フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

ルビネルとタニカワ教授 PFCSss

ルビネル
 白い肌、赤い瞳、黒い長髪、黒い学生服。妖怪の中でもアルビダという種族産まれ、妖怪の持つ力である呪詛について研究している。
 研究について語ると延々と話続けてしまう悪い癖がある。普段は自重するし、ガーナ王やグリムと話したときもしっかりと分別をつけていたが、タニカワ教授対しては容赦しない。


タニカワ教授
 実年齢よりも十歳は若く見られる教授。呪詛研究の権威。主に女子生徒に人気だが本人は自覚していない。
 端からはルビネルと一緒に超真面目に研究していると見られているが、実際には研究よりもルビネルへの突っ込みに神経を使っておる。




 「あー、イケメンになってかわいい女の子からモテたい」

 「ルビネル、モテたい、というのは分かるが、研究室でレポートを書きながら言うべき言葉じゃないだろう?」

 「そうですよね、タニカワ教授!やっぱり男足るものハーレムに憧れますよね」

 「話を最後まで聞いてくれ。……まあ、時代錯誤のような気もするけどな。私の子供の頃はそういうのも流行った時代があったが……って、君は女だろう、ルビネル」

 「生物はもともと子孫を繁栄させるように、優秀な個体と結び付きたい、という根元的欲求があるんです。モテたい、というのはごくごく自然だと思います」

 「うん、女同士で何しようが子孫繁栄は不可能だけどね?片方がオカマでもない限り」

 「というわけでナンパ本や恋愛本を図書館からかき集めてきました」

 「借りてきたのは分かるが、それをわざわざ教授である私の前で広げる。その神経がわからないんだが。っていうか研究室にそんなものを持ち込むのは校則違反じゃないかな」

 「気のせいです」

 「正々堂々嘘をつくな」

 「話を戻しますね。ここにあるナンパ本に書かれている恋愛テクを統計して、その傾向を見る研究をレポートに書いているところだったんですけど……呪詛の研究してるのに恋愛心理のレポート提出しても、受け取ってもらえないんじゃないか、ってことに先日気づいたんです」

 「そういうのは書き始める前に気づこうな?」

 「話は変わりますが、妖怪の呪詛の強さは、感情によって左右されると言われてますよね」

 「あ、ああ。前触れもなく真面目な話をすると頭の切り替えが追い付かないんだが」

 「後で補足するんで大丈夫です。そういえば、つり橋効果ってありますよね。心臓がドキドキしてる時にきれいな異性と一緒にいると、恋のドキドキと錯覚する、っていう」

 「有名な恋愛心理だが、それがどうした?話がまったく見えてこない。あと、補足されたところで理解できる自信がない」

 「そこで、

 1.普通に呪詛を発動した時。

 2.つり橋でかわいい子に話しかけられた後、その子に呪詛の発動をお願いされた時。

 3.つり橋でかわいい子に話しかけられ、特に魅力的とは思わなかったけど、その子に呪詛の発動をお願いされた時。

 呪詛の威力に差が出るのか。それの集計をとってレポートにまとめたいと思っています。それで、タニカワ教授にも集計処理をしてもらおうかと」

 「え……」

 「?どうしました」

 「冗談と思って聞いていたら、思いの外真面目な研究内容だったから驚いた」

 「因みにドレスタニアの外交官であるエリーゼさんに協力してもらい、100人の妖怪をかき集めました。来週辺りにお願いできますか?」

 「新聞とかで普通に載っているような国家の重役であるエリーゼ外交官に何で協力が得られたのか、そもそもどこで知り合ったのか気になるが置いておこう。う~ん……来週は協力は難しいかな。テストの採点が……」

 「えっ……そう……です……か……」

 「ああ、もう、そんな顔をするな、ルビネル。わかった、一緒にやろう」

 「いいんですか!やった、本で読んだ通りです!研究の成果ッ!」

 「グフゥ!」

集結の園へ 寄り道

www.kana-ri.com

⬆坂津さんの小説の外伝的立ち位置となります。これを読まなくても楽しめるように書いてはいますが、読むとより理解が深まるかと思います。



登場人物

・ルビネル
 カルマポリス出身のアルビダ(妖怪)。学生で呪詛と呼ばれる力の研究をしている。ボールペンを操る力を持つ。

・アウレイス
 キスビット出身のアルビダ。美しい銀色の髪の毛と白い肌、紅の瞳を持つ。人見知りが激しいらしい。

・エウス村長
 アウレイスの住む村の村長。船の一室を貸してくれたナイスガイ。今回は名前だけ。






 なんの因果か、エウス村長が用意した船に乗せてもらったルビネル。旅の疲れもあって、エウス村長の村に住むアウレイスに相談して、個室を貸してもらい骨休めをしていた。




 「無理いっちゃってごめんなさいね。個室で二人、だなんて……」

 ルビネルはベッドに腰かけると目の前の少女に話しかけた。強い意志が感じ取れる赤い目。その中心を彩るルビーのような深紅色の瞳。

 「いえ、お役にたてて光栄です……」

 裾の長いシンプルな衣。
 ルビネルと同じく透き通るような白い肌。
 新品の銀食器を彷彿とさせる銀色の髪の毛。末端が漆のように黒く変色しており、それがさらに銀をきらびやかに魅せる。黒髪であるルビネルからしてみれば夢のまた夢だった。黒をここまで美しい銀色に染めるような整髪料はこの世に存在しない。

 そして、……褐色に染まった肩口。
 
 「改めて自己紹介をするね。私の名前はルビネル。ただの学生よ?あなたは?」

 「キスビットのジネのアウレイスです。よろしくお願い……」

 ルビネルはもじもじと自己紹介をするアウレイスの首に手を回して、一気に引き寄せる。アウレイスが中腰になり、ルビネルの体と密着する。
 ふぅ……ん。いい胸ね……。

 「ひっ!?」

 突然の出来事に動揺するアウレイスの様子をほほえましく見つつ、髪の毛の香りを堪能する。そして、アウレイスの耳元にゆっくりと囁く。

 「アウレイス、人見知りなのはわかるけど……二人きりの時は敬語を使わないで。ため口でいいのよ?」

 肩に手を置いてから、そおっと押して、体から離してあげる。向き合ったらアウレイスの絹のように白い顔は赤面して今にも湯気が出そうだった。
 肩から手を話さずに、にこりと微笑む。

 「わっ……わかりまし……わかったわ。これでいいのよね……?」

 ルビネルはそおっとアウレイスの肩を撫でる。アウレイスは左肩を気にして顔を背けた。

 「あなたは魅力的なんだからもっと自信を持ったほうがいいわよ、アウレイス?」

 「出来ないの……私はルビネルみたいに、きれいじゃないから……」

 アウレイスは左肩からルビネルの手を払い除けようとした。しかし、ルビネルはそれに抗い、肩をなで続ける。
 
 「私は過去に左肩から左胸、左脇腹付近までを噛み千切られてしまったの。その時生死をさまよったんだけど、友達が身を犠牲にして救ってくれた。彼は死にはしなかったけれど、代わりに赤ちゃんまで体から記憶まで全て若返ってしまって……」

 アウレイスはうつむいて固く口を閉ざした。自責と自己嫌悪に陥り、どうしようもないのだろう。価値のない自分のために、他人の生きた時間を奪ってしまった。彼女が感じている責任の重さは計り知れない。
 ルビネルはそんな彼女を見て、心底美しいと思った。他人のためにここまで真剣に思いやれる人間などそういないから。
 そして、人を深く思いやれる女性は他人を強く惹き付ける。人をよく見て、気遣うことや、誉めることが出来る。
 唯一彼女に足りない自信を持たせてあげれば、すごく魅力的な女性になるはずだ、とルビネルは考えた。

 「なら、尚更自信を持つべきよ。あなたの浅黒い肌はそのまま、彼の行いの勲章。彼にとってあなたはそれだけの価値があったのよ。自分の価値観だけで、自分を判断するのはよくないわ。素直に、彼の思いを受け止めてあげたら?」

 アウレイスの両ほほにそっと手をそえて、彼女の顔を上げさせた。ルビネルはひまわりのような屈託のない笑みをアウレイスに捧げる。

 「そっか、私が自分の価値を貶めることは、彼の決死の思いを否定することになるのね……。わかったわ。私、がんばってみる!ありがとう、ルビネル!」

 パアッとアウレイスの顔が明るくなった。

 「フフフッ!今の笑顔が一番よく似合っているわ」

 本当にアウレイスの笑顔はかわいい。ずっと見ていたいなぁ。でも、この子を素直に笑わせるのはなかなか難しそうね……。

 「あっ、そうだ!今度この旅が終わったら、カルマポリスに遊びに来ない?ファッション店とか、ブランド店とかも楽しいけど、なんといっても遊園地がすごいのよ!」

 「遊園地?」

 アウレイスが頭にはてなマークを浮かべた。
 そんな彼女に対して、ルビネルはメモ帳を取りだし白紙のページを開いた。ルビネルの力によってボールペンが独りでに、遊園地の遊具を描いていく。

 「そう!遊園地に一歩足を踏み入れると、見渡す限り遊び場とか遊具で埋め尽くされてるの。例えば、観覧車って言って、ゴンドラに入って数十メートルの高さまでゆっくりと登っていって遠くの景色まで見渡せるの。すっごく綺麗なのよ!」

 「そんなものがあるの?!」

 図示された観覧車を指差しながらルビネルはアウレイスに微笑む。
 一方アウレイスはそんなものがこの世に存在するのかと驚きつつ、前のめりになってルビネルの話を聞いていた。

 「すんごいスピードで動く列車に乗って登ったり下ったりしてスリル満天なジェットコースターとか……」

 「これは!」

 「これはコーヒーカップって言ってね……」

 ルビネルはアウレイスの質問に、とても丁寧に答えていった。途中で談笑を挟みつつアウレイスと話す時間は、ルビネルにとって、とても楽しい一時だった。

 とうとう話題が尽きると、アウレイスはルビネルの手を取った。

 「絶対に連れていってね!遊園地!」

 「ええ。約束するわ。引きずり出してでもあなたを迎えに行くから!」

 エウス村長への手紙を書き終えると、意気揚々と二人は部屋を後にした。

ひな祭り ー当日ー 黎明 PFCSss13

 「これで終わり……ですか」

 目の前には、ソラたちの絶望を体現するかのような存在が浮いている。全員が力を合わせて、ようやく沈黙させたエアリス。それが全く同じ姿形で三機。
 容赦ないガトリングガンから仲間を守るため、ペストマスクの医者が真っ正面に立ち被弾した。さらに流れ弾を先生が弾き、ようやく敵の攻撃を防げた。
 しかし、ペストマスクは床で仰向けのまま動かない。先生は左手に玉が被弾しており、地面に膝をついている。
 
 エアリスはすでに発射体勢に移っている。次にガトリングガンを掃射されれば敗北確定だ。そうでなくても、ここにいるソラ、クライド、バトー、ショコラ、そして傷ついた先生にこの状況を逆転できるだけの力は残されていない。
 例えこちらが万全であったとしても、すさまじい再生能力と圧倒的な攻撃力を合わせ持つ、エアリス三機を沈黙させるような手はないだろう。
 ソラの頭に様々な幻影がフラッシュバックした。誘拐された時の光景、助けられた時に浴びた日光、ヒーローになった日の様子、ルーカス様、そして……愛する人の顔。
 自分はこれから死ぬんだ……。ソラは死を覚悟して、下を向き、両腕を前で交差した。これから走るであろう激痛に耐えるためだ。
 地面に向いたとき、ペストマスクと目があった。腕に緑色に輝くメスが握られていて、柄をこちらに差し出していた。ソラは反射的にペストマスクが何を望んでいるかを察して、そのメスを受け取った。


 その瞬間、解剖鬼の言葉が脳裏に響いた。一秒にも満たない出来事にも関わらず、ソラは解剖鬼の伝えたことを全て理解した。

 『このメスは私の力、パラレルファクター・アンダーグラウンドの源だ。メスの内に妖怪の魂が宿っている。このメスを失えば、今の私は仮死状態になってしまうが致し方ない』

 『飛び去ったエアリスを逃せば恐らく都市国家カルマポリスに向かってしまうはずだ。カルマポリスはこの国からそう遠くはない上、町のエネルギーをワースシンボルと呼ばれる巨大な水晶に頼っている。ワースシンボルが奴の手に奪われれば、国一つ分のエネルギーがエアリスの手に落ちることになる。さらに運が悪いことに、カルマポリスは妖怪の国だ。PFを量産できる下地が揃っている』

 『あと少し耐えれば、人質がいたために動くことが出来なかった、カルマポリス・ドレスタニア・アンティノメル・リーフリィ・ライスランド・クレスダズラ連合軍が増援に来る』

 『増援が来るまでエアリスを押さえつけて欲しい』

 『無理を承知で頼んでいる。私が始めたのにもかかわらず、自分の尻拭いさえ出来ない。君の見込んだ通り、私はとんだ悪党のようだ。厄介ごとだけ押し付けて、自分は仮死状態ときているクズだ』

 『だがパラレルファクターの力だけは本物だ。主でないソラでは潜在能力を引き出すだけで精一杯だろうが、君は私たちの中で一番若く、可能性がある。自分を信じるんだ』

 『もうすぐ夜が開ける。君が勝つにしろ負けるにしろ、黎明の刻、決着がつく。世界を救え!ソラ!!』


 メスはソラの中に取り込まれるように消えていった。

 ソラは今まさにガトリングガンを放とうとしているエアリスと、仲間の間に立ち、ナイフを構えた!

 ソラは感情がなかった。正確に言えば押さえつけていた。過去に誘拐されたとき、恐怖や苦痛などの圧倒的な負の感情をから自分を守るため感情を、記憶を封印した。ソラが今までずっと敬語で話し、表情を変えずに感情をこめず話すのはこのためであった。
 しかし、解剖鬼のメスに触れることで神経を一時的に書き換え、ソラの記憶と心が甦った!



 ソラの心に鼓舞されるかのようにバトーが立ち上がった。

 「……救い出さなければならない人がいる。エスヒナと約束したんだ。絶対に……彼女を……セレアを助けると!」

 クライドもそれに続く。

 「俺たちには帰りを待ってくれる人がいる。こんなところで倒れたら、ラシェやラミリア達になんて言い訳すればいい!俺を信じてくれる人がいるんだ。俺は絶対にあきらめない!」

 先生が再び闘志を燃やす!

 「私は絶対にお前に打ち勝ち、勝利の白米を、(あとお菓子も)子供たちと一緒に頬張るのだ!こんなところで立ち止まっている暇はない!」

 エアリスがドレスを翻しながらいい放つ。


 『何をどうしようが、この絶望的な戦力差は変わらぬ』
 『貴様らの冒険はここで終わりだ』

 『菓子にうつつを抜かした過去のお前ら自身を恨むがよい』

 ソラは嘲笑を響かせるエアリスを無視してクライドに話しかけた。

 「クライド、剣を借りるよ」

 「その様子……何か手があるんだな!」


 ソラは静かに頷くと、クライドから剣を受け取った。


 「解剖鬼さんから、とって置きのプレゼントを貰ったんだ。俺は……いや『僕は』……僕のままで戦う」

 「ソラ……その口調……」

 「……僕のこの口調、見せたことなかったね」

 ソラはエアリスに向き直ると剣とナイフを構えた。解剖鬼のメスによってソラの潜在能力が引き出されていく。
 それが頂点に達したとき、ソラは剣を振るった。

 剣は何もないはずの空間を切り裂き、穴を作り出した。その中にソラが入ると、エアリスのうち一機が真っ二つに引き裂かれ、その間からソラが飛び出した。
 さらにもう一機のエアリスの胴をぶったぎる。

 「入ると別の場所に瞬間移動する穴を作ったのか!なんという奥義!奇跡でも起きたか!」

 先生が思わず叫んだ。

 3機中2機のエアリスが胴をぶったぎられ、攻撃を中断した。
 残る一機は掃射に成功したが、先生が刀を使い、何とか玉を弾いた。片腕ケガしているわりに全く剣の腕が落ちていない。

 「君に何が起きているのかはわからない。でも、何はともあれ……やってやれ!ソラ!」

 クライドに氷斬剣を新たに作り出し、渡したバトー。その声援にソラが答える。

 「うん!ただ、長くは持ちそうにないんだ。攻撃の度に力が抜けていくのを感じる。一人で戦うと多分、一瞬でいつもの状態に戻ると思う」

 ショコラが嬉々とした表情でフォローする。

 「私たちがサポートするので、出きるだけ長く持たせてください。皆で戦うんです!」

 ソラは光のともった目で声援に答えた。


 「貴方達の安全も考えないとね!」


 そう言うと目に止まらない速さでナイフで仲間の空間を切り裂き、万が一ガトリングガンが撃たれても関係ない方向へと繋がるワープホールを作り出した。

 「僕らは戦うんだ……仲間のために、皆のために!」

 ソラは剣には炎を、ナイフには冷気をまとわせた。この力によりエアリスの機能を停止させるようとする。

 エアリスの内二機は復元を終えるとマシンガンを乱射した。

 さらにもう一機は手を刃のついたドリルに変形させ突っ込んできた。

 「僕には効かない!」

 ソラは目の前の空間を切り裂きマシンガンの玉を防ぎつつ、ドリル持ちのエアリスの頭部を空間ごと切り裂き、異空間に消し飛ばした。

 「ソラ!ナイスだ!シャゥ!!!」

 頭部を破壊されたエアリスの体を、先生が一刀両断した。エアリスはたちまち気体と化し、蒸発する。

 「僕は戦うんだ!逃げない!どんな逆境だろうと仲間と支えあって乗り越えてやる!」

 さらに、マシンガン持ちのうち一機に接近すると、炎の剣と冷気のナイフでエアリスを目に止まらぬ速さで一気に切りつけた。

 切りつけられたエアリスは再生不良に陥った。フラフラと地面に落下するエアリスをショコラがとらえた。

 「これで止めです!」

 ショコラの奇襲により二機目のエアリスは頭部を凍結され、胴体は蒸発した。

 残る一機のエアリスも両手を剣に変えてソラを強襲する!

 「効かないよ!僕は今…全てを出し切る!」

 エアリスの剣を、胴体を、頭部を、熱気の剣と冷気のナイフで切り裂く!
 そして、墜落したエアリスにバトーとクライドが止めをさした。

 「矢面に立って、皆を助ける。困っている人がたとえこの地のはてにいようとも全力で助けにいく!そこに国も種族もない。それがアンティノメルの……ヒーローだッッッ!!!」

 オオオオ!というすごい早さでなにかが飛行する音が、破れた絵画の穴から聞こえてきた。

 ソラはその隙に、ナイフとメスを持ちかえ、先生の傷口から銃弾を摘出し、服を破り包帯の代わりにして治療する。
 さらにエアリスが開けた絵画の穴の中に入り、奥へと突き進んでいく。絵画の中は緩い傾斜になっており、幅十メートルはある巨大な通路となっていた。左右の壁に蛍光灯が埋め込まれており、無機質な光で部屋を照らしている。

 奥からジェット噴射の音と共に、もう一機のエアリスが出現した。


 『エアリス5 交戦する。貴様らはどうあがいても勝てん』

 「まさか、あやつは量産機か!」

 「でも、僕たちは既に君たちを停止させる術を持っているよ!さあ、止まれっ!」

 出てくれば出てくるほどソラの腕は上がっていく。ソラはクライドに炎を宿らせた剣を返すと、ナイフでエアリスの頭部を的確に凍らせた。

 クライドは残る魔力を全て使い、剣の炎を強めるとエアリスの頭部に突き刺す。さらにショコラが追撃をして、流れるようにエアリスを破壊した。

 ソラ、クライド、バトー、ショコラ、先生はさらに奥へと突き進んでいく。下り坂が終わると、通路の左右の壁がガラス張りになった。その中にはまるでファッション展のマネキンのように、直立したまま動かない、エアリスが並んでいる。

 「エアリスが同時に起動できるのは恐らく三機まで。でも、在庫は……相当な量がありそうだね」

 クライドが苦悶の声をあげると、ソラが言った。

 「でも、何機来ようが僕たちは負けない!」

 ソラはメスを手に持つと、空間を切り裂きワープホールを作った。数百メートル先に繋がっている時空の穴だ。
 ソラたちがワープホールを潜り抜けた先には、巨大な空間が広がっていた。薄暗い空間に黒いビルのような建物がいくつも立ち並んでおり、その窓一つ一つの内側に緑色の液が満たされており、異形の生物が浮いている。
 異世界にでも来たかのような錯覚に陥る空間を進んでいると、真横の建物の窓がいきなり割れて、中からエアリスが飛び出してきた。


 『エアリス6 交戦する。言っていられるのも今のうちだ』
 『エアリス7 交戦する。やがて、決して勝てないことに気づくだろう』


 ソラは解剖鬼のメスを大きく振りかぶると、新たに飛来した二機のエアリスに向かっていった。
 ナイフでエアリス6を凍らせ、頭部を解剖鬼のメスで突き刺す。アンダーグラウンドが発動し、脳神経を書き換え修復機能を無力化する。
 さらにソラのメスを避ける際に隙のできたエアリス7に、ショコラが剣を突き立て、クライドが熱し、バトーが止めを刺す。

 五人はさらに突き進んでいく。

 突然、クライドの黒髪が激しく揺れ、暴風が一行を襲った。カマイタチだ。
 ソラとその後ろにいた先生、なんとか耐えることができた。ショコラに至ってはあり得ない動きでカマイタチをかわした。しかし、バトーが風の刃に容赦なく切り裂かれた。吹き飛ばされて、建物の壁に激突する。


 「バトーさん!」


 ソラが近づこうとしたとき、


 「俺に……構うな!お前の成すべきことを成せぇ!」


 とすさまじい剣幕でバトーが叫んだ。


 「……でも……」

 「行けッ!ソラ!」


 迷うソラの手をクライドが引いた。クライドはバトーの意思を尊重したのだった。


 『エアリス8 交戦する。いい加減、諦めたらどうだ?』
 『エアリス9 交戦する。何機倒されようか蚊ほどにも
効かぬ。どこまで行こうと貴様らの望む場所にはたどり着けぬ』
 『エアリス10 交戦する。貴様らに与えられるのは絶望だけだ』



 「だったら早いところカルマポリスに行ったらどうなんだい?この奥にエアリス……いやクロノクリスにとって絶対に俺たちに渡すことのできない大切なものがあるんだよね?だから俺たちを野放しに出来ない。余裕ぶっていても内心は慌てているんだろう?」


 ソラはエアリス8に熱を帯びたナイフを突き刺し沸騰させ、ショコラに向かって投げた。ショコラが的確に頭部を凍らせ、クライドが胴体を切り裂き、先生が頭部を『白米断』して破壊する。

 さらに気合いをいれるとエアリス9に解剖鬼のメスとナイフで、すさまじい斬激を放ち、再生不能になるまでエアリスを切りつけた。

 だが、このときにソラの体に変化が訪れた。


 「ハァ……グッ……なんでしょう……急に力が……」


 急速に解剖鬼のメスの力が衰えてきたのだ。

 『エアリス11交戦する。パラレルファクターの力はそう容易く扱えるものではない』
 『エアリス12交戦する。時間切れだ。消えるがいい!』

 一瞬の隙をつき、クライドにエアリス10が接近した。クライドは燃ゆる炎の剣で切りつけようとするが……


 「こんなときに……クッ……まっ……魔力切れ……かよ」

 クライドの剣が弧を描きながら宙を舞った。

 脇腹を貫かれ、クライドはその場に膝をつき、ゆっくりと倒れる。クライドを中心に赤い円が広がっていく。
 真っ先にショコラがクライドに近づき、傷口を凍らせようとする。

 だが、二人のエアリスのガトリングガンによって阻まれてしまった。
 ソラはなんとか避けたものの、先生が被弾してしまった。


 「ぐふぅ……ちっ……おむすびさえあれば……」


 倒れていく先生を見ながらソラはショコラに叫んだ!


 「行ってください!この場は僕たちがしのぎます!」


 ナイフでショコラの横を切り裂いた。空間の裂け目が作られ、ショコラの体が勝手に引き寄せられる。


 「そんな、無茶苦茶ですよ!今すぐやめて……」

 「ショコラさん、皆を……世界を頼みましたよ……俺は……もう……無理です」


 弱音を吐き出す。口調、声の抑揚、いつものソラへと戻った。消え去る直前にソラに解剖鬼のメスを託す。

 ショコラはワープホールによって、さらに数百メートル前方まで飛ばされた。
 残ったソラは無表情でエアリスと向き合っている。

 『ほう。ショコラ一人だけ先に行かせたか。まあ、よい。あやつにアレがどうこうできるはずがない』
 『我々は残ろう。エアリス12、ショコラを足止めしておけ』
 『エアリス12 了解した。抜かるなよ10、11』


 一機減ったとはいえ、まともに動けるのはソラだけだった。先生、クライド、バトーはもはやピクリとも動かず、耐え抜いたソラも、感情と潜在能力の解放の代償として全身の筋肉が痙攣していた。


 「でも、それでも俺は……」

 『そうか。ならば死ね』

ひな祭り ー当日ー キーフード PFCSss12

 「これ、どうやって開けるんだろうな~」

 エスヒナは机にふして、ため息をついた。額のバンダナがずり落ちそうになって、慌てて直す。
 エアリスの去った後の部屋で、ずっと彼女のくれた箱と格闘していたのだった。

 「うーん。剣で切っても再生する。魔法を受けても傷つかない。俺様でもさすがにお手上げかなぁ」

 リーフリィ自警団の団長であるクォルも途方に暮れた顔で手のひらサイズの箱を見た。継ぎ目のないフォルム、目の装飾以外はなんの特徴もない、金属製の箱だった。
 かわいい女の子に良いところを見せたいクォルだったがお手上げだった。
 エスヒナは二度目のため息をつく。

 「重要な物が入っていると思うんだけどなぁ」

 エスヒナは正方形カドを床につけて、対角のカドを指で押さえ、くるくる回転させて遊び始めた。

 「それにしても、これどんな技術で作られてるんだ?剣で切ろうが液状になって再生する。一応目の装飾が再生の機能を持っているみたいだけど、肝心の装飾そのものも、再生しちゃうとなると……。エスヒナ、なんかエアリスがヒント言っていなかったか?」

 くるくる回転する箱。エスヒナはエアリスが何て言っていたかを思い出していた。




 『これ、どうやって開けるんだ?』

 『秘密じゃ。少なくともそなた以外には開けられん』




 私以外にはむり。なんだろう?暗号か何かか?うーん。目の装飾……



 「クォル。この部屋から出て、あたしがいいよって言うまで待ってくれない?試したいことがあるんだ」

 「おっ、何か気がついたか?」

 「うん。ただ、第三の目を開けるから……」

 「わかった。絶対に部屋には入らない」

 クォルはそそくさと部屋から出ていった。部屋に鍵をかけると、エスヒナは慎重に額につけていたバンダナを外した。そして、サムサールの特徴である第三の眼を開いた。
 エスヒナの種族であるサムスールは、額に第三の眼を持つ。その瞳を見たものは特定の感情に囚われてしまう。そして、額の持つ感情を、そのサムスール自身は持たない。エスヒナの瞳が持つ感情は……

 「クォル!やったぁ!開いたよ!あんたのアドバイスのお陰だ」

 額にバンダナをつけたエスヒナが、扉の外に待っているクォルに抱きついた。よほど箱を開けられたのが嬉しかったらしい。

 「うぉ!?やったなエスヒナ!」

 一方クォルは、棚からぼたもちを下さった天に感謝した。が、世話しなく働いているアンティノメルのヒーローらの冷たい視線を感じて、すぐにエスヒナから離れた。
 机の上に開きかけている箱がおいてある。

 「まさかこんな形であたしの力が役にたつとはなぁ。はじめてだよ、こんなの。今まで邪魔としか思ったことはなかった……」

 額のバンダナを撫でながらエスヒナが笑った。

 「あばたもえくぼだな。すごいと思うぜエスヒナ!それじゃあ早速中身を開けてみるか……ん?」

 《お主の手でショコラに渡すのじゃ♪♪》

 「メッセージが側面に出てきた?さっきまでこんなのなかったよね、クォル?」

 「俺様が護衛するから安心して?」

 「えっ!あたし行くの?!っていうかあんたがあたしの護衛!?」

 「えっ……まっ……まあ、この分だとエスヒナが渡さないと意味を成さないんだろうからなぁ。まあ、あっちにはバトーもクライドもいるし、その上俺が行くとしたら護衛にグレムがつく。心配すんな」
 
 クォルの心に浅い傷がついた。

 「まあ、後のことはともかく、とりあえず開けてみよっか」

 エスヒナはゆっくりと立方体の蓋を開けた。

 「えっ……」

 「これ、あれだよな。ドレスタニアの……」



 コンコンッ、と扉の叩く音がした。



 「どうぞ?」

 エスヒナはゆっくりと扉を開けた。

 まず最初に茶色いコートを身に纏った鬼が出てきた。

 「おはようございます。自警団団長クォルさん。私はアンティノメルの警察を統括するルーカスと申します」

 次に露出の多い民俗衣装に身を包んだ女性が入ってきた。見るからに活発そうである。

 「我は今回クレス王国、ダズラ王国連合部隊を率いるダズラ王国王女、スヴァ=ローグじゃ。出会えて高栄じゃ」

 クォルはあんまりの豪華メンバーにたじろいだ。

 「えっ……アンティノメルの警察のトップとダズラ王国の王女様!?」

 「ドレスタニアにて外交官を勤めさせて頂いておりますエリーゼです。ガーナ様の代理で参りました。以後お見知りおきを」
 
 「……レカー城親衛隊副隊長のオムビスと申す」

 エスヒナは自分の記憶を手繰り寄せるので精一杯だった。誰も彼もが学舎や新聞で見聞きしたような名前ばかりだったからだ。
 彼女の褐色の肌に冷や汗がだらだらと浮き上がる。

 「おっ……おう。俺はリーフリィ自警団団長のクォルだ。よろしくお願いするぜ!」

 ひきつりながら笑うクォルの横で、エスヒナは頭を下げまくっていた。

 スヴァ=ローグはニヤリと笑った。

 「ようやく人の目や法の網を潜り抜けてきた、ノア輪廻世界創造教を公的に潰せるチャンスが来たのじゃ。存分に叩き潰そうぞ!」


 なんでこんなところに来ちゃったんだろう……とエスヒナが後悔しはじめた時、ドレスタニアの外交官が机の上に置かれた箱に気がついた。

 「これ……ガーナチャンプルー、ですよね?」



━━━

ひな祭り ー当日ー 絆の力! PFCSss11

 「わかったのか!ショコラ」

 ショコラは自信ありげに頷いた。


 「彼女には致命的な欠点があります。それは……」

 「我に弱点などない!」


 エアリスは手をヒモ状に変えてショコラにつかみかかろうとした。しかし、ショコラのやたら軽快なステップで交わされてしまう。


 「ほらほら、どうしましたか?弱点がわかられて不安ですか?」


 一瞬ショコラが私たちに顔を向けた。いつものショコラからは想像できないくらい、鋭い目付きだった。


 「あいつ……まさか……自ら囮に?」
 

 私はバトーに顔を向けた。バトーも作戦を悟ったらしい。


 「くっ……奴は話し合う隙すらくれない。こうでもしないと作戦を練れん。なにも言わずに……真っ先に一番危険な役目を買っていきやがった……」

 バトーが悔しさに顔を歪めると、その肩を先生が叩いた。

 「危険を承知で請け負った、ショコラの心意気を無駄にはできん!さて、早速だが、あやつは熱や冷気を浴びたとき再生の速度が落ちていた。温度変化に弱いのではないか?」

 先生の言葉に対し、私がすかさず口を開く。その後ろでショコラがエアリスのガトリングガンをかわしている。見事に敵の注意を引き付けていた。

 「医学校でまなんだことなんだが、物質には活動状態というものがある。俗に言われる個体、液体、気体というやつだ。本来は温度で変化するものだが、エアリスの場合は恐らく、液体金属を液体↔個体を意図的に操り肉体を構成しているのだろう」

 クライドが頷く。

 「それなら、凍結されたときに再生に時間がかかったのも理にかなっているね。恐らく無理矢理体温を引き上げて、自分の体を個体から液体にしようとしたから時間がかかったんだ。あと、さっきから顔を全く変形させていないから、人で言う脳の辺りに再生を司る機関があるのかも」

 続いてソラが結論にたどり着いた。

 「つまり、極端な温度変化に弱いということですか?ならショコラさんかバトーさんがエアリスを凍らせてクライドさんが炎の魔法をエアリスの頭部に当てれば……」

 私がソラの言葉を引き継ぐ。

 「エアリスは自分の体を制御しきれずに自壊するはずだ。例えるなら、外が冷えているからと暖炉を炊いたら、突然真夏のような気温になり、暖炉の熱と合間って熱中症になったバーサン……、みたいな感じか」

 ソラが訝しげな表情をこちらに向けた。

 「解剖鬼さん、意味はわかりましたが、なぜその例えにしたのかが全く理解出来ません」
 
 「私なりのくだらんジョークだ」

 私はエアリスの方を向く。

 「なんという持久力。だが、いくら凍らせたところで我は倒せぬぞ?やはり、はったりだったか。ハッハッハ!」
 
 私たちはショコラとエアリスの間に割って入った。部屋の中央でエアリスと向き合う。エアリスの後ろの絵画は、マシンガンによって穴が無数に空いている。教王にとって、もはや神を信仰するのはどうでもいいことらしい。

 「ショコラ、お前のお陰で助かったぞ!」

 エアリスはチッと舌打ちをすると、ショコラを指差した。

 「まあ……よい。ショコラ。貴様は一番最後に殺してやる」

 エアリスの背中の飛行ユニットからミサイルが合計6発放たれた。さらにマシンガンで追撃してくる。
 私は先生の影に隠れて銃弾から守ってもらいつつ、メスを投げた。メスが突き刺さった四つのミサイルは着弾することなく空中で爆発した。残る二つはバトーの作り出した氷柱によって迎撃された。
 敵の注意はミサイルを迎撃したこちらに向いている。

 「いまだ!」

 ソラがショコラの目の前でかがんだ。ショコラはソラを踏み台にして華麗にジャンプする。さらに風の魔法で浮き上がったクライドがショコラをトスし、さらなるジャンプを可能とした。横からエアリスを強襲する!

 だが、エアリスが気づくのが早かった。エアリスはの全関節を90度曲げることで、一瞬でショコラと向き合った。さらに腕がナイフに変形しかかっている!

 「ショコラ!避けろ!」

 出来るはずがない、とわかっていても反射的に叫んでいた。あまりのショックにスローモーションになった。交通事故直前に車がゆっくりと見えるアレである。
 回りの仲間が全員揃って苦悶の表情を浮かべている。空中でエアリスの腕がゆっくりと伸びていく。ショコラは避けられないと察し、相討ち覚悟で剣を振るう。だが、どうみてもショコラの剣よりもエアリスのナイフが体を突き刺すのが先だった。
 私は目をつむりたくなるのを我慢し、ショコラの最後を凝視する。私がこの旅にショコラを誘ってしまったからこうなってしまった。本来なら一人で旅立つべきを仲間を道連れにしたのだ。すべての責任は私にある。だが、今私に出来ることは彼の死を見守るしか出来ない。
私の責任だ。私の責任なのだ。この先ショコラを失ったドレスタニアが、この世界がどうなるかわからない。しかし、どうなろうとも私がしたことであり、私の罪だ。

 ちくしょう……。

 畜生ぉおおおおおおおお!!!




 私が涙を垂れ流しながらみた光景は、ショコラの死ではなかった。何者かによって放たれた矢によって、エアリスはこめかみを貫かれ、体勢を崩していた。

 「行くんだ!ショコラ!!」

 グレムの怒号が遠くから聞こえてきた!彼とコロ助の放った一撃がこの世界の運命を変えたのだ。
 この瞬間、この光景を見ていたショコラとエアリス以外の誰もが叫んだ。

 「行けぇぇぇぇぇぇ!」

 ショコラの一撃がエアリスを捕らえた!エアリスの胸が、ドレスが手足が顔が、一瞬にして凍りつく!
 さらにクライドが剣に炎を宿らせ、墜落するエアリスに突撃した!あらんかぎりの力でエアリスを切り裂きまくる!さらに一旦距離をおき、前方に手をかざして炎の魔法を魔力が尽きるまで連射した!
 
 「ばかな!なぜ再生しない!我は不死身だぞ?!不死身なのになぜ体が崩れるのだ!」

 「あなたは不死身ではありません。神でもありません。独りよがりの……ただの狂人です!」

 ソラは崩壊寸前のエアリスの顔に打撃を食らわせた。エアリスの顔が液体になりながら砕ける。

 「うぬに利用された子供たちの思いがわかるか!『斬滅――米櫃(コメヒツ)』ウシャア゙ア゙ア゙ァ!」

 先生がエアリスの胴体をズタズタに引き裂く!その横でバトーが二刀の剣を振りかぶる!

 「お前は純粋な幼子の魂を己の欲に利用した、悪魔だ!」

 最後にバトーがエアリスの頭部を凍結させた。


 長い静寂がこの場を包んだ。


 ……終わった。


 エアリスの残された体が液状に溶けていき、そのあと蒸発する。これまで、蒸発して攻撃を避けるような素振りを見せなかったことから、気体となった肉体を彼女は制御することが出来ないはずだ。


 「……勝った。全員の力を全て用いてようやく……」


 一気に力が抜けたような気がした。同時に全身の傷の痛みが私を襲った。あまりの痛さに座り込む。


 「でも、セレアが……」


 ショコラの声は悲壮に満ちていた。


 「彼女は悪意はなかった。方法は強引だったが、俺たちに差別を止めさせようとしただけだった。なのになぜ……」


 バトーが天上を仰ぎ見た。


 「人を利用して命をもてあそぶクロノクリス……。全て奴のせいです」


 ソラが悔しさで拳を握りしめる。


 「彼女を救いだしてあげたかった……」


 先生の声にははりがまるでなかった。



 全員が沈むなかで、何か妙な異音が聞こえた。オオオオォォォォと、高速で何かが飛んでくるような音だ。

 私は何かと辺りを見回した。どうやらその音は、不気味な神、ノアの肖像から聞こえてきているようだった。頭から地を垂れ流し、この世の全てをもてあそぶかのような嘲笑を浮かべる、クロノクリスの崇めた神。

 「なんだ!これは!」

 私が叫んだ時だった。ノアの肖像の口が盛り上がった。まるで何かを吐き出すかのようだ。そして、紙が耐えきれず破れ、その中から出てきたものは……。

 「そんな……」

 見覚えのある顔だった。華奢な足、ウェディングドレスに、ガトリングガンと化した両腕。背中の戦闘機のような飛行ユニット。少女には似合わぬ力に溺れた邪悪な笑み。



 『エアリス2 交戦する』
 『エアリス3 交戦する』
 『エアリス4 交戦する』



 一同唖然として、一瞬無防備になった。

 容赦なく3機6丁のガトリングガンが私たちに向かって掃射された。私は自分の身を守るので精一杯……だった。……なんだ、頭がぼんやりする。おかしい……。血が暖かいぞ?信者たちの……垂れ流した血液は……既に冷えているはずだ。

 いや……そもそもなぜ……私は地面に伏せて……。仲間は……どうなった……クッ……。

 いっ……意識が遠く……


 「こやつ、助か………とわかって身代……に!」

 「しっか……てください!」

 「下がっ……私とバトーが傷…凍…せ……」

 

 ……。

PFCS 新国? 豊穣の国━━エルドラン

国名:
エルドラン

位置:
 都市国家カルマポリスから西に数百キロ離れた位置。

町並み:
 農村がほとんどだが、ノア輪廻世界創造教の本堂がある首都は、異様に発展している。中世ヨーロッパの用な感じである。各地に教会がある。


種族:
 全種族バランスよく。妖怪は少し少ない。


概要:
 大陸で起きた妖精戦争の戦地となり、大方の農村は壊滅状態になる。長い時間、国あげて努力したものの復興は難航。行き詰まったエルドランが協力を仰いだのがノア輪廻世界創造教の長にして圧倒的なカリスマを誇る教王クロノクリスであった。

 クロノクリスの尽力により農村は急速に復興。

 今では有名な農業大国にまで成長した。見渡す限りの美しい畑が国のシンボルとなっている。

 鬼、妖精、妖怪、アルファ、そして人間が共同で農作業にいそしむ。民族差別の『み』の字も見当たらない。

 国家交流でライスランドのコロシアムにも参戦。華々しい活躍を見せている。

 今やこの国そのものが戦争の復興と繁栄の象徴である。

 国の条例から、『一期一会』をモットーにしており、鬼や妖怪、妖精関わらず訪れた人には郷土料理による手厚い歓迎があり、観光名所も有名な箇所がかなりある。特に民族宗教(地域特有の宗教)であるノア輪廻世界創造教の本堂が有名。

 住むにしても税が低く、良心的な価格の住まいも多い。ただし、人口や移民問題等から国外からの移住が完全に禁止されている。残念……。

 犯罪も少ない上、他の国々と条約を結んでおり、他国からの侵略の心配も少ない。

 もともと犯罪者が少なく、検挙率も高いため治安も抜群。夜でも子供が出歩けるほど。

 周囲の海域も常に厳戒体制で海賊は全くいない。お陰で安全に国に出入りできる。



 住むのにも遊びにいくにももってこい、のどかで平和な国。

 これが豊穣の国エルドランである。


 皆!是非遊びに来てねっ!



出身
・ クロノクリス・マグナレクス
・ ジェームズ・マクラウド
・ ジョン・ブラウン
・ アルベルト・グズラット
・ ギーガン・グランド

・ セレア・エアリス
・ 解剖鬼










レウカド「カルマポリスの西に位置する国、『豊穣の国エルドラン』。表では観光に力をいれ種族平等をモットーとしている農業大国。だが実際には人間至上主義で闇取引の穴場となっている腐りきった国、だったか?」


セレア「……エルドラン国では種族統合の時、妖怪の乗る乗り物は反対派の者たちに強襲された。こどもの親は妖怪なぞ学舎にふさわしくないとデモを起こした。そして学舎では妖怪の子を模した人形を吊し上げにして、数十人で暴行した。外食しようにも、妖怪とそれ以外では区別された。差別反対を掲げるものはたとえ、同胞であろうとぼこぼこに殴られた」


エスヒナ「妖怪差別は表向きにはなくなっているとされるが、実際には表面化しなくなっただけだ。平然と行われてる」


解剖鬼「ノア輪廻世界創造教又は……新世界創造教。アンティノメルのギャング精霊が関わっている他、人身売買・麻薬取引・武器の密輸などの隠れ蓑になっている。エルドランを裏から操っている。国の要人が信者だ。法も何もあったものではない」


ソラ「ノア輪廻世界創造教はエルドラン国を支配するほどの強大な組織です。単純な戦闘力だけで言えばハサマ王を除くチュリグと互角などと噂されています……」


ルビネル「妖怪から魂を抽出して、呪詛の力を移植する技術。つまり妖怪を殺して力を得る禁術……俗にいうパラレルファクターの技術が我が国、カルマポリスからエルドランに流出しました。それ以降、何百という妖怪が拉致されています……」

カルマポリスについて PFCS

pfcs.hatenadiary.jp

信仰都市国家:カルマポリス
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●カルマポリス

 妖怪が作り上げた都市国家。ワースシンボルから得られるエネルギー(既存のエネルギーに例えるなら電線を繋げなくてもいい電気)により、工業や貿易が発展している。
 町の風景は驚くべきほど近代的で100年進んでいると言われている。

 そのかわりにワースシンボルの影響下は緑黄色の霧が絶え間なく漂っており、非常に不気味とされる。遠くから見ると緑黄色のドームの中に都市が封じ込まれているように見える。
 ドームの外には田園地帯が広がっている。
(因みにカルマポリスの機械はワースシンボルのエネルギーに依存しているため、郊外にでるとほとんどの家電製品は使用できなくなる)


●種族
 主に住んでいるのは妖怪とアルファ。小数だが鬼も住んでいる。人間、精霊は住んでいない。

・妖怪
 この街の人工のうち9割を占める。ワースシンボルに依存して生活している。
 ちなみにここの出身の妖怪は、呪詛の力が強い代わり、緑の霧(ワースシンボルの影響下)でしか呪詛を発動できない。
 郊外で使用するにはアトマイザー等の容器にエネルギーをつめて携帯する。かなり高額。

・アルファ
 アルファは光る装飾をつけられて町の名物になっている。主に街の清掃を担当している縁の下の力持ち。


●町の建物
・時計塔
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 カルマポリスの叡知を集めた時計塔。地下にワースシンボルが安直されている。


・ワースシンボル
 地元の神社に祭られている神様のようなもの。エネルギーを町に供給している。

・高層建築物
 ワースシンボルのエネルギーが届く範囲に出来る限り建物を作ろうとした結果、高層建築が立ち並ぶ無機質な街並みになった。
 マンションの他にファッション店や百貨店等、様々な商業の建物がある。


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ルビネル
種族:妖怪(アルビダ)
年齢:ギリギリ成人
職業:学生

口調:
状況によって口調を使い分ける。人初対面や立場が上の人にはですます調で話すが、親しくなると、くだけた口調になる。

体格:
胸はあまりない。体つきは非常によく、同姓から嫉妬されるほど。

その他:
舌や指がとても器用。


 妖艶な雰囲気とそれに似合わない社交的な性格を持つ。天然気質で変なことをやらかす度に友達を増やしていく猛者。
 呪詛とシンボルの研究をしていて、公共の場で発表したこともある。研究について語るときは普段からは想像できないほど凛々しくなる。
 『妖術』の呪詛を持つ。『約1ミリリットル以上のインクを有したことのあるペン』を自在に操る。
 
 趣味は社会科見学・研究目的などと称して旅行に行き、旅先でかわいい女の子と遊ぶこと。



・タニカワ教授
種族:妖怪
年令:見た目より10歳は老けている。
職業:学校の教授
 年令相応の落ち着いた性格、年令不相応の整った顔、そして甘い配点から生徒からの人気が熱い教授(タニカワ教授のファンより)。
 守りの呪詛を使え、対象の物体、もしくは範囲に同心円状のバリアを作る。一度に二つまで。銃弾をも防げるが、一度強い衝撃を受けるとすぐ壊れてしまう。交通事故に合ったときも咄嗟に発動したが、あっさりと車に突き破られた。
 壊された後は数呼吸した後、作り直しが可能。




==

ルビネルの能力の詳細



1ミリリットル以上インクの入ったペンを操る呪詛。アトマイザーを吹き掛けてから約7+-2分効果が持続する。

1.効果範囲
 半径約?メートル。同時に合計14本位まで。

2.精度
 目に見える範囲であれば?メートル離れた人の首を撃ち抜ける位。
 手足を動かす感覚でペンも動かせる感じ。つまり、視界に入っていないと、体に密着させていない限り精度はめちゃくちゃ落ちる。
 ボールペンを浮かせてスケートをすることもできる。しかし、ペンしか操作できないため、実際に行うには板か何かにペンを固定しなければならない。
(感覚がわからない人は左右一本ずつ、計二本のペンに乗ってみよう。怪我しても知らないけど)

3.速さ
 達人であれば剣で叩き落とせる位のスピード。軌道を曲げると少し減速する。

4.耐久力
ボールペンの耐久力に依存するため、ペンが重さに耐えられないほどのものだと折れる。
 
5.弱点
 的を視認しないと当てることが出来ない。実際に、弱点が水中に隠れている大蛸━レイオクトには全くの無力だった。