フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

節分ネタのつもりだったんです

メインブログでもあげましたがこちらでも投稿しておきます。

節分ネタとして鬼が主人公のお話を書こうかな、お思って実際に書いてみたら、思いの外妄想がはかどり果てしなく壮大になっていきました。

気づいたら三か国を跨ぐ冒険ものに。実際に書くとしたら二つの島国をセットで地図を作り、その双子島の中に小国がたくさんある設定になるかと思われます。

人物はガッツリ、本編は軽めに......と設定を練ったつもりですが結局両方ともそれなりの量になり、この設定集だけで8000字を突破しました。何がしたいのかもはやわかりません。

ただ、せめて読んでいて苦にならない設定集にしようと、色々と工夫を凝らしたつもりなので、暇なときに読んでいただければと思います。




テーマ 献身、自己犠牲

コンセプト 妖怪の少女と鬼の青年が国を救う


舞台
 人間、鬼、呪詛使い(妖怪)、魔法使い(精霊)が住む遠い島。アルファは存在しない。

登場国:
・豊穣のアムガルド王国
 ネクリアの故郷。緑に溢れ、長きにわたり平和な国家であったが、それが仇となり物語冒頭でニブル帝国の侵略を受けた。町の見た目は中世のイメージに近い。ニブル帝国とは地続きでパーベィは海峡を挟む。
 ニブル帝国の占領下で大量の賠償金を請求され、極端なデフレが起こり町は失業者で溢れ帰った。帝国により暴動も鎮圧され、国全体が荒廃してしまう。町に派遣されている帝国兵も暴虐の限りを尽くしており、耐えられなくなった民や元軍人が地下でレジスタンスを組織している。しかし、国の最高の呪詛使いであったネクリアの母を失い、優秀な兵士はニブル帝国の最初の侵略で死ぬか捕虜にされ、かつてミッドフォール大戦で活躍した英雄レッドムートは行方不明。帝国に反逆誓ってはいるものの、反撃の芽は未だ出ておらず、形骸化してしまっている。



・辺境の国 パーベィ
 テンジンやテオの住む国。町を山と海で囲まれており閉鎖的。テオの住む家やテンジンの天地流武術の道場がある。ゼンザスをはじめとする隣国へ早く行くにはパーベィオン山脈を登り、中腹のトンネルを潜り、谷にかかるペーベィオン第一~第四大橋をわたる必要がある。橋が落ちた場合、他の橋を利用して大回りして目的の町へ行くか、海路を選ぶか、数日間の足止めを迫られる。
 閉鎖的ではあるものの国土そのものは山を除いても広く、海産物と農産物が国の収入源で船を介した貿易が盛ん。


・廃れた国ゼンザス
 パーベィの隣国でありパーベィオン第二大橋をわたり、国境線でホバークラフトを借りる子とで行ける。無法者が集まる国であり、帝国の支配も緩く、治安は非常に悪い。住む人は様々な国、様々な人種の人々が集まるが大半がわけありであり、町中に死体が転がっていてもあっさりと処理されたりする。
 政府は存在するようだが警察共々汚職にまみれておりまともに機能していない。レッドムートいきつけの酒場がある。



・侵略国家 ニブル帝国
 力と恐怖で周辺国をも占領下に置く独裁主義国家。自ら世界に戦禍を巻き、それを利用した武器の密輸を利用して国を潤している。
 灰色で長方形の建築が特徴的。一見明るく、カジノを中心とした娯楽施設に溢れた近代的な町並みだが、格差社会の極みと化している。高級階級がひしめく都心部があり、その回りにスラムや下級階級の住宅街が囲んでいる。スラムではひとさらいや臓器売買が日常的に行われており、国の問題点をありありと写し出している。
 ネク=ロシスを扱えるネクリアの一族と、アムガルド王国で開発された大型飛行船を狙い侵略する。
 本編では登場しない予定。


・天空要塞
 もともとアムガルド王国で開発された大型飛行船を軍事用に改造したもの。俗称空飛ぶクジラ。奴隷を用いた人海戦術でわずか三ヶ月で完成させた。完成する前にすでに大量の死者を出しており、味方からも死を呼ぶ要塞などと形容される。
 腹の部分に呪導砲の発射口がある。対空呪砲 80機、対地魚雷発射口4門、局所迎撃用ドラゴンライダー16騎、呪導砲 1機など豊富な武装を搭載している。だが、突貫工事なので全長一キロにも及ぶ巨体を守るにしてはいささか不十分。そのため、船員の中には設計を知られているアムガルド王国のレジスタンスに危機感を抱くものもいる。


登場人物


ネクリア
・負け犬タイプ。

 アムガルド王国のお城で育てられたお嬢様。白髪の美少女。母親が宮廷一の呪詛師であり彼女もその血を引いている。父親は兵士。
 親から教わる呪詛の実践が大好きで、日頃から秀才っぷりを発揮していた。逆にカメレンから教わる座学嫌いで、しょっちゅう抜け出してはカルメンを出し抜きサボっていた。

特徴:
・対人恐怖症
・消極的
・情緒不安
・常に誰かの後ろに隠れる
・優しく、自分のことよりも他人のことを優先する。
・動物に好かれる。
・いざというとき勇敢になる。


価値観:
・もう、何も失いたくない

欠点:
・対人恐怖症。
・心の傷によってしゃべるのが苦手。
・臆病で泣き虫。
・自己肯定が低い。

求めるもの:
・祖国の復活。

なぜ求めているのか:
・安全、安心に暮らしたい。普通の女の子として生活をしたい。

失敗したらどうなるのか:
・テオとネクリアの祖国が帝国の手に落ちる。→世界最高の軍事大国の完成

変わるもの:
・テオを通じて多くの人とふれあうことで、対人恐怖症や泣き虫だった自分を克服する。

物語でのたち位置:
 ネクリアの一族は代々赤薔薇の宝玉が胸に埋め込まれた状態で産まれてくる。宝玉は魔法ネク=ロシスの発動に必要である。ネク=ロシスは完全無効魔法と呼ばれており、ニブル帝国の主力兵器を問答無用で停止させることができる。そのためニブル帝国に命を狙われている。

 帝国はネク=ロシスを恐れネクリアの住むアムガルド王国を侵略する。カメレンと両親の犠牲で皇帝ガンティス魔の手から辛うじて故郷を脱出した。船の二重底で眠っている間に辺境の国パーベィに漂流し、そこでテオに拾われる。テオはネクリアに一目惚れし、ネクリアを守ることを誓う。
 帝国はネクリアの祖国から大型飛行船を奪い、それに兵器を詰め込み天空要塞と呼ばれる要塞へと作り替えた。
 その三ヶ月後、帝国からの追っ手を逃れるために修行を終えたテオと共に村を脱出。テオの師、テンザンの協力により大橋を渡り、無法者の国ゼンザスへと逃れる。ゼンザスの酒場でやさぐれている英雄レッドムートを説得する。いざこざに巻き込まれたもののレッドムートのワイバーンでアムガルド本国に戻り、反乱軍本部に合流。そこでレッドムートから天空要塞の深部でネク=ロシスを発動させ、陥落させる作戦を立案される。同時にネクリアに発信器がつけられていたことが発覚。このままでは数時間でレジスタンスの基地の場所がバレていることがわかった。
 レッドムート率いるワイバーン小隊は先手を打ち、天空要塞へと接近する。庭園は元々ネクリアの祖国の飛行船であることを生かし、絶望的な戦力差を縮める。数多くの犠牲を出しながらも天空要塞にテオとネクリアは侵入する。
 敵の将軍として潜伏していたカルメンの力を借りて皇帝の元へとたどり着き、テオと共に皇帝を倒した。その後、皇帝の間から天空要塞の動力部へと行き、ネク=ロシスを発動させようとするが......


会話サンプル

ネクリア「......わたしがいたらこの国は帝国の餌食になってしまう」

テオ「じゃあ、一緒に逃げよう」

ネクリア「......お願い。一人で行かせて。わたしはこれ以上大切な人を失いたくない」



テオ
・普通タイプ

 ごく普通の人生を歩んでいた鬼の青年。就職戦争を勝ち抜き、ようやく一段落ついたところで精神的に疲弊している。そのため、道場にもいかず仲間と遊び呆ける日々。テンジンにたまには運動したらどうだと進められているが、本人は気にしてない。


特徴:
・怠け者。
・肝心なところで手を抜いてしまう、爪の甘い性格。
・目的意識が薄く、目先の楽を優先しがち。
・テンジンから武術を学んでいる。しかし最近は怠けぎみ。
・異性に対して嫌煙している。
・一度スイッチが入るとそのこと以外を考えられなくなるほど熱中する。
・そんな自分が嫌いで自己肯定が低い。
・鬼特有の怪力を持つ。

価値観:
・大好きな人を守るためなら全てを捨てる

欠点:
・楽な方向にいきたがる。
・ネクリアのためであれば倫理に反した行動にでることも。

求めるもの:
・ネクリアの愛

動機:
・自分を認めてくれる存在が欲しい。
・誰かから強く必要とされたい。
・片想い

失敗したらどうなるのか:
・精神的な支えを全て失う

変わるもの
・最初こそ怠け者だったが、ネクリアと出会ってからは彼女のために積極的に行動するようになる。
・元々正常な価値観の持ち主であったが、冒険を通して少しずつ変わって行く。

物語でのたち位置
 ネクリアを発見し保護。そのときに一緒に赤い薔薇の宝玉を見つけて拾うもまばたきをした瞬間に消えてしまう。ネクリアに力をつけたら過去を話す、と言われてテンジンに住み込み修行を申し込む。その三ヶ月後、故郷に帝国が侵入した際にテンジン、ネクリアと共に脱出。
 旅先では修行の成果を存分に発揮し、ネクリアの守護者として活躍する。
 天空要塞では皇帝ガンティスと対峙。力による絶対の安心を求める皇帝にたいして、どんなに強い力を持とうが内部からの反乱やより強い存在の発生で容易に平穏が崩れ去ることを指摘。激怒した皇帝を二人で迎え撃つ。物理攻撃をテオが受け流し、魔法攻撃をネクリアが防ぎ、阿吽の呼吸でガンティスと戦い、打ち勝つ。その結果、自分の目的が国や世界を救うことではなかったことを知ることになる。


会話サンプル


ネクリア「ずっと一緒にいてくれるの」

テオ「ああ。少なくとも、君がご飯を食べるまではな」

ネクリア「見知らぬわたしのために?」

テオ「見知らぬ人でも見殺しにするのは嫌だから」

ネクリア「優しいんだ」

テオ「優しいだけじゃないぞ。武術も習ってる」

ネクリア「今日はサボり?」

テオ「いや、毎日サボってる」

ネクリア「だめじゃん......」



テオの両親
 当初はネクリアを家に置くのは反対で孤児院に届けろとテオを説得しようとする。が、テオがネクリアのために道場に通いだし、生き生きとしはじめたのを見て、考えを改める。
 道場に泊まり込みで行くといったテオを(主に資金面で)全力でサポートする。帝国にも「テオは女にたぶらかされて家出した」と一見帝国に協力しているようなフリをして嘘をつき、時間を稼いだ。


会話サンプル


母「こんな子を泊めてどうするつもり? 早く孤児院に連絡しなきゃ!」

テオ「訳ありな上に、とっても疲れてる。ちょっとは気を使ってやれよ。どう見たって一般人じゃない」

父「なら、自分で面倒を見てやりなさい」

母「まって、変なことに巻き込まれて就職取り消しになったらどうするの。いくつも受けて辛い思いをしたのはあなた自身でしょ。せっかくのチャンスを棒に降らないで!」

テオ「そのチャンスのためにあの子を売るのかよ。就活だったらいくらでもしてやるさ」

父「もし、そうなったとしても後悔するなよ」



テンジン
特徴:
・テオの師。
・がっしりとした体型のスキンヘッドの人間。白い胴衣を身に纏っており、一見めっちゃ怖い。
・天地流武術の達人。ただし、門下生が全く集まらず唯一の門下生であるテオも乗り気でない。
・年齢のわりに気さく。
・テオの実力と自分の指導力を買っており、毎日自分に従事すればあっというまに達人になれると豪語する。
・天地流武術の精神である、「拳は守るために奮う」をモットーとしている。
・元々アムガルドの出身者であったが、偶然出会ったテンジンの後の師に弟子入りし、パーベィに移り住んだ。そのため、アムガルドに時々いっており内情に詳しく、目的を失ったレッドムートがゼンザスの酒場をよく出入りしていることもつかんでいた。
・時事にも敏感でネクリアの素性を察しており、テオに全力で指導する。
・ミッドフォール大戦でニブル帝国の皇帝に成り上がったガンティスと共闘した。その際ガンティスが裏切ったために他の仲間が全滅している。


価値観:
・武の心と共にあり

欠点:
・少々強引。

目標:
・テオとネクリアを助け、帝国の崩壊の手助けをする。

動機:
・「弱きを守る」という己の信念のため。
・テオの成長を見届け、その意思を尊重したため。

変化:
・最終的にネクリアの祖国で道場を開き、大量の弟子を得る。また、ネクリアの第二の師となる。

その他:
・天地流武術
 合理的な格闘学に魔法や呪詛といった概念を付属した総合格闘術。大気中に存在するエネルギーの流れを読みそれを自らの力とする。そのため受け技が非常に上手。その一撃は人間にも関わらず鬼を軽くいなすほど。

立ち位置:
 テオの師としてテオを徹底的に鍛え上げる。自ら橋から落ちたものの、水面受け身で海まで漂流して生還。当人は旅の前半で別れてしまったものの、その生きざまは最後までテオやネクリアの心の支えとなる。


サンプル台詞:
テンジン「天地流武術は人を守るためのもの。傷つけるためにあるものじゃない。 戦うのは最期の手段。しかし、一度拳を抜いたら情けは要らない。守るべき者のため何より鋭い刃となれ!」

テオ「当たらねぇ......」

テンジン「踏み込みが甘い。それに力みすぎている。リラックスしてもっと鋭くついてくるんだ」



カメレン
 ネクリアの執事。髭が特徴的な初老の精霊。やせ形ではあるもののめっちゃくちゃマッチョ。幼少の頃からネクリアのことを見守っており、我が子のように愛している。ミッドフォール戦争にて従軍経験があり、判断力戦闘力共に非常に高い。長期変身の魔法を得意としている。

特徴:
・己を殺すことが得意。演技が上手。
・執事として活動しているときはどんな状況でも常に冷静。
・両親の次にネクリアを理解している。
・両親からも絶対の信頼をおかれており、しかるときはしかるし、誉めるときは誉める。
・時々出る素から感情豊かであることがうかがえる。。

価値観:
 仕事中は泣きませんよ?

欠点:
・実はネクリア並みの泣き虫。

目標:
・国の奪還。

動機:
・ネクリアに仕えているという執事のプライド。
・ネクリアの第二の親として彼女を育てることを夢見ているため。

失敗すると失うもの:
・執事としてのプライド
・自分にとって大切な人、生活、すべて

変化:
 旅の後成長したネクリアが自立したと認め、教師をやめ彼女を助ける存在へと変わる。

立ち位置:
・前半でネクリアを逃がすために彼女に変身する。その後行方不明となるが、敵の将軍として天空要塞に侵入したテオとネクリカと対峙。帝王の前に連行するフリをして彼らを最後の戦いへと導く。


カメレン「お嬢様、よくお聞きください。これから私が部屋から出て敵を引き付けます。その間にお嬢様は私と反対側に駆け、食堂に入ってください」

ネクリア「......船着き場への秘密の抜け道!」

カメレン「そうです、いつも私を出し抜くのに使っていた避難通路です! そこで、母君が待っておられます」

ネクリア「......あなた、あの通り道を知っていたのね」

カメレン「私めの不器用な気遣いでございます。勉強は誰だって嫌ですから。では」

ネクリア「カメレン! 行っちゃった......」




ネクリアの母
 ネクリアを逃がす際、船着き場で皇帝と対峙する妖怪。美しい白髪を持つ美女。夫の亡骸を見せつけられ動揺したところをガンティスの魔法によって仕留められる。自爆によって皇帝を道ずれにしようとするも失敗するが、真の目的はネクリアを脱出させること。その際に自分の宝玉をネクリアの船にのせる。

 「あなたは生きて幸せになって!」



レッドムート
 西部劇のガンマン風の出で立ち。種族は妖怪。銃に呪詛をこめて発射できる呪弾を使える。
 ゼンザスのとある酒場でぼやいていたところをネクリアとテオに声をかけられる。レジスタンスはもう駄目だとか愚痴を言いまくる。が、ネクリアの名前を聞いた瞬間に立ち直る。ネク=ロシスがあれば戦況を逆転できると知っているからだ。

特徴:
・ミッドフォール大戦にてワイバーンを繰り、敵から赤い災厄と恐れられた英雄。
・テオとネクリアをレジスタンスキャンプや天空要塞に導く。
・酒が大好きで飲みながら戦う
・自分の命を軽々しく思っている節があり、そこをネクリアに指摘され、逆上する。

価値観:
酒と戦いが生き甲斐

欠点:
心が折れるとただのアル中。
・へたれから脱するとよくも悪くもプライドが高くなる。

目標:
・国を救うためテオとネクリアを天空要塞へ送り届ける。

動機:
・とにかく戦場に出たい。
・死ぬなら戦士として死にたい。

失敗すると失うもの
・英雄としての自分。命。

変化:
・アル中から英雄へと華麗に変身。

立ち位置
 ゼンザスの酒場でやさぐれていたところをネクリアとテオに話しかけられる。周辺国は次々侵略され、反乱軍の士気は下がり、意地のみで形骸化していると話す。が、ネクリアの名前を聞いてやる気を取り戻す。
 二人を反乱軍基地へと導き、ワイバーン小隊を率いて天空要塞に侵入する計画を持ち出す。ネクリアとテオを天空要塞に送り届ける時、「俺は仲間の仇を打つ」と言って無謀な戦いを挑みに行く。
 その後、死んだかと思われたが、ガンティスが瀕死の状態で蘇りカルメンとネクリアを道ずれにしようとした場面で颯爽と現れ、皇帝に止めを差す。ネクリアの言葉を思いだし、思いとどまったのだ。
 その後はネクリアに傭兵として雇われる。


台詞

レッドムート「英雄と呼ばれたのも今は昔。今はただの飲んだくれさ。反乱軍はもう駄目だ。周辺国も侵略されっちまって意気消沈してる。反撃の見込みもねぇし、まるで葬式会場だ。ところであんたら名前は」

テオ「テオです」

ネクリア「......ネクリア」

レッドムート「!? マジかよ! オーケー、ついてこい。屈強な反乱軍が待ってるぜ」

テオ「......本当に信用して大丈夫なのか」



レッドムート「生き死になんて関係ねぇ。俺はやつらを絶対に許さん!」

ネクリア「命を粗末にしないで!」

レッドムート「お子さまにとやかく言われる筋合いはねぇ! 戦場では一番殺した奴が英雄になるんだ。そして俺は英雄、やりたいようにやる。オーケー?」



レッドムート「ヒーローは遅れて来るもんだぜ? オーケー?」

ネクリア「どこほっつき歩いてたのよ、このどアホ!」

レッドムート「おいおい、そりゃないぜ。もっと感動の再開を喜ぼうぜ? 涙なんか拭いてさ」





皇帝ガンティス
 絶大な魔力を持つ精霊。ちょっぴり太っており威厳たっぷり。人工的な白鎧に身を包む。ネクリアの祖国から奪った天空要塞を利用して世界を侵略せんとする野心家。ネクリアの祖国を侵略し、両親を殺し、テオの故郷すら戦禍に巻き込んだ。圧倒的な武力に酔っている反面、それを一撃で落としうるネク=ロシスを極端に恐れる。

特徴:
・帝国が世界を平定することで世界平和を実現させようとしている。そのために侵略行為を繰り返している。帝国は閉ざされた世界に刺した一筋の光だ、と思い込んでいる。
・自分の作戦遂行に邪魔なものは何者であっても排除しようとする。
・力が強く、帝国内では誰も逆らえない。
・過去の大戦で故郷を失っており、その時に聞いた兵の侵攻する「ぬかるんだ地面を踏みつける足音」がトラウマとなっている。
・ネクリアは故郷が侵略されたトラウマをテオと共に冒険し、様々体験を通して心を癒すとともに昇華しようとするのにたいして、ガンティスはより強い力を手にすることでトラウマを消し去ろうとする。
・テンザンとはミッドフォール大戦で共闘している。そして敵国に裏切っている。

価値観:
富が、力があれば安心できる。

目標:
 帝国による世界侵略。

動機:
 自分のトラウマである足音を消すため。


欠点
・思い込みが激しい。
・人間不信
・情緒不安定。
・激怒すると冷静な判断が出来なくなる。
・常に他国から侵略されることに怯えている。

失敗すると失うもの
・心の安定、安心。


物語での立ち位置
 前半でネクリアのすんでいた城を侵略しネクリアの両親を殺す。さらに、テオの故郷を侵略。テンジンを瀕死にまで追い詰める。
 ネクリアの故郷にあった巨大輸送船を奪い武装、天空要塞と称し兵器として運用する。
 終盤、ネクリアやテオの侵入経路からレジスタンスの基地の位置を逆算し、天空要塞の呪導砲で消滅させようとする。
 が、レジスタンス基地にたどり着く20分前にカメレンの陰謀によりネクリアとテオと対決する。あの手この手で時間を稼ぐも、テオとネクリアの機転の前に破れ去る。
 さらに、目的を果たしたカメレンとネクリアを道ずれにしようとするも、レッドムートの凶弾でこの世を去る。

閲覧注意!PFCS一周年記念全キャラ集合世紀末メタ会話IF大会

※メタ会話の塊
※ネタバレあり
※キャラ説明なし
※キャラ崩壊あり
※ストーリーなし
※IFです。本編および交流には一切関係ありません
※悪のりの塊
※そういうのが苦手な方はブラウザバック


解剖鬼「ん? なんだこれ、キャラ説明なく唐突に話が始まったぞ? 読者がおいてけぼりじゃないか。時間説明は? 場所は? この台詞を書く目的は? はぁ、とうとう読ませる気がなくなったのか」

老人「いや、今日はいいんですよ。企画の一周年記念ですよ? タイトルにも堂々と出てるし、企画に参加していない人、興味のない人は読みませんよ。パァーッといきましょう、パァーと!」

ルビネル「キスビットの方でもメタ発言してたし。あぁ~、私の没になった設定どうなったのかな。あれ、PFUGで過去に死んだ恋人の魂と融合してるせいで性別を時々間違えるとか、和ー巣シンボルの本体であるリムドメイジと戦って他の国のお偉いさんの力を借りて和解するとか。あとあれ、セレアとエアライシス(狼)の話はどうなったの?」

タニカワ教授「ルビネル、そういう間接的に自分の首を絞めるようなことを言わないで。誤字も酷い。あと、台詞が説明的すぎる。もっと映画みたくさりげなく読者に情報を伝えなきゃ......」

セレア「お主、こんなときまで真面目なんじゃな。わらわはもう初期の設定を見て青ざめまくってるぞ。なんじゃ、種族差別を憎み世界侵略を決行するエア様似の女の子! 薄すぎじゃろ! バックストーリーをもっと練ってから公開するんじゃ! 交流用じゃなくてストーリーキャラとして作ったわりにずさんすぎるぞ! っていうかわらわはなんでラスボスポジからはずされておるんじゃ! クロノクリスって絶対後付けじゃろう!? もっと計画性を......」

アルベルト「シャーハッハッハェ! 過去があるだけまだましだろ! 俺なんか一発噛ませってそれ以上役目をもらえなかったんだぜぇ! まあ、二回も改編してもらえたし、大暴れできたからいいけどよぉ! ちなみに独特な笑い声は実際にいってみて語呂がよかったのが『ハ』が三つだったからこうなったんだぜぇ」

キクリ「私なんて初登場時なんなの!? 能力が強力なだけなただのヒステリック女よ! 動機も過去もなにも決まってないってどういうことよ」

ヒリカ「姉様、一応クロノクリスに両親を殺されて、それを伏せられた状態でクロノクリスに勧誘されてノア教に入団したっていう設定が練られてたみたいです。ちなみにひな祭り直前に僕が老人に捕まって、それを餌に姉様が老人に捕まって、ひな祭り当日に活躍できなかった......なんていうシナリオも!?」

クラウド「でも、没だろ」

ジョン「ああ、没だ。よくある話だ。本筋に関係ないから削られるやつ。もっともそういう没ネタすらない俺たちは本当に救いようがないがな」

スペクター「そんな設定あったのか、読者に覚えられていないキャラ二人組。もっとも私はカルマポリスをなんで愛しているのかその理由が語られてないせいで行動理念が宙ぶらりんだ。後の祭りだがな」

ギーガン「あいつと戦えただけでもう俺満足だわ。まじ海賊団に憧れる。あと剣豪」

クラウド「俺たちなんか存在意義が宙ぶらりんだよ」

The.AIR「本家......技......文章......コピペ......(笑)」

ルビネル「私は元々マジメキャラで押していくつもりだったんだけどな......。でも、あのままいってたら確実にジョンとマクラウドの二の舞に」

クラウド「二の舞とか言うなよ」

エアライシス(狼)「完結マダー。トイレの神様マダン○、ア○テマ、アポカリ○ス......。あ、光って歯車カチカチする演出まだやってなかったな」

スミレ「本編で活躍したわりに設定が決まってない。せめて食べ物の好き嫌いくらい......」

ルビネル「大丈夫よ、シュークリーム食べればみんなかわいいもの」

アルベルト「俺もシュークリームを食えばかわいくなれんのかねぇ、舌も長げぇしよぉ! シャーハッハッハェ!」

解剖鬼「そうやってこの記事みたいに閲覧注意増やすの本当にやめてくれ。読者が身構えちゃうだろ。それだけで無気力が削がれるだろ。ちょっと考えればわかるだろう」

ルビネル「何いってるの! スケベは万国共通の売れるコンテンツじゃない!」

老人「それをするなら、未成年のいない企画でお願いしやすぜ。俺だって苦労してるんです。本当だったら人んちに馬の首ひとつや二つ置いていくのがマフィアだってのに。無意味に残酷描写をするとすぐ規制にひっかか......」

セレア「あのなぁ、無意味なエロ、グロって素人作者のやってしまいがちなミスじゃぞ? そういう安直な描写は避けた方がよいのはわかってるじゃろう! 健全なコンテンツを目指すわらわがどれだけ迷惑してるか」

タニカワ教授「君もこの前色っぽいことやってたじゃないか」

セレア「大事なところは見せてないからセーフのじゃ!」

解剖鬼「セレア。お前はお前で壊れる描写を生々しくするのやめろ。下手すると猟奇のジャンルに走ることになるぞ」

ルビネル「そういえばセレア、あなたセルフ触手できるって噂聞いたんだけど本当? 新ジャンル開拓できるんじゃない?」

セレア「おまわりさん! こっちです! 変態がたくさんいます」

クロノクリス「すいません、一周年記念メタ会話大会の会場はこちらですか」

老人「おまわりさんじゃなくて、極悪犯がきましたぜ」

解剖鬼「お前も指名手配中だろ」

クロノクリス「あなたもですよね?」

ルビネル「あなた、だぁれ? 会場間違ってるんじゃないの?」

タニカワ教授「コラ、授業で習っただろ。自分の策と軍事力に溺れて油断して不意を突かれたあげく惨めな最後を遂げるタイプの悪者の筆頭だって」

クロノクリス「最近は演説をする暇すらなく殺されました。せちがらいものです」

老人「その部下は廊下で転んでお陀仏ですぜ?」

解剖鬼「戦闘中におしゃべりする奴なんか実際どこにいるんだ。戦闘の緊張感が台無しだろう」

スペクター「私だ」

セレア「いたのじゃ......」

エアリス1「そういえば」

エアリス2「そうだったな」

セレア「お主らいたのか」

ルビネル「戦闘中の会話はテレパシーにして、一瞬で意思疏通できるようにすれば万事解決よ? その代わり寿命が7日くらいに減ったけど」

クロノクリス「有利なときに煽るのは以前にもやりましたよ。数分後には棺桶の中ですが」

スミレ「まともな人がいない......」

解剖鬼「ルビネルをもとに戻すためにオーバーロードしたっていう裏設定もあったな。結局紹介しなかったが。ちなみに私は心のなかで叫ぶタイプだから生き残れてる」

老人「必要のない設定は明かさない主義ですからね、うちは。まあ、実のところ隠してるんじゃなくて決めるのが面倒なだけなんですが」

ルビネル「そうそう、お陰で知らぬ間に設定ができて、そして脳内で没になる......。そして私は家族構成すら決まってない」

スペクター「あ、没と言えばスミレのあの設定はどうなったんだ?」

クロノクリス「あの設定、とはなんでしょう?」

スミレ「アンドロイドに魔改造される設定」

セレア「はぁ!?」

解剖鬼「ふぁ!?」

カサキヤマ少年「ええ!?」

ジョン「......この子だれ?」

クラウド「お前が言うな」

カルマポリス豆まき大会!(続かない)

f:id:TheFool199485:20180131220019j:plain

カルマポリス豆まき大会へようこそ。私は死の水先案内人ミィです。これから皆様を豆まきの会場にお連れしますね。

カルマポリスの豆まきは特殊呪詛銃M99と豆型ペイント弾を使ってのサバイバルゲームになります。

昔鬼とアルファ兵器が戦ったとされる歴史が発祥となってます。物騒ですね♪

鬼組とアルファ組に分かれて1時間でkillした人数が多いチームの勝ちとなります。あ、もちろん死ぬって言うのはゲームでの話で実際には服が汚れるですからね。......えへへ。

ペイント弾を一定量浴びると撃たれた方の銃がオートロックされ、使用不能となります。その後、止めを刺したチームに1ポイント加算されます。得点は呪詛探知機を介して自動計数機で自動計算されます。お会場の至るところに呪詛探知機が仕掛けられてるからどこで死んでも安心です! 因みに残りどれくらい浴びたら死ぬのかはお手持ちの腕時計型の機械でご確認ください。

場所はカルマポリス郊外の大平原。試合時間は一時間で十分経過するごとにフィールドが狭まります。フィールドから出たら人生にピリオドを打つことになるので気を付けてくださいね。

フィールドにはM99の他にも武器やマガジンが落ちているのでよく探してみてください。民家はこの日のために簡易的に作られたものなのでガンガン侵入して物品を漁ってくださいね。運が良ければ復活アイテムも落ちてますよ!

死んだ人からアイテムを奪うこともできるので、ガンガンぶっ殺しちゃいましょう!

では、死合に参加する方はこちらのバスにのって移動してください。

チケットが入手できず、試合に参加できなかった人の分も全力でやりあってくださいね! 血で血を洗うような激しい戦いを期待しています!

なお、大会中は呪詛や魔法使用や直接の接触行為、指定された道具以外を使っての罠を張るなどの妨害行為等を禁止しています。各エリアに審判が潜伏しているのでワルイコにはすぐお仕置きしちゃいますよ!

では、はじめっ!



ルビネル(ダメ元で応募したら見事に受かるとはねぇ......)

キクリ(参加できなかったヒリカの分も殺さなきゃ)

セレア(ガトリングガン! 何でこんなのが民家に落ちているのじゃぁ!?)

ライン・N・スペクター(ショットガンだがマガジンがない。とりあえず拾っておくか)

解剖鬼(開始五分で撃たれた。やはり中身では限界があるか。残り体力は6割といったところか......って! ペイント刀!? なんだこれは)

スミレ(......狙撃用意)

タニカワ教授(これは......M45サブマシンガン!軽い。折り畳み式で携帯性にも優れる。握りやすいグリップ。よく磨かれた銃身。なるほど、日頃の鬱憤を晴らせということか)

老人(地雷ッ! いいもん見つけましたぜ!)

クロノクリスvs四国連合

 私の持つ左右10の指輪には各々一人ずつ妖怪の魂が込められており、それを用いることで肉体の制限を無視して呪詛を行使することができる。
 主に左手には自動で発動するものを、右手には自分の意思で発動するものを装着している。
 基本戦闘で意識するのは右手の能力である。


 左親指 鬼力<ジ・オーガ>
 自分の筋肉の質を操ることで鬼の筋力と力を得る呪詛。

 左人差し指 大出力<オーバーアウトプット>
 呪詛の出力を引き上げ、同時に複数の呪詛の発動を可能とする。

 左中指 自呪癒<リカバリー>
 常時大気中の物質を呪詛に変換し、呪詛の枯渇を防ぐ。

 左薬指 銃器<ガンマスター>
 銃器を使いこなすことができる呪詛。

 左小指 飛行<アンダースカイ>
 空を飛ぶことができる呪詛。


 右親指 隕石<パニッシュコメット>
 場所を指定し三秒後に隕石を落下させる呪詛。

 右人差し指 引力・斥力<グラビテーション>
 対象を指差し、上下左右に振ることでその方向に吹っ飛ばす呪詛。

 右中指 粒子化<WORTH AIR
 認識した攻撃を、肉体を粒子と化すことで完全に回避する呪詛。

 右薬指 超重力<EARTH GLAVITY>
 自分を中心に半径300メートルに超重力を発生させる呪詛。


 そして私本来の能力である、右小指 魂を操る呪詛。


 これが今ある私の能力だ。各地の隠れ家を回れば他にも強力な武器は存在するのだが、その余裕はない。そして、たしかに強大ではあるのだが、この力をもってしても世界の兵どもを相手にするのは困難だと私は実感していた。私の息子もそれを察して、誰も寄り付かないような森林地帯を切り開き、研究の拠点となる塔を建てた。そのためにずいぶん木材も使ったので森の霊どもから怒りを買っているようだが些細なことだ。
 さて、なぜこれだけの力を持っていても過信してはならないのか。それは今から説明するような規格外と呼ばれる存在が世界にあるからだ。この者たちがいなければ、私は木の枝の上で息を潜め獲物を待つなどということは決してしない。


 「......来ましたか」


 ハサマ王は白い髪の毛をした可愛らしい中性的な子供の姿をしているアルビダだ。見た目こそシャツにパーカーにジーンズとチュリグの庶民的服装だが、チュリグ国を統べる王である。エルドランで子供による最強論争になると必ず呼び名があがってくるほどの大妖怪だ。地震や地盤隆起・沈下、雷、嵐を操り、実際に彼に歯向かった国が<天をも穿つ閃光の一撃 ゲイボルグ>によって何ヵ国か消し飛ばされていた。
 リリィという少女がいる。地面に垂れるほどの長い黒髪持ち、ほんの少し地面から浮いて移動するらしい。頭部の左右から伸びる角が特徴的。もちもちの肌でその道の奴なら確実に飛び付きそうなゴシックな服装をしている。が、その見た目にそぐわぬこの世の汚物を全てかけあわせたような不気味な気配は見るものを圧倒する。呪詛喰らいで、その特性から呪詛を完全に無力化する能力を持つ。
 サラトナグはルウリィド国のなかでも盟勲精霊と呼ばれる特別な精霊だそうだ。植物と対話し、操る。ただ、聞くところによるとその規模が違う。一説では森全体を操るとまで言われている。単なる噂に過ぎなければいいのだが。


 「それにしても......厄介ですね」


 そんな、この世界を左右するような力を持つ圧倒的な存在がスコープに映っていた。解剖鬼がやられた情報を何らかの手段でハサマ王が知ったのだろう。あの王は即決断即実行を平然と行う果断にとんだ性格としても知られている。
 ハサマ王、リリィ、サラトナグ。一人でも相手にしたら苦戦は免れぬというのにご丁寧に三人一緒で、しかもハサマ王が作り出した竜巻で飛行しながら、私の拠点へと高速接近してくる。乗り越えられる試練を神は与えると言っていた人がいたが、神自身には不可能を可能とする試練を押し付けるらしい。
 スコープ中央に描かれた十字の中央にリリィの頭部を合わせる。呪詛が効かない相手はなんとしてでも消さねばならない。
 私は狙撃銃の引き金を引いた。その瞬間、なにもない空間に突如として穴、としか言い様のない何かが発生し弾丸が飲み込まれてしまった。二三発と打ってもすべてそれによって阻まれてしまう。ハサマ王とサラトナグは銃声の方角を確認しつつ、リリィを守るように移動した。
 私は仕方なく作戦を変更、呪詛を発動する。三人は突然墜落し森の中へ消える。たとえ竜化した竜人ですら動けなくなる超重力の呪詛〈EARTH GLAVITY〉である。解剖鬼に使ったものとは違い対象ではなくエリアに作用するタイプの呪詛だ。発動時、私を中心に半径300メートルに展開する。
 さらに、空から光の珠が空から落ちてきた。まばたきをする間に三人が落下した場所に着弾する。大きな爆発音が耳をつき、地響きがここまで伝わってきた。念じてから三秒後に小型隕石を呼び寄せる呪詛〈パニッシュコメット〉。
 動けない相手に隕石を叩きつければ大抵の相手は死ぬ。が、敵の面々は並大抵のことで死ぬようなものではない。


 「ウロボロス・カルマポリスの軍事技術を蓄えて置いたのは正解だったようですね。苦労して密輸・改造した甲斐がありました......」


 森の中を暴風が吹き荒れた。凄まじい速度で接近してくる何かの気配を感じる。位置がわからないので狙撃ができない。私はスナイパーライフルを背中に背負うと森を移動した。一応、あの二人は攻撃に気づいた。スナイパーライフルの存在は森の上空を安易に飛べないという圧力にはなっているはずだ。空に飛んだ瞬間狙撃されるのは敵も十分承知のはず。
 と、考えていると突然私の周りを竜巻が囲った。ハサマ王による遠距離攻撃! 場所がばれた原因として考えられるのは呪詛の発動が原因だろう。重力の呪詛は私を中心に展開する性質上、発動直後は遠ざかるほど効果が少し弱まっていく。数秒で均一に展開するはずだが、その一瞬の隙に発生源を逆探知されたようだ。
 だが、神にはこんな目眩ましは効きはしない。粒子化<WORTH AIR>は私が認識した攻撃を肉体を粒子と化し全て無力とする。私は竜巻をすり抜け、続いて落ちてきた雷の中を悠々と潜り抜けた。呪詛の発生源の探知を利用した索敵は一度だけだ。この場所から動いてしまえば問題ない。
 私はハサマ王によって引き起こされた突風を浴びながら、森の中を移動していく。何の前触れもなく、飛行能力を失い地面に落下する。なんとか着地したものの、突如として生えた蔦が足に絡まり前のめりに転ぶ。顔面を泥で濡らし、無様な醜態を晒す。
 見上げると、目の前の大木の枝の上から、黒く金糸を施しているマジシャンコートに身を包んだ青年が見下していた。黒髪の狭間から覗く、黒々としたタレ目が私を睨んでいる。精霊、サラトナグだ。森のじめじめした臭いにわずかに甘ったるさが混じる。


 「なぜ、私の居場所がわかった?」

 「ハサマの風にのせてサラトナグが産み出した種を君にくっつけたんだ。鼻の効く動物が臭いをたどるみたいに追跡できるからね」

 「古き考えに縛られる愚かな精霊ごときにここまで私が追い詰められるとは......」


 隣にハサマ王が並ぶ。そのハサマ王に付き添うように姿を現した少女はリリィだ。
 私は何とか起き上がり、袖の中からハンドガンを取りだしリリィに向けた。あいつを殺れば逆転できる。その目論見はまたしても発生した、謎の黒い裂け目によって防がれた。三発の銃弾は闇へと消える。
 その黒い空間が消えると同時に、不可思議な人物が現れた。右ほほから左こめかみをおおうような奇っ怪な仮面をつけた道化師がケタケタと笑っている。眼が白黒逆転しており、とても不気味だ。その上極端な猫背で身長が二メートル以上ある。そんな奴は世界中を探しても一人しかいない。コルトと呼ばれる妖怪だ。
 私は瞬時に思い至る。黒い空間がこいつの口であったことに。笑うときに見えた口の中の空間が先程の穴と同じものだったのだ。そう、彼の能力は何でも食うこと。有機物も無機物も、そして魂さえも食らう、まさしく化け物。


 「レロンレロンレロンレロンレロンバァ~!!」


 道化師は逆立ちを始め、その状態で長い舌をグルグルさせている。癪にさわる笑いかただが無視する。ここで冷静さを失えば終わりだ。


 「連れてきた甲斐があったね」


 ハサマ王の声が聞こえる中なんとか立ち上がった私だが、突如全身がしびれ地面に伏した。体の中で暴走した電流が暴れまわり悶絶する。全身の筋肉が誤作動を引き起こし、地面を跳ね回った。私は死ぬ思いで白髪のアルビダを睨み付けた。ぐっ......ハサマ王め。せめて殺してくれれば霊となり乗り移れるものを。


 「リリィやったの!」


 背後に目をやると、ゴシック風味の少女が満面の笑みを浮かべている。
 呪詛喰らいであるリリィの視界のなかでは、私の呪詛は無効となる。そこで、ハサマ王とサラトナグは彼女の視界に入るように動いたのだ。これでは<EARTH GLAVITY>による範囲攻撃も全く効果がない。さらには私自身が彼女の視界に入ってしまったために、指輪がすべて無力化されてしまった。つまり、今の私は神たる力を失った単なる人に過ぎない。


 「人が愚かであることは......」

 「五月蝿い」


 2発目の雷が私を貫き言葉を遮った。痙攣する手足をどうすることもできない。


 「えらいね。このまま食べちゃっていいよ。もう復活しなくなるからさ」


 その横で物騒なことを呟く白髪の王。コルトがそのとなりで長い舌を振り回しながらニクニクニクニク......と意味不明なことを呟いていた。
 今も私はリリィによって呪詛を吸われ続けている。もはや私の力は風前の灯火だ。なんとか呪詛で抵抗しているものの、呪詛がつきれば彼女は私の生命力をも食いつくすだろう。
 私の敗北の原因は呪詛を無力化する存在を相手にすることを想定していなかったことだ。全国を探しても呪詛を消し去るなどということができる妖怪はいなかった。......彼女を除けば。


 「最後が可憐なお嬢さんのお腹の中だなんて、身の程知らずには勿体ないよねぇ」


 端麗な身なりの青年が私を指差すと、地面から這いずってきた植物の蔓が私の体を飲み込んでいく。最初に四肢を拘束し、次に目と口をふさがれ、全てが植物に飲み込まれていく。想像以上に応用の利く力だ。この極限の状況下で冷静に分析できる程度には成長したらしいが、私はどうやらまだまだ甘かったらしい。
 全身の激痛に血の色をした脂汗が吹き出した。皮膚に深々と蔦が食い込み、さらなる苦痛を呼んだ。痛みに悶えようともからだの自由はすでになく、私はただなされるがまま悲鳴をあげる。そんな私の後ろで道化師が奇怪な笑い声をあげている。


 「クケクケケ。オマエ俺オマエオレ前オレ......クケクケケェ!!クケクケクケクケクケ!!」

 「あんまり動かないでよ......間違って絞め殺したらいけないんだからさ......。それにしても、何をしたら森にここまで嫌われるんだろうねぇ......」


 黒髪の少年がため息を吐きながら言った。そこに一切の感情は感じられない。


 「んんーーー!!? ん゙ん゙ン゙ンッッッ!」

 「棺桶の心配はしなくていいよ。ハサマが雷で跡形もなく消し去ってあげるから!」


 全てが闇に閉ざされる寸前、辺りは突如として閃光に包まれた。リリィの悲鳴が聞こえた。


 「眩しいのぉ!?」


 解剖鬼からくすねて、胸に仕込んでおいた閃光弾を起動させた。その瞬間、リリィの視界を奪ったことで一時的に私の呪詛が復活した。植物の蔓を解剖鬼にも使った引力・斥力の呪詛で弾き飛ばす。


 「私はクロノクリス。唯一にして至高の存在。私がここで退くわけにはいかない。私はこの世界を束ね、導く使命がある。万物は我の下に在ると知れ!」


 スローモーションで世界が動く。
 まず<パニッシュコメット>と<EARTH GLAVITY>を発動する。直視は腕を使い避けたものの、目が眩んだハサマ王とサラトナグ。目を閉じて前に倒れこむリリィ。そして、平然としているコルト。私は黒髪の少女の頭に銃口を向けた。が、リリィのポケットから伸びた蔓が銃弾を防いでしまう。もう一度引き金を引こうとした瞬間、ハサマ王が突風でリリィを吹き飛ばしてしまった。
 私は仲間を守るために無防備になったハサマ王に向かって引き金を引く。銃弾は突如としてハサマ王のポケットから生えた蔓によって防がれた。リリィのものと同じ......恐らくはサラトナグから渡された種子による自動防御。蔦はハサマ王を守るために全身を覆ってしまった。厄介な。
 そして、<パニッシュコメット>はあろうことかコルトの口に収納されてしまった。
 まだだ、まだ私には他の能力が......


 「......これは一体どういうこと......ですか......」


 ボトリ、とハンドガンが苔の生えた地面に落ちた。
 ハサマ王を包んでいた蔦が黒い墨を残して焼失していた。そして、私の胸の辺りがまるまる焼失してしまっている。蔦で防御するように見せかけ、ハサマ王の攻撃の挙動を隠していたのだ。私の認識よりも早く攻撃が命中したため、粒子化<WORTH AIR>も発動しなかった。この攻撃は<天をも穿つ閃光の一撃 ゲイボルグ>か......


 「......この世界を導くことができず......無念です」


 私は全てを悟り瞳を閉じた。植物が私の体を包み蝕んでいく。これから絶え間なく逃れようのない苦痛が私を襲うのだろう。だが、私は霊と化し肉体を捨て他者を乗っとることができる。私の魂を操る能力は抜き取り操るだけではない。自分の魂ですら支配下に置くことができるのだ。
 私は全身がバキバキに骨折した肉体を抜け出し、ハサマ王の生気溢れる肉体へと潜り込む! この肉体から解放される瞬間の解放感がたまらない。


 「重力の呪詛で消耗した今のあなたであれば、精神まではいかずとも肉体を支配するのは容易。これこそが私の狙いです」

 「なっ!?」


 サラトナグが事態を察して攻撃体制に移った。だが、私はハサマ王の風を操る力で、私の遺体から10の指輪を引き寄せた。サラトナグの蔓はハサマ王の肉体をすり抜け宙を切る。さらに背後から追撃してきたコルトを地面を隆起させることで遥か上空に飛ばした。


 「私を誰だと思っている! ただの妖怪ではない! ハサマだ!」


 超重力により地面を這いつくばるサラトナグに対して必殺の一撃を構える。
 私に操られたハサマ王は両手の手のひらを合わし、ゆっくりと開いていく。なにもなかったはずの空間に、恐ろしい量の雷を収束したエネルギーの塊が現れた。


 「この森ごと枯れ果てるがいい!」


 まさに呪詛を解き放とうとしたそのとき、視界の端からなにかがよぎった。


 「ダメなのーっ!!!」


 瞬間、私の魂の力が急激に失われる。これでは霊体を維持できない! 私が......消える!?


 「まさかッ! リリィ! 戻ってきて......」


 私に肉体を乗っ取らせたのも確実にリリィの呪詛喰らいを発動させるための布石......! そして奴は呪詛喰らい故に超重力を含めた呪詛が一切効かない!


 「慌てた演技上手だったでしょ。リリィを遠くに飛ばしたように見えた? そんなミス、ハサマがするわけないじゃん。最後に一つ言っておくよ」


 幼子に向ける笑みでハサマ王はいい放った。


 「君を殺したのは<天をも穿つ閃光の一撃>じゃないよ。ただの雷。君ごときに名前のある技をハサマが使うと思う?」

 「ギヤ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙アアアア! ヌァァガガガガガ!!」


 自分の声とは思えぬ叫びを何度もあげているうち、私の意識は深い闇へと葬り去られた。

トラウマ少女と冴えない教師

 ザーッという雨音が部屋に響いている。窓はガタガタと震え、夕暮れ時だというのに外は真っ暗だ。ラジオの女性アナウンサーの声が大雨注意報を知らせていた。
 そんなときインターホンが鳴った。私はラジオの電源を切り、卓袱台に読みかけの本を置くと、扉に近づきそっと覗き穴から外の様子を伺う。その一秒後には扉を開き異様な雰囲気の客人を招き入れた。


 「休日のこんな時間にすまんな......タニカワ」

 「セレア! その格好はどうしたんだ。早く中に入りなさい。体を暖めないと」


 繊細な淡い空色の髪の毛は濡れて背中にへばりつき、白くきめ細かい肌にはまんべんなく水滴が浮かんでいた。白いワンピースが透けて、下着の輪郭が顕になっている。
 そして何より、いつもならひまわりのような笑顔を見せてくれる彼女の愛らしい顔が、今までにないほど暗く陰鬱な雰囲気を放っていた。ふっくらとしたほっぺ、小さな鼻と口。そのどれもが強張り、無表情と化している。
 私はセレアをリビングに案内する。その際に部屋のカーテンを閉めて回った。


 「とりあえず、服を一旦脱いでタオルで体を拭いて。それから服も絞ってからタオルで水分をとるんだ。ドライヤーもあるから乾かすのに使って!」


 私は雨の臭いを感じながら、テキパキとセレアに指示を出した。しかし、セレアは動こうとしない。大きな瞳はどこか虚ろで綺麗な桃色の唇は半開きのまま突っ立っている。ガタガタと震えて今にも倒れそうだった。


 「......そなたにやってほしいのじゃ、タニカワ」


 いつもの無邪気な声は鳴りを潜めていた。
 私は拒否の言葉を考えた。白髪混じりの教師が生徒に手を出すなど言語道断だからだ。しかし、教師としての本能が今のセレアが危ういことを知らせているのもまた事実だった。
 雨によって服が皮膚に張り付き、セレアのたおやかな肢体がはっきりと浮かび上がっている。
 子供でも大人でもない神聖さを感じさせる蠱惑的な肉体。踏み入れたら二度と戻れぬような危うさ。悪魔的魅力。絶望と羞恥と感傷による恐怖で語ることすらできぬもろもろの兆候。セレアから発せられるそれらは私の大脳の奥底を刺激し夢想させ、空想させ、妄想させ、そのあまりにも苛烈な欲望を実行させんと強烈に誘惑してくるのだ。
 最低な気分だ。


 「タニカワ......頼む......」


 私はできる限り真剣な表情を作ってタオルを手に取った。乾いたタオルがセレアの空色の髪の毛に触れる。一瞬彼女は体を強ばらせた。私は彼女の反応をあえて無視し、ドライヤーを駆使して髪の毛を乾かす。微かに震えているのを髪の毛を通して感じる。
 白い首筋をタオル越しに手で抱いた。セレアの顔が本の少し赤みがかってきたような気がする。その調子だと自分を鼓舞し、彼女の背中に回り込み、布を当てた。寒さに身震いしたのか、背中の違和感にビックリしたのかはわからないが、またしてもセレアは体を緊張させた。左手でドライヤーを当てつつ、背骨の芸術的な湾曲に沿ってタオルを上下させる。子猫を思わせる首もとへ動かしたとき、少しだけ指が背中に触れた。
 セレアの乱れた呼吸音が雨の音に混じり部屋に反響する。タオルが腰の下に達したとき、セレアの瞳に妙な光が見えた気がした。


 「タニカワ、服の中からも頼む。寒くて敵わん」


 私は嫌々セレアのワンピースの継ぎ目から手を入れた。奥に差し入れたとき、腕にセレアの背中が密着する。背骨や肋骨の起伏まではっきりと感じられる。腕が上下する度にピチャッという音が聴こえる。
 背後から女子生徒の体を触るという背徳的で異様な行為をやらされ、気分がドン底にまで沈んでいく。


 「んっ......前も頼むのじゃ。多少の無礼は許す。そのかわりできる限り丁寧にな」


 そう言う彼女の声が少し上ずっていた。吐息も熱い。いつのまにか内股になり、恍惚とした表情へと変わっていく。私は震える手を抑える。先程背中に触れたときの感触がまだ残っていた。柔らかく、滑らかで、いつまでも触れていたくなるようなセレアの皮膚。肉感。
 感じるのは恐怖。それと、いまだにそういった欲を捨てきれていない自分に対する憎しみにも似た腹立たしさ。生徒と向き合うためには邪念を振り払わなければならない。


 「まるで時価数千万の割れ物に触れるかのような気負いようじゃな。わらわを割っても罪にはならんぞ?」

 「私が君を割ってしまったら、職も、誇りも、信頼も、信念も、すべてを失ってしまう」

 「そんなにわらわに触れるのが嫌か」

 「そうは言ってない」

 「なら、やれ」


 滅多に見せないセレアの命令口調。こういうときのセレアは絶対に退かないことを私は知っている。
 私は勇気を奮い立たせ、セレアの背中から手を回した。胸の膨らみを避けてヘソの辺りを丹念に拭く。それでも、セレアの吐息は荒くなっていく。華奢な肉体が何かを求めるかのようにわずかにねじれる。時おり電流が走ったかのように震え、猫のような鳴き声が漏れた。
 セレアが私に寄りかかろうとしてきたとき、私は反射的にセレアから飛び退いた。


 「なぁ、そなたはわらわのことをどう思っているのじゃ?」

 「大切な生徒だ」


 振り向いたセレアの顔は今まで見せたことのないものだった。興奮していながらも全てを見通すかのような聡明な瞳を向けている。はだけた服を直そうともせず、私にひたり、ひたりと迫ってくる。私は不気味なものを感じて後ずさった。


 「それは、教師としてのお主の模範解答じゃろう? わらわが聞いているのは一個人としてのそなたの心中じゃ」


 「......私にもわからない。私は教師という色眼鏡でしか世の中を見ることができない」


 見たことのない表情だった。快感を謳歌しているようにも、悲痛で今にもつぶれてしまいそうにも見える。ここまで来てようやく私は理解した。
 あえて雨をかぶり、私の同情させ、庇護欲を刺激し、私が否応なしに彼女に触れなければならない状況を作ったのだ。セレアは私が極端に性的な要素を嫌うことを知っている。それでいてあえて嫌われるリスクを背負いながらも迫ったのだ。その目的は恐らく......私の冷静さを失わせ本心を引き出すため。
 誰の入れ知恵かは大体想像がついていた。いつも、私の論文を手伝ってくれる黒髪の学生だ。それ以外考えられない。彼女は一度、私に告白した。私はその時断ったのだが、その時のことをいまだに根に持っていることは感じていた。それがこんな形で実を結ぶとは......。
 私が追い詰められている。
 目の前にセレアは立っている。私の背後は壁。もう、逃げられない。


 「......わらわはな、お主のことしかもはや考えておらぬ。お主と少しでも一緒にいるためにこれまで努力してきたし、これからもそうするつもりじゃ。わらわがこの国を救うべく立ち上がったのはカルマポリスに居たかったからではない。お主と離れたくなかったからじゃ。お主はわらわが唯一安心できる居場所だからな」

 「そんな......私と一緒に過ごしたいがために、命を張ったというのか!?」

 「そうじゃ。友への恩だとか、同じ学校に通いたいだとか、行きたい場所があるだとか、それらは全て大義名分......お主を説得するためのオマケに過ぎなかったのじゃ。この国で唯一わらわの正体を知りながらも、人として接してくれたのがお主じゃ。真摯に寄り添い、わらわの悩みを聞いて、一緒に解決法を練ってくれたり、慰めてくれたり......お主を失う位なら、わらわは政府を相手取る覚悟すらある」


 セレアは哀しげに微笑んだ。その瞳に光は宿っていない。
 私はなにも言わなかった。いや、言えなかった。セレアの気持ちが重すぎて、何を言えばいいのかわからなくなってしまった。カルマポリスを相手取るとしたら、当然同盟国をも相手にすることになる。それをセレアが知らないはずがないのだ。
 私のために世界を相手に戦争を起こすと行ってのけたのだ。そして、セレアは私に隠し事をすることはあっても嘘はつかない。


 「人としての自我が強くなる度にそなたを求める心が強くなった。今の関係もとても幸せじゃが、残念ながらわらわは満足できぬ。もっとわらわの体を見てほしい。触れてほしい。抱き締めてほしい。愛でてほしい。そなたの体も臭いも気配も心も存在そのものも全部わらわのものにしたい。そしてわらわの全てをもって受け入れ、感じ続けたい。日に日に高ぶる感情にもはやわらわは耐えられなくなっていった」


 彼女の声に嗚咽が混じってきた。綺麗に拭いたはずの頬を、水滴が流れていく。雨水よりも純粋で美しく、綺麗な水滴が......。しかし、その愛らしい口から発せられるのは狂気の言葉だ。


 「わらわの正常な思考は失われていき、脳はバグとエラーで埋め尽くされていった。そしてつい先日、他の女子生徒をお主が褒めているのを見て、そやつを強く憎んでしまったのじゃ。一緒に勉強してなんの恨みもなく、タニカワとそこまで密着しているような仲ではないことはわかっておる......わかっておるにも関わらず、じゃ。感情はエスカレートしていき、やがて学校中のタニカワと関わった女子生徒を恨んだ。わらわが死ぬほど恋焦がれているのに、なぜあやつらの方がタニカワと話しているのか。褒められるのか。これまで感じたことのなかったドロドロとした感情がわらわを支配し蝕んでいった。そなたの目を奪う者はみんな敵にしか見えなくなった。わらわはこんなにも愛しているのになぜタニカワはわらわを見てくれない! 教職である以上仕方のないこととはわかっていても、心がそう叫ぶのじゃ! そなたをわらわだけのものにしたい。もう、限界なんじゃよ。四六時中こんな感情が渦巻いている。気が......狂いそうじゃ」


 セレアはそのまま座り込んでわんわんと泣きはじめた。どんなに絶望的な状況に立たされようとも、死の一歩手前になろうとも、決して涙を見せなかった彼女が涙している。私はただひたすら驚愕するしかない。


 「わらわよりも魅力的な生徒なぞいくらでもいる。そしてお主もまた魅力的。いつお主がなびくかわからん。想像するだけでも恐ろしい......怖い......わらわは、わらわはもう孤独になりたくない。わらわの理解者はお主だけなのじゃ。わらわにはお主しかおらんのじゃ......」


 セレアは私の足に抱きつき、私を見上げた。もはや、よだれも鼻水も涙も隠さない。獣のような泣き声を発しながら必死に私にすがる。


 「約束する。タニカワが生きている間、わらわは全力でお主を支える。いつしかお主が灰になろうと、わらわはお主を愛し続ける。何十年でも、なん百年でも、何千年でも! だから頼む!......わらわを......見捨てないで......」


 セレアは元々孤独な子供たちの魂が集まり意思を持ったものだ。だから、生まれついての甘えんぼで、わがままで、それでいてこの世への憎しみに満ちている。極めつけに兵器として産み出されたために、冷酷で非情で残虐なことも平気でできてしまう。
 もし私が選択を誤れば、セレアは抑圧されたものを世界へ向けてぶちまける可能性がある。そうなってしまったら最後、彼女の感情と記憶を消すしかない。彼女は全力で拒絶するだろう。押さえつけるために多くの血が流れるに違いない。そして何より、セレアの私への想いを小手先の手段で消し去ることはできない。


 「どうすれば......」


 いや、セレアがそんなことをするはずがない。彼女は命の大切さを学んでいる。人を殺そうとするはずがない。だとしたらあの言葉一つ一つが私を揺さぶるためのものなのか? それとも動揺して口走っただけなのか? わからない。
 私の頭の中で様々な考えが浮かんでは消える。何が正解で何が間違いなのか......。


 「今まではどうしていた......」


 告白を断った生徒の顔が脳裏に浮かんだ。セレアをよしとすれば、彼女に対する裏切りになる。
 セクハラを摘発した時のことも思い出した。あんな奴と同類にはなりたくない。
 生徒が教師と別れて自殺したという新聞の記事がフラッシュバックした。あの事件は教師に自制心があれば防げていた。あんな悲劇はごめんだ。


 「私は......」


 最後にとある小さな学校が思い浮かんだ。その学校にとある一人の男性教師がいた。彼は男子生徒から嫉妬されるほど女子生徒に人気な教師であったが、本人はそれに気づいていなかった。
 そしてとうとう、ある女子生徒に告白された。教師はその女子生徒を思いやり傷つけたくないと思うあまり、告白を受け入れてしまった。さらにそのあと、別の生徒からも泣きながら告白された。当時若かった教師はそちらにもいいえと言えなかった。教師は二人に黙ったまま二股を続けていった。バレないでくれと、叶いもしないことを願いながら。
 教師はダメだと思いつつも二人と密すぎる関係を築いていた。そしてある日、教師に嫉妬したとある生徒がそれに気づき、カセットテープに盗聴したのだ。さらにその生徒はテープを複製し全生徒に回した。教師が二股していて、その相手が生徒だったという事実が更なる信用の失墜に繋がった。
 終いには二股に気づいた一方の女子生徒がもう一方の生徒を刺し殺そうとする事件まで起きた。殺そうとした女子生徒は少年院に送られ、もう片方の生徒もその時のショックで引きこもりになった。
 事件を国にたいして揉み消した校長の対応の悪さもあり、生徒たちやその親たちは教師に失望し、転校していった。大規模な学校ならまだしも数十人しか生徒のいない学校でその事件は致命的すぎた。結局その学校は廃校となった。後に三人とも更生したものの、廃校となった学校は戻ってこなかった。
 それ以来、私は女子生徒に触れるのがトラウマになった。......盗聴された教師とは、私だったからだ。



 「うっ......うう......。わらわが......悪かった......自分のことだけを考えて......ヒック......そなたの心について何も知らず......知ろうとせず......心の傷をえぐって......ひどいことを......」


 セレアは私から離れ、顔に両手を当ててすすり泣いていた。パニックに陥り、考えていたことをすべて口に出してしまったらしかった。


 「今まで隠していて申し訳なかった。嫌な思い出だけど、話せて吹っ切れた。ありがとう、セレア。こんな話は君にしかできない」


 セレアは首を横に振る。彼女の顔が証明に照らされてキラキラと輝いた。湿り気を帯びている分、彼女はいつもよりも情緒的で美しかった。


 「タニカワ、正直に話してくれてこちらこそありがとう。もう充分じゃ......。お主の一番苦痛な思い出を話してくれた。そなたに心から信頼されている......それだけでわらわは幸せ者じゃ」


 セレアはゆっくりと服を整え、タオルを畳む。 私は呆然とリビングの壁際突っ立って、床を見つめることしかできなかった。その間一度も私と目を合わせなかった。気まずい時間が流れる。お互い一言も発せず、豪雨の音だけが部屋に反響していた。
 セレアが玄関のドアノブに手をかけたとき、ようやく私は動くことができた。衝動に身を任せて玄関へと駆ける。振り向くセレア。目を見開き、口をぽっかりとあけていた。そこに私は覆い被さる。抱き締めてから頭を何度も撫でる。何度も、何度も撫で続ける。


 「セレア、学校を卒業してからまたここに来なさい。その時は一人の人として君と向かい合うつもりだ」

 「ありがとう......ありがとうなのじゃ......」


 私の胸で泣きわめくセレアを、私はいつまでも抱き締めていた。

クロノクリスの復活

 目の裏に光が指した。とても長い間眠っていた気がする。左右の人差し指に指輪がはめられているのを感じる。妖怪の魂を抽出しその呪詛を宿したパラレルファクターと呼ばれる武器である。魂を抽出した妖怪は死ぬのでその遺体の処理が面倒だったのを思い出す。呪詛は人それぞれであり、要人が強力な呪詛を持っていたりすると拐ったあとのごまかしが大変だった。
 私はゆっくりと眼を開いた。目の前には地面に這いつくばる男の姿がある。私は無視して正面を向いた。暗く長い部屋の両脇に、黄緑色の液体が満たされた巨大なビーカーのようなものが延々と立ち並んでいる。そして、その中にはコードに繋げられている妖怪が浮かんでいた。


 「父上......これは一体どういうことですか! 胸が苦しい......体温が失われていく」

 「なるほど、あなたが成し遂げましたか。状況を見るに、相当追い詰められていたようですね。歓喜なさい。あなたは私の作る世界の礎となるのです」


 足元からバタリ、という音が響いた。私は転がるモノを足で払い除けた。邪魔だ。
 部屋の奥から異様な出で立ちの人物が歩いてくる。ペストマスクに黒いコート、長い黒髪。忘れるはずがない。私を死に導いた闇医師だ。


 「実の息子を犠牲に復活するとは......相変わらずクズ野郎のようだな、クロノクリス」

 「彼はおろかにも私を利用しのしあがる計画を進めていました。息子にあるまじき重罪です。......もっとも私に手を下したあなたよりはマシですがね」


 私は魂を操る呪詛を使えた。そのために以前解剖鬼に殺される直前、肉体を捨てて霊体となって戦い続けた。だが、それが災いして棺に魂を封印されてしまった。恐らくコレは私の棺をカルマポリス政府から奪還し、妖怪を数十人誘拐し、その肉体と魂から抽出したエネルギーで棺をこじ開け、自らの命を差し出して私の肉体を再生させたのだろう。私の息子なのだ。これぐらいはしてもらはなくては困る。


 「ふむ、見たところ私の手下はどうやら全滅したようですね。さすがです。あなたの能力を評して私の目的をお教えしましょう」

 「聞きたくもない」

 「私は、自らの魂を操る力を利用し人々の思想を統一し完全なる世界を創造することです。今、世界は様々な問題に悩まされています。差別、戦争、環境問題など......人々の心はバラバラな方向を向き世界は混沌としています。さらには、歪んだ世界が邪悪な存在作り出し、蔓延させ、平穏を乱しているのです。ですがご安心を。私の魂を操る呪詛をカルマポリス国の技術を用いて全国に拡散し、皆の魂を一つにまとめるのです。そうすれば人々はみなひとつの方向を向き、それに従わぬ悪霊は滅せられ、世界は正しき方向に生まれ変わる」


 私は拳を握りしめながら聴くペストマスクにこう、付け加えた。
 誰よりも強力な呪詛を持って生まれた。運命の歯車に翻弄されるのではなく、歯車を動かせる人として。なぜ私が選ばれたのか私にもわからない。だが、力を得た以上相応の望みを持つのは当然のことだ。それを叶えるために邁進する私を止める権利は誰にもない。
 私以外の一般人は、私と同じ土俵に立つことすら出来ないからだ。


 「その無用な殺意を抱くことを止め、私の傘下に下れば、新たなる世界にて子孫にまで及ぶ悠久の繁栄を約束しましょう」

 「貴様はふざけているのか?」

 「今の私にはそれができるのです」

 「そういう意味で言ったんじゃない!」

 「それは残念です。ですが今、あなたが何もせずこの場から立ち去り二度と私の前に姿を表さないと誓うのであれば、私は深い慈悲をもってあなたの非礼を赦しましょう」


 暗い部屋に場違いな拍手が鳴り響く。私は穏やかな笑顔で解剖鬼を見つめる。解剖鬼は嫌悪を隠すこともせず、言葉を発した。


 「人の命を弄ぶお前に似た同情の余地が全くない連続誘拐犯を倒してくれたことは嬉しいが......いや、貴様に対しては冗談でも称賛に値する言葉は使いたくない。お前は誰からも見捨てられ孤独に死ぬのがお似合いだ。今、この場で!」


 部屋が閃光に包まれたのと私が呪詛を発動したのは同時だった。


 「どうしました? 目の前がぱっと光ったと思ったら貴方が地べたを這いつくばっていた。これはいったいどういうことなのでしょう? わけがわかりません」

 「グッ......。重力の呪詛かっ! どうやら新しい力のひとつや二つ手にしたらしいな」

 「さて、服を整えなければ。こんな服装では恥ずかしい。天上に立つ以上、服装にも気を配らなければ」


 私は地面まで垂れる白いシャツのような独特な服を着ていた。シルクのような肌触りで大変よろしいのだが、これは普段着だ。私は地面に這いつくばり、すさまじい殺気を放っているそいつの目の前を通りすぎ、そばにあったクローゼットから白いガウンとストール、さらにマントを次々、羽織っていく。全て魔法具である。そして、両手の指にそれぞれ指輪を4個づつ装着する。これで左右10個のPFが使える。魂を操る力を持つ私だけに与えられた特権だ。


 「さて、これからあなたをどうしましょうか。どのような仕打ちになろうと私からの慈悲を貴方に拒む権利はありませんがね」


 私が彼を右人指し指で指し、軽く振り上げると、解剖鬼はすさまじい速度で天井に叩きつけられた。さらに指を上下左右に何度も動かす。その度に解剖鬼は嗚咽を交えながら、壁と天井を縦横無尽に跳ね回った。ただで死ぬ男ではないので執拗なまでに痛め付ける。壁と床がクレーターで埋め尽くされるころ、解剖鬼はなにも言わなくなった。
 そして最後に思いっきり壁に叩きつけると、やつは壁をぶち破り外に吹っ飛んでいった。


 「グハァァァッ!?」

 「ふむ、甦ったばかりな上はじめて使う力......加減が難しいですね」


 装備を整える。あれだけ念を押して叩きつけておいたのだ。例え生き残っていたとしても数日間は動けないはず。それに、この施設の周囲は森。そう簡単に捜索はできない。だが奴は医師。それも犯罪者でありながらチュリグ国を生き抜いたサバイバルの天才。不足の事態は十分あり得る。早急に止めを刺さなければ。
 一歩踏み出そうとしたとき、なにかが靴に触れた。


 「! これは......」


 キラリと輝く解剖用メス。恐らく私に吹っ飛ばされたときどさくさに紛れて投げたもの。あと数センチ私が前に出ていたら恐らく負けていた。メスが靴を貫き、足に触れ、猛毒が私を蹂躙する姿が脳裏に浮かんだ。圧倒的にこちらが有利だったとはいえ、極力接近を避けたことが幸いだった。なるほど、この戦いでなぜ以前の私が彼に敗れたのかわかった気がする。
 能力や手下の数や能力に慢心して冷静さを失っては勝てる相手にも勝てない。そして、私を追い詰めた彼の演技、判断力、そして事前準備。


 「学ばせてもらいましたよ、解剖鬼さん。これから神となる身としてあなたからの教訓、利用させてもらいます」


 私は先程解剖鬼が開けた穴からゴミを捨てたあと、この施設の構造がどうなっているのか確かめに行った。



ーーー


 「お主、大丈夫か!? ビックリしたのじゃ。まさか壁をぶち抜いて塔から飛び出してくるとは思わなかったぞ」

 「ふぅ、空を飛べる仲間をつれてきていてよかったよ。死ぬかと思った」

 「それで、この分だとあやつは復活したのじゃな......」

 「ああ。思考回路も実力も何もかも普通じゃない。正直人と対峙している気がしなかった。もはや私のような生半可な奴では戦いにすらならない。中途半端な兵力では死体の山が積み上がるだけだ。クロノクリスのことを熟知しているドレスタニア国やカルマポリス国経由で各国の実力者を集めたほうがよさそうだ」

 「わらわでも無理か?」

 「ああ。単騎での突破はまず無理だ。出直そう」

 「お主がそこまで言うのなら……わかった。今は退こう」

カフェ 練習ss

タニカワ「待っててくれたのか、セレア。もう9時近くだぞ?」

セレア「いや、一度家に帰ってからまた来たのじゃ。勉強のために自習室つかってるからいいじゃろう?」


 グーッ!


タニカワ「ん?」

セレア「あっ......すまん......」

タニカワ「フフッ、カフェでもよろうか」

セレア「わらったなぁ!まあ、おごってくれるなら許してやるのじゃ」

タニカワ「悪かったよ、セレア」

セレア「じゃ、行くかの」


 カフェへ


タニカワ「ブレンドコーヒー」

セレア「同じやつをお願いするのじゃ」

タニカワ「結構苦いけど大丈夫?」

セレア「あ、すまん、あとフレッシュ増しま増しシュガーつきで!」

タニカワ「素直でよろしい」

セレア「うぅ......」

タニカワ「照れてる顔もかわいいな、セレアは」

セレア「......ゴホンッ......所でタニカワ、お主眼鏡つけたのか」

タニカワ「ああ、ルビネルのすすめでね」

セレア「......へぇ......」

タニカワ「セレア、露骨すぎるぞ」

セレア「はっ、すまん」

タニカワ「最初の頃に比べて本当に人らしくなったな、セレア」

セレア「ああ、お陰で余計な苦労も増えた」

タニカワ「でも、いいこともあるだろう?」

セレア「まあな......おっ、タニカワ茶菓子も頼んだのか」

タニカワ「ああ、セレアお腹すいてただろう?食べていいよ」

セレア「ありがとうなのじゃ!」


 タニカワ教授がコップの縁を繊細な動作でつまみ、口元へと持っていく。そして、ゆっくりと香りを楽しんでから一口ぶん口に含んで飲み込んだ。湿り気を含んだ唇が照明に照らされ......


タニカワ「......?セレア、私に何かおかしいことでもあったかい?」

セレア「あ、すまん。ぼーっとしてたのじゃ」

タニカワ「そっか。かわいいな、セレアは」

セレア「こども扱いするでない」

タニカワ「ほら、早く食べないとクッキーが冷めちゃうぞ」

セレア「っ! 言われなくてもバリバリゴキュ」

タニカワ「いいたべっぷりだ」

セレア「カフェには似合わんがな。ペロッ」

タニカワ「フフ。でも私は好きだぞ?」

セレア「いちいちお主は......」

タニカワ「ん?」

セレア「いや、何でもないのじゃ」