!どこですかー!メリッサー!」

 「メリッサー!あ、旅のお方!メリッサを見かけませんでした?私と同じくらいの身長で、メイド服を着てて。大切な方々と待ち合わせをしておりまして、その場所をメリッサに話していたのですが……」

 「多分、その『大切な方々』って俺たちのような気がするんだけど」

ひな祭り ー当日ー 絶望激進お雛様 PFCSss10

 バトーは右手に持つ剣に水筒の水をかけ、瞬時に凍結させた。あっという間に短剣が長剣になる。こんな芸当も出来るのか……。
 さらにバトーは左手の手のひらに、右手で何かを描くと、水筒から残りの水を全て注いだ。私がバトーの金髪ショートと凛々しい女顔に見惚れていると、いつの間にかバトーの左手に細身の剣が握られていた。実に珍しい氷の剣の二刀流だ。


 「いでよ…我が聖なる刃……『氷斬剣』!まぁ、勝てるかどうかは別として……ソラ、いくぞ!」


 礼拝堂の祭壇前にいるエアリスに、二人は一気に距離をつめた。


 「二人がかりか。卑怯ものめ!」


 ソラは思わず叫んだ。


 「あなたが言わないで下さい!」


 ソラのナイフがエアリスを襲う。しかし、エアリスは右手を瞬時にナイフに変化させ防いだ。
 その直後、バトーの剣を手刀で防ぐ。みるみるうちにエアリスの手刀が長剣に変形する。


 「素手だと思ったらそういうことだったのか……


 バトーはそのままエアリスに流れるように二本の剣を振るっていく。ソラも同様にフェイントと体術を交えながらエアリスの喉元を狙う。礼拝堂に金属音がこだました。
 エアリスはソラの足払いを一歩引いて交わしつつ、バトーの剣を受け流す。ソラが腹部を狙ってきたのをみて、ナイフを叩きつけて軌道をそらせる。バトーが顔を狙うのを、上方向に剣を動かし弾く。
 私はクライドと目配せしてから、小言をこぼした。


 「世界最高峰のナイフ使いと剣使いを同時に相手してやがる」


 クライドはバック転で宙を舞い、エアリスの後ろに着地した。そのまま、剣をエアリスに突き刺そうとする。しかし、エアリスは左の足を一時的に大剣に変化させて、クライドを迎え撃つ。剣と剣が思いっきりぶつかり、キィィィーーーーンという不快な音が発生した。


 「……五月蝿いな。神に無礼だとは思わないのか?」


 クライドは思わぬ反撃に祭壇に不時着した。
 さらにエアリスは左足の大剣をバトーとソラの戦闘の補助に使い始めた。剣とナイフと大剣の訳のわからない斬撃によって徐々に二人が押される。


 「このままでは……危険です!」

 「俺たち二人を相手に……クッ」


 助けにいきたいのは山々だが、もはや私の手出しできる次元の戦いでは……ない。
 エアリスは両腕を大剣に変化させて、二人をなぎ払った。バトーはなんとか避けられたものの、ナイフという間合いの短い武器を使っていたソラは、胸部に一の字の傷を負ってしまった。無言でソラが顔をしかめる。


 「今だ!ショコラ!」


 礼拝堂の中央にいたショコラが剣を地面に刺すと、剣から発生した霜がまっすぐエアリスに延びていった。その霜がエアリスに到達すると、一瞬にして彼女を氷付けにした!


 「《居合い 玄米断》!シャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ……!!」


 どこから奇襲したのか、突然現れた先生がすんごい速度で斬撃を繰り出した。速すぎてもはや目で追うことが出来ない。


 「……シャシャシャシャシャァァァァ!細切れになれぇぇぇい!」


 先生の刀によって全身バラバラになっているにも関わらず、どうにか人形を保つエアリスの体に、ソラが追い討ちをかける!


 「そして、砕け散る」


 ソラによる腹への一撃が決まった瞬間、エアリスの体は粉々になって、背後の祭壇やその奥のノアの絵画にまで、飛び散った。だが、不可思議なことに飛び散ったのは血の赤ではなく、銀色の液体だった。


 「警戒を怠るな!何か嫌な予感がする!」


 凍りつき非常に滑りやすくなっていた床で、見事に技を決めた先生とソラを後ろに下げた。
 その時だった。倒れていた信者達が一斉に立ち上がり、出口の方へ逃げていった。恐怖の声を撒き散らしながら。


 「まあ、教祖様があの様じゃ、逃げたくなるのも当然だよね……」


 礼拝堂の中央に戻ってきたクライドが呟いた。

 しばしの沈黙の時が訪れた。よく、耳を済ませると、本当に小さいが……何かが地を這うような異音がする。その正体を探そうと見回しても何もない。血まみれの床以外目にはいる物がない。

 突然、隣にいた先生が教壇を指差した。


 「……?何もないじゃないか」

 「違う!その教壇に飛び散っているものだ」


 ショコラが眼鏡をかけ直してから答える。


 「ええ?でも、教壇の上ってエアリスの断片がうごめいているだけじゃないですか?」

 「ちょっと待って!細切れにされた身体が動くことなんてありえてたまるか!」


 私が驚愕している間にもエアリスの断片はどんどん移動している。壁についた金属の粒も、床に落ちた斑点の一つ一つも、全てが意思を持って一ヶ所に集結しようとしていた!


 「ショコラ!もう一度凍らせろ!」

 「ようやく気づいたか!バカどもが!」


 金属の粒が空中で糸を引きながら集合し、一瞬にして教壇の後ろにエアリスが再生した。

 
 「凍らせて、細切れにして、完全に止めを刺したはずなのにどうして!」

 ソラが絶句する。他のメンバーもあんまりの光景に冷や汗を顔に滲ませた。

 「破壊されようが何をされようが、我は甦る。なぜならそれは、我が神であるからだ!」


 ショコラの攻撃がエアリスに届く前に、エアリスが宙に浮き上がった。そして、彼女の背中から黒い三角形の構造物が形成された。ドレスの下からバーナーのような筒が左右対称に一本ずつ出ている。ライスランドの飛空挺に見られる飛行エンジンのような形だった。(これを人が入れる大きさにすれば、空を飛べそうだった。仮名をつけるとしたら飛行機……いや戦闘機か)
 さらにエアリスは両方の腕をガトリング砲のような形に変形させ、私たちに向けた。ダダダダダとあり得ない音をたてて銃弾が発射される。

 私たちは散り散りになりながら、弾丸を避ける。ガトリングガンとしか形容しようのない、無茶苦茶な兵器だ。
 それを空を飛びながらそんなものをばらまいて来るのでたまったものではない。


 「ぐぁッ!」

 「バトー!大丈夫か!」


 バトーのわき腹辺りを玉がえぐったらしい。みるみるバトーの服が赤く染まっていく。空を飛んでいる相手に攻撃出来るのは、この場では風の魔法で宙を舞えるクライドしかいない。
 しかし、仮にクライドが奇跡的に攻撃できたところで、エアリスに肉体を再生されて終了だ。最悪だった。
 すぐ右で先生が息を荒くしていた。


 「シャ゙ァ゙ーーーーー!!どうにもならないのかっ!無敵か!奴は」


 と言いつつ、余裕でガトリングガンを刀で弾き飛ばしている辺りさすが先生だった。

 ショコラはショコラでまるでダンスを踊っているかのような、超人的なステップで弾丸を交わしている。

 突然ずるり、と嫌な音がした。滑り防止の加工をしてあるはずのブーツが、地面の血だまりに足をとられた。何事かと思ってよく見ると、銀色のヒモが私の足に巻き付いていた。ヒモをたどっていくと、エアリスの右足から垂れていた。足払いか?
 みるみる視界が変わっていき、最後に天井が見えた。私は完全に体勢を崩したらしい。


 「てこずらせおって。死ね!」


 マシンガンが体に注がれた。コートに無数の穴が開き、衝撃で巨体がガタガタと揺れた。先生が割って入り、途中から銃弾を弾いたが、もはや手遅れだった。
 ……まあ、肋骨が数本と胸骨にヒビが入り、肩に一発めり込んだだけだが。こういうとき心の底から防弾コート・ベスト・ズボンにありがたみを感じる。とはいえ動けるようになるまであと数分はかかりそうだった。


 「ペストマスク!ぐッ……。これでも食らえ!」


 その隙に、空中で見えない足場を踏むかのように跳んだクライドが、エアリスを後ろから奇襲した。私を倒して慢心したエアリスの両手足を、クライドの剣が何度も切り裂いていく。さらに追撃の火炎がエアリスを焼き尽くす。
 しかし、エアリスはわずかに硬直しただけだった。彼女の体の表面が溶けかかっているにも関わらず、先生の方に突撃した。
 切り裂かれ液状と化した手足が、空中で糸を引きながらエアリスと同化する。さらにエアリスの両手だったものがカッターのついたドリル変形し、回転した。
 先生はこれはヤバイと察知したのか、ジャンプしつつ避ける。だが、空を飛べるエアリスには関係ない。先生に向かって一直線に飛行する。


 「ぬあぁぁぁぁぉぁお!」


 先生の痛々しい悲鳴。しかし、ドリルの先端が触れてから数センチメートル掘り進んだところで、バトーの氷の魔法がヒットする。再びエアリスが怯む。その隙にソラが先生を救出した!
 胸部から漏れる血液はかなりいたそうだったが、まあ、先生のことだし……、大丈夫か。
 だが、このままではいずれ負ける。どんなに敵に傷を与えようがダメージは通らない。やがてこちらの気力体力が尽き……負ける。

 延々と戦いは続いていった。数で圧倒しているのにも関わらず、各国最高クラスの逸材が集まっているのにも関わらず、勝負は防戦一方だった。エアリスの剣とガトリングガン、さらには呪詛によるカマイタチにより、6人の体には決して浅くない傷が刻まれていく。
 もう何時間と戦っている気分だが、実際には戦い始めてから十数分しか経過していない。

 一条の光も見えぬ闇の中にいるようだった。ソラは土にに埋没するかのような暗い顔をしていた。先生は奥歯をきつく噛み締め、クライドは肩で息をしながら上目遣いでエアリスを睨む。バトーは何か打開方がないか考えているようだったが、唇は固く閉じている。






 これが……絶望か……。






 「なるほど!さっきの連係攻撃でエアリスの弱点、わかりましたよ!」

 ショコラがぱちんと指を鳴らそうとして失敗したのに対して、この場にいる全員が驚愕の眼を向けた。

四医師集結 クレインの開口手術 PFCSss

 「これほどの名医が集まるとは光栄の至りだな」

 ペストマスクをつけた黒いコートに身を包んだ怪しい人。その実態は自殺志願者を安楽死させ、解剖し、その情報を医療機関に提供する、通称解剖鬼。



 「ドレスタニアのレウカドだ。今日はよろしく頼む」

 端麗な顔で治療目的でない患者すら引き寄せる、ドレスタニアの闇医者、ドクターレウカドが挨拶する。煙菅から出る煙を部屋に充満させ、幻術を治療の補助に使う珍しい医師である。薬草や薬品にも精通しており、普通の医師では対処できないような難題も軽々と解決する。
hirtzia.hatenablog.com


 「同じくドレスタニアのハナヤよ。こんな歳だけどまだまだ現役だからね?」

 ドレスタニアで長く診療所を勤めるハナヤさん。ご高齢のようだが天使のような笑顔が実年齢をわからなくする。癒しの力を使うことができる。
 大抵なら見ただけで病名から解決法まで思い浮かぶ熟練の医師である。
http://nagatakatsukioekaki.hatenadiary.jp/archive/category/PFCS



 「エルドスドのセンセーだ。あーはっはっはっは!」

 下駄に白衣に丸眼鏡という外見から、女に見えないことで定評のある通称センセー。ソバカスがチャームポイント。エルドスドで診療所を開いているが、とにかく腕がスゴい。救命病院の最先端で活躍していたという噂もある。どんな患者でも真摯に接し、利害に関わらず全力で治療を行う真の医者だ。
http://yokosimamanako.hatenablog.com/archive/category/PFCS

クレイン。今回の患者。すんごくイケメン。
pfcsss.hatenadiary.jp





━━━

センセー「あーっはっはっは!採血の結果が出たぞ」

解剖鬼「白血球高値か。急性炎症か?CRPは?」 

センセー「ああ、まだ低いが恐らく上がり始めだろう。ついでにCreなんかの腎機能に関わるところで異常値が出ているぞ。尿の排泄障害だな。ついでにALT、ASTも高い」

ハナヤさん「っていうことは肝臓も悪いんだねぇ。かわいそうに。恐らく薬物によるものだね……」

レウカド「それにしてもこの血液……ピンク色だ。乳び(にゅうび)しているな。中性脂肪の値も偽高値。前日唐揚げかなんかをやけ食いしたな?それに尿酸も高いのか」

解剖鬼「酒、肉、そして麻薬。これだけやっているんだ。どこが異常でもおかしくない。HbA1cが高いところを見るに、甘いものも大好きだな?」

センセー「悪習の塊だな。あーっはっはっは!さて、診察に写るか」




━━


 レウカド先生に「あの…これ治せますか…」って大事なトコロを見せるクレイン……

 残念なイケメンである。



レウカド先生「あんた……、何をしたらそうなるんだ?」

解剖鬼「遺伝子レベルでズタズタにされている」

センセー「こりゃアタシにも叶わん」

ハナヤさん「これは……かわいそうに。さぞや痛かっただろう?」


クレイン「一瞬目の前がくらんだと思ったら俺の息子が無くなってたんだ…」


内科医(レウカド)「どうする?」

外科医(解剖鬼)「とりあえず『開通』させとくか」

町医者(ハナヤさん)「もっと大きな病院で診てもらった方がいいかもねぇ」

腕のいい医者(センセー)「あーっはっはっは。大丈夫、それを失ったくらいで死にはせんよ」


クレイン「治せるなら治してくれぇ!!報酬は麻薬500mg…こんな大量のモン滅多に手に入らねぇぞ!」


ペストマスク(解剖鬼)「魅力的な報酬だ。丁度末期癌の患者がいてな」

メス顔(レウカド)「もらったら、アウトなんじゃないか?これ」

面倒見のいいお婆さん(ハナヤさん)「私と一緒に薬をやめる努力をしましょう……」

丸メガネ(センセー)「止めたほうが身のためだぞ?」


クレイン「これしか報酬を用意出来ないんだ!ペストマスクの彼よ、貰ってくれ!!」


犯罪者(解剖鬼)「よかろう。これを麻酔に使おう。レウカド、煎じてくれるか」

犯罪未遂(レウカド先生)「わかった。それなら合法だ。俺も手伝おう」

聖母(ハナヤさん)「手を握っているから、頑張るんだよ?(さりげなく癒しの力)」

まともな医師(センセー)「じゃ、さっそく手術道具用意してくる(ゲタの音)」


クレイン「助かる。だからとっとと治療しやがれ!!」
※なお何をどう頑張ってもダンテの見た脚本いわく治せない模様


紫煙が充満した部屋にて
ガシャン!ザクッドシュ!
バァン!ドドド!
「レウカドさらにメス!あと、センセー電気ドリルをお願いできるか?ハナヤさん癒しの力を全開にしてくれ!」
「持ってきたぞ!いっちょやったる!」
「センセー、恩に着る」

キュイイイイイン!ガガガガガガガガ!!!

「これが山場だよ!頑張ってたえるんだよ!」


数分後


解剖鬼「やった!術式成功!尿道が開通したぞ!皆のお陰だ!」

レウカド「はぁ……、あんた、普通に医者やった方が絶対いいぞ?」

ハナヤ「よかったね!よく頑張ったね(ナデナデ)」

センセー「ハッーハッハ!名医が四人も揃えば怖いことなし!」


クレイン「助かった(尿道だけだが…)。おいペストマスクの奴、報酬だぞ。(どこからか麻薬を取り出した。)
しかしもうアルビダは見たくない。俺の親がアルビダなのが親不孝だな」
※なお繁殖機能は……


ペストマスク「……足りない。四人分だ。これだけの医師を集めるのにいくらかかったと思っている」

レウカド「病院は入院費を払いたくなくて、退院間近に逃げ出すやつがあとを経たない」

ハナヤ「残念だけど事実なの」

センセー「(メガネをクイッ)」


クレイン「チキショーー!!四人分なんて持ってねぇよ!!っていうかお前ら…やめろぉお!!(幻覚を見せる。地面が割れる幻覚をだ。クレインはそれを使いそそくさと麻薬を起き逃げ出した)」



「ドクターレウカド、能力影響下なのにわざと取り逃がすとは……」

「あんた……さすがにあそこまですると、患者が来なくなるぞ。次回につなげられるようもっと工夫を……」

「まあいいんじゃないかね?元気になったんだし(ニッコリ)」

「おっし!お開きにするか!」

ひな祭り ー当日ー 外道の降臨の巻 PFCSss9

 「……そうだ。私は読書が好きなのだ。エアリスは本で得た知識より召喚した。私の力は魂の操作だ。人の魂を他人の体に移植できる能力。それを利用してさ迷える幼子の魂をひとつの体に召喚した」

 さっきまでとはうってちがい、今にも消え入りそうな、かすれた声がクロノクリスの口からもれる。当然だ。首を持ち上げているのだから。
 私の後ろではソラ、クライド、先生が増援を警戒しつつ、話を聞いている。

 「数えきれないほどの幼子の魂を融合させて?」
 「……そうだ」
 「それで?エアリスの力は?パラレルファクターは?」
 「それは今にわかる」

 礼拝堂の入り口からバトーとショコラが入ってきた。二人とも礼拝堂の光景(倒れている信者一人につき約80cc の血液が部屋に飛び散っている)に驚愕したが、すぐに私たちのもとに駆け寄ってきた。

 「大丈夫か!」
 「皆さん元気そうでよかった!……この光景のわりには」

 そして続いて、白いウェディングドレスを身にまとった少女が部屋に足を踏み入れる。

 「やはり裏切ったか。セレア!」
 「エアリスと呼べ!お前に名前を呼ばれる筋合いはない」
 「そうか。別にどうでもよいことだ。お前は私の所有物なのだから」

 クロノクリスはかれた声で呪文を唱え始めた。それを確認した私はすぐさま声帯をぶったぎった。私が自分に使ったときは声を大きくする魔法薬を喉に塗ったが、今回は容赦なく声帯を破壊した。
 
 ……はずだった。

 突如クロノクリスの体が重くなった。全身の筋肉の緊張がほどけ、四肢ががっくしと折れ曲がる。あり得ない方向に彼の間接が曲がっていき、地面に伏した。

 「バカな……死んでいる」

 あまりにもあっけない死に、この場にたっている六人は呆然と立ち尽くした。私はゆっくりと後ろを向いた。バトー、クライド、先生、ソラはあり得ないもの見たかのように驚愕の表情をしている。普段はおちゃらけているショコラですら目を見開いていた。
 それと同時に全員臨戦態勢に入る。

 そんななか、頭を抱え、苦悶の表情を浮かべる者がいた。

 「わらわの中に……なにかが入ってくる。止めろ!気持ち悪い!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」


 エアリスは白目を向き、地面に倒れ、背中をえびぞりにして痙攣し始めた。エアリスの体が痙攣によって跳ねる度に、銀色の飛沫が辺りに舞う!
 真っ先に声をかけたのは意外にもバトーだった。

 「エアリス!どうしたんだ!」

 「クロノクリスの奴がぁぁぁぁ!頭が痛い!痛いよぉ!心が引き裂ける!誰かわらわを……助けてぇ!」

 何が起きている?これはどういうことだ?

 「バトー、とりあえず離れろ!私が善処する!」

 危険だと判断した私はバトーを押し退けて、容赦なくエアリスにメスを突き立てようとした。
 しかし、メスが今まさにエアリスの胸を貫こうとした瞬間、彼女の痙攣が止まり、私の腕をつかんできた。私はもう片方の腕に握られていたメスでエアリスの腕をぶったぎると、礼拝堂の中央まで飛び退いた。着地したときに、固まった血液が地面から引き剥がされ、ペリペリという音が響いた。

 まるで幽霊か何かのようにゆらりとエアリスは立ち上がった。私が切ったはずの腕は、何事もなかったかのように身体と接着され、動いている。

 「フフフフ。やった……ついにやったぞ!我は!我は!我は!!!」

 見るからにエアリスの様子がおかしかった。顔や体を手でぺたぺたと触り、まるで新調した服の着心地を確かめるかのように、体を捻ったり、ジャンプしたりしている。

 「絶大な力!不死の肉体!魂を操る力!」

 エアリスは恍惚とした表情で、見えないはずの天を見上げて高笑いしていた。

 「セレア?」

 ショコラが不安げにエアリスの名前を呼びかけた。それに対しエアリスは嘲笑を交えて答えた。

 「我はセレアではない。セレアの肉体と精神を我―クロノクリスが乗っ取った。我が教団の人員にしていたことと逆だ。通常であれば妖怪の魂を信者に移植し新たな力を得させるのたが、我の場合は自らの魂をセレアに移植し、セレアの魂を乗っ取り融合した!」

 「勝手にあわれな子供の魂を呼び出して、用がなくなったら取り込んで……。お前はエアリス……いや、セレアの気持ちを考えたことはあるのか!」

 バトーの女々しいはずの顔が怒りにゆがみ、恐ろしい様相を呈していた。

 「ないな。もとより死者の意思なんぞに興味はない。そんなことよりこの体を見ろ!素晴らしいとは思わないか?ガキにはもったいない代物だぞぉ?」

 バサバサとウェディングドレスの裾を上下させた。明らかに挑発としか思えない……いや、挑発以下の下劣な何かだ。私が怒りでわなわなと握り拳を震わせていると、その怒りを体現したような大声がそばで発せられた。

 「この……クズ野郎が!」

 「止めろ!バトー!冷静さを失って勝てる相手じゃない。落ち着くんだ!」

 今にも氷の剣でエアリスに斬りかかろうとするバトーをクライドが制止した。

 が、それ以上の速度でエアリスに牙を向く者がいた。


 ……私だ。
 
 「ほう、貴様から来るか。かかってこい」

 「『アンダーグラ……』」

 メスを振りかぶった瞬間、目の前に見えたのはエアリスの拳だった。エアリスの小さな拳が真っ直ぐ腹部に吸い込まれていく。体を捻って受け流……あれっ……一瞬にしてエアリスが遠くに吹っ飛んだ……いや、私がぶっ飛ばされたのか?礼拝堂の入り口のドアをぶち抜き、本堂入り口付近まで滑った。

 「ごふぇッ!」

 息を吐ききってしまった。空気を求めて気管支がしどろもどろするが、肺が広がらないために息を吸うことができない。
 しかたないので、胸をぶっ叩いてなんとか呼吸を取り戻す。ついでに折れた肋骨もメスを差し込んで繋げておく。

 「えっと……よく飛びましたね。殴られて飛ばされた距離で世界記録とれそうですね」

 訳のわからないことをショコラが呟いた。

 「ンハッ………ゼェ……ゼェ。なっ何があったクライド!」

 「拳で殴られただけだ。本当にそれだけだった!これはいったいなんなんだ!」

 クライドの困惑した声が聞こえた。

 「私は先程までセレアの体だったから手加減しなければ……とか考えていました。本当は『エアリスの体を傷つけて本当にいいのか!』とか叫ぶつもりだったんですよ……。今のでやめましたが」

 遠くに見える先生もあきれているようだった。

 「はっはっは!どうだこの力は!我はお前たちを倒し、腐らないうちに肉体を補強し、魂を再び込め、エアリスと同じように使役する。世界でも有数の僕が一瞬にして出来上がるのだ。そうなればチュリグさえも制圧出きるだろう。我が支配する新世界の幕開けだ」

 こいつ!世界を敵にまわすつもりか!

 「ゴホッ……エアリスはクロノクリスの能力で無理矢理数多の魂を融合させ、肉体に縛り付けられているだけだ。倒せば肉体がどうであれ子供たちの魂は成仏するはず。容赦なくやれ!」

 私の呼び掛けに対してソラが前に出た。ゴーグルをつけ、赤いコートを羽織直し、ナイフを構える。

 「……俺がやります。バトーさん、サポートお願いします」

 「……ソラわかった。奴にどれだけ俺の剣が効くかわからないが……氷冷剣!」