フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

ショコラと女の子 PFCSss

セレア「ドレスタニア……、人間の独裁体制であるとはいえ、差別はあまりない。ふむぅ、少し観光でもしてみるか」

 白いワンピースの女の子はドレスタニア王宮のそばで散歩している。

ショコラ「遅刻遅刻~!!」

 角からパンをくわえて飛び出してくる人影


 ドンッ!


セレア「ひゃあ!?」

 エアリスの頭が飛び散る。鼻から上がない状態で倒れた青年に駆け寄った。

セレア「お主!大丈夫か!?」

ショコラ「いてて…はっ!?!?すいません!!」
(変わった顔の方だなぁ)

ショコラ「お怪我はありませんか?本当にごめんなさい…」


 数秒でセレアの顔は元通りに。


セレア「大丈夫。生まれつき結構打たれ強くての。いやぁ、再生中の顔に驚かないとはお主、結構やるのぉ!ホラーとかそういうのに強いタイプなのじゃ?」

 にこりと笑いながら手を差し出す。


セレア「あ、この腕はつかんでも大丈夫じゃぞ?」


 がっしりと腕をつかんでちぎれんばかりの速度でヴォンヴォン振る。

 一方セレアはショコラの手の降りに合わせて体ごと宙に浮いたり降りたりを繰り返した。


ショコラ「おおおー!!!七変化ですか!?顔の他にもできるんですか!?」

セレア「もちろんじゃ!ほれほれ」


 上下に振られた状態のまま、自分の体の一部をピンポン玉大の大きさのボールにして、器用にヘディングする。


ショコラ「す、す、すごおおおぉい!!!!!何者なのですかっ!?僕にもできますか!?」


 ショコラは興奮した子供のように跳ね回る。目がキラキラしている。


セレア「おっ!主もやるか!」


 テニスボールほどの大きさの玉を作り出して、ショコラの繋いでいる方とは反対側の手に投げた。金属光沢を放つ見た目とは裏腹にとても軽い。


セレア「因みにわらわは旅人じゃ。全国各地を回ったことがあるぞ!」


 セレアは向日葵のような笑顔をショコラに向ける。


ショコラ「わぁいありがとうございます!!」


 ショコラは天才的な動きでボールを何度も跳ねながら訪ねる。


セレア「あり得ない動きをしてもわらわが制御するから大丈夫じゃぞ!といっても、お主には必要ないかもな。アハハッ!」


 そう言いながら、さらにボールの数を増やしてジャグリングを始める。


ショコラ「旅人さんですか!!ドレスタニアは良い国ですよ!!案内しましょうか!?」


 ショコラはにっこにっこしている。


セレア「案内か。是非頼むぞ!この町のいいところを見せてくれんかのっ!」


ショコラ「おーまかせください!!一番いいお店を紹介しますよ!!」


 いくつか渡されたボールをジャグリングしながらショコラが案内したところは、王宮の広い大食堂であった。


セレア「おお!ずいぶん広いお店じゃのぅ!」


 目を輝かせながら歩みを進める。働いている人から、「何がおこっているんだ」という目で見られたが、全く意に介してない。
 大食堂全体の外観から、壁にかけてある絵、食器の形まで興味津々のようだ。


ショコラ「おぉ✨いい匂いがしますね!!」


 道を間違えていることへの疑問が厨房の匂いで消滅する。


ショコラ「コックさん!今日の日替わりメニューはな
んですか!?」

コック「ガーナ・チャンプルーとイナゴ豚の青椒炒めさ!チャンプルーはショコラ王にはまだ早いね!ハハ!!」


 セレアはもとより疑っていないが、匂いを嗅いだことで、完全にここを食堂だと勘違いした。


セレア「わらわはチャンプルーもいけるぞ!苦くても大丈夫なのじゃ!」


 『子供じゃないよ』アピールをする哀れなアルファ(14)。さりげなくショコラの手を握る。


コック「お嬢ちゃん、こいつぁ結構くるぜ?ガーナ様のオススメってんで作ってみてはいるが、文句言わないのはその角で食ってるご老人位だ」(ガーナ王とのチェス後)

ショコラ「に、苦いんですかっ!!」


 ショコラの手は既にプルプルしている。チャンプルーだけに。


セレア「お主大丈夫か?食ってみるとわりと行けるんじゃぞ?ププッ」


 いたずらに笑いつつ、角でチャンプルを食べている老人を横目で見る。黙々と、だが情熱的にチャンプルを口に運んでは噛み締めている……。

(……うまそうじゃのぉ)


コック「おっしわかった!そんな目で料理を見られては、出さない訳にはいかねぇな!」


ドン!!


コック「食ってみなお二人さん!!」

ショコラ「おおおお、お、美味しそうですネ!(ガタガタガタ)」


 ショコラは料理を残したことは一度もない。故に辛い。
 一方セレアは指先からフォークを生成し、

セレア「頂いちゃうのじゃ!!」

 ガツガツと食べ始める。


セレア「ほらお主にもやるぞ。早く食わんと冷めるぞ?」


 さりげなくショコラの鼻に金属片を飛ばし、塞いであげる。


ショコラ「うぅ!!??お兄様の好きな味です!!つらいです!!苦いです!!」


 味は防げたが、むしろ苦味だけの食べ物と化し、半ベソをかいているショコラ


ショコラ「貴女も好きな味ですか!!??」


 少女は様子を察してやっちゃった☆という悪魔のような笑顔をショコラに向ける。


セレア「ああ、好きじゃぞ?こっちのスプーンを使ってみるんじゃ。……そろそろ時間じゃしのぉ」


 因みにこスプーン、口につけると一部が舌に張りついて味覚を変える。


ショコラ「あれ?さっきまで苦かったのに、凄く美味しくなりましたよ!!」

コック「なにい?王さまもついにこの味がわかるようになったか!ははは!!ガーナ様に報告しないとな!!嬢ちゃんはどうだいうまいかい?イナゴ豚青椒ももって帰りな!」


  タッパに包んで渡す

 ビニール袋の形をした金属製の何かをポケットからとりだし、タッパーを入れる。


セレア「やった!コックのおじさんありがとうなのじゃ~」


 喜びで思わずショコラの舌の上に張り付いた金属を自分に戻してしまう。ちょうどショコラが口にチャンプルを含んだ時のことだった。


ショコラ「うっ!!??!!??コックさんやっぱりダメです!!僕はまだお兄様になれませんー!!」


 かわいそうな顔をしてぴーぴーなく。突然、裏から地鳴りのような規模の音が聞こえてきた。


メリッサ「ショコラさまあああああぁぁぁあぁ」


セレア「えっ、待つんじゃ!のわぁっ?!」


 バッシャーン。セレアの左半身が吹っ飛んだ。唖然とするコックに礼を言ってそそくさと去っていった。


セレア「ショコラ!またのっ!」


 セレアが去っていったあと、左腕が蒸発していたが、誰も気づかなかった。


ショコラ「あ!!名前を聞くのを忘れてしまいました…。七変化さんまた会えますかね?」


 ショコラは完全に忘れていた。ペストマスクとの待ち合わせのことを。。。



 その後……







 「メリッサー!どこですかー!メリッサー!」

 「メリッサー!あ、旅のお方!メリッサを見かけませんでした?私と同じくらいの身長で、メイド服を着てて。大切な方々と待ち合わせをしておりまして、その場所をメリッサに話していたのですが……」

 「多分、その『大切な方々』って俺たちのような気がするんだけど」

ひな祭り ー当日ー 絶望激進お雛様 PFCSss10

 バトーは右手に持つ剣に水筒の水をかけ、瞬時に凍結させた。あっという間に短剣が長剣になる。こんな芸当も出来るのか……。
 さらにバトーは左手の手のひらに、右手で何かを描くと、水筒から残りの水を全て注いだ。私がバトーの金髪ショートと凛々しい女顔に見惚れていると、いつの間にかバトーの左手に細身の剣が握られていた。実に珍しい氷の剣の二刀流だ。


 「いでよ…我が聖なる刃……『氷斬剣』!まぁ、勝てるかどうかは別として……ソラ、いくぞ!」


 礼拝堂の祭壇前にいるエアリスに、二人は一気に距離をつめた。


 「二人がかりか。卑怯ものめ!」


 ソラは思わず叫んだ。


 「あなたが言わないで下さい!」


 ソラのナイフがエアリスを襲う。しかし、エアリスは右手を瞬時にナイフに変化させ防いだ。
 その直後、バトーの剣を手刀で防ぐ。みるみるうちにエアリスの手刀が長剣に変形する。


 「素手だと思ったらそういうことだったのか……


 バトーはそのままエアリスに流れるように二本の剣を振るっていく。ソラも同様にフェイントと体術を交えながらエアリスの喉元を狙う。礼拝堂に金属音がこだました。
 エアリスはソラの足払いを一歩引いて交わしつつ、バトーの剣を受け流す。ソラが腹部を狙ってきたのをみて、ナイフを叩きつけて軌道をそらせる。バトーが顔を狙うのを、上方向に剣を動かし弾く。
 私はクライドと目配せしてから、小言をこぼした。


 「世界最高峰のナイフ使いと剣使いを同時に相手してやがる」


 クライドはバック転で宙を舞い、エアリスの後ろに着地した。そのまま、剣をエアリスに突き刺そうとする。しかし、エアリスは左の足を一時的に大剣に変化させて、クライドを迎え撃つ。剣と剣が思いっきりぶつかり、キィィィーーーーンという不快な音が発生した。


 「……五月蝿いな。神に無礼だとは思わないのか?」


 クライドは思わぬ反撃に祭壇に不時着した。
 さらにエアリスは左足の大剣をバトーとソラの戦闘の補助に使い始めた。剣とナイフと大剣の訳のわからない斬撃によって徐々に二人が押される。


 「このままでは……危険です!」

 「俺たち二人を相手に……クッ」


 助けにいきたいのは山々だが、もはや私の手出しできる次元の戦いでは……ない。
 エアリスは両腕を大剣に変化させて、二人をなぎ払った。バトーはなんとか避けられたものの、ナイフという間合いの短い武器を使っていたソラは、胸部に一の字の傷を負ってしまった。無言でソラが顔をしかめる。


 「今だ!ショコラ!」


 礼拝堂の中央にいたショコラが剣を地面に刺すと、剣から発生した霜がまっすぐエアリスに延びていった。その霜がエアリスに到達すると、一瞬にして彼女を氷付けにした!


 「《居合い 玄米断》!シャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ……!!」


 どこから奇襲したのか、突然現れた先生がすんごい速度で斬撃を繰り出した。速すぎてもはや目で追うことが出来ない。


 「……シャシャシャシャシャァァァァ!細切れになれぇぇぇい!」


 先生の刀によって全身バラバラになっているにも関わらず、どうにか人形を保つエアリスの体に、ソラが追い討ちをかける!


 「そして、砕け散る」


 ソラによる腹への一撃が決まった瞬間、エアリスの体は粉々になって、背後の祭壇やその奥のノアの絵画にまで、飛び散った。だが、不可思議なことに飛び散ったのは血の赤ではなく、銀色の液体だった。


 「警戒を怠るな!何か嫌な予感がする!」


 凍りつき非常に滑りやすくなっていた床で、見事に技を決めた先生とソラを後ろに下げた。
 その時だった。倒れていた信者達が一斉に立ち上がり、出口の方へ逃げていった。恐怖の声を撒き散らしながら。


 「まあ、教祖様があの様じゃ、逃げたくなるのも当然だよね……」


 礼拝堂の中央に戻ってきたクライドが呟いた。

 しばしの沈黙の時が訪れた。よく、耳を済ませると、本当に小さいが……何かが地を這うような異音がする。その正体を探そうと見回しても何もない。血まみれの床以外目にはいる物がない。

 突然、隣にいた先生が教壇を指差した。


 「……?何もないじゃないか」

 「違う!その教壇に飛び散っているものだ」


 ショコラが眼鏡をかけ直してから答える。


 「ええ?でも、教壇の上ってエアリスの断片がうごめいているだけじゃないですか?」

 「ちょっと待って!細切れにされた身体が動くことなんてありえてたまるか!」


 私が驚愕している間にもエアリスの断片はどんどん移動している。壁についた金属の粒も、床に落ちた斑点の一つ一つも、全てが意思を持って一ヶ所に集結しようとしていた!


 「ショコラ!もう一度凍らせろ!」

 「ようやく気づいたか!バカどもが!」


 金属の粒が空中で糸を引きながら集合し、一瞬にして教壇の後ろにエアリスが再生した。

 
 「凍らせて、細切れにして、完全に止めを刺したはずなのにどうして!」

 ソラが絶句する。他のメンバーもあんまりの光景に冷や汗を顔に滲ませた。

 「破壊されようが何をされようが、我は甦る。なぜならそれは、我が神であるからだ!」


 ショコラの攻撃がエアリスに届く前に、エアリスが宙に浮き上がった。そして、彼女の背中から黒い三角形の構造物が形成された。ドレスの下からバーナーのような筒が左右対称に一本ずつ出ている。ライスランドの飛空挺に見られる飛行エンジンのような形だった。(これを人が入れる大きさにすれば、空を飛べそうだった。仮名をつけるとしたら飛行機……いや戦闘機か)
 さらにエアリスは両方の腕をガトリング砲のような形に変形させ、私たちに向けた。ダダダダダとあり得ない音をたてて銃弾が発射される。

 私たちは散り散りになりながら、弾丸を避ける。ガトリングガンとしか形容しようのない、無茶苦茶な兵器だ。
 それを空を飛びながらそんなものをばらまいて来るのでたまったものではない。


 「ぐぁッ!」

 「バトー!大丈夫か!」


 バトーのわき腹辺りを玉がえぐったらしい。みるみるバトーの服が赤く染まっていく。空を飛んでいる相手に攻撃出来るのは、この場では風の魔法で宙を舞えるクライドしかいない。
 しかし、仮にクライドが奇跡的に攻撃できたところで、エアリスに肉体を再生されて終了だ。最悪だった。
 すぐ右で先生が息を荒くしていた。


 「シャ゙ァ゙ーーーーー!!どうにもならないのかっ!無敵か!奴は」


 と言いつつ、余裕でガトリングガンを刀で弾き飛ばしている辺りさすが先生だった。

 ショコラはショコラでまるでダンスを踊っているかのような、超人的なステップで弾丸を交わしている。

 突然ずるり、と嫌な音がした。滑り防止の加工をしてあるはずのブーツが、地面の血だまりに足をとられた。何事かと思ってよく見ると、銀色のヒモが私の足に巻き付いていた。ヒモをたどっていくと、エアリスの右足から垂れていた。足払いか?
 みるみる視界が変わっていき、最後に天井が見えた。私は完全に体勢を崩したらしい。


 「てこずらせおって。死ね!」


 マシンガンが体に注がれた。コートに無数の穴が開き、衝撃で巨体がガタガタと揺れた。先生が割って入り、途中から銃弾を弾いたが、もはや手遅れだった。
 ……まあ、肋骨が数本と胸骨にヒビが入り、肩に一発めり込んだだけだが。こういうとき心の底から防弾コート・ベスト・ズボンにありがたみを感じる。とはいえ動けるようになるまであと数分はかかりそうだった。


 「ペストマスク!ぐッ……。これでも食らえ!」


 その隙に、空中で見えない足場を踏むかのように跳んだクライドが、エアリスを後ろから奇襲した。私を倒して慢心したエアリスの両手足を、クライドの剣が何度も切り裂いていく。さらに追撃の火炎がエアリスを焼き尽くす。
 しかし、エアリスはわずかに硬直しただけだった。彼女の体の表面が溶けかかっているにも関わらず、先生の方に突撃した。
 切り裂かれ液状と化した手足が、空中で糸を引きながらエアリスと同化する。さらにエアリスの両手だったものがカッターのついたドリル変形し、回転した。
 先生はこれはヤバイと察知したのか、ジャンプしつつ避ける。だが、空を飛べるエアリスには関係ない。先生に向かって一直線に飛行する。


 「ぬあぁぁぁぁぉぁお!」


 先生の痛々しい悲鳴。しかし、ドリルの先端が触れてから数センチメートル掘り進んだところで、バトーの氷の魔法がヒットする。再びエアリスが怯む。その隙にソラが先生を救出した!
 胸部から漏れる血液はかなりいたそうだったが、まあ、先生のことだし……、大丈夫か。
 だが、このままではいずれ負ける。どんなに敵に傷を与えようがダメージは通らない。やがてこちらの気力体力が尽き……負ける。

 延々と戦いは続いていった。数で圧倒しているのにも関わらず、各国最高クラスの逸材が集まっているのにも関わらず、勝負は防戦一方だった。エアリスの剣とガトリングガン、さらには呪詛によるカマイタチにより、6人の体には決して浅くない傷が刻まれていく。
 もう何時間と戦っている気分だが、実際には戦い始めてから十数分しか経過していない。

 一条の光も見えぬ闇の中にいるようだった。ソラは土にに埋没するかのような暗い顔をしていた。先生は奥歯をきつく噛み締め、クライドは肩で息をしながら上目遣いでエアリスを睨む。バトーは何か打開方がないか考えているようだったが、唇は固く閉じている。






 これが……絶望か……。






 「なるほど!さっきの連係攻撃でエアリスの弱点、わかりましたよ!」

 ショコラがぱちんと指を鳴らそうとして失敗したのに対して、この場にいる全員が驚愕の眼を向けた。

四医師集結 クレインの開口手術 PFCSss

 「これほどの名医が集まるとは光栄の至りだな」

 ペストマスクをつけた黒いコートに身を包んだ怪しい人。その実態は自殺志願者を安楽死させ、解剖し、その情報を医療機関に提供する、通称解剖鬼。



 「ドレスタニアのレウカドだ。今日はよろしく頼む」

 端麗な顔で治療目的でない患者すら引き寄せる、ドレスタニアの闇医者、ドクターレウカドが挨拶する。煙菅から出る煙を部屋に充満させ、幻術を治療の補助に使う珍しい医師である。薬草や薬品にも精通しており、普通の医師では対処できないような難題も軽々と解決する。
hirtzia.hatenablog.com


 「同じくドレスタニアのハナヤよ。こんな歳だけどまだまだ現役だからね?」

 ドレスタニアで長く診療所を勤めるハナヤさん。ご高齢のようだが天使のような笑顔が実年齢をわからなくする。癒しの力を使うことができる。
 大抵なら見ただけで病名から解決法まで思い浮かぶ熟練の医師である。
http://nagatakatsukioekaki.hatenadiary.jp/archive/category/PFCS



 「エルドスドのセンセーだ。あーはっはっはっは!」

 下駄に白衣に丸眼鏡という外見から、女に見えないことで定評のある通称センセー。ソバカスがチャームポイント。エルドスドで診療所を開いているが、とにかく腕がスゴい。救命病院の最先端で活躍していたという噂もある。どんな患者でも真摯に接し、利害に関わらず全力で治療を行う真の医者だ。
http://yokosimamanako.hatenablog.com/archive/category/PFCS

クレイン。今回の患者。すんごくイケメン。
pfcsss.hatenadiary.jp





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センセー「あーっはっはっは!採血の結果が出たぞ」

解剖鬼「白血球高値か。急性炎症か?CRPは?」 

センセー「ああ、まだ低いが恐らく上がり始めだろう。ついでにCreなんかの腎機能に関わるところで異常値が出ているぞ。尿の排泄障害だな。ついでにALT、ASTも高い」

ハナヤさん「っていうことは肝臓も悪いんだねぇ。かわいそうに。恐らく薬物によるものだね……」

レウカド「それにしてもこの血液……ピンク色だ。乳び(にゅうび)しているな。中性脂肪の値も偽高値。前日唐揚げかなんかをやけ食いしたな?それに尿酸も高いのか」

解剖鬼「酒、肉、そして麻薬。これだけやっているんだ。どこが異常でもおかしくない。HbA1cが高いところを見るに、甘いものも大好きだな?」

センセー「悪習の塊だな。あーっはっはっは!さて、診察に写るか」




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 レウカド先生に「あの…これ治せますか…」って大事なトコロを見せるクレイン……

 残念なイケメンである。



レウカド先生「あんた……、何をしたらそうなるんだ?」

解剖鬼「遺伝子レベルでズタズタにされている」

センセー「こりゃアタシにも叶わん」

ハナヤさん「これは……かわいそうに。さぞや痛かっただろう?」


クレイン「一瞬目の前がくらんだと思ったら俺の息子が無くなってたんだ…」


内科医(レウカド)「どうする?」

外科医(解剖鬼)「とりあえず『開通』させとくか」

町医者(ハナヤさん)「もっと大きな病院で診てもらった方がいいかもねぇ」

腕のいい医者(センセー)「あーっはっはっは。大丈夫、それを失ったくらいで死にはせんよ」


クレイン「治せるなら治してくれぇ!!報酬は麻薬500mg…こんな大量のモン滅多に手に入らねぇぞ!」


ペストマスク(解剖鬼)「魅力的な報酬だ。丁度末期癌の患者がいてな」

メス顔(レウカド)「もらったら、アウトなんじゃないか?これ」

面倒見のいいお婆さん(ハナヤさん)「私と一緒に薬をやめる努力をしましょう……」

丸メガネ(センセー)「止めたほうが身のためだぞ?」


クレイン「これしか報酬を用意出来ないんだ!ペストマスクの彼よ、貰ってくれ!!」


犯罪者(解剖鬼)「よかろう。これを麻酔に使おう。レウカド、煎じてくれるか」

犯罪未遂(レウカド先生)「わかった。それなら合法だ。俺も手伝おう」

聖母(ハナヤさん)「手を握っているから、頑張るんだよ?(さりげなく癒しの力)」

まともな医師(センセー)「じゃ、さっそく手術道具用意してくる(ゲタの音)」


クレイン「助かる。だからとっとと治療しやがれ!!」
※なお何をどう頑張ってもダンテの見た脚本いわく治せない模様


紫煙が充満した部屋にて
ガシャン!ザクッドシュ!
バァン!ドドド!
「レウカドさらにメス!あと、センセー電気ドリルをお願いできるか?ハナヤさん癒しの力を全開にしてくれ!」
「持ってきたぞ!いっちょやったる!」
「センセー、恩に着る」

キュイイイイイン!ガガガガガガガガ!!!

「これが山場だよ!頑張ってたえるんだよ!」


数分後


解剖鬼「やった!術式成功!尿道が開通したぞ!皆のお陰だ!」

レウカド「はぁ……、あんた、普通に医者やった方が絶対いいぞ?」

ハナヤ「よかったね!よく頑張ったね(ナデナデ)」

センセー「ハッーハッハ!名医が四人も揃えば怖いことなし!」


クレイン「助かった(尿道だけだが…)。おいペストマスクの奴、報酬だぞ。(どこからか麻薬を取り出した。)
しかしもうアルビダは見たくない。俺の親がアルビダなのが親不孝だな」
※なお繁殖機能は……


ペストマスク「……足りない。四人分だ。これだけの医師を集めるのにいくらかかったと思っている」

レウカド「病院は入院費を払いたくなくて、退院間近に逃げ出すやつがあとを経たない」

ハナヤ「残念だけど事実なの」

センセー「(メガネをクイッ)」


クレイン「チキショーー!!四人分なんて持ってねぇよ!!っていうかお前ら…やめろぉお!!(幻覚を見せる。地面が割れる幻覚をだ。クレインはそれを使いそそくさと麻薬を起き逃げ出した)」



「ドクターレウカド、能力影響下なのにわざと取り逃がすとは……」

「あんた……さすがにあそこまですると、患者が来なくなるぞ。次回につなげられるようもっと工夫を……」

「まあいいんじゃないかね?元気になったんだし(ニッコリ)」

「おっし!お開きにするか!」

ひな祭り ー当日ー 外道の降臨の巻 PFCSss9

 「……そうだ。私は読書が好きなのだ。エアリスは本で得た知識より召喚した。私の力は魂の操作だ。人の魂を他人の体に移植できる能力。それを利用してさ迷える幼子の魂をひとつの体に召喚した」

 さっきまでとはうってちがい、今にも消え入りそうな、かすれた声がクロノクリスの口からもれる。当然だ。首を持ち上げているのだから。
 私の後ろではソラ、クライド、先生が増援を警戒しつつ、話を聞いている。

 「数えきれないほどの幼子の魂を融合させて?」
 「……そうだ」
 「それで?エアリスの力は?パラレルファクターは?」
 「それは今にわかる」

 礼拝堂の入り口からバトーとショコラが入ってきた。二人とも礼拝堂の光景(倒れている信者一人につき約80cc の血液が部屋に飛び散っている)に驚愕したが、すぐに私たちのもとに駆け寄ってきた。

 「大丈夫か!」
 「皆さん元気そうでよかった!……この光景のわりには」

 そして続いて、白いウェディングドレスを身にまとった少女が部屋に足を踏み入れる。

 「やはり裏切ったか。セレア!」
 「エアリスと呼べ!お前に名前を呼ばれる筋合いはない」
 「そうか。別にどうでもよいことだ。お前は私の所有物なのだから」

 クロノクリスはかれた声で呪文を唱え始めた。それを確認した私はすぐさま声帯をぶったぎった。私が自分に使ったときは声を大きくする魔法薬を喉に塗ったが、今回は容赦なく声帯を破壊した。
 
 ……はずだった。

 突如クロノクリスの体が重くなった。全身の筋肉の緊張がほどけ、四肢ががっくしと折れ曲がる。あり得ない方向に彼の間接が曲がっていき、地面に伏した。

 「バカな……死んでいる」

 あまりにもあっけない死に、この場にたっている六人は呆然と立ち尽くした。私はゆっくりと後ろを向いた。バトー、クライド、先生、ソラはあり得ないもの見たかのように驚愕の表情をしている。普段はおちゃらけているショコラですら目を見開いていた。
 それと同時に全員臨戦態勢に入る。

 そんななか、頭を抱え、苦悶の表情を浮かべる者がいた。

 「わらわの中に……なにかが入ってくる。止めろ!気持ち悪い!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」


 エアリスは白目を向き、地面に倒れ、背中をえびぞりにして痙攣し始めた。エアリスの体が痙攣によって跳ねる度に、銀色の飛沫が辺りに舞う!
 真っ先に声をかけたのは意外にもバトーだった。

 「エアリス!どうしたんだ!」

 「クロノクリスの奴がぁぁぁぁ!頭が痛い!痛いよぉ!心が引き裂ける!誰かわらわを……助けてぇ!」

 何が起きている?これはどういうことだ?

 「バトー、とりあえず離れろ!私が善処する!」

 危険だと判断した私はバトーを押し退けて、容赦なくエアリスにメスを突き立てようとした。
 しかし、メスが今まさにエアリスの胸を貫こうとした瞬間、彼女の痙攣が止まり、私の腕をつかんできた。私はもう片方の腕に握られていたメスでエアリスの腕をぶったぎると、礼拝堂の中央まで飛び退いた。着地したときに、固まった血液が地面から引き剥がされ、ペリペリという音が響いた。

 まるで幽霊か何かのようにゆらりとエアリスは立ち上がった。私が切ったはずの腕は、何事もなかったかのように身体と接着され、動いている。

 「フフフフ。やった……ついにやったぞ!我は!我は!我は!!!」

 見るからにエアリスの様子がおかしかった。顔や体を手でぺたぺたと触り、まるで新調した服の着心地を確かめるかのように、体を捻ったり、ジャンプしたりしている。

 「絶大な力!不死の肉体!魂を操る力!」

 エアリスは恍惚とした表情で、見えないはずの天を見上げて高笑いしていた。

 「セレア?」

 ショコラが不安げにエアリスの名前を呼びかけた。それに対しエアリスは嘲笑を交えて答えた。

 「我はセレアではない。セレアの肉体と精神を我―クロノクリスが乗っ取った。我が教団の人員にしていたことと逆だ。通常であれば妖怪の魂を信者に移植し新たな力を得させるのたが、我の場合は自らの魂をセレアに移植し、セレアの魂を乗っ取り融合した!」

 「勝手にあわれな子供の魂を呼び出して、用がなくなったら取り込んで……。お前はエアリス……いや、セレアの気持ちを考えたことはあるのか!」

 バトーの女々しいはずの顔が怒りにゆがみ、恐ろしい様相を呈していた。

 「ないな。もとより死者の意思なんぞに興味はない。そんなことよりこの体を見ろ!素晴らしいとは思わないか?ガキにはもったいない代物だぞぉ?」

 バサバサとウェディングドレスの裾を上下させた。明らかに挑発としか思えない……いや、挑発以下の下劣な何かだ。私が怒りでわなわなと握り拳を震わせていると、その怒りを体現したような大声がそばで発せられた。

 「この……クズ野郎が!」

 「止めろ!バトー!冷静さを失って勝てる相手じゃない。落ち着くんだ!」

 今にも氷の剣でエアリスに斬りかかろうとするバトーをクライドが制止した。

 が、それ以上の速度でエアリスに牙を向く者がいた。


 ……私だ。
 
 「ほう、貴様から来るか。かかってこい」

 「『アンダーグラ……』」

 メスを振りかぶった瞬間、目の前に見えたのはエアリスの拳だった。エアリスの小さな拳が真っ直ぐ腹部に吸い込まれていく。体を捻って受け流……あれっ……一瞬にしてエアリスが遠くに吹っ飛んだ……いや、私がぶっ飛ばされたのか?礼拝堂の入り口のドアをぶち抜き、本堂入り口付近まで滑った。

 「ごふぇッ!」

 息を吐ききってしまった。空気を求めて気管支がしどろもどろするが、肺が広がらないために息を吸うことができない。
 しかたないので、胸をぶっ叩いてなんとか呼吸を取り戻す。ついでに折れた肋骨もメスを差し込んで繋げておく。

 「えっと……よく飛びましたね。殴られて飛ばされた距離で世界記録とれそうですね」

 訳のわからないことをショコラが呟いた。

 「ンハッ………ゼェ……ゼェ。なっ何があったクライド!」

 「拳で殴られただけだ。本当にそれだけだった!これはいったいなんなんだ!」

 クライドの困惑した声が聞こえた。

 「私は先程までセレアの体だったから手加減しなければ……とか考えていました。本当は『エアリスの体を傷つけて本当にいいのか!』とか叫ぶつもりだったんですよ……。今のでやめましたが」

 遠くに見える先生もあきれているようだった。

 「はっはっは!どうだこの力は!我はお前たちを倒し、腐らないうちに肉体を補強し、魂を再び込め、エアリスと同じように使役する。世界でも有数の僕が一瞬にして出来上がるのだ。そうなればチュリグさえも制圧出きるだろう。我が支配する新世界の幕開けだ」

 こいつ!世界を敵にまわすつもりか!

 「ゴホッ……エアリスはクロノクリスの能力で無理矢理数多の魂を融合させ、肉体に縛り付けられているだけだ。倒せば肉体がどうであれ子供たちの魂は成仏するはず。容赦なくやれ!」

 私の呼び掛けに対してソラが前に出た。ゴーグルをつけ、赤いコートを羽織直し、ナイフを構える。

 「……俺がやります。バトーさん、サポートお願いします」

 「……ソラわかった。奴にどれだけ俺の剣が効くかわからないが……氷冷剣!」

カルマポリス ヴィラン……あれは嘘だ

http://thefool199485pf.hateblo.jp/draft/ElOwPEgS6870WridO632Z0W4bqA
その絵、危険につき限定公開。SAN値たかいひと(グロテスクなモンスター)はどうぞ。

……実は企画のために書き起こしたものではなく、元々自分の描いていた絵を引っ張ってきたもの。エイプリルフール最大の嘘です。本来であれば10時間以上かかってもおかしくない絵をポンッと出せたのはそのせいだったり。

 因みに出せない理由として

1.外見で不快に思われるようなものをディランにするのは交流上不便すぎる。

2.そもそも企画用に書き起こされたものじゃない。

3.描くのが大変。

 ……があって、採用を見送っていたのを即興で文章を組み立ててアップした形になります。信じていた人、ごめんなさい申し訳ないです。もう少し分かりやすい嘘を考えればよかったのですが、何分思い付かず体力もなく(汗)

というわけで以上、フールのエイプリルフール企画でした。

カルマポリスの仮面召喚師(茶番)

カルマポリスにて、仮面の召喚師との戦闘中……

 

pfcs.hatenadiary.jp

 

レウカド「過去の記憶を追体験させて、そこでここにいる皆が助けてくれた、という体で話を進める。こうすることで記憶は改竄できなくても心は救われるんだ。…始めるぞ。ゆっくりと息を吸え……ソラ、お前は子供だ」

ソラ「…俺は子供…俺は子供…ぼくは…子供…ぼくは……子供……」

レウカド「記憶を遡るぞ。1年前…2年前……3年前……。10年前…(よし、これくらいでいいだろう)。今君はどこにいる」

ソラ「…暗い部屋にいる…嫌だ…暗い…怖いよ…ぼくはどうして、こんな目にあっているの…」


ライスランドの先生「過去か。『15年前』私は何をしていたっけ……」

レウカド「あ、よせ!今年号に関して喋ったら!」

クライド「おい!なんかソラの様子がヤバイぞ。あきらかに監禁されていた頃よりも遡っているぞ」

ソラ「ッッ!!15年前…!?……ぼく…?ぼくは…あー…。あー…?みんな…?ふふ…楽しいな…」

※二歳まで幼児退行

 

先生「あ……」

レウカド「……失敗だ」

クライド(そっと目を逸らす)

レウカド「とりあえず元に戻す。3歳…4歳……」

クライド「えっと、ソラって何歳だっけ?」

先生「『20歳』くらいですかね?」

レウカド「おい!あんた!何度言ったらわかる!」


ソラ「…20歳?」

ソラ「…俺は20歳…ええ、俺は今とても幸せに暮らしています…シュンと一緒にいて…ルーカス様の寿命も近いですが…俺は警察として最高峰にいて…」
(ソラが20歳になった時を妄想)

先生「あれ?感情取り戻してませんか?」

クライド「下手したら今のソラさんよりも精神が安定していて、本人にとってもよさそうだな」

レウカド「……このまま目覚めさせるか」

先生はソラに猫だましをして起こした!

ソラ「ハッ!あれ…?俺はどうしてここに?…シュンは?何か、貴方達の話し声が聞こえて…」


 ニコリ、とソラは微笑む。しかしその後悲しそうな顔になる。


「…何かがおかしい…」


レウカド「……敵のPF攻撃によって一時的に意識が17歳、つまり君から見て過去の世界に呼び込まれたらしい」

クライド「元に戻るまで少し時間があるんだ。今の……17歳のソラさんはトラウマと戦っていて疲れちゃってね」

先生「回復するまでの間、頼めるか?」

「…はい。大丈夫。…過去の世界…過去の俺?そうか…俺はトラウマと戦って、疲れちゃって…。
…うん。大丈夫だ。なんという能力だ、過去に来てしまう、なんて」


ほくそ笑むレウカド。


「オムビス!クォル!ソラが復活したぞ」

仮面の召喚師「チッ、あなたたち4人(クライド、先生、オムビス、クォル)にここまで苦戦するとは。しかし一人増えたところで戦力差は変わりません。どのみちこのまま、我が魔物たちの餌食です!!」

「俺は…さっきから、身体が頭に付いてきてくれません…!おかしい…!感情を解放したり…17の身体に入ったり…おかしいです…!
…レウカド先生…助けてください…苦しい…俺を元に戻して…」

 ソラは元に戻して、の意味を20才の自分に戻して、と言っている。

仮面の召喚師「バカな!体調不良のはずなのにソラがここまで強いとは!ありえない、情報と違う!」

 レウカドはソラの様子を見かねて、駆け寄った。

レウカド「……わかった。治療する。お代については3年後の俺に聞いてくれ。ゆっくりと深く息をして。…お前は17歳のソラ。…俺たちのよく知るソラだ」

「…三年後のレウカド先生…また会いましょう。
……深く息をする……俺は…ゆっくり年齢をくだる…19…18……17……。……おはよう、ございます……俺は何をしていたのでしょう…?記憶が空っぽです…」


レウカド「さあな、夢でも見ていたんじゃないのか?とりあえず落ち着いたらあいつらの援護に回ってくれ。今のあんたなら、もう大丈夫なはずだ」

「…はい。…不思議な夢を見た気がします。もう、大丈夫ですよ。ありがとうございます」


 余談ですが、このあとカルマポリスの召喚師は無事、退治されました。

 

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ひな祭り ー当日ー 世界を救った勇者 PFCSss8

 ノア教にさらわれていた人質が、アンティノメルのヒーローに保護されていくのを眺めながら、エスヒナとエアリスはノア教付近にあった倉庫に向かった。
 倉庫のなかは各国の軍人がせわしなく動いていた。ノア教制圧のために用意した作戦本部、それがこの倉庫である。
 そのなかでも訊問用の一室で、エアリスとエスヒナは向き合った。

 エアリスがノア教の情報提供と引き換えに要求したのはエスヒナとの面会だった。
 気まずい雰囲気のなか、全く悪びれずエアリスは口を開いた。エアリスはノア教の正装を脱ぎ捨てており、白いドレスを着用している。
 こうしてみると、エアリスは年端も行かない子供にしか見えない。公園で走り回っていてもなんの違和感もないだろう、とあたしは思った。





 「エスヒナ、お主チュリグの出身じゃよな?」

 「ん?いや、キスビットだけど?」

 「人違いか」


 あたしは世間話かな、と考えた。エアリスは捕らえられていた人にもごくごく普通に接していたし、できる限り恐怖心を植え付けないように努力もしていた。


 「わらわはこの教団の力を利用して、世界の種族差別をなくそうと活動していたんじゃ」

 「え、あんた何やろうとしてたの!?」


 そして、驚愕する。


 「具体的にはこの教団を操り、エルドラン国を占領して、『お主らの国もこうなりたくなかったら種族差別を早急に止めさせろ』と声明を出そうとしていたんじゃ」


 まるで明日の朝御飯を語るかのような表情で、何を言っているんだ!あたしは慌てて反論した。


 「でもあんた、例えそれで種族差別が一時的に消えたとするよ?でも、種族の根底には種族のあり方や考え方の違いが原因になっているんだ。お互いがそれを理解しようと歩み寄らない限り、何度だって差別は起こる」

「情が差別をなくすのか?情けで差別を消せるのか?ふざけるな!!そんなことで差別が消えるのならば、わらわはもとより存在せぬわ!恐怖で押さえつければよかろう」


 ドンッとエアリスが机を叩いた。エアリスの白い手から、銀色の液体が飛び散る。しばらくして、ひとりでに飛び散った液体がエアリスの手に向かって集まり、同化した。


 「恐怖なんて所詮一時的なものだよ。慣れてしまえばどうってことない。それに順応して乗り越える力を人は持っているんだ」

 「グッ……」


 緊迫した雰囲気が部屋を支配していた。あたしは直感的にこのやり取りが世界の命運を握っている、ということを感じ取った。
 まずは相手……エアリスを知らなければ。エアリスがなぜそんな極端な思想になってしまったのか。そして何を望んでいるのかわからないと、話しようもない。


 「そもそも、あんた、どこの出身で何者なんだ?」
 「……クロノクリスは従順で強い力を持つ手下を欲していた。そこで目をつけたのが人種差別によって死んでいった子供たちじゃ。子供は純粋で何色にも染まる。その上差別が憎い、という点で強い思念でこの世にとどまり続けておる。そこで、クロノクリスは数えきれぬほどの子供の魂を、反人種差別という思想によって束ね、それをあらかじめ用意した肉体に召喚した。そうして目覚めたのがわらわじゃ」


 唖然としてしまった。あんまりにもあんまりな生い立ちじゃないか。
 エアリスの表情も相まって、とても心苦しい気分になる。


 「じゃあ、単純に考えてもバカみたいな量の魂を小さな体に宿しているわけか」

 「そう。そして、魂の量が多ければそれだけ妖怪の呪詛の力や精霊の信仰の力も強くなる。わらわは普通の人からすれば考えられないほどの力を得たのじゃ」

 「その力を使って世界から差別をなくそうとしていた、と」


 エアリスはピンクの唇を噛みしめて、押し黙った。銀の髪の毛は細かく震えていた。
 そして、宿敵を語るときのように鬼のような形相で矢継ぎ早に語った。


 「……エルドラン国では種族統合の時、妖怪の乗る乗り物は反対派の者たちに強襲された。こどもの親は妖怪なぞ学舎にふさわしくないとデモを起こした。そして学舎では妖怪の子を模した人形を吊し上げにして、数十人で暴行した。外食しようにも、妖怪とそれ以外では区別された。差別反対を掲げるものはたとえ、同胞であろうとぼこぼこに殴られた。お主にも心当たりがあるじゃろう。これが差別の現実じゃよ。わらわは、わらわは差別をする奴等が憎い!叩き潰したいのじゃ!」


 当然エアリスの魂にはエルドランで差別された子供の魂も、チュリグで差別された子供の魂も入り交じっていはず。だから、エアリスは各国の種族差別をさも自分が受けたかのように語るんだろう。
 そんなエアリスにたいして、あたしは無念の思いがこもった声を口から発した。


 「あたしの親友にね、キスビットのジネという都市の生まれの子が居てさ」


 一息ついてエスヒナは続ける。


 「ジネでは鬼以外の種族は生まれたときから卑下される。子供は最初から夢や希望なんかない。生きていくために必要な知識や教養、技術、社会性、そういったことも知らないまま育つんだ。当然そんな状態じゃ仕事につけない。そもそも、奇跡的に技術や教養を持っていても『鬼じゃない』、たったそれだけで社会から廃絶される。生き残るために残された道は麻薬か恐喝か闇市か……犯罪が収入源なんだ。こんな状態で、差別を止めろと脅しても、逆効果だ」


 脳裏に焼き付いたいまいましい記憶が、鮮明に思い起こされた。心が張り裂けそうになる。
 そんなあたしの話をエアリスは親身になって聞いてくれた。


 「そなたは、ジネを……キスビットという国をそんな国にしてしまった奴等が憎くないのか?」

 「憎い。けど……、いつまでもいがみあっていたら、お互いなんにもわからないだろ?まずは一歩、歩み寄ることが差別解決には必要なんだと思う。エウス村長のように……」

 「そうか……」


 エアリスはもう、反論する気がないようだった。肩を落として、自分の手を見つめている。


 「あたしの夢はキスビットがかつて種族を差別していた鬼と、差別される側だった三つの種族の子供が、一つ屋根の下で暮らしてさ、一緒に笑いあっているような国になってほしい。種族ではなく人格で人を評価するような、そんな国になってほしい。そのためには、力で押さえつけてもダメなんだ。じっくりと辛抱強く話し合っていかなくちゃいけない」


 下を向いたままエアリスはポツリと呟いた。


 「……どうやらわらわが間違っていたらしい。すまんな。エスヒナ」

 「なんであんたが謝るんだ?」

 「間違っているとわかっていて意地をはってしもうたからのぉ。今回人質を救出しにきた者たちを見て思ったんじゃ。あやつらには種族なぞ関係ない、とな」


 彼女が顔をあげた。優しく微笑む彼女の頬に、涙が伝っていった。


 「あたしらだってはじめは差別する奴等を憎んでいたさ。でも、エウス村長の『お互いを知る』って言葉を聞いたとき、救われたんだ。今のだって殆んどエウス村長からの受けおりだよ。それを勝手に自分で解釈して、あんたに話しただけ」


 あたしはエアリスに、ニッと笑いかけると、彼女の肩を撫でた。


 「十分じゃよ。お主、見かけによらず大人じゃのぉ」

 「『見かけによらず』、は余計だ!」

 「ハハハハハ」
 「アハハハハ」

 二人でひとしきり笑いあった後、エアリスが言った。


 「ありがとうな、エスヒナ。わらわはこれから後始末をしにいく。自分で始めたことじゃ、自分で終わらせなければのぉ」
 「あたしはここに残るよ。行ってもきっと足手まといだろうからね」
 「そうか、なら……これを持っておけ。何かの役にたつかもしれん」


 エアリスの手から金属製の箱がみるみるうちに浮き上がってきた。世にも奇妙な光景に目が釘付けになる。


 「あんたの能力、すごいな」
 

 あたしは手渡された箱をまじまじと見た。銀色で掌サイズの正方形だった。箱の上に瞳の模様が描いてある以外、蓋も何も見当たらない。継ぎ目ひとつ無い完全な正方形だった。


 「これ、どうやって開けるんだ?」
 「秘密じゃ。少なくともそなた以外には開けられん」


 そう言ってエアリスは席をたった。あたしもポケットに箱をしまってから、ワンテンポ遅れて立つ。
 

 「バトー。終わったよ。エアリスは信頼出切る。あたしが保証するよ」