フールのサブブログ

PFCS 用のサブブログです。黒髪ロング成分はあまり含まれておりません。

ルビネルとセレアの死闘願い PFCSss9

ルビネルの捜索願い PFCSss

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/28/091650

ルビネルの手術願い PFCSss2

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/31/172102

ルビネルの協力願い PFCSss3

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/01/083325

ルビネルへの成功願い PFCSss4

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/02/153244

ルビネルの豪遊願い PFCSss5

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/03/075127

ルビネルの修行願い PFCSss6
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/04/224102

ルビネルの施行願い PFCSss7

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/07/175035

ルビネルの決闘願い PFCSss8
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/14/220451



⬆こちらのssの続きになります。

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Self sacrifice after birthday 9


 私と老人そしてガーナはそれぞれワイバーンにまたがり、固唾を飲んで向かい合う二人を見守っている。

 全員の視線の先には二人の少女。片や黒髪に黒コート。片や銀髪に白いワンピースに、ランドセル型の飛行ユニットが目をひく。

 老人はカルマポリス呪詛式通信機を取り出した。私たちもそれに倣う。老人のつれてきた部下たちによって、二人の様子が脳内に直接送られてきた。視界内の物体を正確に追える妖怪と、その妖怪の視界を周囲の人間に共有する精霊の加護だ。

 「二人とも、出来れば俺たちの視界の範囲で戦って下せぇ」

 二人は頷くとそれぞれ臨戦態勢に入る。セレアの右腕が銀色の液体と化し、全く別の形に変形していく。最終的にセレアの右腕はガトリングガンに変形した。銃口から無数の弾丸が射出される。
 実は、セレアの体は液体金属で出来ている。全身のうち三ヶ所を自在に変形出来るのだ。今のところ判明している変形出来る部位は、肩から先と太ももから先、そして背中だ。
 ばらまかれる銃弾に対して、ルビネルは縦横無尽に空中を動き回り避け続ける。追撃に撃たれた二発のミサイルもペンで易々と迎撃した。

 「手術前に比べて動きが明らかに良くなっている。動体視力や判断力もかなり上がっているようだ。しかも肉体が鬼と化しているお陰で呪詛も無理がきくらしいな」

 冷静に分析するガーナの声が無線機から聞こえた。

 ルビネルはさらにエアリスに接近すると、ボールペンを乱射する。セレアは避けようとするも、ボールペンの追尾能力が高くなかなかふりきれない。

 「ほぉ、少しはやるようじゃの?」

 セレアの背中の飛行ユニットが瞬時に巨大化した。セレアを優々と隠す程の大きさだ。三角形の飛行ユニットは、足元にバーナーを装着した黒い凧のように見える。

 「あれは何ですかい?」

 「セレアが高速飛行するときの形態だ。速度は速いが減速しにくいのと、曲がりにくいのが欠点だ。また、高速飛行中にダメージを受けると停止せざるを得ないという弱点もある。液体ではあるが金属だ。過冷却されると凍ってしまう」

 ふむ、というガーナ王の声が割り込んできた。

 「随分と詳しいのだな」

 「半殺しにされたから研究した。本人と一緒にな」

 セレアは体をのびーっとして、日向で横になっている猫のような姿勢になった。万歳をして顔を上に向けている。飛行ユニットが猛烈な業火を吹き出したかと思うと、セレアは私の視界から消えた。いつのまにか、飛行するルビネルの後ろをとり、ガトリングガンを連射している。
 ルビネルはジェットコースターが如くシャトルループを決めてセレアの背後を取りに行く。負けじとセレアもルビネルの背後を狙い続け、両者きりもみしながら空中を高速移動する。だんだんとセレアとルビネルの距離が縮まり、ルビネルが追い詰められていく。

 「まるで鳥獣の戦いですぜ。人型の妖怪がする戦い方じゃねぇ」

 「ペンだけでよくぞここまで出来るものだ」

 「片手だけしか使ってないな……。セレアは背中の飛行ユニット含め、全身のうち三部位を変形出来るはずだ」
 
 とうとうセレアとルビネル、追うものと追われるものの関係が逆転した。急旋回でセレアの背後をとったルビネルは、無防備なセレアの背中にボールペンを投げ込んだ。
 セレアは飛行形態を解くと、ガトリングガンを剣に変え、ボールペンを叩き落とす。
 呪詛により、強度が増したボールペンは簡単には壊れない。弾かれたボールペンは完全に破壊されるまで、まるで磁石に引きつく金属のようにセレアに食らいついていく。

 「右腕だけでペンの嵐を防ぐとは」

 ガーナ王の言葉に私は頷く。実際にはガーナは他のワイバーンに乗っているので、彼から私は見えていないが。

 「当然だ。セレアは片腕だけでソラやライスランドの先生、クライド、バトーの二刀流……他にも様々な達人たちとわたり合っている」

 ボールペンだけでは埒があかないと考えたのか、とうとうルビネル本体がセレアに突撃した。セレアの頭上から回転しながら強烈な裏拳を叩き込む。
 さすがのセレアも左手を使わざるを得なかった。肘を曲げて、ルビネルの裏拳を受け流した。ルビネルは攻撃の手を緩めず、受け流された反動を利用して、後ろ蹴り、回し蹴り、横蹴り、と流れるようにラッシュをかける。
 必殺の一撃はコンクリートすら砕くとされる鬼の筋力。そして、それをマッスルスーツのように補助する全身に隠されたペン。
 蹴る瞬間には足に仕込んだペンを操作し、蹴る向きに動かすことで攻撃の速度を加速させている。運動量は速さの二乗に比例するから、加速による影響は手数だけでなく、打撃の威力にも貢献している。クォルの大剣を受け止めるセレアの剣でも防ぐのは容易ではないはずだ。

 「鬼の再生能力で呪詛の肉体への負担を無視出来るし、逆にペンを操る呪詛で打撃を強化できる。予定通りですぜ」

 異なる二種族の力を同時に、それも高出力で、扱えるものなどこの世には殆ど存在しない。単純な戦闘力だけで言えば、かなり上位の存在になったはずだ。もっとも、その代償が大きすぎて釣り合っていないが。

 「セレアの方もルビネルの動きを読み、力を受け流し最低限の労力で攻撃を防いでいるな。お前の戦況報告によれば、セレアは回復力にものを言わせて防御などせずに相手を叩きのめすとのことだったが……」

 「数々の強敵と戦ったことで学習している。前と動きが同じなわけがない」


 じりじりとセレアが押されていく。両手をフル活用してボールペンと拳を受けつつ、剣撃をくりだしているようだが、このラッシュはセレアにも厳しいらしい。前半とは売ってかわってルビネルのペースだ。

 「ふむ。打撃の強さは鬼の中でもトップクラス。じゃが付け焼き刃の格闘技術に加えて、近接戦闘そのものの経験が浅いから生身で言えば、ソラや紫電といったプロには一歩及ばない。呪詛は汎用性が高い上にそれなりに強力じゃが、EATERやハサマといった規格外の強さではない。二種族の力を合わせて、ようやく強者に勝てるか程度の実力じゃ」

 不穏な通信が入った後、セレアは両腕を採掘機についているドリルのような形に変形させ、ダメージ覚悟で突進した。なんとか避けたものの、突然の出来事にルビネルは一瞬無防備になった。その隙をつき、セレアは腕をさらにヒモのように変形させルビネルの体に巻き付ける。

 そのまま、高速飛行しつつ前方から後方に向けて暴風の呪詛を発動。向かい風にルビネルを叩きつける。かまいたちがルビネルの背中を切り裂いていく。
 そして止めと言わんばかりに、スクリュードライバーの流れに持ち込んだ。海面にルビネルが打ち付けられる。あの早さでは地面に叩きつけられるのと同じだ。普通の妖怪ならまず生きてはいないだろうが……


 「……お主はよく頑張った。武芸者でもない、一般人であるお主が短期間で人としての限界を越えた。素晴らしいと思う。じゃがな、もうわかったじゃろう?お主がこの期間でいくら努力しようと一線を越えることは出来んのじゃ。あと二年、恵まれた師に従事すればよかったものを……」




 「本当にそうかしら?」




 海から水柱が建った。その頂上から人影が一直線にセレアヘ向かっていく。

 ルビネルは拳を腰まで引いている。ためをつくり、必殺の一撃をセレアヘ食らわせるつもりだ。
 突如として浮上したルビネルにセレアは少し驚いている様子だ。両腕を交差して防御の構えに移る。
 
 ルビネルの拳はセレアのガードに阻まれてしまった。

 「おしかったのぉ、ルビネル」

 「いいえ?」

 ルビネルの拳がセレアのガードをぶち抜き胸部を打った。その瞬間、無数のペンがセレアに突き刺さる。
 腕を失いガードの出来ないセレアに対して、拳とペンの連打が襲いかかる。セレアの肉体がボロ雑巾のようにほつれて、原形を失っていく。

 「及第点……じゃな」

 ルビネルがラッシュを止めたときには、セレアは宙に浮かぶ銀色の水滴と化していた。


 「ほう、あれをくらってまだ戦えるんですかい?」

 老人の疑問にガーナ王の丁寧な解説が付け加えられた。

 「鬼に伝わる技術であるパンプアップだ。全身の筋肉に血流を送り込むことで、一時的に筋肉を膨大させる技術。それによって衝撃への耐性が増加する。さらに背中に仕込んだペンを操作することで、海面に直撃する寸前で速度を弱めた上、受け身をとった。咄嗟にしてはなかなかの判断力だ」

 ガーナ王の言葉に少しだけ安心した気がした。これなら、ルビネルは敵を倒して帰って来るかもしれない。

 「相変わらずえげつない汎用性ですね。ボールペンの呪詛。まあ、セレアがどっからどう見ても本気を出していなかったのが気になりやすが、まあいいでしょう。俺は自信をもって彼女を推しますぜ」

 老人も満足げに笑った。彼らの様子を見て、私はようやく覚悟を決めた。

 「ルビネル、今の気分はどうだ?」

 「……落ち着いてる。全ての感覚が研ぎ清まされて、全身が闘いに対して、適応しているような気がする。初めての感覚だわ。もう、体の動かしかたや特性も理解した。次はこんな無様な闘い方はしない」

 「そうか……。お前たちがそう言うのなら……私も腹をくくってルビネルを送り出すことにしよう」

ルビネルの決闘願い PFCSss8

ルビネルの捜索願い PFCSss

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ルビネルの手術願い PFCSss2

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ルビネルの協力願い PFCSss3

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ルビネルへの成功願い PFCSss4

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ルビネルの豪遊願い PFCSss5

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ルビネルの修行願い PFCSss6
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ルビネルの施行願い PFCSss7

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こちらのssの続きになります。

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Self sacrifice after birthday 8


 私のコートは鬼の怪力を前提に作られているため、重い変わりに収納スペースがやたらと多い。けむりだまをはじめとする数十種類の武器やサバイバル道具、一週間は持つ携帯食料を持ち歩くことが出来る。

 「黒いコート?」

 「これしかいい服が用意出来なかった」

 移動式のベッドから降り、服を着終えた彼女にコートを手渡す。数キロは軽くあるコートをいとも簡単に羽織ってしまった。

 「軽く作られているのね」

 「いいや。ルビネルの腕力が上がっただけだ」

 明らかに学生とは思えない風貌だ。黒いコートに黒いブーツ、そして手袋。肉体は藍色と黒を中途半端に混ぜ合わせて、その上から二つの色をスパッタリングしたような不気味な様相を呈している。
 もはやルビネルの種族であるアルビダではなく、呪詛の暴走を起こしたサターニアに近い。だが、鬼特有のしなやかな筋肉もあわせ持っている。

 治療用の煙がまだ残っている部屋を、私たちは後にした。

 「……お披露目といこうか」

 私はマスクの中で半ば癖になってきた、ため息をつく。

 私は今まで自分の意思で自分のやりたいように人を黄泉へと導いてきた。自殺を望み、生きることに苦しみを感じる人々の救済をしてきた。だが、今していることは単なる処刑だ。患者のあらゆる苦痛を取り除くのが私の仕事であって単なる殺人が仕事ではない。

 私は胸から発せられる悲鳴を押し殺して、ルビネルを先導した。病院から出て、老人に借りた黒いワイバーンに乗り、騎手に指示するとあっという間にドレスタニア城前に降り立った。
 門番が私たちを見るなり強ばった。黒コート二人というのは中々威圧感があるらしい。通行許可証を見せ、中へと進んでいく。
 場内に入る直前で焦げ茶のスーツに身を包んだ老人が姿を現した。

 「どうやら、成功したようですねぇ、旦那」

 「ああ」

 老人はルビネルの顔をまじまじと見つめる。老人の眼光だと恐ろしいことこの上ないが。

 「予想以上に上手に仕上げられたようで」

 「彼が頑張ってくれたお陰よ?」

 ルビネルはにこりと笑い老人に答えた。なぜだ……なぜあんなにルビネルは落ち着いているんだ?たとえ戦いに勝って戻ってきたとしても、もはや普通の生活は送れないんだぞ?

 老人は帽子を深々とかぶり直した。肩が時おり震えているように見えるのは気のせいだろうか。
 老人にガーナ王の部屋の前まで案内された。私はおもむろにドアノブを捻る。

 部屋には車イスに座っているにも関わらず、すさまじい威厳を放つ男がいた。鋭すぎる眼をルビネルに向ける。

 「手術は……成功したのか?」

 「はい」

 ルビネルは深々と頭を下げる。ガーナ王はその一言を聞くと、威圧感を緩めた。

 「そうか、まずはひと安心だな」

 「お前のお陰だよ」

 チッと大人げなく舌打ちをしたのを見て、ガーナ王は僅かに口をつり上げた。仕方のない奴め、とでも言いたげな顔だ。

 「決戦まであと三日を切りやした。早いところ準備を進めましょう」

 心なしか老人の声が上ずっているのも気のせいだろうか。
 ガーナ王が私をぎろりと睨んだ。あまりの眼力に少し後ずさりしてしまった。

 「念のため期限を確認しておくが、ルビネルの命はあと何日だ?」

 「今日の午前手術が終了したから、あと六日ちょっとだ」

 期限を聞かれると、もともと憂鬱な気分だったのがさらに落ち込む。微かな達成感もこの一言で容赦なく消え去る。私がしているのは真性の殺人行為だと改めて認識させられるのだ。
 老人がうんうん、と頷いて前に出てきた。

 「予定通りですねぇ。体ならしに丁度いい場所がありやす。ついてきてくだせぇ」

 私たちは老人につれられ、外に止めてあった黒いワイバーンの群れに案内された。いつの間にか数が増えており、私たちの人数分に加えて、さらにボディーガードらしき人が乗った護衛用のものまで用意されていた。
 私たちは騎手に気を使いつつワイバーンに乗り、海を越えてベリエラ半島へ向かうべく出発した。



 ドレスタニア国を出るか否かの地点で、海を背景に銀色に光る何かが私たちに近づいてきた。

 「うおぉぉぉい!わらわを忘れておるぞぉぉぉ!」

 ドレス姿の少女が文字通り飛んできた。背中についている三角形の飛行ユニットが火を吹いている。

 「お前はショコラと遊んでいるんじゃなかったのか?」

 あんまりにも楽しそうに遊んでいるから、こっちなりに気を使ったつもりだったんだがな。いらん気遣いだったようだ。
 ワイバーンに平然と追い付いたセレアはニカリと笑うと大声で答えた。

 「ショコラは今エリーゼが探しておる。それまでの間の暇潰しじゃよ。さて、ルビネル。お主の実力はどの程度じゃ?わらわがサンドバックになってやろうぞ」

 ルビネルがワイバーンから身を乗り出した。騎手が警告するが、それを無視して内ポケットからアトマイザーを取り出すと、中身を射出した。

 「いいわ。今ここで相手をしてあげる」

 海が島を飲み込むかのように、ドレスタニアが地平線に消えていく。それに対してベリエラ半島が前に見えてくる。海上で戦うつもりか?

 ルビネルは一気にワイバーンから飛び上がった。そのまま空中を歩くかのように、エアリスに前進していく。

 今までなら精々空を飛べるとしても、滑空が限界だったはずだ。ボールペンの方が体重に負けて折れてしまうからだ。
 ルビネルの能力も強化されている。恐らく、ボールペンを単に動かすだけでなく強度をあげる能力も手に入れたのだ。
 数メートル離れて向かい合う二人。

 私たち一行はワイバーンを制止し、この派手なゲームを見守ることを選んだ。
 

黒ロンとクリーム(百合注意) PFCS交流ss

 頭には大きな角。背中から生えている骨の翼。足まで伸びる長髪。そして花のように可愛らしい顔。しかし、顔は少々お疲れ気味で、翼も今に止まりそう。彼女の名前はリリィちゃん。
 最近あまり養分補給をしていなかったため、空腹による目眩で地面に向かってフラフラと落ちていった。

 一方、カルマポリスの公園でベンチに座って本を読む女学生。腰まで届く黒髪を風になびかせ優雅に読書中。

 「あぁ、なるほど……こんなプレイもあるのね……」

 と、突然の自分の座っている場所が暗くなり、反射的に空を見上げた。

 「えっ……!?白?」

 「どいて〜〜なの〜〜〜」

 ベンチに座っているルビネルめがけて落下していくリリィちゃん。

 「あああ?!」

 椅子に座るルビネルの上に、リリィちゃんが収まった。

 「うぐっ……やわらかい……。何で私の足に女の子が座っているの?」

 動揺して放り投げた本が、お土産の入った箱の上に落ちた。

 「あいたた、なの……」

 もそもそとリリィちゃんが体を動かす。

 「ん?柔らかなの??(さわさわ)」

 リリィちゃんはルビネルの太ももをさわさわしている!

 「あっ……やめっ!そこはっ……」

 ルビネルが敏感な場所を優しく触れられ身悶えする。
 仕方ないので受け入れることにした彼女は、リリィちゃんの頭を軽く撫ではじめた。

 「……イッ……!!?……フゥ……ハァ……あなた、どうしたの?迷子?」

 「あわわ!ごめんなさいなの!!落っこちちゃったの!!」

 頭を撫でられて人の上に落ちたことに気がついたリリィちゃん、慌ててルビネルの上から退こうとする。

 「リリィ、飛んでたの。お腹減って落っこちちゃったの」

 「あっ、あらそうなの?ふふっ、気にしなくて大丈夫よ」

 ルビネルはリリィの顔を一目見て好みだと感じた。ドレスが似合っていてまるで人形のよう。離れようとするリリィそのまま抱き寄せる。

 「私はルビネルよ。丁度おやつを買ってきたところなの。一緒に食べる?」

 お土産の入った箱を手で引き寄せる。

 「お、重たくないの??退くの」

 リリィちゃんは抱き寄せられてびっくりした様で少し申し訳なさそうにもぞもぞしている。

 「お菓子なの?何だかいい匂いなの……」

 甘いものには目がない様で目がキラキラしている。

 「ふふっ、冗談よ」

 ルビネルはいたずらっぽく笑うと、リリィちゃんを丁寧に下ろしてあげた。

 「おかしをあげるっていうのは本当だけどね」

 そして、箱の蓋を繊細な手つきで開くと、中から黄色い生地で作られたボールのようなものを取り出した。クリームの甘い香りが漂う。

 「わぁ〜!かわいいの!!!」

 リリィちゃんのキラキラ度が増した。

 「カルマポリスで食べられてるお菓子よ。シュークリームって言うの。ほら、食べさせてあげるから、口を空けて?」

 一口大に生地をちぎって、リリィちゃんの口にゆっくりと近づける。

 「あーん」

 リリィちゃんは言われた通りにおとなしく口を開けて待っている。まず上顎から舌にかけてよだれが糸を引いて、そのあとプツリと切れる。

 「いい子ね……。はい、どうぞ?」

 そっと舌の上に生地をのせ、リリィちゃんの顎の下に軽く触れる。

 「どう?美味しい?」

 「はむっ、むぐむぐ……甘〜いの!!美味しいの!!」

 リリィちゃんはへにょんとろんと緩みきった顔で幸せそうに味わっている。

 「美味しそうに食べるのね。見ている私も幸せだわ」

 ルビネルは残りのシュークリームを口の前に差し出した。

 「ふふふっ、もっと食べていいのよ?」

 「ほんとなの?くれるの!?」

 リリィちゃんはまたあーんと口を開けて待っている。

 「中のクリームだけ味わうのも美味しいのよ?」

 先程ちぎって穴が開いた部分をリリィちゃんの舌にひたりとつける。

 「中身を嘗めてごらんなさい?こぼしてもいいから……」

 「ん……(ぺろっ)……甘いの〜♪」

 幸せそうなリリィちゃん。
 ほっぺにクリームがついてしまったことには気がついていないようだ。

「あらあら…」

 ルビネルはリリィちゃんのほっぺたについたクリームを人差し指で掬いとると、そのまま自分の口へと運んだ。
 レロッと粘液質なクリームを堪能すると、満足げに顔を歪ませる。

 「その調子で奥まで舐めとってから残ったクリームを吸いとるのよ。一滴のこさず、丁寧にね。食べきったら次のをあげるわ」

 「ペロペロ、ちゅっ、もぐもぐ……」

 夢中で食べるリリィちゃん。溢れるクリームを舐めとったり吸い取ったりするも、小さい口では受けとめきれずに手や頬がクリームでベタベタに汚れてしまっている。

 「フッ…フッ…フッ!しっかりとお掃除しましょうね」

 シュークリームを持つ手とは反対の方の手で、リリィちゃんの手首を軽く握ると、指についたクリームを丹念に舌で掃除しはじめた。

レロッ……

クチュッ……

ズルゥ………

ハァ……ハァ………

 「んむっ!?」

 突然指を舐められてびっくりするリリィちゃん。

 「く、くすぐったいの……ひゃぁっ!?」

 「ヌプッ……ヌチッ……ヌチャッ……ンッ……ンッ……」

 リリィちゃんが不快に思わないよう気づかいつつ、舌と唇を使い、丹念に指をしごいていく。ルビネルとリリィの指の狭間から唾液による粘着質な音が漏れる。

 「ヌポォ……どうしたの、食べないの?」

 「な、なんか、変なの……」

 リリィちゃんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
 前髪の間からチラチラとルビネルの様子を伺う目がのぞいている。

 「へぇ、結構素直なのね」

 ルビネルはくぱぁっと大きく口を開くと、一旦口を指から離した。そして、ピンク色の舌でリリィちゃんの指の根本から先端にかけて、何度も撫でていく。

 「感度も上々……」

 「うう〜、もう綺麗なの。大丈夫なの……」

 リリィちゃんはちょっと涙目だ。
 腕を掴まれているので引っ込めるに引っ込められずにもぞもぞと居心地悪そうにしている。
 ルビネルは少し申し訳無さそうに微笑むと、最後に口づけをしてから、リリィちゃんの手を解放した。

 「ごめんなさい、やり過ぎちゃったわね」

 そっとシュークリームをリリィちゃんに渡す。

 「ううん、ありがと、なの」

 シュークリームを受け取って俯いてしまったが、リリィちゃんの髪の毛の隙間から見える耳は赤く染まっている。

 「フッ……フッ……フッ!今のアナタ、すごくかわいいわ……」

 満面の笑みで身を震わすルビネル。シュークリームを一つ取ると皮をかじりとり、白いクリームを舌の上に流し込む。そのあと、皮を味わいつつ食した。

 「……どうする?まだ続ける……?」

 「むぐ……お腹いっぱいなの……」

 リリィちゃんは二つ目のシュークリームを半分ほどしかたべられていない。

 「もったいないの、……食べかけだけど、お姉さん食べるの?」

 手に持っている食べかけシュークリームを差し出した。

 「じゃあ、もらっちゃおうかな?」

 ルビネルはシュークリームをつまみ上げると、恍惚とした表情でしゃぶりつく。皮を、クリームを、妖しい舌使いで蹂躙する。荒い息づかいでまるで何かにとりつかれたかのように。
 シューの最後の一口を食べ終えると、今度は口の回りについた白いクリームを指でぬぐってはなめていく。


 「濃くて……おいしい……」


 ルビネルがシュークリームを食べる様子をリリィちゃんはちょっと頬を染めながら眺めている。

 (何だかいけないものを見てるような気分なの……)

 ルビネルは一かけも残さずシュークリームを完食した。

 「このお菓子、とっても美味しかったの!ルビネルお姉さん、ありがとうなの!!」

 リリィちゃんはニコッと可愛らしく笑った。
 ルビネルはリリィちゃんに見せつけるかのように、指を口の中からヌポッと引き抜いた。

「フフフッ!こちらこそ、楽しい一時をありがとう」

 無邪気な笑みを浮かべてリリィちゃんを見つめる。さっきまでの雰囲気が嘘のような変わりようだ。

 「えへへ〜、ルビネルお姉さんはいい人なの。また会えるといいの!」

リリィちゃんはベンチから立ち上がる。

 「食べ物くれてありがとなの、お礼、なの」

 そういうとリリィちゃんはベンチに座っているルビネルの頬に軽く触れるだけのキスをしてフワリと飛び上がった。

 「ひぇっ!あ……うん……こちらこそアリガト……。まっ……またアエルトいいわねぇ~」

 ルビネルは震えること声で返事をした。顔を真っ赤にしてリリィに手を振る。なんだか動きがぎこちない。

 「バイバイなの!!」

 そういうとリリィちゃんは再び飛び去っていった。
 ルビネルは謎の羞恥心に押し潰され、今にも泣きそうな顔でリリィちゃんを見守った。

PFCS企画ガチャ

shindanmaker.com

昨日ようやく完成しました。名前を入力するとガチャの結果が出てきます!

ツイッターでも盛況でただただ感謝の一言です!沢山回していただきありがとうございます!

作り方。
①試しにリブロさんのキャラを入力してテストプレイ。
②自国のキャラを追加してテストプレイ。
③長田さんにもらった学園PFCSの資料から名前を引っ張りだし、足りない部分を各ブログのキャラまとめから探す。
④さらに足りないキャラをss保管庫から探しだし、ひな祭りこどもの日ネタをそれぞれのブログで検索。

こうしてバリエーション含め300キャラを揃えた力作ガチャとなっています。お陰で小説と絵が全く進んでおりません(汗)

かなりのマイナーキャラも網羅されていると思います。例えばネコミミソラとか……。

因みにレア度の設定は基本適当です。特に深い意味はありません。Rはキャラの別バージョンをざっくり割り当てており、そのなかでも私好みのをSRに。URはマイナーキャラかSRよりもレアッぽいキャラを勝手に選んで割り振っています。

それにしてもまさかここまで沢山キャラがいるとは思っていませんでした。これでキャラを堀当てて、少しでも企画交流の助けとなれば幸いです。

追加してほしいキャラ、レア度の変更、誤字脱字などがあれば気軽にご一報ください。出来る限り対応します♪

ルビネルの施術願い

ルビネルの捜索願い PFCSss

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ルビネルの手術願い PFCSss2

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ルビネルの協力願い PFCSss3

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ルビネルへの成功願い PFCSss4

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ルビネルの豪遊願い PFCSss5

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ルビネルの修行願い PFCSss6
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こちらのssの続きになります。





 「逃げ出すなら今だぞ?私は止めん。むしろ手助けする」
 「いいえ。私の思いは誰からなんと言われようが変わらないわ」

 解剖台に横たわる艶かしい肉体。鹿の足のように細く美しい足、引き締まった腹、豊満な胸、そして台の上に散らばる黒髪。

 それを見下ろしているのは、全身を濃い青色のビニール性手術着に身を包んだ私だ。ペストマスクも使い捨て用のものに着替えている。

 私の能力は『メスを使って切る、留める、縫合(回復)する』というものだ。つまり解剖をメス一本で行うことが出来る。メスで触れさえすれば恐ろしいほど精密に操作出来ため、化け物じみた手術も可能になる。

 今回の手術は全身に鬼遺伝子を移植すること。ただ、直接移植するには全身の細胞一つ一つにメスで直接触れなければならず非現実的だ。そこで私は鬼遺伝子ウィルスを開発した。全身の細胞に感染し、鬼遺伝子を埋め込んだあと、勝手に自己崩壊するウイルスだ。

 このウィルスをメスに仕込み、全臓器に埋め込むことで、最低限の時間と労力で、全身に鬼遺伝子を行き渡らせる。
 が、彼女の肉体を切り刻むという事実はかわらない。

 「さあ、ドクター早くはじめて。こうして寝てるだけでも、ちょっぴり怖いんだから」

 「だったら止めればいいじゃないか」


 もっともそんな選択は彼女に残されていない。彼女がもし、手術を耐え、『あの人』を止めれば、たくさんの人が犠牲から免れるはずだ。私的な恋人への思いと激情が、社会的な理由を得たことにより、さらに強固になった。もはや誰も彼女を止められはしない。


 「わかった。……その前によく体を見せてくれ。君の生の肉体を見ることが出来るのはこれが、最後だから」

 「いいわよ。好きなだけ見て頂戴」


 見れば見るほどもったいない肢体だった。穢れのない純粋無垢に見える、白い肌。それも、今日で最後だ。鬼遺伝子の副作用は外見にも反映されてしまう。

 本当になぜこの体を切り開かなければならないのか。

 どれだけの時間がたったかわからなかったが、とうとう私はみるべきものを全て見終えてしまった。


 「ありがとう。私は君のその美しい体を一生忘れない。そして、さようならルビネル」

 「ええ、失敗したらまた来世で会いましょう」


 私は注射器を取り出すと、ルビネルの腕の中央にあるか細い静脈に麻酔薬を注入した。彼女は目をつぶり、静かに寝息をたてはじめた。

 私は解剖用のメスを手に持つと、ゆっくりとルビネルの白い肌に突き刺した。

 ひとたび術式が始まれば、私の心は嫌がおうにも冷静になる。私はまるで決められた作業をこなすロボットのように、ルビネルの体を切り刻んでいった。


 この瞬間、人とは何なのであろうかといつも思う。体を切り開き、臓器の一つ一つをまじまじと見つめると、これが人の生命を維持しているとは到底思えない。
 卵豆腐を少し薄くしたものにシワをつけ、一ミリに満たない黒く細いホースを張り巡らした物体が、人の記憶や行動、俗に言われる心とやらですら管理しているらしいが、とてもそうは思わない。

 肉屋のモモ肉をもう少し濃くした握りこぶし大の物体にちょっぴりの黄色い脂肪と、植物の蔓のように血管が巻きついたものが、生命を司る心臓という臓器なのだと言われると酷くげんなりした気分になる。

 垂れ下った黄色いスポンジのようなぶよぶよした半円形の物体に触れるのが、男の夢らしい。何だか笑えてくる。

 理屈でわかっていても感情が拒否する。これがあの可愛らしい少女の中身だとは思えない。確かに整然と収納され、芸術的とも言える配列で、生命を維持している臓器たちは非常に精巧で美しいとは思うが、それとこれとは違う。

 ただ、これこそがルビネルの肉体であり生命であるという事実に変わりはない。これを絶やしてはいけない。

 ガーナ王に渡された『設計図』の情報を頼りに、私は黙々と作業を進めていった。

 手は震えない。指先の神経の一本一本に命令を出しているような気分だ。恐ろしいほど自分の腕が、指が、自由に動く。

 自分の出来ることを淡々と進めるのだ。あの鬼畜に言われたではないか。普段と同じように冷酷に冷徹に、やるべきことをやる。そうすればきっと……

 大粒の汗が額から垂れるのを感じる。体力には自信があるはずの自分の肉体が明らかに悲鳴をあげていた。さすがに休憩なしでぶっ続けで手術をするのは、いくらなんでも無茶だ。とはいえ鬼遺伝子ウィルスの進行具合を常に確認しなければならないため、休んでいる暇もない。制御に失敗したら水の泡だ。

 ルビネルは言った。『私が止めなければならない』と。彼女はそれだけのために自らの肉体を捨て、化け物と成り果てようとしている。私にそれを止める権利はない。私に出来るのは、彼女の意思を尊重し、彼女の思いに答え、確実に手術を成功させることだけだ。

 ひたすらメスを動かす。この一刀が彼女の未来を切り開くのだ、と自分に言い聞かせる。しかし、実際は彼女の肉体を傷つけ命を削っているに過ぎない。
 精神的にも肉体的にもあまりに辛い所業だった。どうすればこの苦痛から逃れられるのだろう。考えても答えは見つからない。今自分のしていることが正しいと信じて進むしかないのだ。

 ここが正念場だ。私の心が折れないうちに手術よ、終わってしまえ!

 数時間後、私は部屋の端で座り込みながら、心電図の波形を眺めていた。だんだんと弱まっていく電気信号に危機感を覚える。彼女に薬剤を注入しつつ、もしものために準備を急ぐ。だんだんと乱れる彼女の呼吸。流れ出る汗。各種検査を開始する。

 だが、その検査中に心電計がアラートを発した。私は心臓マッサージをしつつ、いくつかの薬剤を彼女の腕に注入した。焦燥感にかられ、発狂しそうになる自分をどうにか理性で押さえつける。

 病巣と思われる場所にメスを突き刺し引き抜いてから数分待つと、彼女は静かな呼吸を取り戻した。
 意識が飛びそうなのを必死にこらえながら彼女の様子を見守る。
 耐えろ……耐えてくれ、今が峠だ。ここを乗り越えればッ!

 そして、さらに数十分後、彼女がもぞりと動いたのを見て、慌てて駆け寄った。



 「おはよう、ルビネル。気分は?」


 私はベッドに横になっている彼女に声をかけた。ゆっくりと彼女は目を開ける。そして、自分の体がどうなったのか、ということを長い時間をかけて受け入れた。

 「……生まれ変わったみたい。とても自分のからだとは思えない。……随分と奇抜な模様ね」

 「呪詛によるの黒色の肌と鬼遺伝子の副作用である青い表皮が混じりあった結果だ。顔と手首足首だけはどうにか元の形を維持した。私のようにコートを着れば問題ないだろう」

 おめでとう、とは言えなかった。彼女の寿命は残り六日と十四時間だ。それに、いくら手術に成功しても、負けてしまっては意味がない。

 「そう……」

 疲れからか、安心からか、再び彼女は眠りについてしまった。顔だけ見れば以前と変わりない。それがせめてもの救いだろう。

 私は手術が終了したことを伝える緊急コールを行い、引き継ぎに来た凄腕のアルビダ医師に必要事項を伝えると、目の前が真っ暗になった。

誤投稿訂正

先日、誤って6話の内容を5話に上書きしてしまいました。今は訂正されています。大変ご迷惑をお掛けしました。


5話(ルビネルの豪遊願い)
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/03/075127


6話(ルビネルの修行願い)
http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/04/224102

ルビネルの修行願い PFCSss6


ルビネルの捜索願い PFCSss

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/28/091650

ルビネルの手術願い PFCSss2

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/05/31/172102

ルビネルの協力願い PFCSss3

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/01/083325

ルビネルへの成功願い PFCSss4

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/02/153244

ルビネルの豪遊願い PFCSss5

http://thefool199485pf.hateblo.jp/entry/2017/06/03/075127

⬆このssの続きです。


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 ガーナ王がドレスタニアの一流の占い師に聞いたところ、ルビネルの探す『人』は今日から丁度一ヶ月後に、とある場所に行くことで出会えるらしい。占い師曰く、『三本の腕のうち、最初の一本があった場所』と言ったそうだが、私にはなんのことかさっぱりだった。
 だが、ルビネルは一度その場所に言ったことがあるらしくピタリと場所を言い当てた。

 占い師の言葉で決戦の日を特定した私たちはその日までの計画をたてた。

 主に稽古についての計画だ。





 ドレスタニア城の一室でガーナ王とルビネルが向かい合っていた。私はそれを腕を組み壁に寄りかかりつつ眺めている。
 ルビネルはサポーターをつけた右拳を大きく振りかぶると、ガーナ王に向かって殴りかかる。それに対してガーナは足を一歩引き上体を左にひねり、脇を閉め、肘を軽く曲げつつ拳を付きだす。
 ルビネルの力のこもった拳はガーナ王の腕に受け流され、あっさりとかわされてしまった。前のめりになったルビネルの足を、ガーナが足さきを使って軽く引き寄せると、ルビネルはいとも簡単にすっころんでしまった。

 「拳は必ず最短距離でつき出さなければならない。振りかぶるなど愚の骨頂だ」

 ガーナは右拳を腰まで引くと、しゅっとジャブを極めた。脇を締め、途中まで力を抜きつつ前に拳をつきだし、最後に腕の筋肉を緊張させ極める。そして極めたと意識した時にはすでに力を抜いて次の動作に繋げられるように構える。最低限の力で最高最速の拳撃を繰り出したのだ。あまりの合理さに恐怖を覚える。

 「さすがです。ガーナの旦那」

 隣で見ていた老人がニヤリと笑った。
 私たち三人は決戦を前にしたルビネルに武術指導をしていた。鬼の遺伝子を移植すれば格闘戦も可能になる。ルビネルは既存の戦術であるボールペンを操る呪詛に加え、格闘も出来るようになる。だが、紛いなりにも格闘術を身に付けておかなければそれも宝の持ち腐れだ。そこで、私たちはルビネルにあれこれ手解きしているのだった。

 「解剖鬼、お手本に相手をしてくれるか?」

 私は下がるルビネルと入れ替わる形で静かにガーナ王と向き合った。

 「かかってこい」

 「怪我をしても知らんぞ?」

 私は訓練用の木製の短刀を取り出すと構えた。ガーナ対して慎重に距離を詰めていく。ガーナ王は時々踏み込んで牽制をかけ挑発をしてくるが、決して私の射程に入ってこようとしない。
 私は見切りをつけ一気に踏み込んで短刀を振った。矢継ぎ早に斬撃を繰り出していくも、突如としてガーナが繰り出した小石によって優劣が決まった。
 攻撃に集中して防御がおろそかになった私は、無理に小石をさばいたため懐ががら空きになった。決してガーナの動きは早くなかったものの無駄がなくあっさりと私の腹に一撃を食らわせた。
 ルビネルがガーナに向けて拍手を送った。

 「体の使い方次第で凡人でも化け物に勝てるのだ。さあ、次だ。ルビネル」

 私はうめきながら「あんたが化け物だろうが」とぼそりと呟いた。
 老人に聞こえたらしく意地悪な笑みをこちらに向けてくる。悪童か、お前は。

 ガーナの真似をして必死に拳のからうちをするルビネル。あれほど動ければ将来は有望だろう。いいや、有望だったというべきか。

 ルビネルは汗を頬に滴らせながらガーナ王と打ち合う。りりしく健康的で美しい横顔が私の気持ちをさらに暗くした。

 「そうだ。それでいい」

 「はい!ありがとうございますっ!」

 ハキハキとした声はとても一ヶ月後に死ににいく者とは思えない。私の知る余命一ヶ月の人は、あのように目を輝かせたりはしなかった。ただただ死の恐怖に怯え、私に亡者のごとく泣きついてくる。
 ルビネルは違う。本人が死にたい訳ではない。死に値するような罪もない。誰に憎まれている訳でもない。将来有望で、未来ある若者だ。私はそんな人に対して、死を伴う危険な手術をした上で想像を絶する苦痛をあたえ、死地に送り出すことなど望んではいない。



 「随分と暗い顔をしているようじゃの」



 腹を抱える私に、ウェディングドレスを着た少女が話しかけてきた。銀髪を揺らめかせ不敵に微笑んでいる。
 私はその姿に戦慄し思わず後ずさった。老人がすぐそばでゲラゲラと笑い声をたてた。焦げ茶の帽子がずり落ちそうになるほどだ。

 「滑稽ですぜ。旦那ぁ」

 私は老人の言葉を無視して彼女に話しかけた。彼女の背丈は私の身長の大体半分ちょっとしかない。確かに滑稽な光景ではある。

 「ばっばかな、なぜお前がここに?!」

 「こやつに話しかけられてのぉ。強い輩と戦えると聞いて見にきたわけじゃ。ちと、早すぎたがのぉ」

 どうやら老人が強化後のルビネルの最終テストとしてつれてきたらしい。セレア・エアリス。液体金属の体をもつアルファ(金属生命体)である。私は以前、他者に乗っ取られたこいつに半殺しにされたのだ。それ以来ウェディングドレスを見ると身構えてしまう。


 「なるほど、なかなかいい感覚をしておるのぉ」

 「ああ。だがそれだけではない。約一ヶ月後、彼女に強化手術を行う」

 私はぶっきらぼうにそう答えた。

 「お主がか。意外じゃのお。そこで笑っている奴にでも脅されたか?」

 「そうです。俺が脅しやした。そうすりゃ旦那も言い訳できるでしょう?それに、あのお嬢さんの決意は本物だ。俺は惚れたんですよ、あの芯の強さにね?

 ルビネルはガーナに対して必死に拳や蹴りを放っている。先程のアドバイスが効いたのか、かなり正拳付きの精度が上がっている。
 ガーナがセレアに気づいた。が、特に何事もなかったかのようにルビネルの攻撃をいなした。セレアに関しては恐らく現ドレスタニア国王であるショコラから聞いていたのだろう。

 私は老人に対してため息をついた。

 「それでも成功率六割の上に、成功しても戦闘後に再手術しなければ寿命が一週間になるような殺人手術をやるのは気が引けるがな。ガーナと言い、お前と言い、彼女の意思と宿命を尊重するのはわかるがちょっとは情けを……」

 「敵にしろ味方にしろ情けをかけているようでは『やつ』に勝てんぞ?」

 私は目を見開いてエアリスを見つめた。ドレスについた埃をポンポンと払うとエアリスは続けた。

 「わらわもあやつの存在に気づいておる。あんまりにも強大な呪詛であったからのぉ。そこでどうしようか考えていたところ、そこのジジイを知ったのじゃ。お互いあやつを止める、という共通の目標のもと、わらわは同盟を結んだ」

 「ルビネルが負けたときの保険ですぜ」

 私は少しうつむきペストマスクを撫でる。一瞬、脳裏に血まみれになって地面に突っ伏すルビネルの像が浮かんだ。

 「ルビネルが負けたときセレアがあいつの相手をすると」

 セレアは幼すぎる顔にシワを寄せた。まるで機嫌を損ねた幼子のようだ。だが、その口から放たれる言葉にはしっかりとした重みがある。

 「いいや、わらわでは勝てぬ。精々できることはお主らが逃げるまでの時間稼ぎじゃ」

 かつて十数人の英雄と対決し、生き残った猛者の容赦ない一言だった。

 「おっと時間じゃ。また後日会おうぞ。恩人よ」

 そう言ってセレアは行ってしまった。思わず私は首を左右に振った。セレアが勝てない相手とはいったいどんな奴なんだ。邪神か何かだろうか。

 「全く……自由気ままなガキですねぇ」

 その数十秒後ショコラ王の笑い声が王宮に響き渡ったが私は耳を塞いでやり過ごした。


 決戦を一ヶ月後にそなえ、私たち三人でルビネルを徹底的に鍛え上げた。もともとルビネルに格闘に心得があったのもあり、みるみるうちにルビネルは上達していった。

 私は彼女のひたむきな姿勢を見て、ますます強化手術に対して反感を抱くようになった。しかし同時にルビネルの必死さにも心を打たれた。彼女は命を捨ててでも恋人を止めたいのだ。

 私にはもう、何が正しくて何が間違っているのかわからない。

 だれか教えてくれ……。