PFCS 失敗談
早速注意
これは私の失敗からの考察であり、他の国作りに強要するようなことではありません。また、失敗原因の最大の要因は私自身の力不足です。
○国を作る上で
・設定の練り込みすぎ。
➡国は他人と交流する上で重要な要素となります。あんまり複雑に設定するとルールが多すぎて、他の国の人がいきづらくなってしまいます。
ルールの多い複雑な国は出来れば、交流用の国とは別につくりましょう。
いい例)ギャング精霊、ヒーロー・警察のことを調べておけば気軽にいけるアンティノメル。
悪い例)意味不明な設定を盛り込んだカルマポリス
・外交の手段を持たない
➡国王がいると外交に関して非常に有利です。また、密航人なんかもいると、犯罪者でも出入出来るきっかけができます。
いい例)国王の許可が降りれば犯罪者でも訪れられるドレスタニア
悪い例)誰に外交の許可をもらえばいいのか、どこから入国すればいいのかわからないカルマポリス
○Twitterにて
・疲れている状態で交流する
➡交流相手に迷惑をかける可能性があります。気力に自信のある人はいいですが、私みたいに虚弱な人は『残業した後に交流』などという暴挙はやめた方が無難。
いい例)万全な状態で待機するチュリグ
悪い例)二時間の残業の後、死にそうな状態で交流する私。
・長い時間交流する
➡交流が楽しいのもわかりますが、相手の負担にならないように考えて交流しましょう。
いい例)一時間近くでいい感じに交流を切り上げるレウカド先生。
悪い例)三時間近く相手を拘束した私
・知ったかぶりをしない
➡自分では交流相手の国に関して熟知したつもりでも、相手からみると全く理解できていない、ということが多々あります。少なくとも年表・キャラ・世界観は把握してから自信を持つようにしましょう。
また、公開されている情報がその国、そのキャラの全てではありません。そのこともよぉく考えて交流しましょう。
いい例)ほぼ完全に相手の世界観を理解してから交流するドレスタニア
悪い例)おぼろげな年表と特定のキャラに関して詳しいけれども全体的な世界観を理解せずに交流しようとして、さらに知ったかぶりをかましてブーメラン数十発に叩きのめされた私。
○キャラについて
・地雷を踏まない
他者のキャラを動かすのは大変良いことだと思います。交流が盛んになるし、原作者のわからなかったキャラの魅力が発見されるかも知れません。
しかし、絶対にやってはいけないルールというものがキャラには存在します。禁を破るためにはそれ相応の説明が必要です。
あらかじめ原作者に聞いておくといいでしょう
いい例)
絶対に本来なら協力しないであろう、計画に報酬である高級菓子無料券に釣られて、レウコトリカのために『仕方なく』協力するレウカド先生。
悪い例)
煙草の煙を吸って『理由なく』むせるレウカド先生。
監禁されても無表情で平然と脱出を試みるソラ。
いつのまにか傷のことを忘れ元気になっているガーナ王
これまで私のしたミスはざっとこれくらいでしょうか。絶対に他の人が同じことをしても失敗しなさそうなものも含まれていますが……。
とりあえず、相手を最大限リスペクトして交流すれば問題は起きない……ハズ。
そして何より一度したミスは次は絶対にしないように気を付けましょう。
幻煙のひな祭り ー移動手段ー とお知らせ
ドレスタニア王宮の中庭にて。
「やっぱり、これで移動するんですね……」
ソラは無表情ながら目の前の乗り物を拒絶しているような気がする。
「ホントこれ、なんというか……はぁ……」
バトーのため息は思ったよりも深かった。
「でも、乗り心地はいいですよね。まあ、いちいち尻を蹴らないと速度が出ないのはいただけないですが」
先生は目の前の生き物を凝視した。イナゴのような胴体に豚の頭を持つ異形の生物だ。翼がバルバルと音をたてながら震えている。大きさは豚ほどで、なぜか尻を叩かれるのが好きで、尻を叩くと加速する。
長距離飛行が可能で、それなりに最高速度も高い。馬乗りや立乗りをしての空中戦も出来る。いざというときは非常食として食うことも出来る、優秀な移動手段だ。
ドレスタニア性の鞍を背中につけることで、鞍に宿る加護の力で潮風などもろもろの自然現象を防ぎ、落下の心配もほとんどなくなる。
「あっちょっと!うわぁ、落ちる落ちる!」
ほとんど……はな。ショコラはその生き物に股がっているが、のりこなせずロデオ状態になっていた。
「くっ!おい、本当になんなんだ?この生き物。自分から尻を俺の蹴りやすい位置に持ってきて、すり寄ってきたぞ?」
「クライド、尻を蹴ってやれ。好かれるとより速く飛んでくれるぞ」
「あんまり好かれたくないんだけどなあ……」
━━お知らせ━━
いよいよ物語も佳境に入ります。前日談は終わり、これから本格的にノア新世界創造教に攻めこみます。無事人質を奪還し、賞金+ひな祭りお菓子セット+月二回お菓子無料券を手に入れられるかは、彼らの頑張り次第です。
現在のノア新世界創造教への強襲メンバーは
エルドランより
・解剖鬼
アンティノメルより
・ソラ
・ルーカス(控え)
・シュン(控え)
リーフリィより
・クライド
・クォル
・バトー
ライスランドより
・先生
・オムビス(控え)
ドレスタニアより
・ショコラ
となっています。この時点でプロキレスオルタの試練をパス出来そうなくらい強いメンバーです。
しかし、味方はやはり多いに限ります。この他に出してほしいキャラがいればコメントかTwitterで連絡をお願いします(ただ、チョイ役になってしまうかも知れません。ご了承下さい)。また、ひな祭りシナリオに関するご意見やご要望もお待ちしております。
例)戦闘描写を多目にして!
例)キャラクターの背景まで書いてほしい。
でも反映できるかどうか不安……
幻煙の雛祭り ━前日━ レウカド先生との別れ PFCSss
「はぁ。疲れた、まさか一日でここまで働かせるとはな。あんたも人使いが荒い」
ようやく、自分の経営する病院に戻ったドクターレウカドは紫煙を吹きながら大きなため息をついた。実は今回の作戦に参加するメインメンバー全員の診察をさせたのだ。
能力者の中には高度な幻覚を使う者や、自分や他人そっくりの分身を作り出す者もいるらしい。彼はそういった類いの術に詳しかったのと、元々医師として優秀だったために、活躍して頂いた。
「だが、充分な報酬だろう」
アンティノメルの特産品、リーフリィの魔法具、ライスランドのゆで玉子(おみやげ用お得パック)、ドレスタニアの出店で買った雑貨等々。
全て私のおごりだ。付き添い代、診察料、アンティノメルの説得成功報酬金……。ドレスタニアに支援金をもらっていたとはいえ、決して安いものではなかった。
「ああ。あんたのお陰で安心して明日を迎えられる」
ドクターレウカドは煙菅に口をつけ、大きく吸った。そして、まだ見ぬ明日に思いを馳せているかのように、天井に向けて息を吐いた。よほど明日が楽しみらしい。
「だが、契約期限は今日の夜までだ。まだ時間がある」
「おいおい、あんたもかなり疲れてるだろう?明日に備えて寝た方が身のためだ」
私はグフフフフフッと、自分でも気味の悪い笑い声を立てた。ドクターレウカドは何か嫌な予感でもしたのか、目に見えて身震いした。
「少し、別室を借りてもいいか?着替えたいんだ。着替えは用意してあるが」
ドクターレウカドはなぜこのタイミングで着替えるのかわからない、といった顔だった。
彼に案内され、
━━
ズーーーーーー!
ジッパーの外れる音。
バキッ
バキバキバキバキッ!
折れてはいけないものが折れる音。
ヌチヌチヌチヌチヌチヌチヌチヌチ、ズルン!
何かが出てくる音。
ブチィ!
ひも状の太い何かが切れる音。
━━
「明らかに着替えの時の効果音じゃないが、大丈夫か?」
「ああ、もう済んだ」
「ん?なんだ、その声。あんただれだ?」
「私だよ」
私は部屋のドアノブをひねり、開けた。
ドクターレウカドはこちらを見ると、最初に瞳孔が縮まり、繊細な人指し指をうっすら開いた口に当て身じろぎをした。ただでさえ白い肌からさらに血の気が引き、生きとし生きるものとは思えない。
さらには一歩足を引いた状態で固まってしまった。
「……は?」
「私だ」
「……なっ!?えっ!はぁ!」
私は部屋から一歩踏み出した。ドクターレウカドは二、三歩後ろに下がると、薬品棚にぶつかった。ガシャガシャとガラスのぶつかり合う音がした後、数個ほど、小瓶が棚から落ちて割れた。
「どうした?初対面で私のペストマスクを見たときよりもずっと驚いているじゃないか。フフッ……フフフッ!」
私はゆっくりとドクターレウカドの頬に手を伸ばした。ドクターレウカドはあまりのショックに動けなくなっているらしい。ガタガタと震えるだけで抵抗して来なかった。
「あんたの能力!そういう使い方もあるのか!」
私の指先からドクターレウカドの頬の温もりを感じた。数年ぶりに『直接』人膚に触れた。絹のようなさわり心地がなんとも心地よい。このまま撫で回したくなったが、ドクターレウカドの恐怖とも驚きとも言えない、奇妙に歪んだ顔を見て、私は満足してしまった。
このドクターレウカドの顔は私だけのものだ。
私はドクターレウカドに背を向けるとコートのポケットから各国の滋養強壮剤を調合した液体の入った小瓶を取り出した。
「どうせ明日にはお前はとられる。今日一晩、付き合ってもらうぞ!ハハッ!アハハハハハッ!」
私は腹を抱え勝利の笑い声を解き放った。
「まさか、お前がひな祭りにノア新世界創造教に乗り込む真の理由は!」
「私の古郷でひな祭りを過ごしたいということ、恋人をそこで殺されたということ。……今回の計画の何ものにも変えがたい理由だ。だが、それ以外にもいくつかきっかけがあってな。その一つがコレだ!」
「アアアア!!?」
その後、ひな祭り当日までドクターレウカドを見たものはいなかった。
ひな祭りの外側 ━ハサマ王編 下━ PFCSss
ハサマ王はそこら中に雷を少なくとも10発以上は放った。だめ押しとして、台風を引き起こす。青かったそらは一瞬にして曇天と化した。
エアリスは数発雷に被弾するも離陸すると同時に、その衝撃でカマイタチを発生させ、台風を相殺した。周囲にあった高さ数メートルの木が何本も倒れる。
「そんな機能まであるんだね!凄いね!」
ハサマ王は目をキラキラさせながら天から雷を乱射する。
「ふん。もうこの程度雷、見なくてもかわせるわ」
飛行するエアリスは違和感に気づく、
「あれ?わらわ……雷に囲まれている?」
ハサマ王は雷を数十発に増やし事前に包囲して撃ち込んだのだった。
さらに追い討ちに巨大な雷を三発ほど放つ。雷に焼かれた運の悪い木は、ずたぼろに引き裂けていく。
「神でもね!偉いわけではないんだよ!」
エアリスはハサマに向かってミサイルを二発ほど放つ。しかし、大きな雷を避けようとした瞬間、急激に減速し、数十発の雷に被弾。
そんな彼女に対し、ハサマ王は追い討ちに何発も何発も何発も何発も大小様々な雷を当てる。
「神は世界を導く権利がある!義務がある!責任があるのじゃぁ!」
液状になりつつもハサマに向かって高速で飛行、手をひも状にして掴みかかった。
自らとは逆の方向にあられとカマイタチを発生させたうえ低空飛行に移る。前から迫り来る木と空気の刃、凍てつく冷気に最高速でハサマにぶち当て続ける。
パーカーを無惨に裂かれ霜に覆われても気にせずにハサマは笑う。
竜巻で液状化した巫女を跡形もなく引きはがすと
「権利も義務も責任もないよ!いいんだよ頑張らなくて!ハサマが!できるだけ何とかするから!」
ハサマ王は両手の手のひらを合わし、ゆっくりと開いていく。なにもなかったはずの空間に、恐ろしい量の雷を収束したエネルギーの塊が現れた。ハサマ王が手を前にかざすと、光の球体は電気で軌跡を描きつつ、一直線にエアリスに飛んだ。
エアリスは最高速で避けようとするも、雷による過熱とジェット飛行による過冷却による再生機能不全が起きる。飛行ユニットが再生出来ず、半液状化した状態で雷を受けた。
胸部から上は再生したものの、身体は再生出来ず、液体のまま、甦らない。
「威力も何発撃つかも変えられるんだ!すごいでしょ!」
そう言いながら胸部から下だった液状に強い雷を13発撃った。
『下半身だったもの』が形態を維持できず、気化する。
「わらわは『平等を望む人々の信仰』を受け、神に…にに匹敵する力を得ええええたのに。こんなの不……平等」
ハサマ王はいつのまにか目の前で屈み、視線を合わせる。
「不平等でもね、ひとまずは受け入れられないと駄目なんだよ。それに、平等はね、正義とはあまり呼べないんだ」
小さな子供に優しく言い聞かせるように残酷な言葉を紡ぐ。
「びびび平等はにする子は……いい子、いい子にはご褒美。不平等は悪い子。悪い子には……おし…おき。お主はどちらだ……」
優しく微笑みながら「どちらでもないよ」と返すと、残りの部分へと指先に収束させた眩い閃光を放った。
エアリスは分子レベルに分解され、以後再生することはなかった……。
━━
その後のこと
「王、なんですかそのパーカーの残骸は!」
「ちょっと機械の巫女さん消したからね」
「買い換えないとやばいよこれ!」
「何故私達に伝えなかったのですか?王………」
「だって皆寝てたし護りたかったから」
『有難いのですが王、とにかくパーカー変えましょう』
この後買い換えたついでにストックを増やした。
ひな祭りの外側 ━ハサマ王編 上━ PFCSss
━━時系列不明━━
数百人は入れる礼拝堂。その祭壇に座り、もくもくと読書を進める人物がいた。その背後には、高さ十数メートルにもなる巨大な壁画が描かれている。
壁画に描かれた人物の胸像は、酷く異様なものだった。その人物はげっそりとした顔つきで眼球がなく、眼窩から血が滴っている。髪の毛に見えるものはよくみると血液であり、見るものを不快にする。
これこそがノア新世界創造教で数千人が信仰する、創造神である。
祭壇とは反対側の扉から息を切らした白衣姿の男が入ってきた。木製の机の間を通り、祭壇にだどりつくや否や、早口でこう言った。
「教王様!只今カルマポリス付近をハサマ王が飛行中との情報が入りました。真っ直ぐ我々の研究施設を目指しているとのことです」
祭壇で本を読んでいた人物がゆっくりと顔を上げる。……あくびを響かせながら。
「ノア新世界創造教とあの研究施設の関係がばれれば、確実にハサマ王は我々を消しにくるだろう」
「いかがいたしましょう?」
「……エアリスを出せ」
教王クロノクリスは数百万円(日本円に換算)はするペンで研究者をつついた。
「エアリスですか?!我々の最終兵器ではありませんか!」
「あの研究施設がばれればどのみちエアリスの存在は明らかとなる。いち早く研究施設を破壊し、我々が関与しているという証拠を隠滅させろ」
慌てていた研究者は、その言葉を聞いてすぐに後ろを向いて走り去っていった。
「ふう。これで読書を再開できる」
━━
「確かここらへんだったはずなんだけと」
ハサマは作り上げた竜巻で自らの体を浮かせ、天空から地上を探索していた。
アンティノメルからカルマポリス国西に謎の地下研究施設があるという連絡があったのだ。━━捜索に行ったカルマポリス軍の小隊が行方不明という情報も含めて。
しかし、実際にハサマ王が出向いた先に待ち受けていたのは、ひたすら続く森林地帯だった。
諦めて地上を探索することにしようか迷った時、彼女は『飛来』してきた。
「おお!ハサマ殿、こんなに早く出会えるとは思わなかったぞ!」
見た目はウェディングドレスを着た少女だった。セミロングの銀髪に、アルビノ以上に白い肌を持っている。
そして何より、ウェディングドレスの背中に彼女の身長より頭ひとつ大きい、黒い三角形の構造物がくっついていた。下からボンベのようなものが左右一つずつついており、そこから勢いよく炎が吐き出されている。
ハサマ王はそんな異質の存在に全く動ずることなく返事をした。
「割と会えるよ!君だれ?」
「えっ……と、エアリスじゃ!」
少女は、無邪気に答えた。しかし、瞳孔のない白い目は全く笑っていない。
「君、そこを退いてくれないかな?ハサマ、急いでるから」
「ここにはわらわにとって大切なものを隠しておるのでな」
突然、彼女の背中の物体からミサイルが二発発射された。ミサイルは森のど真ん中を向かっていった。ハサマ王はその場から全く動かず雷を落とした。
ミサイルは目的地に着弾する前に空中で飛散した。
「へぇ、そっちにあるんだ。君の大切な場所。どんな場所なの?」
「いうなればわらわの実家じゃ。実家にある恥ずかしい本を発見される前に始末する、というのはお主の国でもあるであろう?」
さも当然、というような顔で少女は言った。ハサマ王は不思議そうな顔で答える。
「でも、普通は家ごと爆破しないよね?」
「まあ、具体的には研究データじゃな。わらわは平等が好きで差別が嫌いでの。短絡的じゃが、とりあえず民族差別の蔓延る国を一通り潰そうと思って、戦力増強していたのじゃ。発見されると他の国に対策されてしまうのじゃ」
「んー、うちの国民にあんまり変なことしないでねー?」
ドスの効いた笑顔に対して、エアリスもケラケラと笑う。
「わらわはお主の国に手出しするつもりはないぞ。チュリグは公平な国だからの」
「鬼は大体の子が怖がってるけど。戦闘以外は」
「アンティノメルとかキスビットに比べたらそこまで深刻じゃないからの。後回しじゃ」
「後回しということはそのうち来るんだよね?」
エアリスは子供がイタズラがばれて、もじもじするような仕草をした。
「まあ、差別を改善しないならのぉ。それもいたかなしか」
「それなりに改善してるんだけどねー。中々ね、消えないんだよ」
「そうか。まあ、以前に比べたら大部マシじゃし、大丈夫かの。因みに邪魔立てするのであれば容赦しないとからな?」
「え、するけど?」
ハサマ王はエアリスに対して、当然といった顔で、速攻で言葉を返した。
それに対してエアリスも全く動じず、
「やはりそうか。なら、この場でやりあうか?丁度お主の実力も気になっていたところじゃし。今までの戦いでは、お主は全く力を出していないから想像もつかん。わらわの悲願とは別に興味があるのぉ」
突如、エアリスの腕が液状に変化し、右腕がガトリングガン、左腕がチェーンソーに変形した。
それに対してハサマ王は「はい、どーん」と微動だにせず、天から雷を三発うちはなった。
雷はエアリスに直撃したものの、僅かに怯んだだけで彼女は反撃に出た。ガトリングガンを乱射しつつ、チェーンソーを振り上げてハサマ王に突っ込む。
「粉々になるんじゃッ!」
ハサマ王は飛行するときと同じ要領で竜巻を発生させ、弾丸を弾き返した。さらにその竜巻をエアリスに向かって飛ばす。
エアリスの体に弾丸が食い込んだものの、彼女は竜巻もなにも気にせずハサマ王に向かってチェーンソーを振る。いつのまにかガトリングガンであった右手もチェーンソーに変化していた。
「弾丸が効かぬなら物理でごり押すのみじゃ!」
「なるほどね。でも雷はね。こんな使い方も出 来るんだよ」
電撃をまとった手刀がエアリスのチェーンソーとぶつかり合う。両者は打ち合いながらすさまじい速度で天空を舞った。ハサマ王の雷の余波により、森のあっちらこちらに落雷の跡ができる。
森からバタバタと大量の鳥が飛び出し、ハサマ王らと反対の方向へと逃げていく。
その間にも二人は半径数キロメートルはある森を飛び回っておる。
「これではどちらが天か地かわからぬな」
ハサマ王が地上にいったん着地する。と、同時に小形のクレーターがハサマ王を中心にして広がった。
続いて上からエアリスがすさまじい速度で切りつける。ハサマ王は両手でチェーンソーを受け止めると、地面はさらに沈下し、クレーターが二重になった。
ハサマ王はあどけない顔でニヤリと笑い、
「はい、これでおあい子」
着地する直前に僅かに貯めた雷を放出する。六発もの雷がハサマ王の掌から解放された。
雷は爆音と共にチェーンソーをぶち破り、エアリスの頭部に直撃した。彼女の頭部は銀色の液体となり、吹き飛んだ。しかし、数秒後にもとの形に復元する。
「すごいね、丈夫だね。復元までできるんだ」
「まさか一瞬で体が吹き飛ぶとは。それにしてもウルサイ技じゃのぉ……」
幻煙の雛祭り ━前日━ ドレスタニア編 PFCSss 8
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⬆この話の直前の出来事。
「メリッサー!どこですかー!メリッサー!」
クライドはあきれて物も言えないようだった。
余談だが彼は身分を隠しているが王族であり、その天賦の才能を余すことなく引き伸ばしてくれたのが、皇族ならではの剣や魔法の稽古であった。……という冗談のような噂を耳にしたことがある。
「メリッサー!あ、旅のお方!メリッサを見かけませんでした?私と同じくらいの身長で、メイド服を着てて。大切な方々と待ち合わせをしておりまして、その場所をメリッサに話していたのですが……」
「多分、その『大切な方々』って俺たちのような気がするんだけど」
ドレスタニアで今目の前にいる、皇族服の頼り無さすぎる青年(眼鏡がズレ落ちそうになっている上、見るからにワタワタしている)と待ち合わせしていた。王宮の大広間で、だ。
そして彼は時間ピッタリに『偶然』現れた。王宮内で恐らく迷子になっているのだろう。
……全力疾走していたのに汗ひとつかいてない。
「アレッ?私が待ち合わせしていたのは鳥頭の方なのですが、もしや!あなたが正体なんですか?」
「いや、俺はクライド。全くの別人だよ。多分君の言っている人は俺のとなりにいるよ……」
ようやくこちらに気づいた。
「おお!外国の方お久しぶりです!ショコラ・プラリネ・ドレスタニアですよ!覚えていますか」
ショコラは私の手をいきなり握ってきて、ピョンピョン跳び跳ねた。
まるで数年ぶりに親友とあったかのなような大袈裟な喜び方だ。因みに会うのはこれで二度目である。
「皆さん有名人ばかりですねっ!」
ショコラはこの場にいる一人ずつ、ショコラの両手で掴むと過剰なまでに腕を上下に振り回し、握手していく。
━━ドクターレウカドは作り笑顔をしようと顔をひきつらせながら、
━━ソラはいつもの無表情で、
━━クォルは負けず劣らずショコラの手を振り回し、
━━クライドは割と快く
━━バトーは無視されなかったことにほっとした様子で
━━ライスランドの先生は華麗に力を受け流しながら
握手に応じた。
「あれ?噂によるとライスランドのオムビスさんもゆで玉子を持参すると聞いたのですが?」
なぜ、ゆで玉子を強調するのか全くわからなかったが
「オムビスは作戦当日に合流する」
と最小限に答えた。ショコラは少しにガッカリした様子だった。「温泉卵……」とぼそりと呟いた気もするがきっと気のせいだろう。
「今回初めていらっしゃった方も多いようですね!我が国へようこそ!私が国の案内を……」
私は慌ててショコラの言葉を遮る。
「まっ…また今度にする。今日は予定がッ」
ショコラは全くそれを気にせず、満面の笑みで言い切った。
「案内をしますねッ!!」
ショコラは並みのダンサーよりも軽快なステップで、見事に王宮の出口とは反対側に案内してきた。
「すいません。出口はこちら側ですよ」
ソラ、ナイスフォロー!
「あれ、そうですか?おかしいですね。この城で地殻変動でもおきたのてしょうか?」
バトーが不安な顔つきで私に聞いてきた。
「ショコラさんに案内を頼むとそんなに大変なのか?まあ、今でも十分その片鱗は感じ取れるが……」
「とりあえず、ショコラに国を案内させると、いつのまにどこかに消えて終わりだ。運が良ければ日付が変わる前に発見できる」
「何でそんなことを知ってるんだ?」
「一度それをやられて……その後王宮の資料を調べまくった」
「あれ?ショコラさん、どこに消えたのでしょうか」
青い胴着を身にまとった先生が首をかしげていた。
私は静かに舌打ちをした。
「遅かったか……」
どこか遠くからショコラさんの絶望的な歌声が聴こえてきた。
「♪明るい国だよドレスタニア~♪僕は王さまのショコラプラリネ~♪でも一番はガーナお兄様~♪強くてかっこいいガーナお兄様~♪」
はっ吐き気がっ!
私が少し揺らめいたのをドクターレウカドは見逃さなかった。
「おいおい、大丈夫か?あんたは今日一日休みなしで、各国で戦いつつ、俺と一緒に検診までやっていたんだ。いつ疲れが出てもおかしくない。俺でよければ肩をかすぞ?」
「ちっちがうんだドクターレウカド。あの歌声が単に苦手なだけだ」
「苦手?」
私はなんとか同業者の肩を借りて、体勢を保った。
「みんな、手分けしてショコラさんを探すぞ。ここに王宮の見取り図がある。一人につき一枚ずつだ。一人一人探索するエリアを決めて、しらみ潰しで捜索する。メイドがいたらそいつにも手伝わせろ」
私は自分の喉を片方の手で隠す。もう片方の手にもったメスを喉奥に突き刺し、グリグリした。その様子にこの場にいる全員の顔がひきつる。
『これで私は通常の数倍の声量で話せるようになった!私はここで指示を出す!』
「便利ですね、その能力」
ソラがポツリと言った。
『私の能力はメスで傷をつけずに体を開いて、手術して、閉じることが出来る。ただし、直接メスで触れなければいけないから、こういうグロテスクなことになる。とりあえず、全員捜索に移ろう!』
今回は声帯に直接リーフリィ産の魔法薬を塗った。以前にショコラに使った小技だが……思い出したらまた吐き気がッ!
このあと30分ほどかけて捜索が行われ、町中にて、手土産を沢山持ったショコラさんが発見された。その時の解剖鬼の指示は異様に的確な上、声に必死さがあらわれていたため、他のメンバーは以前に何があったかを察し、恐怖した。
━━
29.3.10 以下の部分を修正しました。
王宮内で恐らく迷子になっているのだろう、走り回った代償として大粒の汗が額から滴り落ちている。
補足:ショコラのスタミナは化け物クラスです。数百メートル走っても全く息切れしません。
竜の試練 ー 老人編 ━
俺にはハサマ王のような圧倒的な観察力はない。ガーナ王のようなカリスマ性もない。オムビスのような勇気も、クォルのような力もない。
精霊の加護も雀の涙程。そんな力が竜に通じる訳がねぇ。
これを知恵と努力と策で逆転するのが俺だッ!
━━以下、ガーナ王の試練より引用
「諦めるのは数十年早いですぜ、王の旦那」
突然、竜は口を閉じて激痛に苦悶の表情を浮かべた。ガーナの後ろに現れた老人は、指から光の筋でようやく視認できるほどの糸を踊らせ、線のようにビシリと竜の身体を縛り付ける。竜は驚きと痛みに耐える呻き声をあげた。
「貴様……!いつの間に!?」
老人は帽子をスッと正位置に正すと、竜にもガーナにも向き直ることなく、空を見上げて呟いた。
「卑怯ですいませんねぇ。だが、戦いにおいて油断なさるのは、いくら神とはいえ迂闊だ。勝機は逃さん。呪うならテメェを呪いな、神さん」
老人が手を広げ、交差させるように紐を引っ張ると竜の身体を纏う硬い鎧の甲殻がバキバキと割れていった。